第153回臨時国会

2001年11月6日 総務委員会

政府参考人   総務省総合通信基盤局長   鍋倉真一君

○又市征治君 社会民主党の又市征治であります。
初めに、我が党の基本的な見解を述べておきたいと思います。
 電子情報の普及は、社会にメリット、デメリットの両面をもたらしました。そもそもインターネットの原型は、アメリカの軍事目的の情報網であったわけです。それが大学等の学術研究のネットワークに転用されて、さらには世界じゅうの一般市民にほとんど無料で開放されて現在の姿になってきました。
 こうした経過が示しますように、情報通信技術そのものは中立的なものであります。インターネットの普及の結果、従来は一般市民にとても手に入れられなかった行政や企業、団体の情報が、安価に迅速にいながらにして入手できるようになりました。このことは、国民の知る権利にとって大きな前進であります。反面、名誉毀損あるいは著作権侵害、プライバシーの侵害といった違法な情報や、法で取り締まることができない青少年などには有害な情報も流されるようになったわけですけれども、こうした違法や有害な情報の流布はインターネット以前にもあり、既存の法体系でこれは規制されています。ただ以前と違うのは、インターネットは即時性があり、もし被害が出れば広範囲に及ぶという点でしょう。
 そこで、今回の法案はおおむね必要な内容だと考えますけれども、この種の自主規制としての初めての法案であり、また表現の自由、通信の秘密を守る立場からの批判的意見も多く寄せられているところでありまして、十分な審議が必要でありますが、きょう半日だけの審議という時間の制約は大変残念であります。
 さて、問題は言論の自由と電子情報による個人の権利侵害とのバランスにあります。法案に批判的な意見では、この法律で他人の権利を侵害した情報について、プロバイダー等が、ある場合には賠償責任を負わされる結果、扱う情報への自主規制を強める。その結果として、発信者が行政機関や企業、団体に対して批判を書き込んだ場合、プロバイダー等が争いを避けようとして、結局発信者の意見を述べる権利及び第三者の情報を知る権利をあらかじめ制約をして、ひいては争議権や環境権などが制限されるのではないかという意見があるわけであります。
 そこで幾つか質問に入りますが、まず第一に、法案第二条の第三号に特定電気通信役務提供者の定義がありますけれども、これによれば、プロバイダーだけでなく、その提供を受けてホームページを持ち、そこに掲示板などを開いている団体や個人、もちろんここにおいでの多くの政治家の皆さんもホームページをお持ちですけれども、これらすべてが含まれるように読めますけれども、ここに言う具体的な対象というのは、プロバイダー、サーバーの管理、運営者に絞られるというふうに確認してよいのかどうか、これがまず第一点目でありますし、二つ目に、現在テレコムサービス協会に加入をして自主的なガイドラインをつくっているのはわずか四百社だというふうにお聞きをしておりますが、プロバイダー事業者は約六千三百社といわれますけれども、この法案で対象になる役務提供者は、今申し上げた数字に当たるのか、もっと広いインターネット事業者に当たるのか、この点が二点目としてお聞きをしたいわけであります。

○副大臣(小坂憲次君) 今御指摘のありました特定電気通信役務提供者には、電気通信事業者であります御指摘のプロバイダー以外にも、大学、企業や個人でプロバイダーと同等の役務を提供するものが含まれるものでございます。
 インターネットの普及によりましてこうした役務を提供するものは増大してきておりまして、確定的な数字は把握していないのでございますが、主なものとしては今御指摘の電気通信事業者としてのインターネットサービスを提供しているいわゆるプロバイダーと呼ばれるもので六千三百三十と先ほど申し上げました。これは本年の九月の時点でございます。また、このほかに大規模企業で自社内でLAN、ローカル・エリア・ネットワークを構築している企業、これが一万一千七百というふうに調査で出ております。また、全国の大学、短期大学で一千二百、このほかに、今御指摘がありましたが、個人で電子掲示板を開設している、あるいはホームページを開設しているものも対象となるわけでございまして、電子掲示板は容易に開設が可能なものでありまして、その数については把握をいたしておりません。
 そういった形で、今御指摘の部分ではこれは含まれるというふうに解していただきたいと思います。

○又市征治君 かなり多くの国民に影響がある、そういう意味では国民への周知が大変大事だということですね。
 そこで、この法案でちょっとあいまいな点ですが、プロバイダーのもとで働いているシステムオペレーターなどの労働者にまで責任があるのかどうかということをお聞きをしたいんですが、この法案がまだない段階での判例で、先ほどもちょっとお話が出ていましたが、ニフティ事件ではシステムオペレーターが訴えられて、地裁、高裁ともにこれに情報削除の権限と義務があるというふうにされています。一審では三者、つまり発信者、シスオペ、そしてニフティの連帯責任、二審では実際には情報を削除したのでシスオペとニフティの責任は問われなかったということになっていますが、しかしこれは会社、団体等の経営管理責任者よりも前に、被使用者であるシスオペに責任があるとした点で現場労働者に非常に酷な判決ではないのか、こんなふうに思われます。
 そこで、法案に言う役務提供者とはその会社、団体の中でだれまでを指すのか、単なる今申し上げた労務提供者のシスオペまで責任を問うのは妥当性を欠くんではないか、これは経営管理責任者を指すんだということを確認をしたいと思いますが、どうですか。

○政府参考人(鍋倉真一君) 従業員たるシスオペが不法行為責任を負う場合には、当該従業員を指揮監督している法人も民法の規定に基づいて使用者としての責任を負うということでございまして、要するに両者とも負うということでございます。その意味で、本法案は法人の従業員の責任についても規定しているということでございまして、ただ、これは本委員会でずっと御議論ございますように、この法案は責任の制限ということでございますので、当該従業員は本法案の要件をみなす場合にはその責任が制限されるというものでございます。

○又市征治君 例えばシスオペ、アルバイトの人だとかそういう人々まで、業務命令でやらされている人までも問われるのかという点で、これは先ほど、もう時間がありませんからこれ以上追及しませんが、法律解釈の指針だとかということも出そうというお考えのようですから、そういう点はもう少し具体的に、それから余り広範囲の者を問うことのないように求めておきたいと思います。
 次に、時間ありませんから総務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、当初報道されていた案では総務大臣の是正命令権という条項がありまして、これによると罰金が五十万円も盛り込まれていたわけでありますが、今回の成案にこれが入っていないということは、双方の権利のバランスの上で対応すべきだということであって、妥当な判断なんだろうというふうに私は思います。
 つまり、あくまでもプロバイダー等の自主規制であって、最終的には当事者同士が裁判で争いなさいという、こういう法律になっている。今後とも行政の直接介入はないんだというふうに確認をしてよろしゅうございますね。

○国務大臣(片山虎之助君) 今、又市委員言われますように、検討の過程ではいろんな案がございましたが、最終的には民事上のルールを決めようと、こういうことでございまして、特定電気通信役務提供者の責任の制限と発信者情報開示請求権と、こういうものを民事上のルールとして決めたものでございまして、行政による規制、介入は含まないと、こういうことでございます。

○又市征治君 行政の介入とは別に、利用者や事業者による社会的な合意形成が非常に大切なんだろうと、こう思います。
 先ほども若干、局長から御説明がありましたが、アメリカではインターネット監視財団という組織が違法なコンテンツに関する苦情を受け付けしたり排除を要請するというスキームが一九九六年からとられているとか、あるいはまた、フランスではコンテンツ提供者とプロバイダーの代表で構成するインターネット評議会が自主規制と調停役も務めていると。さらに、EUでは九七年の行動計画で各国に対して苦情処理センター、いわゆるホットラインでしょうけれども、これの設置と業界の自主規制による安全なインターネット環境の実現を求めているなどという、こういう例があります。
 我が国では今のところ、御説明ありましたように四百社の加盟する協会がガイドラインをつくっているということですが、今申し上げた欧米の例を見ても、政府が直接介入すべき問題ではないとしていますけれども、業界の動きをどのように支援をして、そしてまた社会的合意形成をしていくのかが問われているだろうと思います。先ほどもお話がありました法律の解釈指針も一つでしょうけれども、特に苦情処理について、とりわけ発信者の正当な権利行使に支障を及ぼさないように、裁判を待たずとも簡易で迅速な苦情解決の体制というものをぜひとも第三者機関、例えば専門家などによる情報開示審査会のようなものをつくっていくべきではないだろうか、こう思います。
 総務大臣からの見解を承りたいと思います。

○国務大臣(片山虎之助君) 今、委員御指摘のように、特にヨーロッパにおきましては、業界団体等が中心となりまして違法、有害情報まで含めまして、関する利用者の苦情等に対する機関が設立されております。
 私は、それはそれで一定の効果があるものと考えますけれども、我が国でつくるとした場合に、憲法で保障されている表現の自由等との関係だとか、だれがどういう形でつくるのか、内容はどうするのかというようないろんな議論がございますので、やはり多角的、総合的な検討が必要ではなかろうかと、こう思っておりますけれども、私は個人的には、将来の課題としてはそういうことの研究も必要ではなかろうかと、こういうふうに思っております。公にやるというわけじゃありませんよ。行政や公じゃなくて、自主的なこういう機関が必要ではなかろうかと個人的には考えておりまして、当面はいろいろと研究をさせていただきたい、外国の例を含めまして、そういうふうに思っております。

○又市征治君 終わります。