第153回臨時国会

2001年11月19日 行政監視委員会

行政監視、行政評価及び行政に対する苦情に関する調査

政府参考人
厚生労働省健康局長
下田 智久君

○又市征治君 社会民主党の又市征治でございます。
 臓器移植の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
 この臓器移植法ができまして丸四年になります。今日まで臓器移植は十七例に上るというふうにお聞きをしておりますけれども、この法第二条第四項には、移植を必要とする者には移植術を受ける機会が公平に与えられるべしという、こういう原則がうたわれておると思います。ところが、これについて複数の市民団体から行政監視をしてほしいとの要望が出されているところであります。
 そこで、お伺いをするわけですが、七月一日の第十五例目の問題ですけれども、脳死状態の患者の腎臓を二つとも取り出して親族二人に移植したという問題ですが、これには法的な問題点が二つあると思います。
 第一は、この移植を受けた二人は法に基づいて必要な事前のレシピエント登録をしていない、つまり待機者が一万三千人もいるというのに無審査の割り込みだったんではないかということであります。臓器移植法ではドナーが相手を指名することは許していないはずだと思いますが、この点、まず一つ明確にしてもらいたい。万一、もしこんなことを許したら、個人的な臓器の取引、あるいはひいては売買であるとか殺人の疑いすら招きかねないという、こういう問題が起こってくるんじゃないかと思うんです。この点、ひとつ明確に御答弁いただきたいと思います。

○政府参考人(下田智久君) まず、十五例目の事例についてのお尋ねでございますが、腎臓の提供を受けた二名の親族はレシピエント、つまり臓器移植希望者としての登録をしていなかったのではないかということでございますが、それはそのとおりでございます。
 それから次に、指名することができるのかといった問題でございます。臓器移植の基本的理念は、法にも書いてございますように、あくまでも公平性ということでございまして、原則的には臓器の提供先を指定する意思表示、こうしたものは認められるべきではないというふうにされておるところでございます。しかし同時に、臓器移植法におきましては、臓器提供者本人の臓器の提供に関する意思はこれを尊重されなければならないといったこともあわせて規定されておるところでございまして、これに沿ってどこまで本人の意思を尊重することが認められるか否かにつきましては、これまで必ずしも明確にされていなかったといったことがございます。
 今回のケースにつきましては、そういった種々の問題がございましたけれども、臓器提供者の生前の意見につきまして客観的な証言等も得られたといったようなことから、この部分については法に抵触し許されないといったところまでは言えないといった判断をいたしたということでございます。

○又市征治君 この法律に基づく限りは、今お話がありましたように、医学的に見て優先度であるとか適合度の高い人から公正に配分をするという原則だと思うんですね。これが崩れたら公共のチェックを離れて自由市場になってしまう。臓器が単なる物として金やコネの強い人に流されるということになりかねない。
 そこで、この法律に基づいてレシピエント登録が非常に重要なかぎになってくるんだろうと思うんです。ところが、厚生労働省は、駆け込みのこの二名の親族について、登録は不要だ、しかし登録料と同額の三万円は払ってもらいなさいというふうに移植ネットに回答したんじゃないですか。これは極めて不可解な指導じゃないですか。この点、ちょっと明確にしてください。

○政府参考人(下田智久君) 今回の事例につきましては、繰り返しになって大変恐縮でございますが、本人の生前の意思、親族に腎臓を提供したいという意思がはっきりしていた、移植を受ける親族の方以外の複数の親族から確認をされたといったこと、また、臓器提供先として指名をされた親族が移植を受ける医学的適応に合ったと、そういったことを勘案をいたしまして、臓器提供の手術をすることについては可能であるといった判断をいたしたところでございます。
 今、先生御指摘の、レシピエントとしての登録がなされていなかったのではないかと、こういった問題につきましては、確かに私どもが調べましたところ登録はいたしておりませんでしたが、こうしたドナーの御意思を尊重をいたしまして、改めて登録をいただき、臓器提供の手続として認めたと、こういったことでございます。

○又市征治君 このまま二つ目の法的な問題にも入るんですが、腎臓だけの移植なんですから、だとすれば、従前からの角膜及び腎臓移植法に基づいて、心停止によって確実な死亡を待って移植をするということでよかったんじゃないですか。なぜわざわざ脳死判定による移植にしたのか、これは。おかしいんじゃないですか。まして、そういうレシピエント登録はされていないのに、じゃ何で三万円を支払いなさいという指導をやったんですか。ここら辺のところは全く矛盾した格好になっているんじゃないですか。それとも、あえてこの移植ネットをわざわざどうしても介入させなきゃならなかった理由は何なんですか。

○政府参考人(下田智久君) ただいまの、今回のケースについて心停止後の提供でもよかったのではないかと、こういう御質問だろうと思います。
 確かに御指摘の選択もこのケースの場合はあり得たというふうに考えられるわけでありますが、一般的に、心停止後の腎移植、これよりも脳死下での移植の方が移植後の成績がよいというふうに言われておるということもございまして、個別の事例におきましてどの時点で移植適応となるか、こうした医学的判断はそれぞれの医師によって行われている現状でございます。
 したがいまして、今回の十五例目につきましても、担当された医師の御判断により脳死下での移植が行われたものであるというふうに承知をいたしているところでございます。

○又市征治君 しかし、脳死と判定をして移植ネットを通す以上は、法第十二条の第二項の二によって配分を公正、公平に行わなきゃならぬわけでしょう。脳死と判定したわけでしょう。そして、移植ネットを通しているわけですよね。まさに、一万三千人からの待機者、このリストを飛び越えてリスト外の人に回したことで、そうするとこの移植ネットはこの条項に違反をしたことになるんじゃないですか。

○政府参考人(下田智久君) 御指摘のように、臓器移植法の運用に関する指針、ガイドラインというのがございまして、これに従いまして、臓器提供、種々の手続が書かれてあるわけでございますが、その中におきまして、公平、公正な移植の実施を図ると、こういった観点から「ネットワークを介さない臓器の移植は行ってはならない」というふうにされておりまして、今回の十五例目の事例におきましても、ネットワークが臓器提供施設と移植実施施設との間の連携を図るための連絡調整を行ったところでございます。
 しかしながら、この事例につきましては、確かに臓器移植法に規定をいたします移植術を受ける機会の公平性、臓器提供者の意思の尊重と、こうした要請のもとで、結果といたしまして提供先を指定する本人の意思を尊重する形で臓器提供が行われたものでございまして、一般的な事例とは異なる経緯をとったことは事実でございます。
 こうした臓器提供先を指定する意思が表示されていた場合の取り扱いにつきましては、先ほど申し上げましたように、必ずしも明確ではなかったと、こういったことから、現在、厚生科学審議会の中にございます臓器移植委員会、この場におきまして幅広い観点から御議論をいただいておりまして、できればきちっとした形でのルール化を図ってまいりたいと、このように考えておるところでございます。

○又市征治君 「逐条解説 臓器移植法」というのがあなたのところの研究会の監修で出されておりますよね。これを見ますと、これには、第六条の第一項の問題に関して、明確な意思、つまりだれそれに私の例えば今の場合腎臓を上げたいと、こういう意思表示がある場合はあっせん業者によるあっせんはできないと書いてあるんじゃないですか。つまり、今回のケースはまさにこれに当たるんじゃないですか。

○政府参考人(下田智久君) このケースにつきましては、一般的な事例と異なった経緯をとったというふうに申し上げましたが、機会の公平性、あるいは意思の尊重、こうしたものの両者のはざまにおきましてどのように決定をするかという判断を迫られたわけでございますが、今回のケースにつきましては、先ほど言いましたように、ドナーの強い意思があった、これを客観的に証明することができた、また親族のお二人につきましても臓器を受けるしかるべき適正な理由があったと、こういった観点から、この臓器移植法に基づきますネットワーク、これを使ったあっせんが行われたと、このように承知をしているところでございます。

○又市征治君 いや、何か同じことを繰り返されているんですが、要するに明確な意思があったんならば、それはそれでこのあっせん業者を通すべきじゃないんじゃないですか。厚生労働省としては、それは臓器ネットワークを通すべきじゃなかったんじゃないですか。なぜそこにあっせん業者を通す必要があったんですか。
 それから、これは時間的な経緯で見てみますと、午前八時二十分に移植ネットから問い合わせを受けて、十三時二十分にこのことについてあなたのところはオーケーをされたようですね。厚生労働省で、どの機関でこのように検討して、こういう難問を事務レベルだけで決められたんですか。
 つまり、私が言いたいのは、移植ネットが関与する以上は、法に基づいて公明かつ公正、公平に待機者リストに沿って分配をすべきだ。逆に、どうしても親族にというんならば、その時点で移植ネットは手を引くべきだ。このことを厚生労働省はきちっと区分けをして指示をすべきだったんじゃないですか。そのことを、いや、ドナー、その家族の意思があったからとか確認されたからとかとおっしゃっているけれども、ここのところ、こんなあいまいな指導をやっていいんですか。こんなこと、大混乱を起こしていきますよ。
 ここをもう一遍、私が聞いているのは、今回のケースの場合には、家族の意思があったというんならば、これはあっせん業者を通すべきじゃなかったんじゃないかということが一つ。それから、一体全体、厚生労働省として五時間もあった間にどこで相談をされてこういうふうになったのか。その二つをお聞きしたい。

○政府参考人(下田智久君) このケースにつきましては、臓器提供施設から連絡を受けまして、直ちにコーディネーターをネットワークへ派遣し、脳死判定あるいは臓器提供に関する家族への説明等々に当たったわけでございます。その時点で厚生労働省の方にも報告があり、こうした種々の問題を勘案して判断した結果、臓器提供者の生前の意思について客観的に証言が得られる場合は可能であると、このように判断をいたしたところでございます。
 また、ネットワークを使うべきではないというようなことでございますが、少なくとも臓器提供施設あるいは移植実施施設との連携を図るための連絡調整等は必要なものと考えておりまして、こうした部分につきまして、今回も家族等への説明あるいは同意の確認等とあわせまして適正に実施されたものと、このように考えております。

○又市征治君 坂口大臣にお伺いをします。
 今お聞きのとおりでありまして、少しこの間の、私は、厚生労働省の臓器ネットワークとの関係を含めてかなりあいまいな指導がやられておる、この点をひとつぜひとも改めていただくように御検討をいただきたいと思っていますが、もう一つ、この臓器移植ネットワークについては、ワンマン的な運営であるとか経理の不適切さなどで我が党が衆議院でも実は検査を要求いたしました。その結果、厚生労働省は六月に立入検査もされましたし、二度にわたって改善勧告も出されておるようであります。今月七日にも、衆議院で我が党からこれをただしまして、厚生労働省は、トンネル寄附はやめさせる、それから理事者の個人的責任もあるというふうにお答えになっています。大臣はこれを受けて幾らかの答弁をなさっているわけですが、どのような答弁をなされたか、もう一度御確認させていただきたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 実はこの問題、衆議院におきましても阿部知子議員から何度か御質問があったことを記憶をいたしております。ただ、そこでどういうふうに御答弁したかということまで正確には覚えておりませんけれども、いずれにいたしましても、大変人間の臓器を提供するという重要なことを行います公益法人でございますから、それにやはりふさわしいような公益法人でなければならないということを申し上げたように記憶をいたしております。
 今、話を聞いておりまして、やはり余りあいまいではいけませんので、ここは今後明確にさまざまな、今回のケースだけではなくて、もう少しいろいろのケースを想定をして、こういうときにはこういうふうにするという明確な指針をつくりまして、これから運用に努めたいというふうに思います。
 公益法人のことにつきましては、今御指摘をいただきましたように、何度か調査もしたところでございますけれども、今後もこういう公益法人が公益法人らしいやはり活動をしなければならないということをもとにして、これからもしっかりと見守っていきたいというふうに思っております。

○委員長(森本晃司君) 又市君、時間が来ておりますので。

○又市征治君 終わります。