第154回通常国会

2002年3月15日 総務委員会








○又市征治君 参考人の皆さん、急な日程にもかかわらず、早朝からありがとうございました。
 各委員からの質問も一巡をいたしまして、最後になりますけれども、主に住民訴訟問題に集中をしておりますので、私の方からは、市町村合併問題に絞って自治体の第一線で御奮闘されております松浦さん、田中さんに御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 松浦さんのいただいた資料、「市町村合併をめぐって」というのがございますけれども、これは参考人が八年前に当時自治省の振興課長の肩書で私見というふうにお断りになってお書きになったものでありますけれども、読ませていただきました。
 最低規模能力という観点から合併必要論のA説と反対のB説に整理をされておりまして、B説だと、「現在の市町村は、それぞれ地域の実態に応じてそれなりに一定の必要十分な役割を果たしている」とあります。
 私、富山県の出身でございますけれども、小規模な市町村も多いわけですけれども、それらがそれぞれ豊かな個性を持って歴史的にコミュニティーを形作って、また行政担当者もユニークな行政を展開しているわけでありますけれども、その意味で松浦参考人のいわゆるB説に共鳴するところが非常に多い、こんなふうに思っております。
 また、参考人は、ある市町村の規模能力では処理できない事務があるとすれば、広域行政なり府県で補完をすればよいとも述べられております。つまり、合併そのものが打ち出の小づちではないというふうにおっしゃっているんだろうと思います。
 その後八年たたれて、今、松江の市長になって頑張っておられますけれども、今のこのB説では、それぞれの市町村に合併問題は任せておけばいいんで、むしろ国や都道府県は合併をそういう意味で進めるべきではないというふうにあるわけでありまして、国や県からの強要に対しては批判的に述べておられたわけですけれども、八年たたれて今市長の立場でございますから、そういう観点からお聞きをいたしますが、これは田中さんにも後で同じことをお聞きしたいと思いますが、現在、総務省が強力に進めている平成の大合併の進め方、つまり先ほども出ましたけれども、様々な優遇措置だとか、あるいは交付税での格差付けといいますか、ペナルティーとも言われますが、こうしたまず合併ありきの今日の推進の仕方、このことについて率直に現場から見られて御感想をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(松浦正敬君) ちょっと私、どんなそれは論文だったかよく......
○又市征治君 「市町村合併をめぐって」という。
○参考人(松浦正敬君) ああ、そうですか。ちょっと全然記憶がもう薄れてしまいまして、全然もうあれでございますけれども。
 やはり今、又市委員の方からおっしゃいましたように、合併というのはやはりその地域の将来を決めていくという大変大きな問題でございますので、やっぱりそれはそこに住んでいる人たち、あるいはその関係の市町村がみんな納得しながらやっていかないとこれはうまくいかないということだろうと思います。したがいまして、自主合併ということが基本になっていくということになるわけでございますけれども。
 したがって、それを進めていく上でいろいろなやはり考え方というのはあるわけでございますので、例えば国の場合は全くこの市町村の合併ということに対して門外漢であるというわけにはいかないと。これはもちろん国家の基本構造といったことにもやはりかかわり合いを持つわけでございますので、一定の考え方、立場に立ってやはり合併ということを推進していくとか、そういうことはあり得るだろうと思います。
 それから、県の場合も、先ほどから申し上げておりますように、大変大きく市町村合併が進んでいくということになりますと県の在り方そのものも変わってくるわけでございますので、当然県としてもこの問題に対しては大変関心を持ってどうするかということを考えていかなきゃいけないということだろうと思います。
 ただ、いずれにしても、いろんな今の社会情勢等々を考えていくと、やっぱり合併というのは不可避ではないかというふうに私は思っております。したがって、そうした合併をできるだけスムーズに進めていくということがこれからはやはり必要になってくるだろうというふうに思っております。もちろん関係の市町村の合意を得ながら、あるいは住民の皆さん方の合意を得ながらやっていくということが何よりも必要だろうと思っております。
○参考人(田中章史君) 私ども、この間、合併問題を全国各地でシンポジウムを開催するなどしていろんな議論をしてきました。自治体の首長さんにも参加をいただきましたし、議員の方々にも参加をいただいていますが、一つやはり問題になりますのは、期限を区切って財政的なあめとむちで強制的に進めるということについて、自治体の首長さん、とりわけ町村の首長さんたちからはこのやり方はどうしても納得できないという声が強く出されています。
 実は、山本文男全国町村会長さんが福岡の方でシンポジウムをやられたときの資料をいただいておりまして、この町村会長も、強制、強要するのはやめてほしい、合併は町村にとっては最大の事務事項、案件である、だから市民の皆さんたちが自律的に合併することが良いのか悪いのかを判断して行うものだ、だから押し付けないでくださいというのが町村長大会での決議だと。先生方が祝辞の中では自主的に合併をやらなければならないと大原則は言われるけれども、と言いながら後が来るわけで、この部分に対してはそういうふうにやらないでほしいと申し上げているんだというふうに言われております。これがあるいは今の町村長の皆さん方の率直な思いではないかというふうに思っています。
○又市征治君 松浦さんの方からは今の進め方の問題についてはお答えがなかった、立場上そうかなと思いながらお聞きをいたしましたが。
 二つ目の問題ですが、このたびの法案の中身、特に住民が合併協議会の設置を発議をしたけれども議会がこれを否決したときは六分の一以上の住民の連署による請求があれば住民投票に付すことができ、この投票で過半数の賛成があれば議会が合併協議会の設置を議決をしたものとみなすと、こういうことになっておるのが今回の合併特例法の改正の中身であります。
 これはもう憲法九十三条に規定をされている議会制度、代表制民主主義、この原則を覆すんではないかということもございますし、またこの合併協議会設置反対の、逆に合併協議会反対のじゃ住民の発議があった場合に、これを議会が否決した場合はこれは保障されないということになっているわけで、極めて一方向で、合併推進のみの御都合主義ではないかという批判がこれは自治体の首長さん方からも相当あるわけでありまして、このことについて率直に、こうしたありよう、松浦さんも元々はこのことも御専門のことだったと思うんですけれども、それぞれ松浦さん、田中さんからお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(松浦正敬君) 先ほどもちょっと意見でも言わせていただいておりますけれども、やはり今、全国の過半数の自治体がいろんな形で研究会あるいは協議会というようなものを組んで合併というものを取り組んでいる、そういう事態になっているということをやはり我々は認識しておかなきゃいけないと思います。
 そういう意味で、そういう中で住民発議という制度を考えてみた場合、これは平成七年のときにこの住民発議という制度を入れたわけでございますけれども、やはり実際にこれを発動、発動といいますか、実施をしてみた場合に、どうしてもそれは複数の関係の自治体が絡んでくるということで、一つでもそれが否決をするということになってしまうと全体が全部駄目になってしまうというようなことでは、やはり発議制度そのものの意義というものが薄れてしまうんじゃないかというような議論というのはその後いろいろあったというふうに承知をしております。したがって、それをどういうふうな形で補てんをしていくかというふうなことを事務当局の方でも多分いろいろ考えられたと思います。
 一方、住民投票というものは、住民参加ということで今の間接民主制というものを補完していく一つの重要なものだというふうな位置付けがあって、じゃどういうふうなものにこういった住民投票を適用していくかというようなことで、もう一方においてそういう議論があったと思います。
 そういう中で、今回、住民発議と住民投票といいますか、それが結合されたという形になっているわけでございまして、やはり一つの住民投票制度というものをこれから根付かせていく一つの試みとしてこの住民投票制度というのは非常に意味のあることではないかというふうに思っております。
○参考人(田中章史君) 先ほども申し上げましたが、資料の中で、四十五ページから第二十六次地方制度調査会の答申が掲載されておりまして、四十六ページの中段以降、住民投票制度の問題について記述がございます。
 私、これ読んでみまして、住民投票については代表民主制の補完的な制度として構築できないか検討を行ったけれども、非常にいろいろ議論があって結論が出なかったと。しかし、市町村合併については、地方公共団体の存立そのものにかかわる重要な問題であること、地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民自身の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当であるという答申をされています。
 この趣旨からしますと、今回の法案につきましては、先ほど議員もおっしゃられましたように、全く論外な代議制度、議会が否決したものを住民が覆すという、そういうことにもなりますし、住民投票の在り方はいろいろな議論があるかと思いますが、そういうことはあってはいけないだろうというふうに思っています。自主的な合併を進めるという点でいえば、住民がどう判断するかということが、主権者である住民がどう判断するかということが結論でございますから、そういう点では、地方制度調査会の答申から見ても、今回の法案については瑕疵ある法案ではないかというふうに私は思っています。
○又市征治君 ありがとうございました。
 それじゃ、改めて法律の専門家であります石津さん、あるいは高橋さんにお尋ねしたいと思うんですが、今の問題お聞きになっておられまして、議会で否決をした、住民発議が今度はやられて六分の一以上の連署がありました、議決していないものを議決したというふうにみなすという、こういう問題、国民感情からいっても納得できないという、こういうこともあるわけでありますけれども、この点、法律の専門家としてはどんなふうに御見解をお持ちでしょうか。
○参考人(石津廣司君) 大変難しい問題をいただきまして、答えられるかどうか何とも分かりませんが、この住民投票制度の問題は従前から議論があるわけでございまして、我が国の自治法制といいますか、憲法体制といいますか、代表民主制が原則になっているというのはこれは間違いないわけです。
 ただ、それに対する補完制度として、どの範囲で直接民主制の一環としての住民投票を認めていくかというのは前から確かに議論があるわけでございます。その中でも、例えば議会と長が対立している重要な事項とか、あるいは地方公共団体の存立に関するような事項というのは住民投票を導入していいじゃないかという議論があったというところまで私も承知している。
 そういう意味で、立法の条文が、先ほどのお話ですと議決していないものをみなすというのはおかしいじゃないかというのは分からないではないんですが、基本的に法令の趣旨というのは、代表民主制の補完としての住民投票制度というものをそこで生かしていこうという趣旨だろうと思います。
 ですから、そういう意味では、法律的に言ってこの住民投票制度というのはある程度限定的に運用されるべきなんだろうと私も思っておりますが、そういう場面ではおかしくはないのかなという思いでおります。
○参考人(高橋勲君) 住民投票制度というのは、やはり住民が地方行政、自らの住んでいる町づくり、町の在り方について直接意見を表明して、それを反映させていくという点では大変進んだ民主主義の制度だろうというふうに常々考えています。また、日本国憲法の中で地方自治の原則が基本原理として私は位置付けられていると思いますので、その精神の一つの具現化したものかなというふうに考えておりますので、それを何らかの形で制度設計ができればなというふうに常々考えておりました。
 ですが、その議決していないものについて住民投票の結果によって議決したものとみなすところをどういうふうに制度設計するのか、ちょっと十分条文等も分析して検討しておりませんが、一つの選択肢には入れられるのかなという程度でございまして、総論的には、本当にそのようなことが法律の中に取り入れられることを願いつつ、具体的な制度設計などについては、ちょっと意見をこれ以上進めるには検討が不十分かと思います。お許しください。
○又市征治君 ありがとうございました。今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 終わります。