第154回通常国会

2002年7月8日
政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会







○又市征治君 社民党の又市でございます。
 大変お忙しい中御出席をいただきまして、ありがとうございます。
 先ほど来からお聞かせをいただきながら、御三方とも、国会議員あるいは地方議員及び首長の公設並びに私設秘書をこの罪の主体に加えるべきであるとか、あるいは「権限に基づく影響力を行使して」ということは削除すべきであるとか、大変多くの点で専門的な立場から一致の見解を述べていただいていることについて、大変意義のある今日は参考人質疑だろうと、こう思います。
 そこで、相当論点も整理をされてまいりましたので何点かに絞ってお話をお聞きをしたいと思いますが、先ほど来から出ています、今回の我々の野党案と与党案の大きな争点の一つに親族を含めるかどうか、こういうことで、ここのところはちょっと参考人の皆さんの御意見も違っている面もおありのようです。野党案に対する与党側の反論は、親族だというだけで秘書と同じ職分があるとみなすことは、その人の正常な経済活動まで不可能にさせるから職業選択の自由に反するといったような趣旨のようでありますけれども。
 そこで、土本先生にまず先にお伺いをして、後ほどまた両先生にもお伺いしたいと思いますが、土本先生のお書きになったものの中に「政治浄化には強力な法的規制だけが有効だ」と題する、一九九二年、ちょっと十年前ですが、中央公論にお書きになっているのを見させていただきました。これは全体として汚職全般について述べられたものですけれども、その一部で、国会議員というより候補者としての選挙違反についても厳しくすべきだ、特に連座制をきちんとやれ、こういうふうにお書きになっておったと思います。
 その部分で「連座制を実効あらしめるために、」とありまして、その第二点に「当選無効事由になる違反者の人的範囲を拡大することです。」と、こう明快に述べておられます。つまり、「これまでの改正により、」「この」、「この」というのはつまり連座制のという、「この範囲は」云々とあって「候補者の家族にまで拡大されてきています。」と。
 これは選挙運動の話ですけれども、先生の全体の論調からしますと、国会議員となった後の親族のあっせん収賄についても同様のことが言えるのではないかというふうに思うんですが、この点いかがでしょうか。
 そして、ここが大変問題になってくるわけですが、現実の例を見ますと、先般のこの委員会でも私、取り上げたんですけれども、極めて著名な国会議員の弟がその議員の選挙区内の自治体を舞台にコンサルタント業を行っておって、公共事業を落札させて成功報酬を得ている。幾ら本人が全くの経済活動なんだと、こうおっしゃっても、周りは、つまり業者も、また自治体の側も、あの先生の弟だからと、こういうことで事実は動いているわけですね。選挙運動については厳しくなって親族を連座させるようになった、こういう点からすれば、このあっせん利得についても親族を視野に入れることは必要なんだと思うんです。
 親族と規定をしても、その中であっせん収賄事案に係る者が対象となるわけですから、個人の自由を必ずしも侵すことにならないんだろうと、こう思うんですけれども、この点について御三方の御意見をお伺いしたいと思います。
○参考人(土本武司君=筑波大学名誉教授・元最高検察庁検事) ここは、連座制とあっせん利得罪との違いを私としては考えざるを得ないわけであります。
 連座というのは、正に我が国の選挙を公明なものにする大きな効力を発揮いたしておりますね。範囲が拡大されたことから、事実、公明選挙の実が上がっていると言っていいと思い、したがって中央公論に書いた時点において言ったこと、それ自体は私は説を変える気持ちはありません。
 ただ、なるほど、連座制の違反行為者に親族が取り込まれているわけでありますけれども、選挙運動というもの、それから、したがって買収などの選挙違反というものは、これ、だれでも、何人でも犯し得る正に非身分犯なんですよね。それがまず前提になっているわけであるということ。
 それから、あるいは異論があるかもしれませんが、私は、連座制の効果として、国政、地方双方ともに選挙によって選ばれる人に対しては大変大きな効果があるということは、その議員にとっては大変痛い処分ですね。刑事処罰を受けるよりも、むしろこの連座制によって当選無効となり、将来の被選挙権が剥奪されるというのは政治家として致命的な効果にもなってくるわけですが、そういう強い制裁があるということは、それは刑罰でないにしても、それが他人の、自分の派だといっても、自分以外の者の違反行為によってそういう大変厳しい効果が議員に掛かってくるということを考えますと、ベースには立候補者の選挙運動者、親族を含めた選挙運動者に対する監督上の不行き届き、過失があるんだということが前提になっているのではなかろうかと思うんですね。
 ですから、それを言えば、したがって当選無効訴訟の場において連座の効果を受けそうになる、その危険にさらされた議員は、自分は十分に監督したんだということの反証が成功すれば、この連座の制裁を受けない場合も理論上はあり得る、現実にはほとんどそれはないと思いますけれども、理論上はあり得るんだと。いずれにしても、理論構成として、そういう立候補者の選挙運動員に対する監督上の過失が前提となって決められているんではないかと思うんですね。
 それらを考えると、こちらの、あっせん利得罪における利得を受ける者、つまり収賄の立場になる者が親族であるということをもって直ちにその身分を取得するというのはどうも抵抗感があるわけでして、親族であってもせめて使用され補佐するという実態を持っている者なら、これをその犯罪主体とするところに合理性があるんじゃないかと思うものですから、ということであります。
○参考人(飯尾潤君=政策研究大学院大学教授) この問題についても確たる意見は持ち合わせておりませんけれども、しかし、先ほどもお話をしました政治学者からの国民の不信という点からお答えをいたしますと、確かに何か先ほど例に挙げられた例ですと問題があるだろうと思われます。
 しかしながら、まずやはり重要なのは政治家御本人がやはり態度を改められるということで、この場合はあっせん行為をする主体が広げられるということでありますけれども、たくさんやっていると国民が思っている国会議員の方あるいは首長さん、地方議員の方が余りこの類型に当たらないのに、どうも家族の方ばかりが次に当たって数が増えるというのは、やはり順番としてはちょっとどうかなと思っておりまして、主体の拡大よりももう少し要件の方が問題ではないかと思っておりますので、やや消極的な印象を持っております。
○参考人(板倉宏君=日本大学法学部教授) 親族ですね、配偶者とか父母とか子供とか、これ、形の上では秘書でないとしても、秘書と同様に実質的に政治公務員と密接な関係にあることは間違いないと思うんですね。そして、しかもこれ、構成要件としてもちゃんと配偶者とか父母とか、そういうふうに書いてあるわけですから、明確性を害するということはないわけです。またそして、配偶者とかそういった人がこのようなことをやりさえしなければ処罰されないわけですから、こういった行為、この罪の主体に配偶者とか父母とか子供とか、私は更に元秘書なんかも入れたいと言っているわけですので、そういうことでございます。
○又市征治君 それじゃ、第三者供賄の問題についてと、政党支部の問題についてお伺いをしたいと思うんです。
 まず、板倉先生にお伺いをいたしますけれども、先生も二〇〇〇年十一月の衆議院の参考人でお話しになった中で、今日もちょっとだけ短い時間でしたが、第三者供賄の点挙げられております。これは言うまでもなく、二年前から我々の野党案に入っておりまして、与党案には入っていないわけですけれども、その点、再度お願いをするわけですが、板倉先生は、一九五八年に国会議員のあっせん収賄罪ができたけれども、今までに起訴が二件だけあって有罪は一つもないと。それは政党支部などの抜け道があるからだという御趣旨でおっしゃっていたんだと、こう思います。
 なお、別途、我々野党はこの法案と並行して政治資金規正法の改正の法整備の方、進めていますけれども、政党支部の数の規制という案、この中で今進めていまして、先ほども他の委員から話が出ましたように、大変な多くの政党支部があったり、じゃ、小選挙区に一つでは多過ぎるかな、抜け道になるんではないか、都道府県に一つではどうかとか、様々、今野党の中でも論議をしておるところであります。
 そこで、法案を少しはみ出すわけですけれども、政党支部ということについてもお考えをお聞かせをいただきたいと、こう思います。
 もっとも、政党の支部は第三者供賄の一つの窓口にすぎない、こんなふうに思うわけですが、やはり第三者全般の規制が必要だと思いますけれども、せっかくの機会ですから板倉先生と土本先生にお伺いをしたいと思います。
○参考人(板倉宏君) あっせん収賄の方にも第三者供与を処罰する規定がないわけでございますね。今まで、一人の方は国会議員で、一審は一回有罪判決あったんですが、お亡くなりになったために確定はしていないと。今まで、ですから、起訴例は今回の件を含めて四件ぐらいだと思いますが、私、まだ確定したものは一件もないと。
 これはやっぱり、あっせん収賄の規定には、さっき言った請託だとかいろんな要件があることもありますけれども、第三者供賄を処罰する規定がないということも一つの理由であろうかと思うわけです。ですから、こういった抜け道になっているということは実態としてあるように思いますもので、そういった政党支部とか政治資金管理団体などが、ですから、これはやはり第三者供与を処罰する規定を、これは是非置くべきだというふうに考えております。
○参考人(土本武司君) 第三者供賄の規定は設けるべきかと思います。
 ただ、立法の順序として、あっせん収賄罪における第三者供賄の規定の立法と少なくとも同時になされるべきであろうかと思います。そうしませんと、第三者供賄行為というのは、あっせん収賄罪のほかの要件が、あっせん収賄罪についてのほかの要件が整っていましても、刑法は適用、あっせん収賄、第三者にあっせんを供与したという場合に刑法の規定は適用できない。ところが、こちらの方が、先にこの規定ができておりますと、あっせん利得罪の方は適用できるということになる。
 だから、要件が重なれば、こちらの要件にも合致し、あっせん収賄罪にも合致しているというときには、こちらでもって第三者供賄のケースを有罪とすることができるわけでありますが、そうでないと駄目だという妙な事態が出てくる可能性が出てまいりますので、少なくとも同時立法が必要であろうかと考えます。
○又市征治君 終わります。ありがとうございました。