第154回通常国会

2002年7月12日
政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会







○又市征治君 社民党の又市です。
 去る八日の三人の参考人質疑で、与野党の案の長所短所についてある程度客観的なコメントがいただけたんではないかと、こう思います。また私は、去る十日の予算委員会で小泉総理に、このあっせん利得処罰法改正のための努力についてもただしたところであります。その答弁は、政治倫理を更に強化をして国民の信頼を回復することが必要だというのが、総理としてあるいはまた与党自民党の総裁としてということで私、問いましたので、そういう立場で御答弁がございました。
 本日の委員会は、これらを踏まえながら論議を一歩前進させて、野党側から九項目について提起を申し上げているわけですが、与野党が知恵を絞って実りある論議を深めながら、そして、朝令暮改だとかという、こういう批判を受けないように、あるいはまた国会が本当に自浄能力全くないではないか、こういう批判が今あるわけですけれども、こういうものをやっぱりそそぐためにも、一致点を探るために、お互いにメンツなどというのを捨てて、やはりしっかり今ここで一致点を見いだしていくという努力が求められているんだろうと思います。
 そこで、参考人質疑を通じてほぼ、先ほど来出ておりますように、三点に絞られてきた。一つは、首長や地方議員の秘書への適用の問題。二つ目には、権限に基づく影響力の行使という文言の削除という問題。そして三つ目には、第三者供賄の追加ということだったと思います。
 そこで、第一に、首長や地方議員の秘書の適用について与党側の皆さんにお伺いをしたいと思うわけですけれども。
 そこで、土本参考人の意見は、私設秘書は実態的に公設秘書と差異はない、地方には公設がないから適用しないというのはもう論理矛盾であり、地方は公設がない分だけ私設の活躍舞台が広い、こういうふうにおっしゃっておりました。また、板倉参考人は、地方首長、議員の秘書を入れるべきだし、元秘書もあっせんのときだけ秘書でないというのを防ぐために入れるべきだ、こう述べられておりました。
 そこで、もう一度実例に基づいて考えてみたいと思うんですが、井上前参議院議長に絡むあっせん収賄事件は、本法案の適用対象者に即して考えれば、二つの部分に分けて見る必要があると思います。
 一つは、議長、すなわち国会議員の秘書である半田さんという方の犯罪の問題。もう一つが、鎌ケ谷市長、つまり地方首長の収賄ですけれども、ここに市長側の代理人として介在をしているのが野崎さんという方であります。彼はたまたま井上議長の秘書でもありますけれども、より一般的なケースとしてみれば、市長の私的代理人、こういう格好になっております。元々、市長の選挙運動をやっておって、日常、地元にいて市長室に出入りをし、市長と非常に懇意で、市長室を舞台に金の受渡しをやった。市長の裏秘書的な、こういう役割をやっているというのが伝えられているところであります。市長も工事発注の実権を分有していた。正にそういう意味では政治活動を補佐する者、こういうことであり、野崎氏を処罰しなければ全く意味がないということになるんだと思います。市長にとっての、先ほども出ましたけれども、公的秘書は、これは公務員たる市長室長がいるわけですが、それと連携をして、役割分担をして、公務員では危なくてできない部分を受け持った、こういうことなんだろうと思います。こういうことがずっと報道されてきた中身で明らかになってきたと思うんです。
 改めてこういうことを見てまいりますと、地方首長の私設秘書のケースを含めるように与党側ももう決断を是非していただくべきでないか、このことを強く求めますと同時に、御見解を承りたいと思います。
○衆議院議員(白保台一君) お答えいたします。
 るる、いろんな例を挙げられてお話がございました。しかし、私どもは本案を立案する際に一つのきちっとした考え方を持ってスタートしておりまして、これまでも答弁に出ておりましたように、国会議員の秘書については、公設秘書のみが国民の税金から給与を支払われる公務員であり、さらに法律上も国会議員の政治活動を補佐するものとして明確に位置付けられており、国会議員の権限に基づく影響力を行使し得る立場にあることから独立の犯罪主体とされてきたところであります。本法の性格に照らしますと、基本的には議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体の中核は公設秘書であると考えております。
 しかし、最近の国会議員の私設秘書等にかかわる一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受け止め、政治に対する国民の信頼を回復するためには、国民の側から見れば公設秘書か私設秘書かの区別は判然としないこと、国会議員の政治活動を補佐するという実態に着目すれば公設秘書でも私設秘書でも変わりはないことなどから、議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体に国会議員の私設秘書を追加する必要があると考えて本法改正案を提案したものであります。
 こうした立案の経緯を踏まえるならば、参考人の御指摘のような、地方に公設がないから適用しないというのは論理矛盾だという批判は当たらないものと考えております。
 また、先ほど例として挙げられました鎌ケ谷市の事件については、事案についての詳細を承知しておりませんので、発言は差し控えたいと思います。
 いずれにいたしましても、犯罪主体の中核となる公設秘書の存在しない地方公共団体の長の私設秘書についてまで犯罪主体を拡大すべきとする考えには、賛同することはできるものではありません。
○又市征治君 私、具体的な例を挙げて、これを保利提案者にもお聞きをしたいんですが、今のこれだけ多く伝えられておる井上前議長に絡む問題で、ここの、市長の実質的にもう秘書をやっておったということは伝えられているわけでありますけれども、それでもこれは私設秘書を、こうした地方首長の私設秘書も加えるべきでないというお考えなのかどうか、もう一遍、改めてお聞きをしたいと思います。
○衆議院議員(保利耕輔君) 個々のケースはいろいろあるんだろうと思いますし、またこのケースについて私は細かくは承知をいたしておりませんけれども、こういった例があるという御指摘をいただいたというふうに理解をさせていただきますが、だからといって、このあっせん利得罪の構成要件を私どもは公設秘書を中心に物を考えてまいりましたし、今も考えておりますが、その公設秘書のない地方の長、首長、議員に対して、公設秘書のない首長あるいは議員に対する私設秘書の取扱いをこの法案の中に組み込むかどうかということについては、今までずっと御答弁申しておりますとおり、これを入れるつもりはございません。
 しかし、いろいろな事件が起こりますから、そこのところは地方の倫理の確立、あるいは、これは中央ももちろんですけれども、地方における倫理の確立というのはどうあるべきかというのは、その地方地方でやはりいろいろなやり方があると思いますから、お考えをいただかなきゃならないことだなと、そういうふうに思っております。
○又市征治君 非常に残念と言っておくしかございません。
 そこで、次に移りますが、第三者供賄について先にやりたいと思いますが、実は先日の参考人の意見の間に、先ほどもございましたけれども、若干のニュアンスの違いはありましたけれども、しかしこれは本質的な違いではなくて、不必要だなどという意見の差異ではございませんでした。
 すなわち、板倉参考人は、第三者供賄は追加をすべきだと、政党支部、資金管理団体等が受け取った場合は、共謀や共同正犯は考えられるが立証が難しい、刑法にもないため罪の確定例がなく、抜け道の実態があり、是非置くべきだというふうに述べておられます。
 一方、土本参考人も設けるべきだと内容的には全面的に賛同されているわけですが、ただ、前の刑法改正のときの附帯決議、つまり刑法に第三者供賄を入れよという点がその後一向に検討されていないから、少なくとも刑法との同時立法が必要だという御趣旨だったというふうに私は理解をいたしました。
 しかし、先ほど紹介をした土本参考人の議員立法で自主的に自浄作用として出したことに意義があるという基本線から見れば、一般法である刑法とは多少の違いがあっても、これは政治公務員等に限って本法が若干先行しても、それは政治的、道義的に何ら問題はないのではないか、こういうふうに思います。むしろ、これをやらなければ、鈴木宗男氏ほかの例に見られるように、数多い政党支部や政治資金管理団体を献金先にしてやられている実態について国民の不信解消ということにならないんじゃないのか、こう言わざるを得ないと思います。
 与党側には厳しい問題に受け取られるのかもしれませんけれども、しかし、もう本当に決断すべき時期に来ているんではないだろうか、こう思います。是非再検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(白保台一君) お答えいたします。
 公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性と、これに対する国民の信頼という本法の保護法益を保護するためには、国民の政治不信を招くような行為、すなわち実質的に公職にある者等、本人があっせん行為の報酬たる財産上の利益を収受した場合のみ処罰されれば十分であると思います。
 すなわち、御指摘の政党支部や政治資金管理団体のように、外形的には本人以外の第三者があっせん行為との間に対価性があると認められる財産上の利益を受け取ったとされる場合でも、当該財産上の利益に対して本人が事実上の支配力、実質的処分権を有するものと認定できる場合には、本人が収受したものとして、本人に本法所定の罪が成立する可能性があり、第三者供与の処罰規定を設けなくても本法の保護法益は十分守られる、保護されると思います。
 逆に、本人が形式的にも実質的にも財産上の利益を収受していない場合までも処罰範囲にすることは、あっせんを受けた公務員に正当な職務行為をさせ、又は不当な職務行為をさせない場合にも犯罪が成立する本法の性質にかんがみ、不当に処罰範囲を拡大するものであり、妥当ではないと思います。
 以上の理由から、第三者供与処罰規定を設けないこととしたものであり、現在のところ委員の御指摘のような検討を行う考えはないと申し上げざるを得ないところであります。
○衆議院議員(町村信孝君) 少々補足をさせていただきます。政党支部、先ほどどなたかも北海道第十三選挙区支部というお触れがございましたので。
 これ、政党支部の実態はそれぞれまちまちでございまして、先ほども申し上げました大部分の政党支部というのは、それぞれの支部の中に資金をつかさどる会計委員会とか、あるいは政治活動の方針を決める組織委員会とか、いろいろな委員会で運営をされているというのが通例でございまして、だから、私は北海道第五選挙区の支部長ではありますけれども、だからといって北海道第五選挙区支部のお金の出入りについて私のもう一存で、それこそ私の判こ一つで全部お金を出したり入れたりできるかと。そんな仕組みにはなっておりませんし、また第三者の監査というものも入れるようにしておりますし、したがって、政党支部がすべて議員の思いどおりのままに運営できる存在では決してない。
 ただ、これは支部によってそれは違いがあるのもまた事実でございましょうから、そこは最終的には事実認定の問題として、先ほど白保委員が申し上げたような解釈になってくるんだと、こう思います。
○又市征治君 町村先生のようなそういうところもあれば、それこそ先ほど出ました鈴木さんのところの例もあると、こういうことですから、国民はちょっとなかなか納得いかないんじゃないかと思うんですよね。
 そこで次に、三つ目の、権限に基づく影響力の行使の問題についてですけれども、現行法の規定についても強い批判があって、これ以上存続すべきではないというのが参考人の一致した意見だったと思います。
 例えば、土本参考人は、削除すべきだと明言をされていまして、その理由は二つ挙げられています。一つは、刑法のとき職務上の行為との要件が付されたためにざる法と言われるようになった。二つ目に、この権限に基づく云々と似た、この地位を利用してという字句を入れる動きがあったが、結局は不適当だとして入れなかった。つまり、いったん死んでいたものなのに、現あっせん利得法を作るときにこれを入れたのはおかしい、こういうふうに述べておられるわけであります。
 全体として、土本参考人は、刑法との対比において、このあっせん利得法の立法の最初の趣旨は、議員たち自身の自発的イニシアチブによって広く浅く罰しようというものだった、ところが最初から様々な干渉があってざる法になったというふうに考察されています。土本参考人の言われた本法のそもそも基本的な趣旨、すなわち単独立法で、議員立法で自浄機能として作る、それには刑法本体とは一味違ってもいいんではないか、広く浅くやろうじゃないかという、こういう発想があったし、それが正しいんだと、こういう御趣旨だったというふうに言えます。
 これに対して、原点に返ってどうこたえていくべきか、今問われているんだろうと思うんですが、これについては是非簡潔に与野党それぞれからお答えをいただきたいと思います。
○衆議院議員(白保台一君) お尋ねの権限に基づく影響力の行使を要件とした理由については、本法制定時における質疑の中でもるる答弁をされております。
 すなわち、あっせんの方法を公職にある者が法令に基づいて有する権限に直接又は間接に由来する影響力を行使したときに限定しない場合には、公職にある者等の身分を有する者が行政府の公務員に対して行うあっせん行為のほとんどが対象となって処罰範囲が過度に広がる、そしてまた、公職にある者による正当な政治活動を萎縮させるおそれがあるからであります。
 したがって、委員御指摘のような広く浅くという観点を加味するといたしましても、権限に基づく影響力の行使という要件は正当な政治活動の確保の観点からは外せない要件であると考えております。
○委員以外の議員(大脇雅子君) 野党案は、権限に基づく影響力の行使の文言を削除すべきものとしておりますが、その理由は、これまで多くの方が述べられたように、権限とは法令に基づいて有する職務権限に限られて、政党幹部として有する権力は含まれないこと、しかも、単に頼むだけでは足りず、その影響力を積極的に利用しない限り犯罪が成立しないということから、あっせん利得防止の実効を期待し得ないということが議論されております。
 参考人土本武司先生の御意見は、二〇〇〇年八月の雑誌「捜査研究」の論文「あっせん利得罪立法に向けて」に関しても見解を述べておられます。御承知のとおり、単独立法の前史として昭和三十三年の刑法改正によるあっせん収賄罪がありまして、これが余りにも構成要件が厳格過ぎて立件が難しく、国政レベルでは、今般起訴された鈴木宗男衆議院議員も含めてこれまでたった三件しかありません。
 土本参考人の前述の論文を一部紹介させていただきますと、今回のあっせん利得罪、これは二〇〇〇年のことですが、あっせん利得罪の立法に向けての法案は、刑法のあっせん収賄罪より広く浅く処罰の網をかぶせようとするものであるが、国会議員が自らを縛ることになる法案を議員立法の形で立法化しようとする動き自体は、国会の自律的機能の高揚という表れとして評価に値すると。立法に当たっては、あっせん収賄罪では規制の網からこぼれ出してしまう部分をカバーできるようにするという点に意を用いなければならないとされております。そして、最後に、あっせん収賄罪立法の際にはこれを要件としないことにしたのであるが、それよりも広く浅く処罰の網をかぶせようとする本罪について、それをまた生き返らせるべきではないと述べておられます。
 ひとえに、実務上の経験を踏まえながら、国会議員の自己規律の強化の方向を御示唆しておられるということで、私どもはそこに立ち返って立法をすべきだと考えます。
○又市征治君 時間が参りましたので終わりますが、いずれにいたしましても、本当に国会議員の私設秘書だけを加えて本当に一体全体この政治腐敗、このあっせん利得、こういったことがなくなっていくのかどうか、改めてもう一度、こういうメンツにとらわれずにこの改正に向けて御尽力を賜りますように提案者側にお願いを申し上げて、私の今日の討論を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。