第155回臨時国会

2002年12月9日 決算委員会(1)


北朝鮮との国交正常化問題(答弁:小泉総理)
(1)扇情的・民族排外主義的な報道
(2)将来の歴史の審判に堪え得るよう冷静な交渉を
(3)両国間の自由往来拡大で国民レベルの和解を



○又市征治君
 社民党の又市です。
 私は、七月の十日の予算委員会で総理に日朝国交正常化の打開についてただしました。そのとき総理は、北朝鮮との国交正常化に真剣に取り組んでいくことが日本の平和と安定のためにも大変重要であるし、朝鮮半島のみならず、あの地域、世界平和にとっても大変重要なものであると、こういうふうに答えられて、自ら打開に動く決意もむしろ示唆されて、やがて九月十七日に訪朝されて平壌宣言の調印になったわけですね。
 総理の今回の決断は、宣言の中に我が国の長い朝鮮支配の歴史の反省も盛り込んだことを含めて正常化に向けて大きなものであって、私は深い敬意を表したいと、こう存じます。
 一方、その過程で拉致の事実も判明をしてまいりまして大変に騒ぎになっているわけですが、確かに拉致はもう許されざる国家的な犯罪でありますし、これは解明、解決をされていかなきゃならぬ、こう思います。
 また、核疑惑の問題も出てきたわけでございますが、疑惑でなくて、むしろ明確にそれを開発をやっているという趣旨のことが出てまいりました。大変にこの問題もしっかりと解決を図っていかなきゃならぬということだろうと思います。
 と同時に、この平壌宣言で始まったこの両国間の関係全般の改善というものは、総理自身がおっしゃったように、日本を始め北東アジア全域の平和と安定のためにも大変重要な課題でありますから、着実にこの交渉というものは進められていくべきだろうと思いますけれども、この点について、まず現在の総理の基本的な考え方について伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 この日朝間の不正常な関係を正常化していきたいということで日朝平壌宣言署名したわけでありますが、この問題は当初から、拉致の問題、それから核を含む安全保障上の問題、日朝間にかかわる過去の問題、現在の問題、将来の問題、包括的に取り上げて正常化したいというのが趣旨であります。
 その中で、拉致された方々が今日本に帰国された、そして帰国された方々の家族がいまだ北朝鮮に残っておられるという状況で、この拉致の問題一つ取っても解決していない。と同時に、アメリカと北朝鮮との交渉におきましても、核の疑惑に関してアメリカが不信感を持ち、なおかつ北朝鮮が核開発計画に対しまして国際社会に対する疑念を晴らしていないという状況にあることから、なかなか交渉が難航しているのは事実であります。
 しかし、私としては、こういう状況を打開すべく今後も粘り強く交渉していかなきゃならないと思っておりますので、この日朝間の問題というのは単なる日朝間だけの問題ではない、韓国やアメリカ、さらには中国、ロシアを含めまして、IAEA等はEU、国際社会とも連携、協力して、何とか北朝鮮が今の方針を変えて、国際社会の中で責任ある一員になることが北朝鮮にとっても最も利益になるんだという働き掛けを通じまして、今の日朝間の不正常な関係を正常化に持っていきたい、努力していかなきゃならないと思っております。
○又市征治君
 確かに、拉致やあるいは核の問題は現在の日本の国民にとって最大の関心事でありますけれども、だとすればなおのこと、今、総理がおっしゃったように、包括的な国交正常化というのは着実に進めなきゃならぬことだろうと思います。
 例えば、元外務官僚である岡本行夫さんは、我が党とは全く政治的には立場は違いますけれども、去る四日の朝日新聞で、要旨、このように述べられています。クアラルンプールに行った外務省の人が、「今回は机をたたいてどなればいいから楽だった」と言っていた、しかし、それで妥結の見通しは一層遠のく、そういう意味で奇策はないんだと、こんなふうなことを述べておられるわけですね。奇策はないという点は私も全く同感ですし、総理もおっしゃったんですが、この奇策という問題について、総理はどう受け止められますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 奇策というものがどういうものかは分かりませんが、私は、日朝平壌宣言に盛られた項目を誠実に日本と北朝鮮が守っていく、これしか日朝の国交正常化はないと思っています。
 だから、奇策というのがどういう意味を持つものか、今、私はとっさに浮かばないんですが、奇策というものはあり得ないんじゃないかと思っております。
○又市征治君
 そういう意味で、私もこの奇策はないという点は同感だと、こう申し上げたんで、総理とも確認をいただいたわけですけれども、今のマスコミを含めた一部の動きは、五人の家族や生活を無視した扇情的あるいは民族排外主義的な主張が非常に目立つような気がしてならないんです。中には、テレビで「日本は戦争したっていい」と言う知事までおいでになる、こういう格好にあるわけでありまして、拉致、人権問題はもちろん重要ですけれども、これを安易な国家至上主義に結び付けたり、あるいは両国民の対立をあおるのは極めて私は危険だろうと、こんなふうに思います。週刊誌には自衛隊のピョンヤン制圧計画までも躍っているようなこのような有様というのは、もう本当に憂うべき中身ではないかと、こう思うんです。
 これでは、せっかく総理のイニシアチブで踏み出した北東アジアの平和と友好への大きな一歩が台なしになってしまうんじゃないかと、こう思います。まして、在日の数十万人と言われる韓国人あるいは朝鮮人への嫌がらせや差別問題も広がっている。これはお聞きのとおりであります。
 総理はお好きかどうか分かりませんが、作家の高樹のぶ子さんは、せんだっての毎日新聞で、政府はもっと遠くのあるべき未来を見よと、こんな格好で切々と説いておられるわけですけれども、今申し上げたような奇策ではなくて、平壌宣言のすべての課題を並行して両者が誠実かつ冷静に交渉を進めていく、そして十年後、二十年後を見通しての歴史の審判に堪え得る選択をすべきなんだろうと思いますし、今ほど総理からもそういう御答弁をいただいたというふうに確認をいたします。
 そこでもう一つ、具体的にお伺いをしますけれども、当面、拉致被害者とその家族や北への帰国者の家族などについて、両国間の自由往来を双方が広げていくということが国民レベルの和解への契機になると思うんですけれども、この点については、総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 自由往来できればいいんですよ。できないから苦労しているんです。でき得るような状況に持っていくのが今回の交渉の中でも大事なんですが、これがなかなかうまくいかないと。家族の立場もあります。家族もそれぞれ事情が違います。日本にいながら言えないこともたくさんあると思います。そういう点もおもんぱかって政府は交渉しなきゃならない。家族それぞれのお気持ちというものを大事にしながら、一日も早くこの拉致問題が解決するように努力していく必要があると思います。
○又市征治君
 先日、北に在住する日本人配偶者の第四回の里帰り事業が延期をされてしまいました。日赤は、国内の反北朝鮮感情が強く実施が困難になった、こういうふうに説明をしている、こう報道されているわけですね。
 こうした状況はやっぱり一日も早く解消されるように、あるいは本当に、今、家族が拉致をされた方々が日本にいる、その子供たちが北朝鮮にいる、こういう格好で何か親子の腕の取り合いをしているような形で見えるような、このことを本当に早く解決するために全力を挙げてやはり取り組んでいただいて、本当にこの拉致問題、核問題含めて包括的に総理が結んでおいでになった平壌宣言、これが全体的に前進をするようにより一層の御努力を求めて、私の質問を終わりたいと思います。