第156回通常国会

2003年3月27日 総務委員会(2)


(1)戦争報道の自主性・中立性
(2)有事先取りのような総務省の文書


○又市征治君
 社民党の又市です。
 トリでございますので、一番最後、お疲れだろうと思いますが、明快でかつ簡潔な御答弁をお願いしたいと、こう思います。
 初めに、NHK予算については、電波使用料の値上げで十億五千万円の支出増になっているわけですが、これは八年続くわけですね。これは、政府のアナログ周波数の変更対策の見込み違いによるものですから、NHKとしてはやむを得ないんだろうと、こう思います。そんなことを含めて、今度提案されている予算案、事業計画等については承認することが適当なんだろうと、こういうふうに判断をしているところであります。

 そこで、会長にお伺いいたしますが、先般来出ておりますように、アメリカによるイラク攻撃が始まって一週間、非常に悲惨で壮絶な生々しい状況が次々と報道されております。NHKにおかれても、多数の特派員等、派遣をされているんだろうと思いますけれども、イラク側、そして米軍側、まあ米英軍側というふうに言った方がいいんでしょう、それぞれ何人ぐらいずつ派遣をされているのか。そして、派遣されているこの人々の安全対策、ここらがどうなっているのか。

 特に、よく言われることですけれども、正規社員はしっかり安全対策をやられているけれども、どうも契約による記者とかカメラマンについては、けがと弁当は自分持ちなんという、こういう言葉があるわけですけれども、そういう無権利状態などというのはないのかどうかを含めて、是非ここらのところをまず第一番目にお伺いしたいと思います。

○参考人(海老沢勝二君=NHK会長)
 私ども、今、イラク周辺に三十二名の職員を配置して、二十四時間体制で取材、報道に当たっております。そのほか、バグダッドの市内に、いわゆる私どもが日ごろから委託しておりますストリンガーといいますか、情報提供者が三人、カメラマンを含めております。この人たちの負担については、何か事故があった場合は補償するという一札が入っております。もう一人の方は、これはそういう地元で前からのストリンガーでありますからしておりませんが、この人たちがニュースでごらんのように町の状況なり、あるいはそういう市街の状況とか、あるいはバグダッド市民の今の生活ぶりとか、そういうものを今送ってきて我々はそれを使っているわけであります。
 そのほか、いろんな放送、先ほど言いましたように放送会社の映像なり取材原稿を使って多角的に報道しているというところであります。
 いずれにしても、職員の安全が大事でありますから、そういう面で、バグダッドにいました三人の職員も三月十五日にはアンマンに引き揚げさせて、そしてアンマンにはいろんな情報が入ってきますので、そこを中心に今報道しているというところであります。
 それから、アメリカ軍にクウェートからいわゆる補給部隊に記者一人と、それから女性のベトナム系のアメリカ人、女性のカメラマンがそれと同行しております。これについては、契約で何かあった場合の補償は一札、我々は入れてあります。
 それから、キティーホーク、航空母艦でありますが、これに記者、カメラマンはNHKの職員が当たっております。

○又市征治君
 戦争への同行取材というのは大変だろうと思います。取材相手の協力が欲しいんでしょうけれども、しかし同時に、報道の自主性、公正性を守るためには、軍の言いなりにならない、そうした毅然とした取材方針あるいは現場記者の態度というのが必要なんだろうと思います。
 特に、現代の戦争というのは半ば宣伝戦でもある、こう言われるわけで、現に今回、米軍は戦況を積極的に広報して戦争を有利に進める目的で従軍記者を募集をされて、今、会長からお話があったように、キティーホークだとかどこかに、NHKとしても従軍記者を派遣をされているという、こういう状況だと思うんですね。一方では、爆撃の被害など、都合の悪い場面は見せないといった報道管制もひくという、こういう状況もあるわけです。
 こうした中で、NHKとしてどういう取材方針で軍の現場とかかわっているのか、この点、まず第一点。
 また、日本では、イラク戦争を報道する際、国内政治や、国内政治の報道や論評を含めて、全体としてどういう方針でやるのか。戦争報道の自主性、中立公正性ということと、なおかつ、基本において言えば、国際紛争における武力の行使その他を否定をする平和憲法下の公共メディアとしての姿勢というのが問われるんだろうと思うんですね。
 会長のこの点についての御見解を承りたいと思います。

○参考人(海老沢勝二君)
 今、アメリカ軍に、外部の職員を含めて四人が同行しておりますけれども、聞くところによりますとアメリカの戦争の従軍記者といいますか、は五百名と聞いております。四百名がアメリカの方々、百名が日本、スペイン、イギリス等々の国から参加しているというふうに聞いております。
 私どもは、やはり戦争でありますから、非常に身の危険が伴うことは当然であります。そういう中で、やはり戦争の実態なり、またアメリカ軍がどういう体制で戦争をやっているのか、あるいは兵士たちの動向なり、いろいろそういうものを、やはり現実に目を背けないできちっとした視点でこれを伝えていこうと。それだけでは不十分でありますので、イラク側の状態も、イラクの国営放送の映像なりあるいはカタールの衛星放送の映像なり、そういうものを今四十数のそういう放送局なり通信会社から情報を得て、それを総合的に判断して多角的に報道しておるということであります。
 当然、我々は平和を望んでいるわけでありますし、一日も早くこの戦争が終わることを期待しておるわけであります。そういう中で、この戦争のこれからの世界的な影響は非常に大きいわけでありますし、そういうものをやはり我々はきちっと取材をし、国民に知らせる責務があるだろうと思っております。そして、やはりこの問題はこれからますます世界全体にわたっていろんな面での影響といいますかがあるわけでありますから、今後とも引き続ききちっとした姿勢でやっていきたいと思っております。

○又市征治君
 おっしゃるとおり、国内外の事実とか戦争への国民の生の声、意見を詳しく紹介することは、もちろん報道の第一の使命だろうと思います。
 そこで、ここに二通の文章があります。どちらもイラク攻撃の開始の翌日、総務省から出された、一通は放送事業者全体に対して、もう一通はNHKに対して出されたものですけれども、中身は、中東地域の情報をもっと伝えてくれとか現地の日本人に届くようにとか、国民のための要請も含まれております。しかし他方では、テロ・ゲリラ対策をしろとか妨害電波に対処しろとかといった、いわゆる有事体制を思わせるような項目も並んでないわけじゃない。一見、放送事業者への親切な助言のようでもありますけれども、うがった見方をしますと、次の段階は、段階では有事を理由にした報道管制につながりかねない、こういう懸念もないとは言えない。
 そこで、総務省にお伺いするんですが、この文章は閣議あるいは安全保障会議にかけられた結果出されたのかどうか、これが一つ。二つ目に、総務省として、開戦と同時にこういう文章を出すというのは、今も申し上げましたけれども、有事法制の先取りではないかという疑念が一方で言われていることなどについても検討されておるかどうか、この二点、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(片山虎之助君=総務大臣)
 これは今までも、例えば同時多発テロですね、一昨年の、あるいは去年のワールドカップなんかのときに、やっぱり通信というのは主要なインフラですから、国民にとって、その安全性、信頼性を確保するためには十分な対応を取ってくれというのは出しているんです。今回は、だから安全保障会議を受けて、受けてという面もありますし、受ける前から実は考えておったので、実はこういうことは当然の我々の役割だと、こう思っておるんですよ。
 それで、邦人保護のためにできるだけNHKに国際放送で情報を出してくれというのは、これは閣僚懇で要請が出たんです、閣僚懇で。そこでなるほどそうだと。例えば、なかなか帰りの飛行機が取れない、チャーター便、チャーター機を飛ばすと。そうしたら、どこにいつまでに行けば乗れるかということを知らないというんですね、中近東の。だから、それはNHKの国際放送が一番有効ですから、これは何人かからそういう要請がありましたから、それは至急NHKにお願いしますと、こういうことでございまして、有事法制なんかとの関連は全く考えておりませんが、いい有事法制ができたらその中の一部になるような話です。一つもおかしくない。

○又市征治君
 何か悪い有事法制もあるようでありますから、あの日、今、大臣から言われたように、海上保安庁は全国に警備の指令を、また経済産業省は全国の原発の警戒の指示を出された。警察や防衛庁はもちろんやってあったと思うんですね。総務省の電波に関するこの二つの文章も、そういう意味ではそういう一環として出されている、そういう御答弁でした。
 イラク攻撃を口実に、ただ日本国内的に非常時、非常時といったムードが作り出されるというのは、これはいかがかというこういう思い、やっぱりこういう懸念も国民の中にやっぱりあるわけです。そういう意味で、そんなことは総務大臣は、そういうことに悪乗りしたことは全くないんだと、こういうお話でありますけれども。

 そこで、先ほどは戦争報道の中立公正性の問題をお伺いしましたけれども、こうした政府の方針とのかかわりで、自主報道についても、NHKの言ってみれば公正中立性を守って真実の報道に努めていくというこういう立場で、NHKの姿勢というものについて海老沢会長に改めて決意を含めてお伺いしたいと思うんです。

○参考人(海老沢勝二君)
 御案内のように、我々、電波を間断なく、一秒たりとも中断しないで国民に向かって報道するのが我々の使命でありますから、そういう面で当然、テロ対策といいますか、妨害電波が、を出た場合はそれを排除するとか、あるいはいわゆる送信設備の中に侵入を防ぐとか、そういうのはもう当然であります。それは、我々は常日ごろからそれはきちっとやっておるわけでありますし、今後、今度も改めてこういう戦争が始まったわけでありますから一層気を付けるのは当然であるわけであります。
 それと同時に、国際放送、短波あるいは映像による国際放送をやっておりますので、当然邦人の保護というのは我々の使命でありますから、当然今のその安全情報といいますか、をいろんな形で発信し、できるだけ無事に脱出できるように、また無事に旅行ができるような情報を日夜努めるのが我々の使命だと思っております。
 いずれにしても、こういう緊迫した情勢の中で我々は手を抜くことなく、二十四時間体制で的確な、そして正確な、そして早い情報を出し続けていきたいと、今後ともその方針でやっていきたいと思っております。

○又市征治君
 関連しまして、会長には前回もお尋ねをしたんですが、個人情報保護について改めてお伺いしたいと思うんです。
 政府が提出をされた関連五法案は、大変さきの国会で国民の強い批判を浴びまして、与党の一部も含めて出し直しを要求されていたところ、今回修正を加えて再提出をされています。確かに、行政の保有する個人情報に関しての公務員そのものへの罰則規定の新設であるとか、あるいは報道に関する除外だとか、幾つかの改善点は見られます。
 会長は前回、前の法案についてですけれども、報道の自由の点から取材規制を法律で定めることについては反対だという趣旨のことを述べられました。現時点で新たな法案が出されているわけですが、どのようにお考えなのか、国民の知る権利の実現と公共放送の役割という点から、改めてお伺いしておきたいと思います。

○参考人(海老沢勝二君)
 今お話しありましたように、旧、古い法案では我々は取材活動が制限されかねないということで、これの削除というものを求めてきたわけでありますけれども、新しい法案ではこの基本原則の部分が削除されたということで、前進したというふうに受け止めております。
 ただ、私ども、この個人情報保護法案につきましては新聞協会等とも一緒になって行動をともにしておりますので、新聞協会等と更に意見のすり合わせをしながら、また国会の審議の状況を見ながら慎重に対応していきたいと思っております。

○又市征治君
 時間がなくなってしまったんですが、最後に海外放送について、これは御注文だけ申し上げておきたいと思います。
 昨年の十二月にオーストラリアでのNHKの放送が現地のケーブル会社の都合で契約打切りになって、現地の日本人等が突然見られなくなったということについて私取り上げました。その後このことについては、日本語放送のニーズの順位が現地では低いんで商業的になかなか難しいということで、この後、しかし現地で詰めていくというお話であったんですが、この点について、単にオーストラリアのみにとどまらず、やはりあった放送が打ち切られるということについては大変問題があるということで強く申し上げて、年末には何かひとつ御努力いただいたようで現地からもお礼のメールが入っておりましたけれども、是非この点については引き続き御努力いただくようにお願いを申し上げて、今日の質問は終わりたいと思います。ありがとうございました。