第156回通常国会

2003年4月1日 総務委員会


(1) 消防職員の団結権
(2)消防の中央集権・国家統制化
(3)安全よりコスト重視の規制緩和・改悪を止めよ


○又市征治君
 社民党の又市です。
 まず、法改正の問題に入る前に、消防職員の団結権について二点ばかりお伺いをしておきたいと思います。
 去る十一月に日本問題についてILO勧告が出されて、公務員の労働基本権については、加盟国は労働基本権について例外は認められないのであって日本政府は現在の方針を根本的に改めるべきだと、こういうふうに指摘をされたわけですね。私も十二月にジュネーブへ行ってまいりまして、この中身をつぶさに聞いてもまいりました。
 特に、この消防職員については基礎的な団結権すら認められていない。その主な日本政府の側の根拠は、九六年に消防職員委員会を置いたからいいんじゃないか、こういうことなんだろうと思うんですが、これでも勧告は、その六百三十三項で、消防職員委員会は問題がある、肝心なことは団結権がないことであり、政府は法制度を変更せよと、こう言っているわけですね。ILOはどうも誤解をしているんだというふうに日本の政府の側は言っているわけですが、全く誤解なんてしていないわけで、日本の実情をよく調べているということなんですが。
 ここのところを余りやっていると時間がなくなってしまいますから、ちょっと聞いておきたいのは、八十七号条約批准国、私、昨日インターネットで取り寄せてみましたが、百四十一か国、八十七号条約を批准している国あるわけですね。その中で消防職員の団結権認めていないというのは幾つぐらいあると思っておられるのか、総務省の方にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(森清君=総務省自治行政局公務員部長)
 一九九〇年にILO事務局が行った調査結果によりますと、ILO八十七号条約を批准している国では調査回答三十六か国中十五か国において消防職員に団結権を付与していないという報告がなされているところでございます。

○又市征治君
 そんなこと聞いているんじゃないんですよ。
 そんな九〇年の話、今何年ですか。私、昨日インターネットで取り寄せてやっている。これはそんなところに私は問題があると思う。この間、ILO行ったときも、OECD加盟、八十七号条約を批准している国の中では日本だけだと、認めていないのは、こう言っているわけですよ、ILOの側は。九〇年の、それも調査をして回答が返ってきていないものまで含めて、そんなお話されているようでは話になりませんね。
 その話始めると、もう時間掛かりますから、問題、ちょっと消防職員委員会の問題についてやっていきたいと思うんですが、さっきも申し上げたように、この消防職員委員会は決して団結権の代償とはなり得ていない、こう指摘をされているわけで、あくまでも団結権への一里塚であると。つまり、八十七号条約の原則に沿った基本権を今度の改正で認めるべし、それが十一月の勧告でも言っているわけですね。
 この消防職員委員会は形だけはすべての消防本部にそろった。しかし、委員長は任命制でありますし、委員も半数が任命、あと半数が職員の推薦。階級制の厳しい消防組織にあって、これで給与、勤務条件その他の、勤務時間その他の勤務条件を労使対等の立場で交渉するなんということはできるわけがない。実態も半年に一回程度だとか、形式的に行われているだけであったり、事前に意見の調整がされて儀式だけになっている。実態は極めてお寒い状況であるということは皆さん方も承知だろうと思うんです。
 こういう回数、開催回数なんというのは具体的なことを何か公表できますか。多分無理でしょう、何か統計だけ取って、公表されているのがちょっとそんなものだけですから。だから問題だと、こう言って、ILOも組合ぐらい結成することはちゃんと付与せよと、こう言っているわけですよ。
 そこで、私は、そのことをもう少し離れて、昨年の九月の三十日に消防職員を代表するという、その意見を代表する立場で、自治労から、現場で率直な意見が言えるようになっていない、労使合同で検証作業をしてほしい、こういう要望があって、片山大臣は検証していきたいと、こういうふうに答えられた、こういうふうに文書になっていることも見させていただきました。長官も当然このことについては御承知のことだろうと思います。
 そこで、法改正から七年以上たったわけですから、少なくとも本当に機能しているのか、大臣が答えられた検証という言葉に値する徹底した調査が必要ではないかと、こう思うんです。その点については、消防庁長官、約束していただけますか。

○政府参考人(石井隆一君=消防庁長官)
 今、委員御指摘のように、消防職員委員会、これ平成八年に施行されました消防法の改正で行っておりますけれども、御承知のように全国すべての消防本部に設置しておりますし、その運営状況につきましては消防庁として毎年度、全消防本部を対象に運営状況調査というものを行っているところでございます。
 余り答弁が長くなってもいけませんが、調査結果で承知しております範囲でかいつまんで申しますと、全国の消防本部で、年間に約五千件、六年間で約三万五千件に及ぶ勤務条件等についての意見が審議されておりまして、この制度によりまして勤務条件の改善等が進められてきたところでありまして、おおむね法の趣旨に沿った円滑な運用がなされているんじゃないかというふうに考えております。
 具体的なことを承知していないんじゃないかというお話でしたが、一々申し上げても恐縮ですけれども、勤務条件に関するものとしますと、救急隊員の感染防止に関する予防接種の実施ですとか、仮眠室の個室化ですとか、いろんなこと、それから被服、装備品に関すること、様々な事柄が取り上げられて、それ相応の対応がなされているというふうに考えておる次第でございます。

○又市征治君
 今、そういうお答えですが、例えば予防接種をしろとか、乾燥設備何とかしろとかというのは、こんなものはもう労働条件、勤務条件の以前の話なんですよね。これは当然のことなんで、そういう勤務条件の問題になっていない。それから、要望が出ても履行する義務がない。おたくのこの資料を見させていただいても、そういう意味では、実施することが適当であるけれども、審議された件数の中でも、実施することが適当であるというけれども、実施されたかどうかというのは全く分からない。
 こういうことなどあるんで、是非、先ほど申し上げた検証をしっかり是非、大臣もお約束いただいているわけですから、是非そういう意味で、検証作業をやっていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 そこで、法改正の問題について入りますが、基本的には私どもも、今度の法改正については賛成であります。
 ただ、幾つか懸念されたり疑念があったりする問題についてお伺いをしていきたいと思うんですが、一つは、ヘリコプターの運用の改善や大規模災害への対処などが盛り込まれておりまして、その限りでは、消防関係者及び国民の期待にこたえるものだというふうに思います。
 反面、この改正によって、消防の中央集権化が進むんではないかという懸念も実は述べられていることも事実でありまして、例えば、自主防災組織への教育訓練ですけれども、国が財政支援するのはともかくとして、この内容まで画一化する必要があるかどうかという問題だとか、これはもう、あると思うんです。
 思い起こしますと、関東大震災の折にいわゆる不逞鮮人狩りという、こういう言葉が使われて、非常に残虐なテロリズムが横行して痛ましい犠牲者を出したというのは歴史の教訓ですけれども、その先頭に立ったのは当時の警防団だったわけですね。今でいえば自主防災組織と、こうなってくるのかもしれませんが。
 もちろん、時代状況が違いますから、そんなことはないと思いますが、教育訓練の場を利用して、この消防職員や民間の自主防災組織に、国家統制的な思想を注入するようなことがあってはならない、こう思うんです。ましてや、先ほども出ましたけれども、有事法制とか国民保護法制という名で、国民の権利を規制しようというそういう動きがある。こういう状況の中に、消防の、自治体消防の原則をやはりしっかり守っていただく、このことが大事なんだろうと思います。先ほど来からそういう御答弁、大臣も消防庁長官もなさっていますから、それでよろしいと思いますが。

 さて、その意味で一番危惧するのは、緊急援助消防隊を法制化をして、消防庁長官及び知事に指示の権限を与える、このことですが、現行制度で、有珠山噴火など四件の出動の例があるそうでありますけれども、自治体相互の自主的な協力で特段問題はなかった、こういうふうに聞いてはいるわけですが、現在ある要綱、自治体の要請による出動ではなぜ駄目なのか。とりわけ、国の指揮権が必要だというのはどういう場合なのか、具体的な例を挙げてもう少し説明いただき、こういう疑念に答えていただきたいと、こう思います。

○政府参考人(石井隆一君)
 現在、全国で緊急消防援助隊、これ二千二十八部隊、約二万九千人の自治体消防の方が登録していただいておるわけでありますが、これは、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、平成七年のたしか六月末でしたか作ったものでございます。
 その後、今お話に出ましたように、芸予地震でありますとか、鳥取県西部でありますとか、有珠山ですとか、いろんな機会に出動していただいておりますけれども、これはもちろん、その都度、緊急消防援助隊、先ほど来出ていますように、指揮支援の話でありますとか消火、救助、いろんな点で活躍していただいておりまして、これまでの出動で特に何か非常に不都合な点があったということではないと思います。
 もちろん、実際に遠隔地で活動しますので、通信ですとか装備資機材やなんかはもう少し充実したいとか、他の機関との情報連絡等ももっと重視しなきゃいかぬとか、そういった課題はございますけれども、特段何か問題があったということではないと思っております。
 しかし、私どもが今、今回、それじゃ何で改正をお願いしているかといいますと、御承知のように、かねて発生が懸念されています東海地震、これは本当にいつ起きてもおかしくないと言われているわけでありますし、また東南海・南海地震、あるいは南関東直下型地震等の発生も懸念されるわけでございます。
 これらの地震につきましては、もちろん発生の仕方にもよるわけですけれども、専門家が、ほとんどの方がおっしゃっているのは、あの阪神・淡路大震災に比べてもその数倍、エネルギーでいきますと数倍どころか数十倍の被害、大きさだと。また被害も、御承知のように、つい最近も東海地震について被害想定、更に精密なものが出ましたけれども、一番悪いケースですと九千人から一万人ぐらいの方が、建物の倒壊でありますとか火災でありますとか津波とか、いろんな、地滑りとかということで残念ながら亡くなるというような推定も出ておるわけでございます。かつその範囲も、東海地震、従来は静岡県の中心の地震というイメージが強いわけですけれども、愛知県でありますとか三重県でありますとか山梨とか、いろんなところがそれの影響を大きく受けるということがもうはっきり出ておるわけでございます。
 そうしますと、ここ数年来、今お話に出ましたような有珠山ですとか鳥取県西部等では何とか対応してまいりましたけれども、やはりこれだけ大規模な、幾つもの県にまたがるような大規模な災害ということになりますと、やはり、例えば発災した直後にできるだけ早く、例えば静岡のこの都市には東京消防庁のこの部隊が行ってほしい、愛知県のこの都市には大阪市消防本部のこの部隊が行ってほしいといったふうに、やはりできるだけ迅速的確に対応していかなきゃいかぬ。そのためにやはり法律をしっかり、長官に指揮権も与えていただいて、同時に、それは個々の自治体の立場じゃなくて全国的な観点から応援に行くわけですから必要な経費も国がしっかり負担をする。あるいは、あらかじめ大臣に計画を作っていただいて、その計画にのったものについては十分な補助もしていくというような仕組みを是非とも作らせていただきたい、こういう考え方で改正をお願いしている次第でございます。よろしくお願いを申し上げます。

○又市征治君
 次に、性能規定の導入についてですが、これはどうも行政の市場原理導入の一環ではないかというふうに思われるわけですけれども、公共事業批判が高まる中で、小泉内閣が一連の都市再生プロジェクトを打ち出してまいりました。都市計画法であるとか建築基準法の緩和改悪も、今回のビル等の防火規制の緩和もそれではないのかの疑念が言われています。確かにビルの施工主や建設設備業者にとってコスト的に有利でしょうけれども、ただ、性能規定が実証されるのは究極的には火災が起こったとき、こういうことになるわけですね。
 消防の現場にとってはこのことはどういうこと、どうなるのか。全国消防長会が昨年十二月にこの問題で当面の意見と要望というものを出して、現行の仕様規定なら申請者及び審査機関、つまりビルの施工主側と市町村消防担当側ということになるんでしょうけれども、ともに適否の判断が比較的容易である、こう訴えているわけですが、ということは裏を返せば、現場職員は、多数の物件を短時間で見て回る中で、目に見えない性能規定で示されても本当にこれは合格なのか、安全なのかどうか判断できないということを表しているんではないかと思うんです。そして、この要望書では続けて、消防機関はこのビルなどの使用開始後においても、随時、防火対象物への立入りであるとか検査を行い、違反是正を行うことで防火安全性を確保してきた、現場における適否の判断を迅速に行わなきゃならぬと、こういうふうに言っているわけですね。
 このような現場の要望、性能規定に対する警告あるいは批判は今回の法改正にどのように取り入れられたのか、次長ですか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(東尾正君=消防庁次官)
 御指摘のとおり、仕様書規定はこれまで長い歴史を持っておりまして、その内容も紛れがなく適否の判定も明快かつ公平に行えることから、防火安全対象物の安全性確保には寄与してきたものと認識しております。このため、今回の法令改正におきましても、性能規定を導入するだけではなく、仕様書規定も従来どおり重要な消防設備等にかかわる技術上の基準として位置付けることとしておりまして、消防長会の意向に沿ったものとなっております。
 また、ただいま御指摘のように、性能規定の導入に当たりまして、その内容が難解であり消防本部が理解できないということになりますと、これは実施ができませんので、現行の基準と同等以上の安全面を確実に判断できるような平易で明快な基準を示す必要があると思います。このため、先ほど長官も申し上げましたが、ここ三年にわたりまして独立行政、独立行政法人消防研究所におきましてこの判断基準について研究を重ねてまいりまして、ようやくその客観的な判断基準が大体明らかになってまいりましたので、この際性能規定化の導入も図ろうというものでございます。
 さらに、これらの客観的な判断基準をクリアする、クリアする場合のほか、通常予想されないような特殊な建築物に伴う消防用設備もございますので、この場合でも、高度な識見を有する評価機関が公正かつ的確に防火安全性の評価を行うことができるような、いわゆる大臣認定の道を開くこととしておりますので、今後とも防火対象物の安全性の確保につきまして現在の水準を落とすことのないように努めてまいりたいと考えております。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 歌舞伎町火災から二年五か月が経過をいたしました。私も、当時二回質問させていただきましたが、あの直後の調査結果で九二%の小規模雑居ビルに違反があった、こういうふうに報告がされました。徐々に是正はされてきたというものの、この一月現在でまだ五六%が違反だと、こういう報告を聞いております。実際の改善は誠に遅々としたもの、大変消防庁として努力をされたんだろうと思うんですが、こういう状況にあります。
 あの後の法改正で立入権限の強化など幾らか前進面はもちろんあったわけですけれども、盛り場のテナントビルの実態に即して、そういう意味では本当に改正が的確であったかどうか、まだ不足していなかったか、こういう気持ちもしないわけではありません。こうした中での今回の規制緩和ということでありますので、そこらが懸念をされるということでもあります。これに対して、現場の消防職員からの批判的な要望書があるわけですから、この人命尊重とこの防火監視行政の強化の立場から、これらを真剣に受け止めて、やはり是非更にこの面の改善を図っていただきたい、このことを求めておきたいと思います。
 あわせて、私も当時、先ほどもちょっと出たんですが、消防力基準の充足率、消防職員の充足率、これはお粗末じゃないかということを申し上げて、その後、消防庁長官も大変御努力もいただいてやってはきていますけれども、当時を私思い返して、当面、緊急地域雇用創出事業の活用ということもあるじゃないか、これでやっぱり調査を強化をすることがあるんじゃないのかということで、主張もさせていただきました。そういう人々を増やすということも努力をいただいて、十四年度で全国で千七百人ということなわけですけれども、どうもやっぱりまだまだ少ない。元々のやっぱり消防職員の充足率が、先ほどもあったように七十何%です。この両面から、大変大事だと思うんですけれども、ここら辺のこと、今後の展開、どのようになさっていくのか、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(石井隆一君)
 まず、小規模雑居ビル等の違反是正の状況ですけれども、お話に出ましたように十三年十月末現在で違反率が九二%でございましたが、昨年の六月末で約六四%まで何とか減少しまして、今年一月末で約五六%まで減ったということでございます。
 一定の成果が上がっていると思いますけれども、御指摘のようにまだまだ十分とは言えない状況でございまして、昨年お願いいたしまして法改正をしていただきまして、消防吏員による現場での措置命令でございますとか、あるいは措置命令等を発した場合の防火対象物、これのそういう違反建物についてはその前に標識を立てるといったような公示制度も作っていただいたわけでございますけれども、こういったものも活用しまして、全国の消防機関と連携しながらしっかり違反是正措置をやっていきたいと思っております。
 五六%といいますと、どうもやっぱりまだ高いという印象が強いと思いますけれども、都市によっては随分もう少し、二、三〇%ぐらいまでに下がったようなところもございます。やはり団体によって少し、地域によっていろんな事情があると思いますけれども、まだ差がございますので、特にこういう対象物件の多い大都市を中心に、消防庁さんなり、あるいは違反是正の責任者の方に集まっていただいて具体的にどうするかという、かなり突っ込んだ相談もいたしております。しっかり取り組んでまいりたいと思っております。
 また、お話に出ました緊急地域雇用創出特別基金の活用、これは委員の御提言もありまして、私どもも是非これを活用したいと考えておるわけでありますが、昨年は、お話が出ましたように、十四年度、約千七百人、この消防防災支援要員の雇用が計画されておるわけですけれども、今、その実績がどうであったとか、あるいは十五年度はどうかというのは、これは所管が中心は厚生労働省になっているものですから、現在集計中で具体的な数字、今手元にございませんけれども、団体によっては、更に十四年度以上に十五年度でもっと活用しようという計画をしているところもありますし、残念ながらちょっと実績が出ないものですからちょっと控えめなところもあるようですけれども、せっかくの制度でありますので、できるだけ活用してもらって、そして、こういった人たちの後方支援によって立入検査にもっと精が出せるようにしっかり努力をしてまいりたいというふうに考えております。

○又市征治君
 終わります。