第156回通常国会

2003年5月26日 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会


(1)冷戦時代も不要だった戦事法制
(2)戦争準備は周辺国に緊張を与え、戦争の危険を招く
(3)憲法と平和外交、非核不戦国家宣言で平和を維持せよ



○又市征治君
 社民党の又市です。
 余り時間ございませんから端的に申し上げますが、端的に、また明快にお答えいただきたいと思います。
 戦後五十有余年、我が国は戦争を放棄した平和憲法の下で平和を維持してきたと。その間、朝鮮戦争であるとかあるいはベトナム侵略戦争というものに一部加担をするという出来事ありましたけれども、ともあれ、日本自身がそういう意味で国を挙げて戦争体制を取るということはしてこなかった。これは、改憲論者の皆さんがどうおっしゃろうと憲法体制の成果でありますし、国民の平和運動の成果であったと、こんなふうにも思います。こうして今まで、冷戦時代でさえも武力攻撃事態対処、つまり戦時法制は不要であったのが、なぜ今必要になったというのか、納得いく説明を聞いておりません。

 そこで、官房長官、憲法で戦争放棄を宣言をした平和国家日本、これを一方的に攻めようとすれば、アフガニスタンやあるいはイラクの例を見るまでもなく、その国自身が滅亡する覚悟が必要ではないのか。そのような愚かな国は、あるいはそういう仮想敵国というのはあるというふうに御認識されているのかどうか、これをまず第一点、お聞きします。

○国務大臣(福田康夫君=内閣官房長官)
 そもそも、この法制そのものは外国から我が国が武力攻撃を受けたときにと、どのようにして国及び国民の安全を守るかと、こういうために態勢整備をしようという、そういう趣旨でございますから、我が国から攻めるという趣旨ではございません。その点は委員もよく御案内のとおりで、御承知だと思うんですね。
 それで、憲法の精神にも反することはない、憲法において、この自衛、自衛まで放棄しているということではないんでありまして、我が国としては、やはり最低限度のこの態勢整備というように考えておるところでございます。
 独立国家として当然最も重要な責務というのは、その国家の緊急事態に対する対処であるというふうに思っております。そういう意味で、国家存立の基本として整備されなければいけない、そういうことでございます。
 アフガニスタン、イラクというふうにおっしゃいましたけれども、日本が、我が国がアフガニスタン、イラクを攻めたこともございません。そういうこともございませんし、正直申しまして、委員がそのように御質問される趣旨がよく分からないというところでございます。

○又市征治君
 官房長官、全然話が擦れ違ってお聞きになっているんで、そういう日本という国を攻めようとする、こういう国があったとすれば、アフガニスタンやイラクの例に見るように、その国自身がむしろ滅亡するくらいの覚悟が必要ではないのかと、そういう攻めようとする国があるとすれば。そういう国は、我が国はあるというふうに認識しているのかと聞いたんで、全然これは答えになっていない。
 そこで、今もちょっとお話にありましたが、国家なら本来防衛が必要だ、これが総理始めとして今もお話しした......(発言する者あり)ちょっと静かにして聞きなさいよ。そういう説明がなっていないわけで、国家は他国と戦争するもの、あるいは攻撃されるものという古い観念にやっぱり立っているんではないかと、こう思えてならないわけです。むしろ、戦争の備えをすれば相手もそれに対応してエスカレートする、戦争の危険を招くという、こういう例があるんだろうと思うんです。

 今、ミサイル防衛構想、技術的には確かにこれは防衛的なそういう意味では武器体系だと思うんですね。どうも今度の総理も訪米されて、ミサイル防衛の検討を急げということで合意されたそうですけれども、しかし、アメリカがこれを装備することに対して、既に皆さん御承知のとおり、中国やロシアなどすべての国が神経をとがらせている、これもまた事実なわけで、日本がアメリカの構想にそういう格好で加わっていくということにすれば、これまた同様に非常に神経をとがらせる。防衛的なはずが、それを装備するとなぜ相手がこういうふうに敵対的な行為をエスカレートすることになるか。そこのところはどうお考えになっていますか。これは防衛庁長官ですか、官房長官ですか。

○国務大臣(福田康夫君)
 今、武力攻撃を受けたときにどういう方法で国、国民の安全を守るかと、こういうふうに申し上げました。それ以上のことを考えているわけじゃありません。まずその前に、我が国が何かほかの国を攻めるんだとか攻められるんだとかいったような議論をされていらっしゃるようでございますが、その前に外交があるんですよ。そうでしょう。外交をもってそういう事態にならないような努力を全力を挙げてやらなきゃいかぬということがありますので、そこのところはちょっとお忘れにならぬようにしていただきたい。
 本当にこういう事態が起こったときにどうするかという、そういうことを想定して、その安全のために、国家の安全、国民の安全のために考えていることであるということを忘れないようにしていただきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君=防衛庁長官)
 ミサイルディフェンスについてお尋ねがございました。
 委員の御指摘ですが、ロシアはミサイルディフェンスについては非常に積極的でございます。これは、私、イワノフ大臣と今年の一月、私がモスクワに行きまして、また四月に先方が来ましてお話をしましたが、ミサイルディフェンスというのはアメリカとも検討していく、ヨーロッパとも検討していく、日本とも検討していく、そういうことで非常に積極的でございます。今、ミサイルディフェンスについて消極的若しくは絶対に反対というふうな意向を示しておりますのは、私の知り得る限り中華人民共和国だけというふうに承知をいたしております。
 つまり、私どもがミサイルディフェンスをやることによって、これは向こうが撃たなければ撃たないわけですから、迎撃ミサイルだけ撃ちましてもこれは何の意味もないわけでございまして、これを整えたならば軍拡が進むというのは一体どういう理屈でそうなるのか、私にはちょっと理解がしかねるところでございます。
 これは専守防衛的なものでございまして、向こうが撃たなければこちらは撃つことはございません。それだけでは何ら攻撃的なものではございません。私どもは、ミサイルディフェンスを備えたからそれが軍拡につながるのだということは、少なくとも論理的には成り立ち得ないものだというふうに私は考えておるところでございます。

○又市征治君
 どうも官房長官も話は擦れ違ったままで、ただ一致するのは、平和外交が非常に大事だというここのところは一致をいたしますが、私は仮想敵国の話を聞いているわけで、そういう国があるかと、こう一番目に聞いたんです。
 いずれにいたしましても、今、官房長官がお話になりましたように、憲法前文の精神に沿った平和外交こそが最優先、そういう意味では非常に大事だということは一致をするようですが、そこで百歩譲って、不審船とかミサイルだとか、あるいはテロを武力攻撃だとして、それへの対処を、言うならば、それらに具体的、個別的な対処が必要なんだろうと思いますね。
 これは防衛庁長官にお聞きをしますけれども、今回の法案はそのような対処なのか。それとも、いわゆる通常戦争、我が国への上陸侵攻への対処なのか。法案のどの部分でどのようにそれらへの具体的な対処が書かれているのか。ちょっとここはお示しいただきたい。

○国務大臣(石破茂君)
 それは、武力攻撃事態というものをどういう事態として評価するかということだと思っております。それは形態が、例えば着上陸侵攻なのか、ミサイル攻撃なのか、何なのか、それはもう形態形態によって違いまして、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に対してどのようにして対処方針を作るか、どのようにして自衛隊が展開をし、どのようにして関係機関と連携をしながら民間人の方に避難いただくかというようなことは、一応委員のお言葉をかりれば通常戦争というものを想定をしたものでございます。
 したがいまして、テロでありますとか工作船でありますとか、そういうようなものに対しましては、これを不正規戦というふうに言ってもよろしいのかもしれませんが、そういうものにつきましては第一義的に警察力をもって対処する、先ほど来御議論のあるとおりでございまして、そのことにつきましての法制は整っておるつもりでございますが、どのような運用にするのか、そういうことについてはきちんと詰めなさいということがこの法案において書かれているものと承知をいたしております。

○又市征治君
 そこで、もう一度官房長官にお願いしたいんですが、少し、イラクあるいはアフガンの問題についてのこれは確認ということになるかもしれませんが、法的な根拠の問題を少しお伺いしたいと思うんです。
 アフガンを理由に海外派兵したはずの自衛艦が、いつの間にかイラク攻撃に行く艦船に対して給油していたことが明らかになった。日本にとってアフガンでの戦争への支援とイラクへの武力攻撃への支援というのは全くこれは同じ法制上の根拠でやられているのかどうか。全く違うんだろうと思いますが、その点の御確認を一つお願いしたい。

 二つ目に、このアフガンにおける米軍の戦争目的は九・一一テロの首謀者であるビンラディンを捕らえるためだと、こういうふうにされておったわけですが、結果はうやむやだと。このため、当初掲げた戦争目的は終わりが定まらない。五月一日にラムズフェルドさんは、これは終わったというふうにおっしゃっているわけだけれども、いずれにしても、統治機構ができた今日、日本が特措法を延長するのは全く必要のない話。少なくとも、アメリカが五月一日でもう終わったと、こう言っているんですから、少なくとも期限内にこれは引き揚げるべきだと思いますが、そのお考えあるのかどうか。総理訪米で何かこの点についてアメリカとお話しされたのかどうか。これが二つ目。

 それから三つ目に、イラクへの武力攻撃に続いて、アメリカが今イラク占領という格好になった。これへの協力はアフガン以上に根拠がないんじゃないのか、こう思えてなりません。大量破壊兵器が存在しなかったというのはほぼ明らかになってきたわけですが、日本の戦争支持の目的は一体何だったのか。また、イラクへの復興支援をするとすれば、その法的な根拠は何か、今現在あるのかどうか。この点をお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君)
 たくさんありましたので、ちょっと全部覚え切っているかどうか分かりませんけれども、順次お答えします。
 まず、アフガニスタンにおける諸国の活動に対して我が海上自衛隊が補油をするという、そういう作業を行っているわけでございます。これはこのアフガニスタンの活動に対する補油と、こういうふうなことでございまして、イラクにおける活動のものではないということは、これは再三この委員会でも防衛庁長官から詳細説明をしておるところでございますので、その点御理解をいただきたいと思っております。
 それから、なぜこの戦いが続いておるのかと、もうその趣旨、その本旨は終わっているんじゃないかと、こういったような御質問があったと思いますけれども、これは、今、アルカイダがその元凶であるというように言われておりますけれども、このアルカイダがアフガニスタンから世界各地に拡散しておると、こういう状況があります。今後もテロを計画し実行する可能性があるという、依然として国際社会にとっては深刻な脅威になっておると。米軍及びほかの国々は共同してアフガニスタンにおいて現在もアルカイダ、またタリバンの残存勢力の追跡、掃討を実施していると、こういう状況でございます。そういうことで、米国も、この戦いは終わったということではない、五月一日にブッシュ大統領もテロとの戦いは終わっていないということを述べております。
 いかなる状況になれば、テロ対策特措法に言いますテロ攻撃によってもたらされている脅威が除去されたと判断されるかということにつきましては、諸般の情勢を、状況を総合的に考慮して決めるということになりますけれども、一概に申し上げることは今の段階では困難であります。ただ、ほかの国々がみんな共同してこの作戦に参加しているわけですよ。そういう中でもう終わったと日本が宣言することができるのかどうか。そういうことはできないと思います。そういうことも含めてこれから検討を、いろいろその時々の状況に応じて検討して加えていかなければいけないと、そういうふうに思っております。
 それから、このテロ特措法の期限が十一月一日で満二年になるわけでございますので、これはその状況を見てこの法律の取扱いをどうするかということを今後検討をしなければいけない、そのように考えております。

○又市征治君
 イラク復興支援。

○国務大臣(福田康夫君)
 それからもう一つ、イラクのことがございましたね。
 現在、イラクにおいて米軍等は、この地域に民生や秩序を回復、維持する義務を果たすために暫定的に統治を行っていると、こういうふうに承知をいたしております。
 二十二日に、今月二十二日に採択されました安保理決議一四八三においても、占領国として米英の特別の権限、責務及び義務を認識するという旨、述べておりますし、米英の当局に対し、領土の実効的な統治を通じてイラク人の福祉を増進するよう呼び掛けております。
 イラクの復興に関しましては、我が国は、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々の生活が正常化するようできる限りの措置を講じていく考えでございます。安保理決議一四八三は、加盟国に対してイラクの安定及び安全の状況への貢献や人道、復旧・復興支援を要請しておりまして、これに基づき我が国が行う協力が戦争協力の一環であるという、そういうことでは決してございません。

○又市征治君
 大変長い答弁だったものですから時間がなくなったんですが、最後に、さきの我が党の田議員が石破さんに質問したときに、この法制は戦争をするためのものではなくてそれを抑止するためのものだと、こういう趣旨のお話がございました。
 だとすると、先ほどの官房長官のお話にもありますけれども、一番大事なのは、やはり本当に、周辺に警戒心や不信や、こんなことを持たれないようにする、本当の意味で平和憲法に基づいて、さきの二〇〇〇年の、あの戦争決別宣言(※付録1)を発展させて、非核不戦国家宣言をやはり衆参両院で上げて、こういうものを少なくとも国連にやっぱり求めていく、こういうことを明確にしていく、こういうことなどが非常に大事なんだろうと思います。
 そんなことを是非検討いただくことを申し上げて、終わりたいと思います。




付録1:戦争決別宣言決議(平成12年5月30日衆議院決議)

 二十世紀を顧みると、人類は二度の大戦はじめ多くの戦争により言語に絶する惨禍を被り、冷戦終結後十年を経た今日にあっても続発する武力衝突や核、ミサイル等の大量破壊兵器の開発、拡散が憂慮されている。
 今、二十一世紀を迎えるに当たり、日本はじめ各国は、過去の戦争の傷跡や新たな武力の脅威に対し、人類の最大の願いである国際平和の実現への決意を新たにし、戦争の惨害から将来の世代を救わねばならない。
 「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」(※付録2)を踏まえ、唯一の被爆体験を持つわが国は、日本国憲法に掲げる恒久平和の理念の下、歴史の教訓に学び、国際平和への貢献に最大限努力するとともに、九州・沖縄サミットを契機に、日本はじめ各国が国家間の対立や紛争を平和的な手段によって解決し、戦争を絶対に引き起こさないよう誓い合うことについて、世界に向け強く訴えるものである。
 右決議する。


付録2:歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議(平成7年6月9日衆議院決議)

 本院は、戦後五十年にあたり、全世界の戦没者及び戦争等による犠牲者に対し、追悼の誠を捧げる。
 また、世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する。
 我々は、過去の戦争についての歴史観の相違を超え、歴史の教訓を謙虚に学び、平和な国際社会を築いていかなければならない。
 本院は、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念の下、世界の国々と手を携えて、人類共生の未来を切り開く決意をここに表明する。
右決議する。