第161回臨時国会

2004年11月9日 総務委員会



(1)郵政公社職員への厳しいノルマ、「自爆」という隠語
(2)郵政民営化で切り捨てられる過疎地域の生活手段
(3)経営の試算は有識者会議だけでなく国会に提出を


○又市征治君
 社民党の又市です。
 (郵政)公社発足から一年半、その成果や評価もないままに民営化、民営化で大合唱と、独り言というのはありますけれども、そういう中にあって、生田総裁を始め大変な御苦労をいただいていることについては敬意を表したいと思います。
 そこで、まあ民営化の大合唱の下で......(発言する者あり)何とか、何とか利益を上げようということに努力をされて、郵便事業も今お話がございましたが、二百六十三億円の黒字決算を出されたということはいいんですが、ただ、この利益を上げるということを一生懸命労使ともに大変な努力なさっているのは私も評価をするんですが、現場労働者に過酷なノルマを課すような格好でこの当座の利益を上げるということだけであるとすると、これは問題があるということをちょっと言っておかなきゃならぬと思うんです。
 総裁自身が郵政現場の隠語として「自爆」というお言葉を御承知なのかどうか、これは後でお答えいただきたいと思いますが、例えば現場段階でゆうパックの売上げノルマを厳しく課した結果、民間のいわゆる保険代理店と同じように親類縁者への押売を結果的に余儀なくされる、それが四季折々の商品売り込みとなると、親戚の側からもいろいろと付き合いづらくなると、こう言われている。
 今ならば、年賀はがきを一人当たり八千枚ぐらい何とか売ってこいよと、こういうノルマ制にされる結果、うちへ帰っても結局は時間外も売りに回らにゃいかぬ。そして、いや、それもさばき切れない、いろんなところからありますから、そこで結局、必要もないのに自分で買わざるを得ない。切手もそうだ。いや、切手、今度の切手は随分と良かったらしくてたくさん売れたなんていう、上の方は評価されておったら、実態はこんなことがあったなんというのは出てきたりしている。これを「自爆」と言っているらしいんですね、現場では。
 こういう実態を承知をなさっておるのかどうか。もし承知をされていられるとすると私は大変問題だと、こう言わざるを得ないので、その点について、総裁の現在までの御認識はいかがなものか、お聞きをしたいと思います。

○参考人(生田正治君=日本郵政公社総裁)
 今委員のおっしゃった前段のお考え、私、一〇〇%賛成、同じ考えを持っています。
 公社入ってきて幾つかびっくりしたことの一つに、ノルマ制がきつくて、それで「自爆」という言葉が内部的に使われていると。もちろんそのときに、もう事業庁でもそれやめようとしていたんですけれども、だけれども要因として残っているというのを知って、これはもうとんでもないことだとまず思いました。びっくりしました。
 だから、これは公社化スタートと同時に、ノルマなんという言葉はもう今全く死語になって、使っていません。だれも使っていません。アクションプランによるターゲットという、みんなでこのぐらい目標にしようという、これはやっぱり経営するのに数値目標が必要ですから、それはありますけれども、ノルマという言葉は今公社の中では死語です。それで、強制的な格好、あるいは上位者の指示によって必ずこれだけ達成せよというのは禁じています、これについて努力せよというのはやりますけれども。
 したがって、かなり具体的に、全軍に、それも半期に一遍ぐらい、自爆的行為は絶対に禁ずると、やっちゃいけない、なぜならば、それは個人一人一人に対する大変な重荷であるのみならず、やっぱり働く意欲をそぎますよね。ということは、営業を上げていこうという本来の目的に真っ向から反するんです。だから絶対やっちゃいけないと、という趣旨を徹底しておりまして、やるのは、実需をどうやって掘り起こして実需で営業を高めていくかと、ということで今のところ一致しております。
 ただし、人数多いですからね。一生懸命やっている勢いで、あるいはひょっとしたら、先生がどこでお聞きになったのか、それに近いような檄を飛ばしている例えば地方の管理者がいるのかなと思って今聞いたんですけれども、私はいないことを祈っているんですけれども、帰りましたら、もう一遍総点検をして、それは絶対にやめさせたいと、こう思っております。

○又市征治君
 本当に総裁、力強い指導指針、今表明をされたわけですから、私も立場上、全国あちこち飛び歩きまして、いろんなところで幾つか聞くわけ、どっかの特殊なところというわけでもないんです。したがって、今総裁、帰ってそんなことをしっかり調べて、そんなことないようにということで御指示いただくということでありますから、今おっしゃったことでもう尽きていると思いますね。
 この民営化の幻影におびえて現場段階でこういうことがやられているとすると、総裁自らおっしゃったように、何のことはない、長い目で見ると、士気も上がらない、本当の意味で個人も、公社まで「自爆」してしまう、こんなことになりかねない、こう思うわけでありますから、総裁がおっしゃっているように、三つの目標挙げて、働きがいのある職場を作ろうと、こうおっしゃっているのに、これじゃそんなことにならないわけですから、是非ここのところはよく調べていただいて、そのような事態があるとすれば徹底的に是正をしていただく、このことを強く求めておきたいと思います。

 さて、決算三事業のうち一番利益が低い郵便事業も辛うじて黒字で締められた。しかし、資本の債務超過が五千五百十八億円ある。その主な理由というのは、公社になって退職給付引当金一兆五千五百二十七億、これ新設したためですよね、これは。これは、公社化、企業会計方式の導入によって突然生じたものでありますから、解消するまでには時間が掛かるんだろうと思うんです。郵便部門が公的サービスの面から、さっきから麻生大臣がおっしゃっているように、隠れたこうした公的サービスの面から人手も大変掛かると、こういう面もあって、資産も少ないといって帳簿上はこうなるわけですけれども、三事業一体の公社として続けていく限りは、むしろ差し迫った問題でも何でもないということなんだろうと思うんです。
 一部には、どうも新聞なんかで伝えられていますが、急いで国から手当てをしろと、こういう声も出ておりますけれども、何も民営化を加速するために無理に帳尻を合わせる必要もないんじゃないかと私は思うんですが、この点、大臣、どういうふうにこの問題はお受け止めになっていますか。

○国務大臣(麻生太郎君=総務大臣)
 御存じのように、今まではこれは企業会計原則とはまた違いますので、いわゆる退職給与引当金などというものは帳簿上に計上しておく必要のなかった種類の勘定科目なんだと思います。それが今回、公社法ということになって、いわゆる比較貸借対照表、財産目録、資産、財産目録や損益計算書やら全部企業会計原則にのっとりますと、これはルールと、会計原則上、これだけのものを載せにゃいかぬということになった。それが、おまえ分社化したらどうなのかと、ちょっとその計算までは、ちょっととてもそこまでいっておらぬというのが現状なんだと思っておりますが、これ今の公社として、今は四事業じゃない、三事業ですけれども、三事業でやれば多分こういうことになるんであろうと思って、これは原則上、こういうことにならざるを得ぬだろうと思っております。
 結果として、五千億出ていりゃ五千五百億赤じゃないかといえば、これがなけりゃ黒じゃないかといえば、それはもうおっしゃるとおりその会計ルールの変更に伴って一兆の分が違った形になったというのは事実だと存じます。

○又市征治君
 是非、今おっしゃったように、引当金の問題は当面の経営とは切り離して健全な職場環境で公社の事業を進めていただくように求めておきたいと、こう思います。
 そこで、随分と問題になっておるこの民営化の問題ですが、大変多く、与党側からも厳しい指摘が今日出されておりますけれども、ただ郵便事業についてはこれまでの関係者の反対あるいは批判、様々な国民の声を聞いて、一定の歯止めは掛かって、ユニバーサルサービスは守ろうじゃないかということで歯止めは掛かったと思うんですね。
 今、もっと問題があるのは、この郵貯、保険事業を民営化、実質的には廃止、縮小ということになっていくんだろうと思うんですが、この国民生活への影響が非常に大きい。この点について少しお聞きをしたいと思いますが、これは内閣府の民営化準備室にお聞きをしますが、仮称窓口ネットワーク会社、これはどこまで郵貯あるいは保険事務の受託を義務付けられる考えであるのか、これを伺いたいんですが、どうも聞いていますと自由化論が強いようで、この自由化論でいきますと、第一に、窓口会社はどこの店、つまり局で貯金や保険を扱うか扱わないか自由に決めてよい、二つ目には、郵貯、簡保を受託するか否かは窓口会社側と郵貯、簡保側との契約次第である。つまり、この二つのハードルを設けるというふうにお聞きをするわけですが、となると過疎地域など、もうかりそうもない地域では、これは新会社の窓口はあっても郵貯、簡保については受託しないことも自由になるということになりますね。これはもう企業としてはやりたい放題ということになってしまうわけで、利用者側の契約の自由というのはどこにも保障されない、こんなことになるんじゃないか。
 今、既によく言われておりますけれども、全国で既に五百四十を超える過疎の町村では郵便局しか金融を扱うところがない、こういう実態が起こっておる。銀行はどんどんどんどん撤退していっている、こういう状況にあるわけですけれども、一体全体そういう中で、この準備室としてはどの程度こうした、減るというふうに予測をされているのか、扱いをしなくなる局の数、あるいはこの郵貯や簡保の口数なりというものはどの程度減っていくというふうに試算をされているのか、お出しをいただきたいと思います。

○政府参考人(篠田政利君=内閣官房内閣審議官)
 先生がただいま御指摘になりました郵便貯金会社と郵便保険会社と、さらに窓口ネットワーク会社との関係をどうしていくのかと、その決め方によりましては郵便局の数にも影響が出てくるのではないかという御指摘につきましては、大切な論点の一つだと思います。
 現在、民営化準備室におきましては、有識者会議の議論も踏まえまして、詳細な制度設計をしている段階にございます。そういう意味では、十分的確な御説明ができないかと思いますけれども、そもそも郵政民営化は全国津々浦々に置かれております郵便局ネットワークを生かしまして、より便利なサービスが提供されるようにしていこうというものでございます。
 このような観点から、九月十日に閣議決定されました基本方針におきましては、郵便貯金会社及び郵便保険会社には、ユニバーサルサービス義務を義務付けることは盛り込まれておりませんが、両事業の窓口業務は住民のアクセス確保が努力義務とされております窓口ネットワーク会社に委託することとされておりまして、また窓口の配置につきましては、過疎地の拠点維持にも配慮することとされております。このこうした基本方針に忠実に制度設計や法案化を行いまして、郵便局ネットワークを生かした、より便利なサービスが提供されるようにするとの民営化の趣旨を踏まえて検討を続けているところでございます。

○又市征治君
 結局、あれでしょう。配慮、つまり努力目標であって、義務付けるわけでも何でもないわけですよね。したがって、私が指摘したようなそうした、言ってみれば、本当に年金なり仕送りなりの公共料金などの決済機能、こういったものがそこに残るのかどうか、それはあくまでも委託契約が成立するかどうかだ、そういう格好になっていくわけで、ここはさっき申し上げたように、過疎地などのこうした住民にとってみては正に生活手段を奪うことになりかねない、こういう問題を持っているわけですね。
 このことについて、さっき有識者会議から今求めるとかそっちに出すというお話ですが、ここの委員会も重要なそのことを本当の意味で国策としていいかどうかということを論議する大変大事な委員会ですから、それ同時にやっぱり出してください。そのことはよろしいですね、出していただくことについては。

○政府参考人(篠田政利君)
 先ほど御説明申し上げましたように、現時点で様々な御議論を踏まえながら制度設計につきまして検討をしております段階でございます。そういう検討をしている中でも、将来のそれぞれの会社がどのような経営状況になるのかというシミュレーションをする必要があるのではないかというような御議論もございます。
 民営化後の経営に関する試算につきましては、担当大臣への助言機関であります有識者会議におきまして人、物、金の切り分け方や四つの事業会社が自立的経営できるのかなどの論点を議論するために作業を進めていただいておりまして、今後その有識者会議でも議論をしていくということにしております。試算はできる限り客観性の高いものにしていかなければならないと考えておりますが、御指摘の局数とか貯金残高の推移等につきまして経営者の自由な判断が尊重されることを基本として制度設計を進めてまいりたいと、こう思っております。

○又市征治君
 確認しておきたいのは、有識者会議にお出しになるというふうにおっしゃっているから、そのことを当然シミュレーションをなさって、減っていくという前提になっているわけですよね。そのことについてしっかりと有識者会議にも出す、この総務委員会にもお出しいただく、こういう努力を是非してもらいたいと思うんです。

 で、私は、申し上げておきたいのは、今日はまだ、金融庁や、お呼びしていたんですが、そこまで行かなくなって時間が足りなくなりましたからまた改めてやりたいと思いますが、本当にこの十年間でそれぞれ、銀行などというのはこの十年間で一万七千百五十九店舗全国であったものが一万四千六十店舗、つまり三千百店舗この十年間で過疎地中心に全部減ってきているわけですね。約二〇%近い減りようですよ。そういう格好でせっかく続けてきた郵政三事業を切り分けて、そのことによって今度は、事実上そこは過疎地だから、そこに、言ってみりゃ、もうけ中心主義に、民営化というのはそういうことなんですから、それでやっていけば、それは言ってみれば郵貯も簡保も取り扱えない、あるいは今申し上げたようなそういう点での年金のせっかくそこでもらうこと、あるいは仕送りやるという機能さえもその過疎地から奪われていく、こういう可能性を高く持っている。こういう問題を具体的なシミュレーションを出してもらってここで論議しなければ何にも議論ならないわけですよ。我々判断できないわけです、政策選択というのは。
 そういう点で是非ともこの点について有識者会議に出されると同時にここにも出していただくことを、これは委員長からも是非要請をいただきたいと思いますが、そのことをお願いして、今日の部は終わりたいと思います。