第162回通常国会

2005年8月1日 郵政民営化に関する特別委員会



(1)民営化で存続が危ぶまれる逓信病院
(2)銀行が撤退する中、国民のための金融ユニバーサルサービスの保障を
(3)過疎地・高齢者の金融機関がなくなる懸念は払拭されていない


○又市征治君
 社民党の又市です。
 くしくも大門さんと同じ金融排除の問題を、ダブってきたわけですが、みんなそのぐらいにこの問題、大変心配をしているということなんだろうと思います。
 その金融排除の問題に入る前に、ちょっと郵政公社の方にお聞きをしておきたいと思いますが、今、全国に逓信病院、札幌から鹿児島まで十四か所あって、年間百八十五万人の患者さんが利用されているそうですけれども、この病院の規模と利用者数を大きいところ、小さい規模のところを例に簡単に説明をいただきたいと思います。
 また、このうち郵政関係者以外の利用は何%程度あるのか、地域住民からはどのように評価をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○参考人(広瀬俊一郎君=日本郵政公社理事)
 逓信病院は職域病院として開設をしているところでございますが、昭和五十五年から順次一般開放いたしまして、地域に密着した医療を提供しているところでございます。
 逓信病院につきましては、先生お話のありましたように、平成十六年度におきましては延べ約百八十五万人の方が御利用いただいております。そのうち、約九割の百六十七万人が公社以外の一般の方の御利用でございまして、多くの地域の皆様からの御利用をいただいているところでございます。

○又市征治君
 利用者の九割が一般住民ですから。これは、今お話あったように、会計検査院だとか臨調の指摘に基づいて一九八〇年から一般開放してきた結果ですね、そして、料金体系は郵政職員も一般も同じなわけですね、当然ですけれども。
 なお、損益状況は、全体で昨年度六十億円の赤字だそうですけれども、その構成要素は一体何ですか。

○参考人(広瀬俊一郎君)
 逓信病院の経営状況につきましては、先生御指摘のとおり、平成十六年度におきましては収益が二百七十五億円、費用が三百三十五億円でございまして、御指摘のとおり約六十億円の損失となっております。

○又市征治君
 中身、原因。

○参考人(広瀬俊一郎君)
 原因は、やはり現在の病院に対する私どもの職員のニーズでございますとか、やっぱり病院がいろんな形で増えてきたとか、そんな中で病院の利用も若干減っております。
 一方で、経営改善を一生懸命やっておるということでございまして、結果的に約六十億円の損失となりました。

○又市征治君
 ちょっと違うんじゃないの。事前にこの中身をお聞きをしましたら、減価償却の分と退職手当引当金の分が大きいですというお話なんです。それは間違いありませんか。

○参考人(広瀬俊一郎君)
 企業会計原則を入れましたことによりまして、退職手当の分だとか、お話ありましたような減価償却だとか、その辺りが費用で利いております。
 以上でございます。

○又市征治君
 つまり、今あったように、企業会計ルールを当然取っているわけですから、赤字には違いありませんけれども、これは当面、実際に現金で出ていくという性格のものではありませんから、これまでどおり公社会計からの支援によって設備等の更新をしていけば成り立っていくと、こういう仕組みになっているわけですね。であればなおのこと、今後も逓信病院は地域住民のために存続してほしいと、こう思うわけでありますけれども、逆に民営化では、病院そのものがもうけを主眼とした事業ではないわけですから、収益性を理由に切り捨てられていくんではないか、こういう心配が地域住民にはされている向きがあるわけです。

 そこで、大臣、これ通告してありませんが、そんな心配要らないんだということになるのかどうか、この後、民営化していく場合に、この逓信病院は一体どの会社に引き継がれて、この地域貢献は存続をさせていく計画になっているのか、これは当然のことをお答えできるんだと思うんですが、よろしくお願いしたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 この郵政公社は、職域病院として逓信病院を保有、運営してきたわけでございますけれども、この病院は地域に密着した医療を提供していると。で、地域医療の確保のため、今後とも安定した病院経営が行われる必要があるということ、さらに逓信病院職員の雇用を確保する必要があるということ、そういうことも踏まえまして、これはNTT、JRの例も同様な例があったわけでございますけれども、それも踏まえて、今般の郵政民営化に当たっては、民営化会社が病院を継続保有することについて認めるということにしております。
 また、公社の人員や資産の具体的な切り分けについては、これは新経営陣が、経営委員会が承継計画において定めることとしております。これ、承継計画は主務大臣の認可でございますので、そういうことをこの逓信病院について承継計画に決まって定まりますけれども、しっかりと担保していきたいと思います。

○又市征治君
 会社ははっきりしたわけですね。持ち株会社に持たせるわけですか。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 先ほど言いましたメルパルクとか、そういう附帯施設等々が持ち株会社に暫定的に保有されるということも踏まえますと、持ち株会社に持っていただくということが一つの方法として考えられますが、これは詳細は承継計画においてきっちりと定めることにしております。

○又市征治君
 どうもまだ決まっていないようで、大変心配なわけですね。
 こうしたやっぱり民間会社になっていってしまいますと、さっき申し上げたように、それは収益が上がるというわけじゃなくて、人件費や退職手当や減価償却などを含めるととんとんぐらいになっていくということですから、大変に不安だ。ここのところは明確にされる必要が、こういう法案を出されるならばすべきだろうと、こう思います。その点だけ指摘しておきたいと思います。

 そこで次に、本論に入りますけれども、私は、この法案の最悪の問題点は、庶民のための金融ユニバーサルサービスの破壊だというふうに指摘をしてまいりました。
 低所得者や地方の住民が金融サービスから排除される、いわゆる金融サービスという社会的差別が一番深刻化しているのがイギリスだというふうに言われています。
 銀行・証券業界がわずか四つの銀行グループに集約化されて、住宅金融組合などの庶民金融機関もこれに吸収されて寡占化が完成をしたわけですね。その結果、利益、効率を最優先にして支店数が激減をして、全世帯の二〇%に当たる低所得者層は口座から、口座サービスから締め出される、社会的な給付金や年金を受け取れないという、こういう顧客の選別が加速されたというわけです。正に、当初言われたバラ色のビッグバン伝説というのは、大変な社会的損失を広げて失敗が確認されたわけですね。
 そこで、さっきありましたように、労働党のブレア政権はこれを修正をして金融排除に対して庶民を守る社会政策を取った。これが基礎的金融サービスについての政府と銀行との協定で一千三百万人の社会給付金や年金受給者の口座を確保するというものだったわけです。特徴的なのは、政府が大銀行にこのために年額三百六十億円を負担させたという、こういう点ですね。

 そこで、竹中大臣、日本でも正に過疎地などから銀行の支店が撤退をされてこの十年ぐらいで二割ぐらい減ってきた、こういうやっぱり危険性があるわけですね。
 こうした大きな社会的な亀裂と無駄が生じる前に、今せっかくある郵政公社、このことを防止するための装置として働いているわけですが、もし本当に民営化をすると言うんならば、それこそ正に政府が法律でそのことを保障する、このことが社会として一番効率的じゃないかと、こう思うんですが、それもまるで銀行や生保に任せっ放し、こういうことになっているんじゃありませんか。その点、もう一度お答えください。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 銀行、生保が長期的に金融環境の変化に対応してしっかりと存立していただくためは、やはり公社の下では制約があって、資産運用の自由を持っていただくためにも民営化というのは私は避けて通れないというふうに思います。その場合、民営化をするに当たっては、これは当然、民間金融機関と同じ競争条件になっていただくということになりますので、この会社にだけ業務委託を何か義務付けを行うということは、これは他の金融機関にない義務を特別に課すということになり、これは適切ではないというふうに思うわけでございます。
 しかし、これは又市議員が何回も何回も御指摘してくださっているように、この組織が金融面で果たしている役割というのは実態的には大変大きいということを私たちも重く受け止めているわけでございます。そこで、そういう形での、法律での義務付けということではないけれども、実態的にそれを金融行政の中で、通常の金融行政の中でその実効性を担保する仕組みというのを我々なりに考えて、これをつくっているわけでございます。
 その一つが、やはりみなし免許を出すに当たっての長期安定的な代理店契約、保険募集委託契約を条件付け、それによって移行期間がしっかりとカバーされて、そのような機能が続いていくということに相なります。また、必要な場合、それでもネットワーク価値が低下する場合は基金も使えるというような仕組みもつくりました。さらには、これは経営判断によって一体的経営が必要だという場合は、それも通常の法律の枠組みの中で可能だというふうにいたしました。そういう形で、現実にしっかりと金融が提供されていくという枠組みをつくっているつもりでございます。
 海外の例等もいろいろ挙げていただいておりますけれども、日本の場合はドイツ等々と違って、やはりしっかりと持ち株会社、ヘッドクオーターとしての持ち株会社をつくってしっかりと受委託関係を料金設定も手数料設定も含めてやってもらおうではないかと。このような制度設計上の工夫を行っているつもりでございますので、経営の自由度拡大によって国民の利便性を最大限高める、しかし同時に重要な社会的機能を果たしていく、そのような仕組みをつくったつもりでございます。

○又市征治君
 先ほど竹中大臣も、金融排除の問題は注意して見ていかなきゃいけないと、こう答弁されました。私は、取り違えされたら困るんで、私の言い方が悪かったのかもしれませんが、私は、だから郵政公社の金融ユニバーサルサービスを政府がしっかりと保障していくべきではないかと、こう申し上げたので、民営化にして銀行に何か代理店契約結べばできるというそんな話じゃない、このことを申し上げたつもりですが、どうも竹中さん、大変ドライなリストラ論者だというふうに私は思うんですけれども、民営化後のことになると途端に根拠のない超楽観主義、こんなふうに私は聞こえてしようがありません。
 既存の銀行と猛烈な競争になったら、利益の上がらない庶民の小口口座などは当然切り捨てられる。そんなこと起こってくるのは当たり前、それが諸外国でどんどん起こっている。そのことの心配というのはあるということをあなたもお認めになった。そうすると、このイコールフッティングとユニバーサルサービスというのは私は両立できない、こう思います。
 あなたや、あるいは銀行側、そしてまたアメリカの投資業界が求めるイコールフッティングというのは、結局は事業者間の形式的な平等だけであって、元々不平等な地位にある庶民の小口の金融ユニバーサルサービスの権利を保障するという、それを守るという、こうした一番大事な問題が抜け落ちているんではないのか、こう私は指摘せざるを得ません。

 そこで、少し具体論でスウェーデンの例、もう一つ申し上げたいと思うんですが、当然勉強なさっていると思いますけれども、スウェーデンでは、郵便事業は小包を含めて国営とユニバーサルサービスが守られていることは承知のとおりです。それだけでなくて、庶民の資金の出納については、基礎的キャッシャーサービスという名で、国庫補助と、そして郵便配達人の行うべき業務としての義務付けによって、金融についてもユニバーサルサービスが確保されているわけですね。
 日本と決定的に違う重要な点というのは、それに際して徹底的な社会調査を行ったということです。どのような地域でやるとか、また地域だけではなくて社会階層、例えば高齢者、若者、難民、小規模企業であるとかNPOであるとか、こういった階層がその地域にどれだけいるのかということを算出を調査をする。そして、彼らにどうやって最後までユニバーサルなキャッシャーサービスを保障するかという手段が細かく法制化されているわけですね、正に北欧型社会民主主義の面目躍如だと思いますけれども。
 今回の政府の法案というのは、金融ユニバーサルサービスに関しては全く駄目だというふうに私は思いますが、百歩譲って、こうした社会政策的な配慮というのはどんなふうにされているんですか。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 今スウェーデンの例を御紹介くださいました。スウェーデンの例、我々も制度の勉強はしておりますが、詳細、細部に至るまで存じているわけではございません。
 しかし、それぞれこういう制度をつくるに当たって、いろいろやはり社会的な要請というのがあるのだと思います。日本でそういう悉皆的な調査を行うべきではないかという趣旨のお尋ねであったかというふうに思いますけれども、日本において今いわゆる金融排除、まあ金融排除にもいろいろ種類があるんだそうでありますが、具体的に、口座が持てなくて非常に社会的な生活に問題を生じている方が多数おられるというような認識は、私はそういう状況では、現状ではないというふうに思っております。
 そういった問題が生じないようにいろいろな目を光らせる、これは金融行政の中で当然行っていくわけでございましょうけれども、そういうことは必要だということは私も思いますし、そういうような社会的な目配りは今後とも様々な分野で続けていく必要はあると思っておりますけれども、少なくとも日本において、そのような金融排除が非常に高い優先順位を持って解決されるべき問題として今浮上しているという、そのようには私は認識をしておりません。

○又市征治君
 今起こっているということを申し上げているんではなくて、先ほども話が出ましたように、そういう危険性がある。例えば、現実に政府の統計によりましても、二二%から二三%の人が預貯金ゼロだと、こう言われている。こういう人たち、現実に口座持てなくなってしまうじゃないですか。こういう問題などということは現に起こっている問題として存在をするし、これから更にそういう金融サービスというのが全く銀行間の競争の中で起こり得る、そして過疎地、もうからない地域から撤退をする。こういう中で起こるということを申し上げているわけで、それに対して、やはり社会的な安全弁として、政府は目配り、気配りすべきではないかということを申し上げているわけで、そういう意味で、やはりきちっとこうした社会政策的な配慮というものを、あるいはそういう調査というものはやられる必要があるんではないかということを申し上げているわけです。

 そこで、時間がありませんから次に進みますけれども、この委員会で多くの委員からの質疑、さらにはとりわけ参考人陳述であるとか地方公聴会で明らかになったのは、地方の住民の生活のための様々な拠点施設が、町村役場あるいは銀行の支店、農協の金融窓口、警察駐在所に至るまでが町村合併や過疎化を理由として次々に撤退をしている現状、こういうことがあるわけです。
 その中にあって、郵便局は本業以外でも、これら失われた公的サービスの代行機関として地域住民及び首長や議会の圧倒的な信頼や信託を得ているというのが多く出されておったと思うんですね。
 ましてや、本業である郵貯、簡保の果たしてきた金融窓口のユニバーサル性に対する地域住民の期待というのは、これだけ異口同音に聞かされれば政府も痛いほどよく分かるはずだろうと思うんです。
 そこで、質問に入りますけれども、この郵貯、簡保のユニバーサルサービス提供は、たとえ民営化後でも国民に対する半永久的な義務としなきゃならぬと、やっぱり私は、こう思います。したがって、私はもとよりこの民営化法案には反対でありますけれども、百歩譲って、新銀行、新保険会社とするにしても、郵貯法や簡保法との連続性を考慮をして、単なる一銀行、一保険会社ではなくて、日常のお金の引き出しあるいは預け入れなど、金融のユニバーサルサービスというナショナルミニマムを担う機関として必ず窓口を確保するように郵便局会社と協議する義務というものを法律の明文で定めるべきではないか、このことをさっきからも申し上げているわけです。
 受ける郵便局会社の側も、この郵貯、簡保の受託取扱いをやっぱり必須業務としていく、こういうことが必要ではないか。
 さらに、この協議が調わない場合は持ち株会社なり何らかの公的機関が仲裁をするという、こういう条項をむしろ明確にすべきではないかと。これがもうできませんと言うならば、やっぱりもう一遍郵政公社にそのまましっかり戻すべきだ、郵政公社のままでいくべきだと。このことをどういうふうにお考えになるのか、お聞かせいただきたい。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 繰り返しになりますが、我々は大きな判断として民営化が必要であるというふうに考えております。民営化をするに当たっては経営の自由度を持っていただく。したがって、民営化された機関に特別の義務を課するということを避けながら、しかし実効性のある金融サービスの継続、それをやるような仕組みをつくったつもりでございます。
 今、又市委員が御指摘されたように、義務付ける、そして場合によってはしっかりと協議をする、それは正に移行期間においてはそのような仕組みがしっかりとワークをいたします。そして、移行期間において長期契約が存在して、かつ持ち株会社がきちっとした仲裁を行えて、また総務大臣、内閣総理大臣が監督を行うような仕組みを持っております。私は、そういう中でお互いそれぞれメリットがしっかりと享受し合えるような契約をしていただいて、そしてそれが結果的に継続していくような仕組みに持っていきたいというふうに思っております。
 その意味では、この移行期間というのは、正に今私が申し上げたような市場経済型のそのそれぞれの会社の良い関係にソフトランディングするための期間でもございますので、この移行期間をしっかりと運営をして、そして結果的に良いサービスが国民に提供され続けるように是非制度を運営したいと思います。

○又市征治君
 時間がなくなりましたので終わりますが、今日も聞きましても、こうした本当に過疎地や、あるいは場合によればお年寄りなどの金融機関としてのこの郵便局、本当になくなっていかないかということについて全く懸念は払拭されない。
 むしろ、今の郵政公社を、何か資産運用の自由度がないから郵政公社の自由度をもっと高める、その改革こそが必要だということを申し上げて、終わりたいと思います。