第163回特別国会

2005年10月20日 総務委員会



(1)戦時中、国策の道具とされてきたNHK
(2)戦後60年、求められてきた真実の報道
(3)戦争責任を果たす意味でも歴史の真実について報道を
(4)受信料支払い拒否による年間約五百億円もの減収
(5)法的な徴収手段や職員削減よりも国民の信頼回復を
(6)支出中最大の地上デジタル事業の一部を繰り延べてはどうか


○又市征治君
 社民党の又市です。
 私は、今年の三月の二〇〇五年度NHK予算の審議に当たりまして、NHKは今放送開始八十年、こういうふうに誇らしげにおっしゃるけれども、開設以来の危機ではないか、こんなふうに申し上げました。なぜなら、八十年のうち初めの二十年というのは、正に大日本帝国憲法の下でNHKはそういう意味では国策の道具とされてきたわけでありまして、戦時中は、朝晩、軍の発表を大本営発表として垂れ流す、国民を戦争に動員する役割を果たさせられてきた。また、海外の植民地や占領地においても、ほぼ唯一のメディアとしてNHKのラジオ放送は大きな支配力を振るった、こういう歴史を持っているわけです。
 ですから、一口に八十年ではなくて、戦後六十年、国民主権と戦争放棄を定めた現憲法の下でNHKも再出発をしたはずでありまして、そういう点では、戦後、これからは真実を伝えてほしいという国民の期待にどうこたえてきたかということが常に問われてきたんだと、こう思うんですね。

 それが、芸能番組のプロデューサーの汚職事件であるとか、あるいは戦争を反省する番組に対する与党政治家の介入騒動と番組改変問題がきっかけになってNHKの信頼が揺らいで、全国民がその民主的な改革を今注視している、こういう状況にあるんだと思うんですね。
 受信料拒否の数字はその端的な表れであって、営業活動だけで取り戻せるものではない。やはり、先ほど来から同僚議員がおっしゃっているように、大事なことは国民のやっぱり信頼を回復する、それに向けた真剣さであり対策だと、こう思うんですね。
 そういう観点から、まず始めに、この公共放送としての、戦争責任の反省に立って、憲法に基づいて、過去の戦争及び植民地支配など、平和の問題について真実をもっと報道し、そして歴史認識に資するべきだ、こんなふうに思います。この点で、NHKは大変たくさんのライブラリーを保有していますし、また海外取材などについても豊富なネットワークや人材やあるいは資源を持っているわけですから、これを有効に使って映像資料として提供すべきだろう、こう思います。
 三月に、私、この点についても質問したときに、二〇〇四年度は朝鮮問題について言うならば四件放送したというお答えでありました。今後もこうした言ってみれば過去の戦争の問題などにまつわる平和の問題、こういったことについて積極的に放送を続けていくべきだろうと、こう思うんですが、そのことについて、具体的な資料説明要りません、そういう考え方、今後も続けてやっていくというその考え方について、まず第一点お伺いをしたい。

 二つ目は、政治家、とりわけ権力者の圧力に対して放送番組前にその意向を聞いて編集をやり直すような正に報道機関としての自殺行為はあってはならないし、不偏不党、そういう意味で自主自律、このことに徹していくんだ、このことの決意も改めて会長からお伺いしておきたいと思います。

○参考人(橋本元一君=日本放送協会会長)
 やはりNHKの存在するその基は視聴者の皆さん方だと、視聴者・国民の皆さんだという考え方に立ちまして、新しい新生プランでもそこを第一に述べさせてもらっております。
 具体的に番組を大事につくっていくということでいえば、やはりその一つには平和を大事にするというふうなことを我々求め、そういうものを具体的な番組に築き上げております。これからも継続してまいります。特に、今年の夏の番組等でも、そういうところにつきましては大変留意して放送してまいったところでございます。
 それから二点目の不偏不党を堅持せよという御指示でございます。この点につきましても、何人からも左右されないという姿勢、これは報道機関として正に基本的な生命線でございます、しっかりと守っていきたいと思います。

○又市征治君
 政治家の介入あった、なかった、という問題については、十二月五日に裁判が予定をされて、制作現場の長井プロデューサーと当時の松尾元放送局長の双方から証言がなされるようでありますから、これも注視しつつ、今後のNHKの対応というものを国民がやっぱりよく注視している、このことを是非御自覚いただいて、更にしっかり取り組んでいただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。
 次に、受信料の不払の問題についてでありますが、三月に私質問した際に、七十万件という見通しが答弁をされました。私は、それには口座振替の停止分が入っていないんじゃないのか、実は百万件を超えるんではないのか、こういうふうに指摘をいたしました。
 しかし、その後の経過はもっと深刻だったわけでありまして、先ほど支払拒否がピークを過ぎたというふうに述べられておりますけれども、正確には支払拒否の増加テンポが下がってきたということですね、これは。そういうことであって、数は二〇〇五年度一期から三期まで、つまり半年ですね、半年で拒否が五十万件余り増えているわけ。二〇〇四年、二〇〇五年度累計では口座振替ベースでマイナス二百三十六万件、こういうことになりますね。これを金額ベースで見ますと、九月までの半年で予算に対してマイナス二百三十四億円、一年分でいうならばマイナス約五百億円という見込みになるわけですね。三月の段階では、お聞きをいたしましたら、百十億円の減収見込みだと、こうおっしゃっておった。
 これ、会長、率直に申し上げて、実に甘い見通しだったんではないですか。この点についてどういうふうに御認識なさっていますか。

○参考人(橋本元一君)
 実際に予算をつくる段階の、我々、その後に発生する見込み、この乖離が大きかったという点については大変重く受け止めております。したがって、今この点についていかに回復するかというところに努力を傾注しているところでございます。

○又市征治君
 そこで、私、三月の段階で、そのときには百十億円だと、こうおっしゃった。それでも巨額の金ですよね。したがって、これをカバーするには、支出面で今や最大の経費になっている地上デジタル予算の執行について、これは少し繰延べをするなどという努力を払うべきではないのか、こう三月の段階で申し上げました。今ほど申し上げたように、現実の減収予測は年度当初の約五倍にも上っている、こういう現状にあるわけですね。
 この地上デジタル予算を見てみますと三百四十四億五千万円で、建設予算七百八十九億円の四四%を占めていますね。この減収状況の中で、地上デジタルをあくまで進めるために、これを最優先をしていくとすれば、結局、老朽化をした地方の放送局の改築であるとか設備更新などというものを、犠牲になったり、あるいはこの新生プランの中にもちょっと載っておりますけれども、この受信料の法的手段に何とか頼ろうという格好になってみたり、機械的に職員の一〇%削減といったこういう縮小主義が出てくるんではないか、大変懸念をするわけです。
 それこそ放送の世界において、何でも下請をして、丸投げで放映するといった無責任な制作体制がやらせ番組であるとか人権侵害の番組を生んでいる、こういうのは残念ながら民放で幾つか見聞きするわけであります。
 改めて、この削減の優先順位について、当然、もちろん総務省との詰めもやった上で地上デジタル事業というのは考えられてきていることは承知していますけれども、改めてこの点について、少しでも繰延べをしていくことなどを含めて、こうした大幅な減収という状況の中でこういうことについて検討をされたことがあるのかどうか、この点について改めてお聞きをいたします。

○参考人(橋本元一君)
 地上デジタルに向けての御指摘でございますが、やはりもう日本のみならず世界全体として新しい通信と放送の融合、新しい先端的な技術をいかに国民生活の中に還元するかという全体的な傾向の中で、やはりこれは我々、国策と一緒になってやはりこの放送メディアというものも新しい世界に脱皮しなければいけないと考えております。そうすることによって、このメリットを、新しい先端技術のメリットというものを国民の方々に享受していただくということは大変必要かと思います。
 そういう中で、やはり建設費、これは事業費と建設費と実際の費目というものは処理の仕方違いますけれども、建設費で相当の部分、地上デジタルに経費を掛けるということは、正に新しい時代に向けての選択と集中ということでやっております。従来の設備については、できるだけ延命、補修を加えていくというふうなことで対処してまいりたいと思います。

○又市征治君
 私は、地上デジタル必要ないなんということを言っているつもりは全くありません。問題は、さあこの中で、支出面で今や最大の経費になっているわけでしょう、そうすると、ここのところを少し繰延べするなど何らかの方策が、総務省などとも相談をし、何とかこれを、もちろんほかの民放の皆さんもおいでになりますよね、そんなことに対しての御努力をなさってきたのかどうか、このことについてどのようにお考えなのかということを聞いているわけですよ。

○参考人(橋本元一君)
 やはりこの地上テレビジョン放送のデジタル化ということはNHKだけで進められることではございませんので、民放さんの方ともやはり共同建設ほかいろいろ具体的な展開に、普及に向けての行動計画と、これはもうオールジャパンとしての行動計画の中で進めているものでございます。

○又市征治君
 これは見解を異にしますが、いずれにしましても、そのことが先ほど申し上げたような、機械的に、それを優先しなきゃいけない一番大きな支出だと、だから職員は切りましょう、あるいは事業はもっと丸投げをしましょうみたいな格好になったり、設備などのそうした更新を遅らすなどということにつながりはしないか、ここのところを大変心配しているわけであって、その点は一体全体どのようにカバーをなさっていくおつもりですか。

○参考人(衣奈丈二君=日本放送協会理事
 お答えいたします。
 大幅な減収が見込まれている中で極力減収を食い止め、増収を図るということと併せて、様々な経費の削減に手を掛けて放送の質を守りながら、同時に与えられた、お約束をいたしました事業計画を確実に実行すると。最大限の努力の中で責任を果たしていきたいということを続けてまいりたいと思っております。

○又市征治君
 全然答えになっていませんね。そういう姿勢がやっぱり問題だと思うので、私はそれ以上言いませんけれども、そんなことだったら、誰だって、子供だって言えるんですよ。そんな話を聞いているんじゃありません。
 本当にやはり大変な、先ほどもお話がありましたけれども、年収の八%近い減収が生まれておる、そういう状況の中で、逆に良質な放送をしっかりと提供していくというその使命を負っているのに、今こそそれがなおのこと問われているときに、それにしわ寄せが出てこないかということを心配だと、こう問うておるのに、そんなお答えじゃ答えになっていません。

 次に進みます。
 過日、NHKは、戦艦大和の番組を人気が高かったということで再放送されました。その番組の結論がこんなふうに言っているわけですね。大和の細部の個々の設計技術はすばらしかったが、基本戦略である大艦巨砲主義が既に時代後れだった。そのことは既に一九四一年の真珠湾でも翌年のミッドウェーでも証明済みで、大和は出番のないまま引き返し、結局最後は無謀な沖縄特攻作戦を命令されて、その沖縄にもたどり着けぬうちに乗組員三千余人の犠牲とともに撃沈されたと、こんなふうに言っているわけですね。
 今の地上デジタル放送計画は、その前段階で、必要なアナログ周波数変更計画のところでまずつまずいて既に遅れを出してきました。今後さらに巨額の資金を掛けるわけですけれども、完成をしたころには陳腐化して今の新しい技術に追い越されて巨額の無駄に終わるのではないのかと、つまり、放送界の戦艦大和に終わるんではないかという専門家の声も実はあちこちあるわけです。
 アナログ変換は全額総務省の持ち分なわけですけれども、本体の地上デジタル事業はNHKだけで約四千億円、若干見直しで今三千八百億ぐらいですか、になっていますが、これはすべてNHKの手弁当ということになりますね。そういう意味で、NHK新生プランで再出発をおっしゃるならば、私がさっきから申し上げているように、せめて受信料拒否に見られる信用失墜あるいは減収を回復する期間、巨額の新規投資、そして視聴者の財政負担というのは保留すべきではないのか。
 地上デジタル事業が総務省の計画に縛られていることは承知をしているということをさっきも申し上げました。総務省と本当に詰めて、他の業者とも詰めていただいて、そういう意味では信頼回復をまず優先をして取り組んでいかないと本当の意味で国民の信頼を得ることになるのか、このことを大変心配をしている、こう申し上げているわけでありまして、改めて、会長、この点について責任者の会長から少しここら辺のところの見解をお伺いをしたい。

○参考人(橋本元一君)
 おっしゃいますように、大変厳しい財政状況の中で地上デジタル投資を控えたらどうだと、繰延べといいますか……

○又市征治君
 繰延べね。

○参考人(橋本元一君)
 繰延べですね、繰り延べたらどうかという御意見でございます。
 やはり我々、一番考えますことは、現在既にもう実効的に進んでいる中で、やはりデジタルの新しいメディアの特質というものを可能な限り視聴者の方々に格差なく享受していただきたいということから、デジタル化は繰り延べるというよりもできるだけ早く全国普及していただいて、逆にアナログ放送の方を予定どおり完了したいというふうに考えております。

○又市征治君
 この点は、これは議論になってしまいますからやめたいと思います。
 いずれにいたしましても、NHKの橋本会長以下、大変な御奮闘をされていることは私どもも承知をした上でなお、そういう意味で国民の皆さんの信頼を取り戻すために国会の場からも先ほど来、同僚共々厳しいことを申し上げているわけですが、いずれにいたしましても、事実に基づいた良質な番組を、提供を国民にしていく、このことを通じて信頼回復、そして理解を得ながら、正にそういう意味で受信契約などの回復というものを図っていく、こういう立場を堅持をされて一層努力をいただくように強く求めて、私の方からの質問を終わりたいと思います。