第164回通常国会

2006年5月11日 総務委員会(1)



(1)通信の規制緩和の中で守られるべき情報の地方分権
(2)相対的に弱い立場にある地方メディアの保護
(3)災害時に大きな力を発揮した地方メディア
(4)放送は基幹メディアとして低価格での提供を
(5)コンテンツ自由化が情報まで格差拡大を生む
(6)社会的共有財産であり公共性を持つ放送・通信
(7)市場原理に任せきりにせず通信の公平な利用の保障を
(8)放送と通信の融合の最大の障害は著作権問題
(9)著作権処理の簡便化で懸念される著作権料の切下げ


○又市征治君
 社民党の又市です。
 参考人の皆さん、大変今日はありがとうございます。意見陳述が十分ずつということだったから、全く言い足りないということなんだろうと思いますので、そういう点では、個別に幾らか、もう少し突っ込んでお聞きしたいという点に絞ってお尋ねをしたいと思います。

 まず、北川さんにお伺いをしたいんですが、地方局の大変御努力をなさってきて、民放連の大変苦しいお立場といいますか、そんなことも背負っておいでになったわけですが、三月二十二日にこの懇談会、松原さんの懇談会でもいろいろと述べられているのはちょっと拝見をさせていただきました。その中で、通信が放送と同様になって多数の事業者から、東京などから全国へ直接に発信されるようになれば、現在地方局が東京のキー局から受けて放送しているテレビは視聴率が激減するだろうし、独自にコンテンツを流しても利用者は限られ、スポンサーも減る。地方独自のニュースや番組制作をする力量、つまりは経済力、技術力、人材などということだろうと思いますが、これも失われてしまうと、こういうふうに危惧を述べられておりますね。これはもっともな御意見だろうと思います。

 私も地方に住まいを置いておりますし、東京と往復している者の一人でありますけれども、地元の情報ソースとしてのテレビを大切に見ております。また、文化、娯楽の面でも、地元のネタが流されるとやっぱりほっとするといいますか、身近に感じてうれしいわけですが、逆に、東京キー局の番組ばかり続くと面白みないですね、これは。通信の規制緩和によって通信系の情報が洪水のように地方を直撃すると予想されるのに対して、御主張の情報の地方分権を守ることは大変重要なことだと、こんなふうに私も思います。
 そこで、それには、資本の自由に任せるのではなくて、相対的に弱い立場にある地方メディアを、住民や地方経済界のみならず中央政府も意識的にやっぱり守っていくことが必要なんだろうと、そうしなければ立ち行かないんではないか、こういう感じがいたします。
 私も、地方住民の情報発信力の確保であるとか、地方メディアの経済的自立のために必要な規制は維持拡大すべきではないかというふうに思うんですけれども、この点について加えて御意見をお聞かせいただければと思います。

○参考人(北川信君=(株)テレビ新潟放送網取締役相談役・(社)地上デジタル放送推進協会前理事長)
 今質問されましたその壊滅的状態だろうというのは、私の文章の中にございましたか。

○又市征治君
 違いましたかね。

○参考人(北川信君)
 あっ、民放連会長。分かりました。
 やっぱりローカル情報どうなんだと、どのぐらい大事なんだと、それからどうやって守るんだということの御質問だと思います。簡単に申し上げますけれども、県民が必要とする地域の情報、それを地域の放送局が流す、あるいは地域の情報を全国に向かって発信する、県民の声が外へ伝わっていく、この二つの方向のローカル情報というのがあるわけですが、地方局がそういう二つの目的のためにローカル番組を作り発信していくということは絶対必要です。
 私はローカルの社長を十年やりましたけれども、その経験の中でそこに住んでいなければ絶対気が付かない情報、ニーズ、感覚というのがございます。だから、これを大事にしていくきめの細かさというのが今の放送の制度的な一つの魅力ある点であり、この長所は伸ばしていかなきゃならないと思っています。
 それから、ついでに触れますと、現行の放送免許の地域原則主義を堅持するということをさっき申し上げましたが、それも電波の有効利用ということの目的のために放送免許があるわけですが、そういう監理上の要請だけでなくて、国としてやっぱり地域の情報を大事にするという姿勢がこの免許制度に表れているというふうに私は理解しております。

 ただ、さっきのネットを通じて直接配信が始まれば地方局は壊滅するだろうというのは、私はそうは思っておりません。今まで要するに、地上波はケーブルの登場、BSの登場、CSの登場、三回にわたって要するに他メディアからの攻撃を受けて、現在では例えばスカパーだけでも、CS放送ですが、三百チャンネルが空から降ってくると。だから、よほど足腰が強くなければつぶれるかもしれませんが、実は地上波、今まで負けたことないんです。
 だから、これからもどうだと言われると、それは分かんないから頑張ろうぜという話ですが、先ほどの報告の中で申し上げたように、やはり今、地上波、いろいろな批判を浴びて問題点抱えておりますけれども、結局はコンテンツ生産は一番大きい、強い力を持っていると。それから、視聴者の信頼も非常に高いと、現実の利用度も非常に高いと。こういう長所に恵まれているうちにやっぱり次の時代に生きていくような自己改善をしていかなきゃいけないなということで、やはり今のネットワークを崩さずに、キー局とローカル局、二十八局なり三十局なりが力を合わせてそういう機動的な放送システムをより高度化していくというようなことがまず第一だろうと思います。それを怠って、単なる規制上、何か法律の力か何かで支援を仰ぐとか援助をもらうとかいうような形では足腰が弱くなるだけの話ですので、その辺は地方局としてはきちんと気を付けてやっていくべきことだろうと思っております。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 先ほどもちょっと御報告ありましたように、中越地震のときのテレビ新潟の果たされた役割というのは非常に大きかった。私も隣の富山県出身でございまして、そういう点ではこうしたローカル局が本当に、この頑張りというのはああいうときに本当に大事だということをつくづく感じるわけでありまして、是非それぞれのところでまた頑張っていただきたいと思います。

 時間の関係もありますので、お一人に一問ずつしかならないんですが、次は井手参考人にお伺いをしたいと思います。
 民放連の主張のとおり、放送は基幹的なメディアであり、国民があまねく広く同時にかつ公平にということですが、もう一つ私加えさせていただくならば、安い値段で、できるならば無料でと、こういうことに提供されるということが民主的で平等な社会にとって不可欠な情報インフラだろうと、こう思います。

 今、放送と通信の融合の名の下に、どのメディアでもどのコンテンツも見られることが崇高な理想であるかのように唱えられているわけですが、しかし、これ裏返してみると、利用は個人の経済力次第ということになりはしないか。多様なメディア機器や豊富に売られるようになったコンテンツを持てる者はますます持てる、持たざる者はますます持てないという、こうした弱肉強食の論理が情報の利用にまで貫徹をし、格差社会が拡大していくことを危惧するわけです。
 しかし、言うまでもないことですが、放送だけでなく通信も私有財産ではなくて社会的共有財産でありますし、一定の公共性を帯びていることは言うまでもないことだろうと思います。政府は、通信の公共性、あるいは低所得者等に通信の利用を保障するシビルミニマムの政策体系というものを構築していかなきゃならぬと、こんなふうにも思います。
 通信の自由化、商業化を市場原理のまま放置するというだけではなくて、こうした社会政策、金銭面を含めて、通信の公平な利用の保障をどう築き上げていくべきか、この点について何かお考えございましたらお伺いしたいと思います。

○参考人(井手秀樹君=慶應義塾大学商学部教授)
 今日の私の趣旨から少し外れたちょっと質問だと思いますけれども、確かに、だれでもがアクセスできるというユニバーサルサービスという概念、これは非常に重要でありまして、NTTのかつての再編のときにも、競争政策というだけでなくて、ユニバーサルサービス、それからそれを開発するためのRアンドD、通信の開発のためのRアンドD、それから通信主権とか、それから株主の利益、権利の保護と、こういったいろんな観点からNTTの再編というのが行われてきたわけで、さらにそのNTTの在り方を論じるときに、やはり拙速に結論を求めるんではなくて、十分議論をするということが必要ですし、その際にやはりそういった、先ほども述べましたけれども、デジタルディバイドということが拡大するということがないように、そしてさらに、ブロードバンドというものが発達することによってユニバーサルサービスという概念もやはり違ってきます。

 そういう中で適宜、ユニバーサルサービスは何か、そして、だれでもが安くアクセスできるという、こういった制度というものを構築していくということは当然必要でありまして、あわせて、アメリカあるいはイギリス等でも取られていますように、いわゆる低所得者に対する支援ですね、こういったこともやはりユニバーサルサービスというものと併せて考えていかなければいけないと、これは当然のことだというふうに認識しております。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 最後に、松原参考人にお伺いをしたいと思います。
 放送と通信の融合を進めようという場合に、最大の障害は著作権問題ではないかという、こういう説もあるようであります。著作権者、隣接権者といいますか、つまりシナリオ作家であるとか俳優であるとか音楽家、その他レコード会社、出版社などいろいろあるんだろうと思うんですが、一流の人たちはともかく、そうではない、どういう表現すればいいのか分かりませんが、一回しか出ないとか端役とかという、こういう方々もたくさんいらっしゃるわけです。
 そういう人たちにとっては、自分の一回だけの執筆であるとか一回だけの出演した作品などが何回も利用され、そういう意味でいつどう自分のが振り込まれてくるか、出演料というかそういうようなものがですね、そういうような点は分からない。途中の放送事業者又は役務利用放送事業者はこの放映で幾ら金銭的利益を得ているのか、極端には、自分の知らないところで不正コピーされていないかということなどは、こういう方々にとってみては生活の糧が懸かった問題になるんだろうと思うんです。

 加えて、今回、著作権処理の簡便化が主張されておりますけれども、通信の普及活用とか輸出振興の名の下に著作権料の切下げが行われるのでは、この人たちの文化創作活動の再生産というのがおぼつかないわけでありまして、本日の参考人の中にこうした著作権関係の方に入っていただいた方が一番よかったのかもしれませんが、松原さんのこの懇談会の中でもこの問題が論議をされているようでありますから、ここのところはさらっとさっきお話しなさっただけでしたので、代わって御意見をちょうだいをしたいと、こう思うんです。

 なお、これに関しては、日本経団連などが暫定ルールという形での著作権の両立を提案をしていることは私も存じておりますし、またスクランブルやコピーの一回制限等によって技術的にカバーできるという面もあることは承知をいたしておりますが、その上で、今申し上げたこの著作権問題というのはどうしていくべきか、この点、どんなように御論議されてきているかということをお知らせいただければと思います。

○参考人(松原聡君=東洋大学経済学部教授、通信・放送の在り方に関する懇談会座長)
 IPマルチキャストでの再送信に関して、現在は放送という枠組みに位置付けられていないので、例えば番組を一つ見たときに、一人一人の著作権にかかわる人すべての許諾を得なければいけないと、こういう形になっているわけです。ですから、台本を作った人、実演者の方、すべての方の許諾を求めなければならない。その方が亡くなっていた場合には御遺族の方を探して許諾を得ると、こういう形になっているわけです。
 一方、放送の場合には、放送として位置付けられれば、変な言い方ですが、お金さえ払えば何回でも放送できるという形になっていますので、一つ一つの権利処理は要らないわけです。それから、おっしゃったような、端役の方といいますかですね、という方も、まあ自動的に、繰り返し放送されるたんびにそれに応じたのが支払われるようになると、こういう仕組みでございますね。
 それで、私どもは、IPマルチキャストで流そうとしたときに、放送と同じような扱いにしたらどうかと。そうすれば、一人一人の著作権者の許可なしに一括して、お金は払うわけでありますので、その方がスムーズになるだろうと、こういう発想でございます。
 それで、この点、是非御理解いただきたいのは、今、例えばそういうIPマルチキャストでそういうのが、いろんな番組が流れていて、そこから著作権料を引き下げたり権利を奪おうという話ではなくて、そもそも回ってないわけですから、むしろ回ることによって有効に、見る側も楽しめるし、実演家の方、著作権を持っている方にも、今は死蔵されちゃってる状態ですから、それを動きやすくしようということで、この点に関しては、ウイン・ウインというか、ことだと思うんです。
 ただ、おっしゃるような、比較的弱い立場にいらっしゃる番組制作の方とか、それから実演家の方についての配慮というのは十分必要だと思っていますが、あるのを取るのではなくて、動いてないのを動かすことによって、見る人も、出た人も、作った人もうまくお金が入るようなそういうシステムにしたいと、こういうことでございます。

○又市征治君
 終わります。