第164回通常国会

2006年6月2日 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会



(1)選挙人名簿の抄本の閲覧の本来の目的は、正確性の確保
(2)名簿のコピーの提供の根拠とされる便宜供与という規定
(3)目的を限定していた便宜供与の、範囲を拡大した理由は
(4)世論調査・学術調査目的の閲覧は、住基の閲覧で足りる
(5)相次いで起こる、住基台帳・選挙人名簿を悪用した犯罪
(6)住基台帳閲覧の原則禁止で選挙人名簿に流れてくる懸念
(7)架空の団体名などで不正に名簿を閲覧し、悪用した事例
(8)法改正でも自己申告だが、それで悪用は防止できるのか
(9)一定期間後に法の運用状況を検証し、見直すことが必要


○又市征治君
 社民党の又市です。
 今回の法改正のうち在外投票については異議はありませんから、選挙人名簿抄本の閲覧制度について幾つか確認をしておきたいと思います。
 再確認ですが、元々、選挙人名簿抄本の閲覧制度が設けられた趣旨は何ですか。

○政府参考人(久保信保君=総務省自治行政局選挙部長)
 これはもう委員御案内のように、公職選挙法第二十九条の第二項に、市町村の選挙管理委員会は選挙人名簿の抄本を閲覧に供さなければならないと義務付けられているわけでございますが、明文上、これはどういった理由で、あるいはどういったケースに閲覧を認めるのかというのは現行法ではないということでございまして、ただ、やはり選挙人名簿を常時選挙人の目に触れさせておくということでその正確性を確保するといった趣旨から設けられているというふうに考えております。

○又市征治君
 というわけですが、この閲覧のほかに、第二十九条二項で「その他適当な便宜を供与しなければならない。」とも定めておって、これがコピーの提供の根拠とされているわけですね。しかし、公職選挙法逐条解説では、便宜供与の規定については選挙人名簿を正確ならしめることがその趣旨であるとあるわけでありまして、便宜供与が設けられた経緯というのはこの解釈でいいですか。

○政府参考人(久保信保君)
 先ほどお答えいたしましたように、公職選挙法第二十九条の第二項、これは選挙人名簿の正確性を期するために設けられたと、そして、昭和四十一年改正で、便宜供与、これもしなければならないという規定も併せて昭和四十一年改正では設けられたということでございます。
 ただ、どのような便宜供与を行っていくのかということにつきましては、具体的な中身、これは各市町村選挙管理委員会の定めるところにゆだねるといった解釈を取ってきております。

○又市征治君
 現実として、この便宜供与だとして不特定多数分のコピーを交付している、こういう実態があるわけですけれども、実際の便宜供与の活用状況そのものはどうなっていますか。

○政府参考人(久保信保君)
 今年の四月一日時点で調査を行っております。それによりますと、選挙人名簿抄本のコピーを認めていない市町村の数、これは全体の約四分の三、千八百四十三団体中千三百五十九団体となっておりまして、個人情報保護に対する意識の高まりなどを背景に、コピーというものを便宜供与の中身として認めているという市町村の数、これは年々減少しているものというふうに認識をしております。

○又市征治君
 本来そのように限定されておった便宜供与が、一つは選挙運動、政治活動を目的とする閲覧、並びに二つ目に公共目的の世論調査を目的とした閲覧、及び抄本のコピーの交付、こんな格好に拡大をされてきているんだろうと思うんですが、その理由は何だと思いますか。

○政府参考人(久保信保君)
 昭和四十一年当時に公選法改正で便宜供与の規定が追加された当時の事情でございますけれども、これは第四次選挙制度審議会の議論がございまして、選挙人名簿抄本の写しを頒布をしたり回覧すべきではないかといったような意見も出たということでこういう改正がなされたということでございますけれども、当時も、選挙運動、政治活動につきまして選挙人名簿というのを閲覧を認めるということをほとんどの、多くの市町村選挙管理委員会がやっていたということもございまして、昭和四十一年当時では、この選挙運動や政治活動について閲覧をさせるという場合も、便宜供与としてコピー、これを認めるということは含まれているといったことが前提だったように承知をしております。

○又市征治君
 もう一つ、後段に申し上げました公共目的の世論調査、学術調査を目的とする閲覧ということについて言えば、住民基本台帳の閲覧制度でそれで足りるんではないのか、こう思われるわけですが、選挙人名簿抄本の閲覧制度をあえて残す理由は何ですか。

○政府参考人(久保信保君)
 私ども、去年この法改正に結び付く前提として検討会を設けて議論をしていただきましたけれども、そこで議論がなされた経過、これを踏まえてこのたび法改正をしておりますけれども、この報道機関や学術研究機関などが政治や選挙に関する有権者の意識や関心について世論調査や学術調査を行うと、これはやはり政策形成の一助となっている。そして、民意を顕在化し、民主政治の質的な充実を図る上で欠くことができない公益性を有している。また、この選挙人の意思の決定に寄与するものであるといったことから、民主政治の健全な発展に資するといった公職選挙法の目的に合致するものであるとして閲覧を認めるべきだという結論になったわけでございまして、住民基本台帳の閲覧対象と重複する部分はございますけれども、公職選挙法の目的に照らして閲覧を明文で認めるということにいたしたわけでございます。

○又市征治君
 今度の改正が出されてきた理由の一つに、やはり住民基本台帳や選挙人名簿の閲覧制度を悪用した不幸な犯罪が次々と起こってきている、こういうことがあったことはもう御指摘のとおりでありますが、住民基本台帳の閲覧については、せんだってこれは原則禁止に改めたわけですね。

 そういう格好になりますと、今後、今までは住民基本台帳の閲覧制度を悪用していた商行為などによる消費者などの被害というのが、今度は形を変えて候補者であるとか政治団体を称して選挙人名簿の閲覧の方に流れてくる懸念があるんではないか、これは自治体レベルでもそういう心配を一面ではしているわけですね。

 実際にこれまでも、架空の団体名で選挙人名簿閲覧を申請をして不正に閲覧を行っていた訪問販売会社が脅迫的な勧誘を行い、訪問販売法違反で役員、従業員が逮捕された事例であるとか、また、架空団体の身分証を作って選挙人名簿の閲覧を行って独身男性名簿を作成していた宝石販売会社が、脅迫的な勧誘を行って訪問販売法違反で社長などが逮捕されたという事例、さらには、報道機関を名のって世論調査目的での閲覧をしていた法人について、その後法人登記がなされているかどうか確認を求めたけれども、これが全く確認もできないという、こういう事態など起こっている。

 そうすると、じゃ、今度こうした形で、コピーなどというのはそれはまあなくなっていくんだろうと思いますけれども、しかし今度の改正だって基本的には自己申告にゆだねられておるわけでありまして、こうした問題事例の防止は一体全体どういうふうに講じられているのか。このような悪用に対してどのように対処するというのか、この点はもう少しお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(久保信保君)
 先般、又市委員からは総務委員会でも御指摘を受けましたけれども、今回の改正によりまして、私ども幾つか御指摘におこたえできるんじゃないかといった改正内容を含めておりまして、一点は、選挙人名簿抄本の閲覧が認められる場合、これは先ほど来申し上げておりますが、法令上明確化いたしまして、それ以外の閲覧は認めないということにいたしております。
 次に、閲覧により知り得た事項を利用することができる者、これを限定いたしますとともに、当該情報の目的外利用あるいは第三者提供をこれは法律上禁止をしているということがございます。そして、偽りその他の手段による閲覧でございますとか目的外利用あるいは第三者提供等があった場合の制裁措置、罰則あるいは過料、この規定を新設をいたしております。そして、毎年少なくとも一回、選挙人名簿抄本の閲覧の状況、これは閲覧申出者の氏名、利用目的の概要等でございますけれども、これを公表するといったような措置を講じることにいたしております。また、実際の運用に当たっても、どのような場合に閲覧を認めたかを市町村の選挙管理委員会の間で相互に情報交換すること等を私どもとして指導していきたいと、助言していきたいと考えております。
 こうした対応を行うことによりまして、不正な手段による閲覧等というのは相当程度防止できるのではないかと考えております。

○又市征治君
 最後に、時間がなくなってまいりますから大臣にお伺いしておきたいと思いますが。
 選挙運動や政治活動目的の閲覧についてはその運動の自由を保障するために一定配慮すべきだというのは、これはもう言うまでもないことなんですが、やはり一定期間後にこの法の運用状況を検証いただいて、やはり見直していくべき課題もあるんではないかと、このように思いますが、その点についての大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君=総務大臣)
 今いろいろ御議論いただいた点の改正は、正に個人情報保護に対する国民の皆さんの意識が高まってきたと、そういう非常に大きな変化があったということを踏まえ、その上でこの名簿抄本、これは正に個人情報が記載されているわけでありますから、それについて抜本的な見直しを行うものでございます。
 今後、当然のことながら、個人情報保護に対する国民の意識は更に推移していくと思います。そして、今回の改正による運用実態、これがうまくいく、当然我々はいくと期待はしておりますが、いくかどうかをしっかりと見極めなければいけないと思っております。その上で、必要があれば見直しについても当然のことながらしっかりと検討してまいるつもりでございます。

○又市征治君
 終わります。