第165回通常国会

2006年12月14日 総務委員会



(1)シベリア抑留経験者の悲痛な思いに応えるのは野党案だ
(2)労働証明書が発行されているのに補償拒否を続ける政府
(3)とにかく一つでも戦後補償の突破口を作りたくない政府
(4)職業軍人には手厚く召集兵には薄いという恩給法の体系
(5)恩給の差別的実態がシベリア抑留者にも反映されている
(6)規定兵役年数に一日足りないだけで補償ゼロという実態
(7)不十分な対応は不満だが時間がないという、切実な思い


○又市征治君
 社民党の又市です。
 先ほど来の元島さん(=軍人軍属恩給欠格者全国連盟長崎県連合会長)の、本当に辛苦に満ちた重い歴史の証言の一端、心にしみる思いで聞いておりました。私どもも野党三党で野党案出しているわけでありますが、お話を聞くにつれて本当に、是非とも与党の皆さんにも、むしろこうした悲痛な叫びを上げておいでになる抑留経験者の皆さんにこたえる道というのは、むしろ私たちが提起していることを是非しっかりと酌んでいただく、野党案を成立させていただくことではないかと、こんなふうに、先ほど来確信を持ってお聞きをしておったところであります。

 そこで、お二方に少しずつ御質問をさせていただきますが、まず有光さんにお伺いをいたしますけれども、大変、シベリア抑留者問題、長い間御奔走いただいておりまして、これには敬意を表したいと思います。
 そこで、今も出ておりましたが、労働証明書の問題ですけれども、全国抑留者補償協議会の副会長平塚さんのお名前で、昨年二月、朝日新聞に掲載された投書に、近年ロシア政府によって労働証明書も発行されるようになってきた、しかるに日本政府がかたくなに支払いを拒否するのはいったいなぜなのか、こういうふうに書かれております。

 とにかく補償はしたくない、一つ突破口ができれば、中国残留孤児を始め日本国民また外国人からの様々な戦後補償の要求に根拠を与えてしまうからというのがどうも政府の本音のように思えてならない、こんなふうに思いますけれども。
 しかし、南方で捕虜になった方々には、不十分ながらも抑留中の労働の賃金を日本政府が払っているわけですね。

 有光さんに質問するのは本当は筋違いかもしれませんけれども、日本政府がどうしてこの労働証明書による支払さえも認めないのか、考えておられるところございましたらお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(有光健君=全国抑留者補償協議会参与)
 お答え申し上げます。
 恐らく、先生今御指摘のとおりなんだろうと思います。
 シベリア抑留につきまして、先ほど私も冒頭申し上げましたけれども、他の旧日本軍人、兵士の労苦というものとの違いということは、これは、それこそガダルカナルでも、インパールでも、雲南でも、レイテでも、あるいはニューギニアでも、そして今話題になっております硫黄島でも、もう本当にたくさんの方が大変な犠牲を払ったということでは同じなんですが、つまるところ、抑留中の賃金、労働したことに対する対価が支払われていないということが決定的に違うわけでございますね。それで、ですから、先ほどちょっと申し上げました、私が昨日電話で話をした太田嘉明さんなんかも、南方の方々も同じように支払われてないんであれば、我々、何もこんなことを言うつもりは全くないと。やっぱり、そこの差が物すごく違うわけですね。

 それで、労働証明書がないから支払われなかったんだというのが政府の見解でしたので、それじゃということで、全抑協が自分たちで直接、当時のソ連政府と交渉して労働証明書を持ってまいりました。裁判所の方も、結局その労働証明書が届きましたのが東京高裁で裁判をやっていって結審をした後でしたので、実際の証拠としてそれが活用されることはなかったんですが、最近になって、二年ほど前から日本政府も、その労働証明書については、以前は、それは民間団体が勝手に持ってきたもので、外交ルートを通じて入手したものではないから公式なものではないという言い方をしておりましたが、二年ほど前から、一応ロシアの公式機関が発行したものであるということは認めるようになりました。

 結局、ただ、それを認めてしまうと、先生おっしゃるように、ほかに問題が広がってしまうということを懸念しているんだろうというふうに私も思いますけれども、しかし、先ほど元島さんが、もうそれほど無理を申し上げるつもりはないとおっしゃいましたが、ドイツが、ドイツの捕虜というのは大体これ、ソ連だけじゃなくてアメリカとかイギリスとかカナダにもおりましたけれども、大体百七十万人なんですね。そのドイツの捕虜に対して、一人当たり八十万円ぐらいの支払を、これは一九六九年に法律を改正しましたが、最初の法案というのは一九五四年に戦争捕虜者補償法というのができておりまして、これが総額で一千七十五億円ほど、日本円にしてですね、支給をしております。今回、四百億を全部国庫に返済、いったんお返しをした上で支給をしたとしても、これ、三百九十億ぐらいというのが野党案の推定値でございますけれども、それほどの額を今日本国が支給できない、それがそんなに無理なことなのかという気が非常にいたします。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 続いてもう一度有光さんにお伺いしますが、今年六月の朝日新聞への投書の中で、死亡者は六万人を超えたと見られるという一般的な推計と、これとは別に、ソ連支配下の中国東北部や北朝鮮の収容所での死亡者も含めると計九万人を超すと推定するロシアの研究者もいるというふうにお書きになっていますね。
 実際、中央アジアの旧ソ連圏諸国を訪れて、抑留者だった日本人元兵士に会ったという話も聞きます。いわゆるシベリア以外に一体どのくらいの広がりを持って抑留されていたのかなど、死亡九万人というのと六万人とのこの差の部分、この人たちについてもう少しお知りになっていることを御説明いただけますか。

○参考人(有光健君)
 お答え申し上げます。
 どれぐらいの広がりかということにつきましては、お手元にお配りしておりますこのカラーの地図を見ていただければ分かると思います。必ずしも国境というレベルではなくて、当時、旧ソ連軍が展開をしていた地域で収容されていますので、したがって、この六万と九万の差というのは、ソビエト社会主義共和国連邦内に連れていかれた抑留者の数でいうと六万、しかし、実際に当時、朝鮮半島の北部、それから旧満州、中国東北部、そしてモンゴルもそうですが、すべてソ連軍の管轄にございましたので、それらを全部含めると推定で九万というふうに主張している研究者もいます。

 ただ、実際問題として、例えば北朝鮮に、体力のない者、それから病気にかかった者をどんどん北に送り込みましたが、そして北に収容されている元気のいい方を差し替えるということをやっていますが、その過程で一体北朝鮮で何人の方が亡くなられたのか、恐らく数千から万を超えるんじゃないかとも言われておりますけれども、その辺りも、その名簿が日本に来たのが昨年の春ですので、まだ全く手付かず、調査もできていないという現状です。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 そこで、元島参考人にお伺いをいたしますが、先ほど来、抑留の経験の大変きつい、つらい中身をお話しいただきましたけれども、この配付された陳情書の中にお書きになっていますけれども、兵役年数十二年に足らずの一言で国の恩恵を何ら受けることができませんでしたと、この点は私自身も毎年恩給法改定の審議の際には問題だということをずっと提起をしてきたところではございます。

 年数イコール軍隊の階級でもありますから、職業軍人には厚く、虫けら扱いにされた召集兵には非常に薄い、こういう格好になっているんですが、この給与や恩給の体系がそのままシベリア抑留者にまで反映をさせられているという実態にあると思うんです。
 この点についての元島さんの御主張、御不満ございましたらお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(元島和男君=軍人軍属恩給欠格者全国連盟長崎県連合会長)
 現在、旧軍人仮定俸給年額、平成十七年四月一日、この表を見ますと、一年間に兵隊で百四十五万七千六百円、下士官百五十九万九千四百円、大将に至っては八百三十三万四千円、こういう、年々ベースアップされまして、多額の金をおもらいになっておられます。
 これはもちろん計算上ではこの数字のようにはならないとは思いますけれども、わずか十日、一日足らないだけでも全くもらえない人たち、そして、わずか総理大臣の書状、銀杯、記念品、これだけで済まされておるわけでございまして、本当に命懸けで戦った者の値段がこんなに差があるのか、これは恩欠者みんなが考えていることだと思います。

 私たちは、何とかこういうものを少しでも縮めていただいて、御苦労であった、今後も日本のために頑張ってくださいよと、そういう温かい言葉をいただきとうございました。もうしかし、今日に至ってはそう叫ぶ人たちの数も年々減っております。

 抑留者の問題につきましても、かの地で働かされた労働賃金を幾らでも下さるならば、抑留者の人たちもどんなにお喜びになるか分かりませんが、今の段階で日本の力がロシアに対してそれだけのことを言い得るのであろうか考えますというと、情けないことではございますけれども、当てにはされない、そう思い、一杯でございます。

 かつて昭和五十七年、私たちが九段会館で総会を開いたときに、自民党から渡辺秀央先生、社会党から渡部行雄先生がおいでになって、激励の言葉を下さいました。総会が済んで、私たちは社会党の石橋政嗣委員長のところにお礼に参りました。そのとき、石橋委員長さんはこんなにおっしゃいました。皆さん、御苦労さんでした、長い間大変でしたね、国が命令した以上は国がそれだけの償いをしてくれるのは当然のことではないですか、社会党としては、今日渡部行雄君が激励したとおり全面的に応援しますよ、残念ながら野党の我々ではその力がない、与党の自民党の皆さん方にお願いしなさい、しりをたたいてください、そして一日も早く皆さん方の償いができるようにしてください、そう言って石橋委員長は激励をしてくださいました。

 先般、第一議員会館で偶然福島みずほ党首とお会いしまして、実は福島先生、石橋先生がこんなことをおっしゃいましたよ、今日はそういう人たちの集まりでございますということも申し上げたわけでございます。

 私たちは、やはり法律でございますから、法律に従わなきゃ、法治国家ですから従わなきゃなりませんが、何としても、この軍人恩給をもらう人とない人との差が余りにも懸け離れておりますためにこのような運動を起こし、二十数年間、無料奉仕でみんなが一生懸命日本の将来を考えて頑張ってきたわけでございます。今回も、実は民主党の方から出されておる法案も分からないんではないんですが、何としてももうその期間がない。たとえ参議院で皆さん方が可決されて公布されましても、もらう段階になるまでは四月の一日以降になります。その間に何万人の方々が亡くなっていくか分からないんです。もうその日その日が待ち切れないんです。

 そういうことから、欲はありますけれども、もう欲ばかり言っておって犠牲者を多く出すよりは、今の基金の取り崩しで早く抑留者の皆さんに十万円、そして慰霊碑の建立、恩欠者に、外地は五万円、内地は三万円、差は付けてもらいたくはありませんけれども、だけれども、世論を考えますとこれもやむを得ないことであろうか、それならしようがない、それでもいい、そして引揚者の皆さん方に銀杯と慰霊碑の建立を早くやっていただかなければ、もうそうそう待ってばかりおれない、そういう実情でございます。

 不満でございます。おっしゃるとおり、確かに不満でございますけれども、もうやむを得ない時期に来ておるということをお知りいただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

○又市征治君
 時間が参りましたから終わります。