第156回通常国会

2003年5月30日 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会


(1)聴覚障害者のための個人演説会の要約書記
(2)投票箱の長期保管による介入の懸念




○又市征治君
 社民党の又市です。
 この法案(公職選挙法一部改正案)については、基本的には賛成だということをまず申し上げて、少しこの後の改善点あるいはちょっと懸念される問題を含めて二点ばかりお伺いしてまいりたいと、こう思っています。

 選挙権が形式上だけでなくて実際に保障される人々の範囲がどこまで広がるか、これが民主主義の実情を計る目安だと、こうよく言われるわけです。例えば、よく言われる例で、アメリカにおいて黒人などの選挙登録者の比率が白人に比べて低いと。建前上は平等なんだけれども、いざ投票ということになるとそれができないという実態が、社会的あるいは経済的な地位、教育などによってこういう格差がアメリカにもあるという実例として挙げられています。
 我が国では、さきの判決で重症障害者の郵便投票における代理投票の禁止規定が違法とされて、今、議員立法によって制度の是正を目指しておりますけれども、そこで今日は、選挙における聴覚障害者の知る権利としての個人演説会等における要約筆記の自由化の課題についてお尋ねをまずしたいと思うんです。
 聴覚障害者や難聴者のために講演などを要約筆記するサービスが、今ではその場で、ワープロで入力をしてスクリーンに映し出す方法がかなり広がってきていますね。聴覚障害者の皆さんの団体からは、これを選挙でも認めてほしいとの要望が前から出ているわけです。

 調べてみますと、二年前の六月の参議院総務委員会でもこの問題取り上げられましたが、総務省は、選挙演説に使うのは公選法百四十三条に違反をするんではないか、したがってこれは駄目だと、こういう見解をその段階でも述べられているわけですが、後ほども申し上げますけれども、大臣はこの問題については少し研究してみたいと二年前にそういうお話しになっているんですが、そこで、現段階での総務省の見解をまず先にお伺いをしておきたいと思います。

○政府参考人(高部正男君=総務省自治行政局選挙部長)
 現行公選法におきましては、文書図画の頒布、掲示等について一定の手段のみ認めているわけでございます。公選法百四十三条二項におきましては、「選挙運動のために、アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類を掲示する行為は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。」と、このように規定しておりますことから、御指摘ございましたように、選挙演説の要約をパソコンに打ち込んでそれをスクリーンで表示するといったことは同項の禁止する行為に該当して公職選挙法百四十三条に違反するもの、このように解しているところでございます。

○又市征治君
 そういう見解を出されているんですが、聴覚障害者の情報手段として手話通訳がありますけれども、これにも一定の難点があります。その最大の点は、高齢になってから聴覚障害になった、あるいは突然の病気や事故によって聴覚を失った人にとっては手話の習得が非常に難しい、こういうことですね。その点、要約筆記という方法ならば普通の文字で見せてくれるわけですから大変有り難いと、こう喜ばれている。だから、これがどんどん広がっている、こういう状況にあります。
 今日は長野出身の吉田先生もおいでなんですが、昨年の九月に長野県の塩尻市の市長選挙の合同演説会でこの要約筆記をやろうとしたんですが、会場のスクリーンに映し出して全員に見せる方法では、今、選挙部長が言ったような立場で違法だということで、仕方なく障害者個人個人にパソコンの画面をお見せしてやったと、こういうことなんですね。これはまあひとつ前進なんですけれども、これは障害者にとっては、私は障害者ですよというふうに宣言をする、いや余りそんなふうに見られたくないなと思っておいでになる方も、それからまたそういう特別扱いを受けるのはやっぱり嫌だと、こういうのもあるわけで、余りいい方法ではないわけですね。
 また、年寄りであれば、障害者とまでは言えなくても、耳の遠い方、話のスピードに付いていけない、こういう方もあるんだろうと思います。まして、ますます高齢社会進んでまいります。スクリーンで会場全体に流す方法が、これはいいに決まっているわけですね。だけれども、今の規定がそうなっていると。この点の法改正を求める地方議会の意見書は、長野県の新聞なんですけれども、長野県では県議会、塩尻市、諏訪市、岡谷市など四市三町村議会で出されてきていますね。全国的にもこれは広がっているというふうに聞いています。
 そこで、総務大臣は二年前の答弁で、私もかねがね今IT時代ですから、今の問題も、限定的な文書図画というのもいかがかなと本当に思っておりますので研究は始めさせていただきたいと、こういうふうにお答えになっています。ちょっと意味、文脈よく分からぬところありますけれども、しかし私は、大臣のおっしゃったのは、要約筆記について限定的に禁止を解除することの検討も必要かなと、こういう意味でおっしゃったんではないかと、こう理解をするわけですけれども、今申し上げましたことを含めて、改めて大臣、もう二年たったわけです、改めて大臣の見解をお伺いをしたいと思います。

○国務大臣(片山虎之助君=総務大臣)
 今、現行法からいいますと、選挙部長が答えたとおり禁止行為に該当すると、こういうことですけれども、高齢化社会というのは、やっぱり眼鏡が要ったり補聴器が要る人が増えることですよね、入れ歯が要ったり。それは、そういう意味からいうと、やっぱりこの難聴だとか、そういう聞こえない聴覚障害、これにどう対応するかというのは私は大きな課題ではないかと。
 今、テレビでデジタル化というのを地上波のテレビやりますけれども、これをやると話速転換できるんですよ、話すスピードが調整できると。これもお年寄りに優しいテレビと、こういうことになるわけでありまして、私はいろんな会合で、今、委員が言われました要約筆記というんですか、これを見まして、なるほどなと、大変皆さん喜んでいますよね。
 そういうことで、もうこういうことを私は前向きに取り入れる必要があると思いますけれども、今インターネット等の選挙運動での活用も考えておりますから、こういうこと併せて十分に検討をしていきたいと。それは、政府の方は政府の方でやりますが、ひとつ、いつも選挙関係、同じことを言いますけれども、各党各会派でも十分な御議論をいただいて、こういうものをどうやって取り入れていくかということの御検討を各党各会派でもやっていただく、政府でもやると、こういうことではないかとこう思っておりまして、難点がいろいろある、経費の問題がある、そういうことをどうクリアできるかを含めまして、今までも検討してまいりましたが、更に突っ込んで前向きに検討いたしたいと思っております。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 先ほども申し上げましたように、現場段階ではそういう規定があるために、何とかこういう聴覚障害者の皆さんに見てもらおうということで、わざわざパソコンをそこに入れてまでやっているわけですよね。現場の方はいろんな苦労をしている。だけれども、大本が駄目だとこう言うから困ると。逆に、だけれども、現場では本当に住民の皆さんに利便性を何とか拡大しようと苦労しているわけですから、やっぱり大本を直さなきゃどうもならぬということで、大臣、今、是非検討してまいりたいと。前向きにいい方向で、政治決断も含めてやっていただくことをお願いをしておきたいと思います。

 そこで、二つ目に、今回の法案は、一番冒頭申し上げましたように、在外投票と不在者投票の機会の拡大に主眼がありますから賛成だ、これは前進だというように申し上げておきますが、ただ、一つは、投票者の権利の拡大とは別の問題として、投票箱を長く保管をするということは現実には選挙の公正な管理を損なうおそれも実は出てくる、こういうことがあるわけですね。
 例えば小さな市町村では、日ごろから首長と選挙管理委員会の職員の距離が非常に近いというよりも、こうした市町村では選管の選挙職員はいなかったり、あるいはいてもごく少数、そして選挙の際は大多数が首長部局と全部兼務でやっていることはもう御承知のとおりですね。そういう格好で成り立っている。そうすると、選管の首長部局からの独立性という、こういう理念に実態は全く追い付いていないといいますか、合わないわけですね、現実は。
 そういうところで、従来に比べて幅広い期日前投票、期日前投票のために投票箱を長期間にわたって設置をした場合に、首長など幹部から投票箱の管理者、職員に非常な圧力が掛かる可能性が生まれてくる、こういうことなんです。いや、そんなばかなと。いや、だけれども現実にそういうことがあるわけですね。

 私、富山県の出身なんですが、恥ずかしい思いいたしましたが、何年か前に町長選挙で、福祉施設で大変不正な投票が行われて、それで、これは全く選挙やり直しという事例がありました。そんなことというのは全国で、残念ですがまだ日本社会において小さい自治体ほどこんなことがぼろぼろある、こういう現実があるわけですね。早い話が開票日前に投票箱を開けてすり替えということが生まれてくる可能性はやっぱり持っているわけです。
 今までだと、今のやつは一人一人が不在者投票で書いて封筒に入れて、また外封筒に個人の署名までして、そういう意味では、別々に金庫に入れて保管をする、そして投票後に、開票までの間に第三者による不正を許さない、こういうメリットがあったわけですね。だけれども、これが面倒だと、こういうことで、できればこれは改正しようやということで直接投票箱に入れると、こうなったけれども、この投票箱、これを各自治体に置いて、少なくとも一か所以上ということなわけですから、この投票箱を入れる金庫を毎日持ってきて、投票が終わったら役所へ持ってきて、そこに、大きい金庫に入れて、また翌日持っていくのかと。こういう問題などがあるわけでありまして、ここら辺のところは一抹の不安があるわけですね。
 したがって、この点はどういうふうに厳正に執行していく、こういう考えなのか、この点について少し考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(高部正男君)
 お答えを申し上げます。
 これまでの制度ですと、投票箱というのは投票日にあるわけですから、即日開票すると保管期間というのは極めて短い期間だということになるわけでございます。新しい制度になりますと、期間中の保管というのが問題でありまして、この期間について厳重な保管をしなけりゃいけないというのは委員御指摘のとおりだと思っております。
 この期日前投票期間中の投票を行うことができる時間以外の投票箱の管理でございますけれども、投票時間が終わりましたら、当然のことながら投票箱のふたを閉じまして、かぎをして、かぎも複数にいたしまして、一つのかぎは投票管理者が日締の封印をすると。まあ開ければ分かるような状態になるように封印すると。もう一つは、立会人が封印するというような形でチェックが利くようにしたらと考えております。
 それから、保管については、現行の投票所の投票につきましては、そこに置いておいて開票所に移動させるという仕組みになっているわけでありますが、基本的には、投票、期日前投票所の場所に置いてかぎをしたりするわけでございますが、必要に応じてロッカー等の保管、更にかぎ掛けられるような保管もできるようなという形にしておりまして、委員御指摘のようなことがないような管理の徹底を図っていきたいと思っております。
 なお、私ども一つ申し上げておきたいのは、不在者投票も、確かに封筒に入っているわけでございますが、これも投票になるわけでございますので、この保管というのは非常に重要だと考えております。ただ、さはさりながら、そういう状況の中で昨今、投函漏れといいますか、管理が十分でないために当日に投票箱へ入れるのを忘れるという事件が結構起こっておりまして、今回、このような投票箱に入れるという新しい仕組みを入れることによりまして、より厳正な管理とそういうミスがなくなる方向にも寄与するのではないかというような期待を持っているところでございまして、いずれにいたしましても管理の徹底について十分留意してまいりたいと思っております。

○又市征治君
 今お聞きしましたら、そういう意味でかなり厳正にやっていかれる予定のようですが、それぞれの地域の実情によっては、先ほど申し上げたような例が起こり得る可能性もあるだけに、より厳正に対処いただくことを強く要請を申し上げて、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。