第159回通常国会

2004年3月30日 総務委員会


※通算100回目の質問
(1)地方税法等改正案など三法案に対する反対討論
(2)イラク攻撃に関する報道のあり方
(3)国民保護法案等による言論統制の危険性
(4)報道倫理に基づき権力に媚びず中立公正な報道を

○又市征治君
 社民党の又市です。
 私にとりますと今日の質疑でちょうど私百回目を迎えまして、一つの感慨を覚えておるところでございます。
 さて、二〇〇四年度のNHK予算案などにつきましては、承認の意をまず冒頭に表しておきたいと思います。その上で、今日は近隣アジア諸国をめぐる報道全般について少し伺ってまいりたいと、こう思っております。
 私たち日本人の外国に対する感情というのは歴史的に形成されてきたものであり、日ごろの教育、あるいは現代社会ではマスメディアの報道に大きく影響をされています。過去の日本が植民地支配をしたり侵略をした相手国に対して、我が国の国民の中に抜き難いべっ視であるとか、あるいは敵視の感情が培われてきた傾向があります。
 そこで、今日お尋ねしたいのは、政府や教育の責任もさることながら、マスメディアによる歴史番組やあるいは情報提供がこれらの国々に対して公正に展開されてきているのか、こういう問題についてお伺いしたいと思いますが、まず初めに、NHKが最近テレビで放映した結果について、データを簡単に御紹介いただきたいと思います。

○参考人(関根昭義君=日本放送協会専務理事)
 私どもはこれまで、日本と中国、そして朝鮮半島、東南アジアとの間の歴史的な関係について様々な番組で放送してきております。
 最近の例を挙げますと、まず朝鮮半島とのかかわりにつきましては、江戸時代唯一の正式な外国使節団でありました朝鮮通信使、これを「NHK人間講座」というところのシリーズで取り上げています。また、中国に関しましては、日中両国で深く親しまれてきています作家の魯迅、これをシリーズで取り上げたりしてきているところであります。

○又市征治君
 毎年、内閣官房広報室が外交に関する世論調査をやっているわけですが、これによりますと、アメリカに親しみを感じる人というのが過去二十五年間ほぼ一貫して七〇%台、ロシアは逆に親しみを感じないという人が七〇%から八〇%、東南アジア諸国に対しても親しみを感じないという人が五〇%台にあります。中国に対しては、最近十年は好き嫌いが拮抗して四七、八%、韓国に対しましては四年前から劇的に親しみを感じる人が増えているわけですが、それでも五〇%をちょっと超えたところ。こういうデータになっているわけですね。
 ここで見られたように、アメリカが突出しておって、その他アジアの国々が非常に低い、こういう状況があるんですが、そこでNHKでは、中国、韓国、朝鮮、東南アジアなどの間の歴史の問題について報道、放映をする場合、何か配慮をなさっていることはございますか。

○参考人(関根昭義君)
 こういった日本の近隣地域との関係について取り上げて、いろんな番組で取り上げてきているわけですけれども、特に近代の一時期において、近隣諸国や地域に多大な損害と苦痛を与えるという不幸な歴史を経てきているわけであります。こういった事実を直視した上で、近隣諸国や地域とより親密な未来を築き上げていくという視点を大切にしながら番組を制作、放送してきているという考えを持っています。
 歴史を扱う難しさというのは大変なものがあるんですけれども、人や時代などによってその評価が大きく異なる点がありますので、NHKが歴史を放送するに当たりましては、専門家とか当時の、当時に残されている資料、証言、そういったものを積み重ねながら、できるだけ正確に事実を視聴者に提供していきたいと、そういった姿勢でやってきております。

○又市征治君
 先ほどの質疑で片山委員から、歴史事実にどうも違ったものが大河ドラマなどでまだまだあるじゃないかというお話がございました。私はやっぱり、まだまだNHKの番組につきましてもそうしたアジアの国々との、具体的な事実に基づいてとおっしゃっていますが、そういう番組が非常に足りないんではないか。もっとやっぱりそういう歴史を率直に見詰めていく、こういうことなどというものは、日々の報道とは別にしっかりとやっぱり組んでいかないといけないんではないかな、こういう感じを一つは持っています。

 もう一つは、先日来、尖閣列島の事件が毎日報道されたわけですけれども、NHKを見ていまして、アナウンサーの方が我が国の領土である尖閣諸島というまくら言葉を必ず付けてしゃべっておいでになるわけですね。私どもは当然のこととして、この尖閣諸島の領有権問題は当然のことだと、私たちも、我が党としても思っています。ただ、NHKがこのように繰り返し判で押したように一方的にこういう知識を刷り込むような報道の姿勢というのは本当にいいんだろうか、別の意味で疑念も感じます。
 というのは、最後はやっぱり外交的に解決が必要ということになってくる場面に、一方でこの報道がいたずらに国民の反中国感情をあおるような格好になっておったり、あるいは、これはそういうことを今具体的にやったという意味じゃありませんけれども、偏った愛国心をあおるようなことがあった場合に、長期的に見た場合に、これが悪影響を及ぼすことがないように十分な配慮がなされるべきではないか。こんな意見を私は時間の関係がありますから申し上げておきたいと思います。
 さて、この誤った愛国心報道の最も最たるものが戦争のときの問題なんだろうと思いますが、せんだって米軍でも女性兵士救出劇の作られた美談が実はあって、後からこれが暴露されました。そのまねをしたわけではないでしょうけれども、自衛隊も従軍取材の問題に対して厳しい言論統制を事前に報道関係にのませました。大本営、反映の悪夢というのは戦争には付き物なわけです。

 そこで、ちょっとお尋ねをいたしますが、
そのまず第一に、イラク侵攻の大義名分とした大量破壊兵器がなかったという幾つかの有力な証言が、発言がされておることについて、
 二つ目は、ブッシュ政権が発足直後からイラク侵攻を計画していたとのオニール前財務長官の著作について、
 第三に、九・一一テロ以後、犯人がアルカイダであるとの部下の報告をブッシュ大統領が故意に退けてサダムが関与している証拠を捜せと命じたという、こういう証言がなされていますが、
これら三つについて、それぞれNHKではどのような御報道をされたか、簡単に御説明をいただきたいと思います。

○参考人(関根昭義君)
 まず初めの、大量兵器の捜索チームを率いてきたデービッド・ケイ氏でありますけれども、これは一月の二十八日、アメリカ上院の軍事委員会で証言したことにつきましては、NHKでは、翌二十九日朝のニュースで詳しく報道しています。それと、オニール前財務長官の件ですが、これは、情報提供としてアメリカのジャーナリストが出版した本のことではないかと思いますけれども、この件については、この著作については特に報道はしていません。それと、クラーク元補佐官の件につきましては、三月二十四日、朝七時からの「おはよう日本」、このニュースの中で報道しています。

○又市征治君
 そこで、戦時といえば、平和憲法の下にあるはずの日本でも国民保護法制という、言ってみれば戦時法制が提出をされております。この中では、先ほども出ましたが、指定公共機関にNHKも指名をされる、そういう意味では規制の対象にされるということになるんだろうと思います。
 例えば、戦時に備える業務計画の策定について、原案では事前協議義務であったのを法案では報告に緩めたようですけれども、その代わりに今度は総理大臣による必要な助言というのが入ってきています。もう一つの法案でも、特定公共施設の優先利用ということで電波を政府が統制できる、こんな格好になっているわけですが、これら両方を一緒に使えば、NHKに有事を理由に何を報道させ何を禁止するかということを統制をされるおそれが非常に強い、こう言わざるを得ないと思っているわけですけれども、これはもちろんこれから別の法案として論議をいたしてまいりますが。
 NHKは、これに対して昨年十二月に内閣官房あてに五項目、十二小項目にわたる詳細な意見を出されておるわけですけれども、その要点を御紹介をいただきたいと思います。

○参考人(関根昭義君)
 確かに五点について出しています。
 一つは、国民の生命、身体等に直結する情報を迅速的確に視聴者・国民に伝えることは、NHKが指定公共機関に指定されようとされまいと、これは公共放送としての当然の責務であるというのが一点であります。
 それと二つ目は、国民の判断が冷静で誤りのないように総力を挙げて取り組んでいく必要があると。
 三つ目は、報道の自由やそのための大前提である取材の自由、表現の自由が確保されなければならないのは当然であると。
 四つ目は、公共放送としまして、視聴者・国民の期待にこたえ、支持を得られるような放送を実施できるかどうか、その真価が問われると。
 最後は、武力攻撃事態等における特定公共施設の利用に関する法律案については、有事にNHKの放送電波の発射を制限するような国の措置は含まれていないと理解していると、こういった趣旨の意見書を出しています。

○又市征治君
 そうですね。繰り返しになりますが、少しお読みにならなかったところがありますが、緊急に伝えられた情報が正しかったかどうか、時間を置いてきちんと検証するなど、国民の判断が冷静で誤りのないように総力を挙げて取り組むのが報道機関としての当然の責務である。このためにも、有事に際しては、放送事業者の報道の自由や編集の自由が確保されることは極めて重要だ、こういうふうに御指摘をなさっているわけですが。
 最後に、海老沢会長にお尋ねをいたしますけれども、こうした今、私も読みましたが、御紹介いただいたこの中身、そういう意味では、報道倫理に基づいて権力にこびず毅然としてやはり中立と公正な報道に一層の御努力をいただく、そうした決意を最後にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

○参考人(海老沢勝二君=日本放送協会会長)
 私ども公共放送として、有事の際には、国民の生命、財産を守り、そして的確な情報を提供することによって、できるだけ安心、安全が確保されるように報道機関として努力していきたいと思っております。

○又市征治君
 終わります。