第159回通常国会

2004年4月8日 総務委員会


(1)営利のための消防法軽視は人命を危うくする
(2)救急救命士をもっと配置を
(3)ILO勧告に従い消防職員に団結権を


○又市征治君
 社民党の又市です。
 この提案されている法案(消防法等改正案)に入る前に、消防庁の懸案である小規模雑居ビルの防災対策がどのように進んでいるかという点についてお伺いをしたいと思います。
 二〇〇一年九月に新宿の歌舞伎町で起きた小規模雑居ビル火災では、延べ面積、延べ床面積で四百平米という小さなビルだったにもかかわらず、四十四名からの死者が出ました。そういう点では様々な教訓がここから導き出されたんだろうと思います。特に、これらのビルの所有者が、あるいはテナントの業者が営利に走る余り、消防法その他に照らして、今大臣からもありましたけれども、そうした全く形式の面でも、また人命に直接かかわる安全の実質面でも多くの違反を犯し続けたということが明らかだったんだと思いますね。その後、二年半で大分改善をされてきて、違反率が当時九二%ぐらいだったようですけれども、これが今日約三分の一ぐらいに下がって三六%ということと聞いておりますけれども、ただしこれは定点観測の数字というふうに伺うわけですけれども、新規物件だとかあるいは掌握の漏れなどがあればもう少し率が落ちるのかなという感じもいたします。
 どのような取組をされてきたのか、法制面だけでなくて、それを現場で具体的に担保できているかどうか。例えば、歌舞伎町では階段にまるで物が随分と積んであった、実際にそこでチェックをしなければ違反かどうか分からないという、こういう実態があったわけですね。それが人の生死を分けた。そういう点で立入検査の実情、そして改善の状況についてまずお伺いしたいと思います。

○政府参考人(東尾正君=消防庁次長)
 立入検査の実情でございますけれども、消防庁では前回の、前々回の消防法改正を受けまして、違反処理マニュアル、そして立入検査マニュアルを作成、さらにそれの研修のために、全国の予防担当職員を一律にこのマニュアルのとおりできるかどうかの研修に努めたところでございまして、このようなことから、ただいま先生御指摘のように、違反の件数というものは減少してきているところでございます。
 立入検査における課題でございますけれども、これまで単独で行ってまいりましたものを、警察や保健所などと連携して行う率が非常に伸びましたので、これによってある程度実効ある立入りができるということ。さらに、これも当委員会で指摘を受けましたが、例えば風俗営業法等の情報を提供していただいた上で立入りに入るというようなことから効果的な立入りが行われるようになったと承知しております。
 今後の課題でございますけれども、残っております違反物件というものが大変にやっぱり悪質なものがいわゆる沈殿している状況でございますので、これに対応いたしますためには、更なる措置命令の迅速な適用、場合によっては告発の、告発も含めた強力な措置というものが課題でございます。
 しかしながら、一方では、予防担当職員が、やはり消防職員全体の中でそればかりに割くわけにはいきませんので、やはり予防職員の数の確保という問題も一方で重要と考えておりますが、これについては、現在の行財政改革の中では、また救急出動事例が多いという中では職員の確保というものはなかなかに困難な面もあるというふうにも考えております。

○又市征治君
 事件の直後、私は質問の中で、この立入検査等を緊急にまた頻度を増やして行うために、新設された地域緊急雇用対策事業を活用して消防力基準を充足をするように提案をいたしました。当時、片山大臣、今日もお見え、当時の大臣おられますが、片山大臣や石井長官からも、そういう点ではこれの活用というのは一つの方策だということで御努力をいただいておりました。
 折からの不況でもありましたから、リストラの激しい建設業や不動産業、こういうところで職を失った人たちの知識、経験を生かすためにもこんなことは意味があったんだと思うんですけれども、昨年、一昨年、それぞれ前後しますけれども、二千名前後の人々が確保されたというふうにお聞きをしておりますが、この事業はもう打ち切る方向にあるというふうに聞いておりますけれども、こうした人員配置などの面で、これらの総括と今後の防災安全対策について、人材面でどのように消防庁としてお考えになっているのか、改めてお聞きをしたいと思います。

○政府参考人(林省吾君=消防庁長官)
 緊急地域雇用対策事業についてでございますけれども、本委員会におきまして委員から御指摘をいただきました。それを受けまして消防庁といたしましても消防関連業務に従事する職種をこの緊急対策に加えていただき、地域の消防力の強化に役立てたいと、こういうふうに考えたところでございます。
 具体的には、お触れになりましたように、小規模雑居ビル等の防火対象物に対する違反是正指導等の役割を担っていただけるような方をこの緊急地域雇用対策事業の対象としていただけないかというようなことで働き掛けたわけでありますが、採択をしていただきました。具体的には、この事業を活用することによりまして違反是正指導等に効果を上げてきたと考えております。
 実績でございますが、緊急地域雇用対策事業の活用によりまして、平成十四年度は約二千四百人の消防防災支援要員が雇用されておりまして、事業額は約三十一億円となっており、自衛消防訓練指導等の違反是正支援業務を中心に活用が図られているところでございます。平成十五年度も引き続いてお願いをいたしておりますが、事業額は約二十九億円、約一千七百人の雇用が予定されているとお聞きをいたしているところでございます。
 この事業終了後のことも私ども考えていかなければならないわけでありますが、終了後におきましても、防火対象物の定期点検報告制度の活用によりまして立入検査の重点化、効率化を図り、引き続き小規模雑居ビルを中心とした違反是正の徹底を図ってまいらなければならないわけでありますが、今回、活用させていただきました方々の実績も踏まえ、消防組織を挙げて引き続き必要な対策に対応してまいらなければならないと考えているところでございます。

○又市征治君
 さて、今回の法改正、すなわち四十二条第一項第八号の改正の問題についてでありますが、情報提供を要求されて提供しなかった、あるいはまた虚偽の情報を提供した者に罰則を付ける、こうなっておりますね。消防法の方は懲役六か月又は五十万円以下の罰金、石油コンビナート法の方は懲役一年又は百万円以下の罰金と、こういうことになっていますけれども、後者の方は先ほど来出ていますように、特定事業所の統括管理者の責任の問題ですから、これは最近の一連の事業所火災から見て当然のことだというように思います。
 ただ、前者の方は一般人ということになるわけで、一般の居住者や勤務者から延焼のおそれがある対象物の居住者あるいは勤務者まで一網打尽にこの刑罰対象ということなわけ、法文上はそうですね。したがって、この刑罰で脅すような運用であってはならない、こう思うんですが、この点はどのようにここのところは実用面で、運用面で配慮をされていくのか、その点もう少し詳しく聞かせてください。

○政府参考人(東尾正君)
 今回の罰則の拡大でございますけれども、先ほど先生御指摘のような議論がございまして、一般企業に対する罰則はともかく、一般人についてはどうかという議論は確かにございました。しかしながら、石油コンビナート等災害防止法というのは石油企業だけにしか適用にならないということから、RDFなどの事業者には直接の適用がないというようなこと等から、今回、消防法においても罰則の強化を図ろうというふうに考えたものでございます。
 この場合、その関係者が非常に広範囲であるということを今御指摘がありましたが、建物の所有者など火災発生に絡む人々、さらに延焼のある建物にいる人々などが形式的には対象となります。しかし、これの運用でございますけれども、今後これは法務当局ともよく詰めなければいけないわけでございますけれども、まず情報の提供を求めるという段階で一つの縛りがございますので、これについてはむやみに情報の提供を求めるということはあり得ませんので、そこでまず厳格な運用をしたいということ、さらに、これまでも正当な理由としてこの規定には該当しないというケースをいろいろ考えておりまして、例えば、火災現場に駆け付けたものの、お亡くなりになられた犠牲者の方々の場所が分からず答えられなかったような場合、これらの場合についてまで情報が提供していないというふうな理由で罰則を掛けるということは全く考えられませんので、更にいろんなケースを考えながら、議員御指摘のとおり、これが国民の権利の侵害に当たらないような運用に努めてまいりたいと、このように考えております。

○又市征治君
 先月、NHKの「プロジェクトX」で、一九九一年に救急救命士制度を発足させるまでのドキュメントが報道をされておりました。現在、国家試験合格者が一万三千七百人で、年に千三百人ぐらいずつ増えて事故や重病患者の初期の救命に役立っている、こういうことだそうで、大変いいことだと、こう思っております。
 では、現場の配置状況はどうか、またどのように役立っているのか、もう少しここらのところを御説明をいただきたい。

○政府参考人(林省吾君)
 救急救命士の現場の活動状況と配置状況についてでございますが、現在全国に救急隊は四千六百四十九隊ございまして、救急隊員は五万七千九百六十八人となっておりますが、このうち救急救命士が配置されておりますのは三千百四十二隊、一万二千百五十二人となっております。
 御指摘いただきましたように、このような救急隊による救急救命士の活動によりまして、救命者の数は、例えば全国で心肺停止傷病者のうち二千数百人が救命されていると、こういうような実績も上がっておりまして、救命救急士は救命率、救命効果の向上に大きな役割を果たしているところでございまして、今後ともその活動に私ども大きな期待を寄せております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、救急救命士の配置はまだ三分の一の救急隊で運用が行われていないという実態にございますので、消防庁といたしましては、今後はすべての救急隊に救急救命士を常時一人以上配置する体制を目指して、関係機関と連携を図りながら養成を計画的に進めてまいりたいと考えております。

○又市征治君
 大臣に通告をしていないんですが、先ほどからも出ておりましたように、例えば消防車が救命にも出ていけるということで、その車の改造の問題だとか、そういう話、大臣からもお話がございました。
 今お聞きしたとおり、まだこの配置状況が、救命救急士の配置状況がまだ悪いと。こういうことを含めて、非常に人の、人命にかかわる問題でありますから、消防当局からも、この救急救命士のやれる処置の範囲を拡大をしろ、電気ショックだとか薬剤の投与を是非これは我々もやれるようにしろと、こういう話も現場から、やっぱり命を預かっている人々ですから、当然そういう要望が上がってきている。こういうことで消防庁の中でも大変努力をいただいて、そういう点では今、そういう心臓が止まろうとしている、電気ショック装置が救命士ができるようになったとか、あるいは医薬投与も部分的にはできるようになった、大変いいことだと思うんですね。だけれども、現実にそういう人たちが足りないと。
 そういう問題もあるし、先ほど大臣がお答えになっておったような、そうしたもっと救命、全く同じ形だけでいいのかという、本当に心臓などの心停止なんという問題をやろうとするときに、あの車では、私たちも乗ったことある、私も一遍救急車に乗ったことありますけれども、ああいう中ではそれはどだい無理だなという感じがしますよね。
 そういう点で、今この救命救急士のもっと更なる配置の問題、そうした措置について大臣の決意をひとつお聞きをしておきたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君=総務大臣)
 現実問題として、おかげさまで随分、今までに比べて血管確保ができたり、いろいろな指示が医者の判断、医者が同乗若しくはそこにいなくてもできる範囲が前に比べて広がることによって救命率が高まったことは事実だと思っておりますが、実際問題として、例えば気管確保等々はこれは臨床の試験を受けにゃいかぬわけです。そんなの年間に数決まっているんです。地方でそんな練習しようったって練習する相手いませんから、これ結構、現場問題としては、資格取れても臨床を受けられないという方は結構多いんですよ。じゃ、それ探してって、そんな探してすぐあるような話じゃありませんから、これはなかなか、地方に行けば行くほど資格が、それが、現場が試験が受けられないからないという例もございまして、結構これは難しい話で、それ全部まとめて東京にそういうのが来るために、ずうっとそういう患者が来るまでそこに待たしておくわけにもいきませんし、これはなかなか現実問題としては結構難しい問題を抱えてはおりますけれども、いずれにしても、そういったような万が一とかいうときのための救命救急士でもありますので、いろんな努力を今後ともしていかねばならぬと思っております。
 ただ、一番言えるのかなと思いますのは、例のデジタルハイビジョンなんというものが本当にきちんといたしますと、そのハイビジョンを見ながら医者が判断してきちんと指示ができるということになるというのは、将来の方向としてはこれが最も使えるだろうなと思って、遠隔医療というものが非常に大きな助けになるだろうなという、技術的にはそういうことだと思っております。

○又市征治君
 最後に要望をいたしておきますけれども、こうした火災にしろ、そしてまた救命救急にしろ、大変現場で働いている人々は、何人もの方が申されているとおり、日々命を張って、それこそ昼夜分かたずに大変な努力をしている、こういうことだろうと思います。そういう意味で、技術や自らの研さんに努める、こういう努力をなさっておる、こうした消防職員全体の士気をやっぱり高めていく、こういうための努力も大変大事なんだろうと私は思います。
社会的な地位の向上、あるいは団結権の私は付与も非常に大事な問題であると思います。一昨年十二月に私はILOへ行ってまいりましたけれども、そのときも、日本政府はこの団結権のILO勧告を一日も早くやっぱり実施すべきだ、つまり何を言っているかというと、この国際労働基準に日本の場合は大変立ち後れている、こういうことを言っているわけですね。
 そういう点で、それこそ、先ほどもちょっとお名前申し上げて恐縮ですが、さきの総務大臣片山さん、今、与党自民党の公務員制度の責任者でもあられるということでありますし、総務大臣も、今の大臣も、麻生大臣も、そういう点では、この直接的な責任者というわけではありませんが、しかし総務省、多くの公務員を抱えた束ねのところでもありますから、そういう点で公務員労働者全体の労働基本権の回復と並んで、消防職員の団結権の問題の速やかな解決という問題についても改めて私はこの場で強く要請をして、今日の質疑を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。