第159回通常国会

2004年4月26日 決算委員会


(1)労働基準局所管の独立法人は労働者に役立つものなのか
(2)労働者の立場から再建中の企業への猶予措置を検討せよ


○又市征治君
 今日で小泉内閣がちょうど発足三年目を迎えるわけですが、この小泉内閣で進められてきた構造改革路線というのは一面では弱肉強食の競争社会をあおる面は否めないわけで、不良債権処理と称して銀行は手厚く救済をされる一方で、中小企業は容赦なく倒産をさせられてきている、こういうことを言わざるを得ません。
 労働者が法律上の倒産やあるいは事実上の倒産によってどういう実態に置かれているか。これに対して労働行政は何をすればいいか。その一例として、今日は労働保険特別会計からの交付金、出資金で成り立っている事業を取り上げたいと思います。
 その本論に入る前に一つお伺いをしておきますが、この労災勘定一兆円を所管をする労働基準局に伺うわけですが、労働基準局が所管している独法あるいは公益法人のうち官庁出身者が役員をしている団体は幾つあって、またその役員数は幾らか、何人いるか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(松崎朗君=厚生労働省労働基準局長)
 御質問の労働基準局所管の独立法人は四つございます。また、公益法人は八十九ございまして、合計九十三ございますが、そのうちいわゆる官庁出身者が役員に就任している法人は、独立行政法人四、公益法人四十九の合計の五十三法人でございます。
 また、官庁出身者でございます役員の人数でございますけれども、これは今申し上げました法人、所管法人九十三法人の全体の役員千七百二十七人中、百二十六人でございます。

○又市征治君
 これら五十九ですか、団体の事業費はざっと一兆三百億円ですから、大ざっぱに言えば天下り官僚の一人当たり八十二億円余りの事業を左右していることになるわけですね。巨大な利権のピラミッドであり、本当に勤労者のために役立っているか。かなりそういう意味では、この委員会で度々挙げられていますけれども、こうした検証を更に強める必要があるんだろうと、こう思います。
 これらの団体のうちで二番目に大きいのが旧労働福祉事業団、衣替えした労働者健康福祉機構で、事業規模が三千五百五十一億円ですね。政府出資金の残額だけでも、今論議をしているこの平成十四年度の決算でいいますと七千六百六十五億円に上ります。理事長は歴代労働事務次官。もう一人の理事も労働省の高級官僚。この辺りはもう改革が必要なことはもう言をまちません。
 そこで今日は、それはさておいて、この事業団の倒産企業の労働者に対する未払賃金の立替払事業について伺っていきたいと思います。
 小泉改革によって残念ながら冒頭申し上げたように倒産や賃金未払が増える中で、立替払事業というのは大きな役割を果たしていると思います。今日は皆さんのお手元に資料をお配りいたしましたけれども、毎年の未払賃金の立替払の額、また回収金、対政府交付金の比率はどういうふうに推移しているか、簡単にこれ説明してください。

○政府参考人(松崎朗君)
 ただいま先生からお配りございました資料が、多分正確だと思いますけれども、まずこの平成五年、大分前でございますけれども、これ比べますと、新規立替払が当時は四十八億円でございました。これが平成十年以降、この表にございますように非常に増えておりまして、平成十四年度におきましては約四百七十六億円というふうに増えております。
 また、回収金額につきましては平成五年度、これは何も五年度の分を回収したわけではございませんけれども、五年度において回収した金額約四億円でございますけれども、平成十四年度では約七十八億円ということでございます。
 これに伴いまして、このいわゆる政府からの交付金でございますけれども、これは平成五年度約四十四億円だったものが、平成十四年度におきましては三百九十九億円というふうに非常に増えているという状況でございます。

○又市征治君
 大変な増え方になっているわけですけれども、そういう意味ではやはりこの事業、この今の中で見ますと、事業団の全体歳出に占める立替払の割合も一三・四%に上がってきていますね。平成十四年度決算でいえば、新規立替払をしたのが四百七十六億円。これは四千七百三十四企業で、労働者七万二千八百人にこれ出しているわけですね。一人当たり六十五万円立替払している。もっとも、残念ながら一人一人の全額を立て替えたわけじゃありませんね。そして、これに対する原資は、過去の立替え企業から回収している分と、さらには不足分はすべて国庫から交付をしているという、こういうことになりますね。
 次に、こうして倒産企業に立て替えた未払賃金の代位弁済の求償権というものを計上しているわけですが、これがそういう意味ではどのように推移をしてきているかということ。また他方で、その求償権の償却引当金も計上しているわけですが、どのくらいかというと、毎年一〇〇%、こういうふうになっていますね。どうして一〇〇%なのか、ここのところをもう少し説明してくれますか。

○政府参考人(高橋満君=厚生労働省労働基準局労災補償部長)
 ただいまの御指摘の未払賃金の立替払制度でございますが、これを実施、運営いたしております労働福祉事業団、この四月からは独立行政法人の労働者健康福祉機構ということに衣替えしておりますが、ここにおきまして立替払を行いました場合、これによりまして代位取得、賃金債権につきまして代位取得をいたします。この代位取得いたしました賃金債権に対しましては、事業主に求償いたしておるわけでございます。
 この求償残高でございますが、委員御配付の資料にもございますとおり、平成五年度末におきましては約百十六億円でございましたが、これが平成十四年度におきましては約八百四十五億円というふうな数字になってございます。
 一方、もう一つお尋ねのこの求償権にかかわります償却引き当てに関しての件でございます。
 この未払賃金の立替払の対象となりますのがいわゆる企業の倒産ということになるわけでございます。この倒産の事由でございますが、一つはいわゆる事実上の倒産と。こういうケースにつきましては、事業主におきまして残余財産がないということで、ほとんどその求償権を行使しましてもなかなか回収が見込めないというのが実態でございます。
 それから、いま一つは、破産あるいは民事再生、会社更生といったような法律上の倒産に伴う立替払でございます。このケースの場合に、その大部分を占めますのは破産でございまして、したがいまして、この場合、破産手続によりまして求償権の行使をすることによって回収をするということになるわけでございます。
 ただ、この回収でございますが、当該破産企業の残余財産の状況に大きく左右されるところであるわけでございます。この場合、代位取得いたしました賃金債権は、優先的破産債権に該当はいたしますものの、それより優先順位の高い債権等が弁済された後に配当が行われるということになるわけでございまして、そういう意味で、回収の見込みを立てることが事実上困難であるわけでございます。
 このように、この代位弁済求償権でございますが、実態としては大変回収が難しいという性格のものであると。こういうことから、これを実施しております労働福祉事業団の会計処理上の問題としては、財務諸表におきまして、御指摘のとおり、求償権償却引当金というのは、未払賃金代位弁済求償権額、これと同額を計上をして処理をいたしておるものでございます。

○又市征治君
 立替払金の回収は、過去五年間、その資料の真ん中のところに書きましたけれども、実績では過去五年間平均で一八%回収されているわけですね。
 で、毎年、回収額のほかに、今もちょっと出ましたけれども、債権整理額、つまり取りっぱぐれで放棄した額を計上していますね、これの推移。また、整理した理由とその根拠となる内規など、あるんならば、それをもう少し説明をしてください。

○政府参考人(高橋満君)
 整理の問題でございますが、これは、まず推移につきましては、債権整理額は平成五年度におきましては約九億円程度、御配付の資料のとおりでございます。これに対しまして、その後、平成十年度以降、立替払額も非常に大きくなってきておるということもございまして整理額は大変大きくなってきておりまして、平成十四年度末で約百三十八億円という額を整理をいたしてございます。
 それで、この整理でございますが、どういう場合に整理をするかということにつきましては、この実施主体の労働福祉事業団におきまして定めております業務方法書というものがございまして、その六十三条の七、これは旧事業団......

○又市征治君
 簡単に。

○政府参考人(高橋満君)
 はい。
 事業団の業務方法書でございますが、ここで、一つは、消滅時効が完成して、かつ行方不明の事業主が仮にそれを時効が完成したら援用をするであろうと見込まれるような場合、それから法人でございます事業主の清算が結了いたしました場合、それから三点目に、会社更生法に基づきます、基づいて策定されます更生計画の中で、事業主が賃金債権についてその責任を免れたこと等々の事由が生じたときに、一部又は全部みなし消滅として整理を行っているものでございます。

○又市征治君
 次に、大臣にお伺いをいたしてまいりますが、中には企業再建がまだまだ困難で、操業はしているけれども期限どおりに返済できないという企業も出てきていますよね。これに対するいわゆる猶予措置などはどのようにしているのかということについてお伺いしたいわけですが、倒産をして、当然これは労働者にもしわ寄せが非常にたまっています。事業団への返済優先を理由に、労働者には何年もの間賃金の二割カット、三割カット、あるいはひどいのになると五割カットする、一時金はもう全くゼロだ、こんなことは、もうごろごろ、あちこちであるというのはお聞きのとおりですけれども、その労働者の生活の窮状というのはもう大変なものがあると思うんです。
 こういう格好で労働者をそこまで追い込んでおきながら、一方でこれを、じゃ辞めていかれたらどうなるか、企業再建も何もできない、こういう、経営者にとってみても大変なことだろうと思いますが、少ない賃金で何とか働いてくれよと、こういうことになっているわけですが、そこで、事業団としても、金は貸し付けたけれども、立替えはやったけれども、立替金も、倒産して、本当に倒産してしまったんじゃもう立替払金も回収できない、結局、政府の交付金は増え続けるだけだ、国庫の損失はますます増えていくと、こういうことになるわけですね。
 そこで、例えば、更生中の企業が労働者に賃金、ボーナスのカット分などについて一定の改善をします、これじゃみんな労働者辞めていってしまうということでも困るから、改善をするということを条件にその原資に相当する返済額をもう少し返済の繰延べをする、そういう猶予をするという措置などについてはどのように工夫をされているのか。
 労働者の生活をやはり改善をし、力を付けることで下から企業も再建をしていく、そして返済実績も中長期的には上げていくと、こういうことが大事なんだろうと思うんですね。これがそういう意味では積極的、能動的な労働者福祉の面でもあるんだろうと、こう思うわけですが、大臣、そこのところはどういうふうにお考えですか。

○国務大臣(坂口力君=厚生労働大臣)
 未払賃金の立替払制度というのは、これは事業主に代わって立替えを行うわけでありますし、当面の救済措置になることは間違いないわけでございます。しかし、今お話しのように、再建中の企業で、そしてその債権者が、それを今度は返還することができないといったようなケースもそれは確かにあり得るというふうに思うんです。
 しかし、この制度は、だからといって債務者であります事業主に求償を求めないというわけにはいかない、これはやっぱり求めなければならないというふうに思っておりますが、更生計画なんかを立てるわけですね、倒産しました企業の再生のためには、その再生計画を作成する段階において管理人などとの関係者と協議をして、そして救済に対する履行期限の延長について検討すると、その段階のところでどうするかということを、きちっとやらなければいけないということだろうというふうに思います。

○又市征治君
 正に今大臣おっしゃったとおりなんで、まだまだ、本当に苦労して何年も掛けて確かに計画は立てたけれどもそのとおり残念ながらいかないと、そして細々ながらやっぱり金は返していく、だけど労働者に非常に多くのしわ寄せをしている。だから、そういうところにあって少しやっぱり柔軟に、言ってみれば、労働者への一時金も全くゼロだなんというのはもう本当に子供、大学へ行っているのをやめさせてこにゃいかぬ、ローンが払えない、こういう労働者がいると、じゃ、そこで辞めていって、その労働者が辞めていったらその会社はつぶれていく、こういう状況などがやっぱりたくさん私の方へいろいろと話ありますよ。
 だから、そういうところをもう少し工夫をして、やっぱり厚生労働省の立場で言うならば、この未払賃金の立替払をより多く回収を確保する観点からしても、当該の倒産企業の更生あるいは再生の計画認可に必要な限りにおいてむしろ弁済額の一部免除、あるいはそういう意味ではもう少し延長をやっていく、こういうことについて、大臣、もう少し明快な御見解、そこらのところももう少し工夫せにゃいかぬということに、お考えになりませんか。

○政府参考人(松崎朗君)
 私から御説明させていただきますと、これは正に、先生御質問の件は倒産とか破産ではなくて会社更生なり会社再生という段階だと思います。
 そうした場合に、正にこの一部を、機構が支払いました未払賃金の立替払でございますけれども、これも元も子もなくなってしまうわけにはいきませんので、その更生計画とかそういうものを作る段階でどれだけその管財人等と、関係者と協議をいたしまして、どういうふうな更生計画、再生計画、そういうものを作るかという中で弁済計画というものについても判断していくということになろうかと思います。
 また、更生中でございますれば、その更生計画の変更ということもあり得ますので、そうしたものにつきましては、その状況、そういったものを、また変更とか、そうした計画の変更、そうした大きな、大きな中で検討する余地というものはあろうかというふうに思います。

○又市征治君
 今も申し上げてまいりましたように、やはり本当にせっかく立て替えたんですから、元も子もなくなるような話にならないように、そこのところはかなり柔軟に考えていきませんと、実態が、一遍計画を立てたから、それでもうそのとおり何だろうと納めてもらわにゃいかぬと、その下でおいて労働者がどんな状態になっていようと構わぬという格好にはならないように本当に工夫してもらわにゃいかぬと、こう思うんですね。
 今日はあと時間がありませんから、一部大手のスーパーの問題でいろいろと騒がれた問題がありますが、私は今日はそこは言いませんけれども、やはり柔軟に、そこの労働者も救いながらその企業をやはりどうやってもう少し中長期の目で見て再建をさせていくか。そのことによって、それこそ所得税も払わせる、そんな格好でちゃんと回収金も、立て替えた金も回収できる。ここらのところはやっぱり柔軟な猶予措置みたいなことについて更に研究をしてもらいたいと思います。その点はどうですか。

○政府参考人(松崎朗君)
 先ほども申し上げましたように、この更生計画中でございますれば、その更生計画の中に入っております弁済計画、そうしたものが全部入っているわけでございますので、そうしたものの中で、本当に会社がそこから更生あるいは再生していくということを確保していくために、全体の流れの中でいろいろ関係管財人等と協議をしていくということになろうかと思っております。

○又市征治君
 終わります。