第162回通常国会

2005年3月16日 予算委員会



(1)国によって中国に放置された残留孤児
(2)差別的とも言える不充分な支援策
(3)養父母を見舞ったために止められた生活保護
(4)年老いた孤児の死を待つことを「政治」と言えるのか


○又市征治君
 社民党の又市です。
 今日は、いわゆる中国残留孤児の支援策についてお伺いをしたいと思います。国によって中国に放置をされた人々ですから、本当は残留という言い方がいいかどうか、私は疑念を持っているわけですが、まあ通称そう言われていますからそういう言葉を使いますけれども。
 厚生労働省の調査などによりますと、現在二千七百人余りが帰国されて、そのうち約三分の二の一千八百人余りが国を相手に訴訟を起こしておられて、だんだん増えている、こういうことですね。最近、北朝鮮による拉致被害者との比較がなされています。拉致は国交未回復の外国政府によってなされた国家犯罪であり、政府はこの加害者ではないけれども、二〇〇三年から法律で救済を開始した、もとよりこれは私どもも賛成です。
 では、残留孤児に対してはどうかということですが、これは疑いもなくかつての大日本帝国政府が加害者であったわけで、そういう意味では、旧満蒙地帯に土地と資源を奪って百万人の開拓移民計画を立てて、国策としてやっぱり売り出したということでありました。戦後、日本の政府は当然、連合軍や国連などに依頼をしてこの開拓団、家族を安全に引き揚げさせる、こういう責任があったわけですけれども、それを残念ながら講じなかった。
 そして、戦後十四年目ぐらいのところで、一九五九年になりますけれども、一万三千六百名余り、戦時死亡宣告すら出してしまった。こういう歴史があります。孤児たちは当然幼少ですし、物が言えないわけですから、大変な塗炭な苦しみを余儀なくされてきた、多くの人が亡くなったということが言われています。

 そこで、まず実務的な問題で事務方にお伺いしますが、一つは、拉致被害者に対する給付金は月額幾らか。二つ目に、残留孤児は一回限りの支度金になっていますけれども、これは幾らになっているのか。三つ目に、軍人恩給の最高の階級と最低の階級のこの支給額はどういうことになっているのか。
 この三つをお伺いします。

○政府参考人(小熊博君=内閣府拉致被害者等支援担当室長)
 拉致被害者の方々につきましては、北朝鮮当局による未曾有の国家的犯罪行為により拉致され、北朝鮮に居住することを余儀なくされるとともに、本邦における生活基盤を失ったこと等、その特殊な諸事情にかんがみまして、本邦に永住する場合には、自立を促進し、拉致によって失われた生活基盤の再建等に資するため、いわゆる支援法に基づきまして拉致被害者等給付金を支給することとされております。
 その支給額でございますが、帰国した被害者及び被害者の配偶者等の数に応じまして、単身世帯の場合は十七万円、二人世帯の場合は二十四万円、以下、世帯人員が一人増えるごとに三万円ずつ加算した金額、すなわち、三人世帯の場合は二十七万円、四人世帯の場合は三十万円、五人世帯の場合は三十三万円を毎月支給することとしております。

○政府参考人(大槻勝啓君=厚生労働大臣官房審議官)
 中国残留邦人等に対します自立支度金についてのお尋ねでございます。
 この自立支度金につきましては、永住帰国をされた場合に、当座の生活用品等身の回り品の購入資金として、一時金として支給しているものでございます。
 平成十六年度におきまして、基本額といたしまして、大人十八歳以上の場合、十五万九千九百円、子供はその半額、七万九千九百五十円を支給しておるところでございます。加えまして、世帯の構成人数に応じまして一定額を加算をしております。
 支給総額の例でございますけれども、大人一人の場合は三十一万九千円、大人二人の場合は四十七万八千九百円でございます。

○政府参考人(戸谷好秀君)
 恩給の関係につきまして、私の方から御報告いたします。
 平成十六年三月末現在で軍人の、旧軍人の普通恩給で、一番高いグレードで現存されておる大佐の方でございます。これが、平均の年額で二百八十五万余ということでございます。一番低い平均年額といいますと、当然、兵になるわけでございますが、兵の場合は五十九万三千円余という形の数字になっております。

○又市征治君
 今お聞きのとおり、大変な格差があるわけですね。
 じゃ、国民年金について、拉致被害者と残留孤児の扱いはどのようになっていますか。

○政府参考人(渡辺芳樹君=厚生労働省年金局長)
 お答え申し上げます。
 拉致被害者の方々につきましては、先生先ほどおっしゃられましたように、北朝鮮の国家的犯罪行為ということで国外に居住することを余儀なくされた極めて特殊な事情にございますので、年金制度に加入できなかった状況にかんがみて、国民年金制度において次のような特例措置を講じております。
 一つは、帰国した被害者が拉致されていた期間を国民年金の被保険者期間とみなすこと、二つは、その間の年金保険料に相当する費用は国が負担し、保険料納付済期間とみなすこと、これにより被害者の年金を保障するというものでございます。
 一方、中国残留孤児の方々につきましては、戦争に起因して生じた混乱等によって本邦に引き揚げることができず、本邦以外の地域に居住することを余儀なくされたという事情にかんがみまして、国民年金が創設された昭和三十六年四月から永住帰国するまでの間を特例的に保険料免除期間とみなして、その期間につきましては三分の一の国庫負担に相当する年金額を保障しております。加えて、保険料免除期間とされた期間について、永住帰国後一年を経過した日から数えて五年間は特例的に保険料の追納を認め、追納された保険料は年金給付額に反映する、こういう仕組みになっております。

○又市征治君
 そこで、大臣にお伺いしますけれども、今あったように、残留孤児の場合は、三分の一の給付というのは国庫負担分相当額にすぎないわけですね。配慮したとはとても言えないし、また月二万二千円で今到底生活できませんよ、これ。残留孤児も、帰国までの期間を何かこの年金制度ができたときからということじゃなくて、このみなし納付期間、全体をみなし納付期間とすべきじゃありませんか。その点、お答えください。

○国務大臣(尾辻秀久君=厚生労働大臣)
 先ほど来お答えがありますように、それぞれの事情によって国がどういう支援をするかというのは決まるものであると考えます。したがいまして、いろいろ今お比べになったんですが、そのお比べになったものはそれぞれの事情がやっぱり違いますから、その事情に応じてということにどうしてもなるということでございます。
 そして、特に北朝鮮に拉致された方々といわゆる中国残留孤児の方々のことも比べておられますけれども、これは一方は、再三答えの中にありましたように、平時において突然拉致されたという、この平時におけるということでございますし、一方でこの中国残留孤児の方々というのは戦争に起因して生じた混乱という、戦争に起因しているという、ここのところが一番基本的に状況の違うことだと思いますが、したがってそういう状況の違いによって支援の仕方が変わってくると、こういうことだと考えております。

○又市征治君
 孤児本人で日常生活程度の日本語すらできないというのが七三%、生活保護受給世帯が六六%。この人たちの年齢を考えますと、今六十三歳ぐらいだと思いますが、この生活状態は今後改善されるというふうに思いますか。これは事務方、調べていると思いますから。

○政府参考人(大槻勝啓君=厚生労働大臣官房審議官)
 御指摘のように、近年、中国残留孤児の方々が高齢化しておるということにつきまして認識しておるところでございます。そういうことも踏まえまして、私どもとしては、関係省庁一体となりまして、また地方公共団体とも協力をいたしまして各種の自立支援策、例えば日本語の習得の問題、また就労支援の問題、その他の生活面での様々な支援策等講じているところでございます。
 例えば、平成十七年度、来年度におきましては、医療、介護を必要とされるような方に対しまして自立支援通訳を今も派遣しておりますけれども、この派遣期間を拡充するといったような施策を予定をしているところでございます。
 これに限りませんけれども、今後とも中国残留邦人の方々が地域社会におきまして安定した生活ができますように、引き続き自立支援策の着実な実施に努めてまいる考えでございます。

○又市征治君
 ここに、十年前鹿児島に帰国をした六十歳代の元孤児の手紙をいただいています。たどたどしい日本語で意味はよく分からないところもあるんですが、行間からその心情がよく読み取れるんですが、要約して言いますと、私たちは教育を受ける機会を奪われ、鬼畜日本人の子供と呼ばれて日本政府が中国で行った仕打ちの仕返しを受けた、帰国すればしたで言葉が壁となり、外国人扱いされ差別された、こんなふうに書いています。厚生労働省の実態調査でも、高齢でもはや日本語習得もそして就労も難しい、こう出ているわけです。
 むしろ、そういう意味で言うならば、平時にとか戦時ではなくて、日本の国がこの子供たちを放置してきたんですよ、帰す手続もろくにしないで。むしろ、そういう意味では拉致被害者と似た状況であり、これに同等の待遇を求めることは大変何か問題があるんですか。
 厚生大臣、もう一度お聞きをします。

○国務大臣(尾辻秀久君)
 残留孤児の皆さん方が大変お気の毒だということは、私もそのように思います。
 したがって、その中で何ができるかということでございますが、基本的には、先ほど申し上げましたように、やはり状況の違いによって支援の仕方が変わってくるということは、これはやむを得ないところだというふうに思うわけでございます。
 したがいまして、帰国された中国残留邦人の方々につきましては、申し上げましたように、これまで苦難の道を歩まれたことや、残留邦人の方々の、これは今先生がお述べになっておられますけれども、そのとおりでありまして、高齢化をしておられます。そうした現状を踏まえて、今後とも、先ほどちょっと事務方からお答えいたしましたけれども、十七年度予算でもできるだけのことはいたしておるつもりでございまして、きめ細かな支援策を講じてまいりたいと考えます。

○又市征治君
 まあ、ドミニカへの移民を政府が見捨てたことについて、あれだけ厳しく追及された正義感と人権感覚の持ち主である尾辻さんの答弁とは、どうも受け取り難い。満蒙開拓団や孤児への思いも同じじゃないのかなと、どうもそういう意味ではおかしいなと、こう感じます。
 国民年金を受給しても、孤児の方は生活保護で同額を削られてしまうわけですね。坂口前大臣は、生活保護に代わる新制度を考えたいと、こう答えられました。これはもう大変適切で緊急な改善策だろうと、私はそう受け止めていました。
 また、一昨年十月二日、小泉総理は参議院での質問に対して、こういう状況について、「身につまされました。」「本当にお気の毒だと思っております。」「温かく迎えるような対策を講じなきゃいかぬ」と、こう答弁されています。
 尾辻大臣は、この前大臣と総理の答弁に沿ってどんな対策取り組んでいく決意なのか、どういうことが検討されているのか、特に生活保護との競合の問題について、血の通った方策をお示しいただきたいと、こう思います。

○国務大臣(尾辻秀久君)
 生活保護制度につきましては、まあ今更申し上げるまでもないことでありますけれども、資産、能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する者に対して困窮の程度に応じた保護を実施することとされておりまして、国民年金についても、それはそれで一遍収入と認定した上で最低生活費から収入を差し引いた差額を保護費として支給するということになっております。したがって、このぐらい必要だということで、年金の収入がこれだけあればその差額を支給するという、こういうやり方になっておるわけでございます。その生活保護制度は、困窮に至った理由は問わない、いかなる者に対しても平等に最低生活を保障する制度でございます。
 申し上げておりますのは、国民全部に同じように平等に最低生活を保障するという制度でございます。したがって、国民年金の収入認定についても、そういう意味では中国の残留孤児の皆さんだけを特別な扱いにするということは困難なことでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、お気の毒だということは確かでございますから、私どもとしてもできることはさせていただくと、この思いは変わりがないところでございます。

○又市征治君
 中国にいる養父母の病気を見舞いに行ったら生活保護費を削られる、これは正に血も涙もない仕打ちじゃないですか。残留孤児の方にそういう意味ではこういう扱いがされているじゃないですか。こんなことぐらいはやめることできませんか、大臣。

○国務大臣(尾辻秀久君)
 今言っておられるのは、孤児の皆さんが養父母のところに、中国に会いに行かれた、会いに行かれる、そのときの生活保護をどうするかということでございますが、今は国外へ出られたその間だけは生活保護を止めさしていただくということになっております。これはまあ、二週間行かれると二週間分だけの生活保護を止めさせていただくということは、これは今の制度からするとそれは変えられないところでございまして、制度上は変えようがないということだけをまずは申し上げます。

○委員長(中曽根弘文君)
 時間が参りましたので、まとめてください。

○又市征治君 はい。
 大臣ね、山崎豊子さんの「大地の子」、これ読まれたり、あるいはテレビで見られたかもしれませんが、正に涙なしでは見れない物語でしたよね。あれはまだ理解のある教育者が養父母だったんですよね。それ以下の人たちがたくさんいると。そういう人たち、裁判今訴えて、この結論出るまで地裁、高裁、最高裁、また手をこまねいて見ていくんですか。本当に年老いた孤児の死ぬのを待つような、これが政治と一体言えますか。
 ハンセン病の例もあるわけですよ。判決を待たずに、今申し上げたことぐらいはすぐに改善なさるようなその努力を是非していただきたい。これは引き続き私もこの問題については追及させていただくことを申し上げて、終わりたいと思います。