第162回通常国会

2005年3月17日 総務委員会



(1)実質的に増税となる定率減税縮減に反対
(2)低賃金労働者からではなく、法人や高額所得者から徴税を
(3)階層分化のように拡大する収入の格差
(4)課税で法人や高額所得者の優遇は抜本的な誤り


○又市征治君
 論点が大体絞られていますから同じような主張になりますけれども、今回の定率減税の縮減、つまりは実質増税になるわけですが、私どもも、この景気、経済、社会の現状では反対だと言わざるを得ない。なぜなら、いわゆる景気回復は主に大企業、製造業にとどまっておって、勤労者は減収で消費は極めて弱々しい状態が続いている、こういう認識からであります。
 なぜそんな形で勤労者の減収が続いているのか。長期不況に藉口して企業のリストラ、合理化が次々と繰り返されて勤労者の所得が切り下げられてきたということなわけですが、首切りや賃下げ、様々な形での非正規雇用労働者への置き換えが随分進んでいるわけですね。実質的なそういう意味では賃下げが横行している。こういうことでありまして、ですから労働者の数は若干増えたと、こうなっているんだけれども、総賃金は減り続ける。
 先ほど財務省は、いや、ここは増えているんだみたいなことを言っていましたが、十四日に厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査でも三年連続だと、可処分所得なんかについては六年間も下がっている、こういう状況がずっとあるわけです。
 麻生大臣も、八日の衆議院で我が党の横光委員の質問に対して、景気が回復している指標の一つとして失業率、有効求人倍率の好転も挙げられているわけですけれども、しかし今は、今私述べたような、雇用の頭数が若干増えても非正規雇用への置き換えというのがもう、ものすごく激増していますね。そういう点で、大臣、この低賃金労働者の蔓延という、こういう事実、どのように御認識なされておりますか。

○国務大臣(麻生太郎君=総務大臣)
 雇用につきましては、又市先生、これは我々の世代と今の若い人の意識はかなり変わったことも計算に入れておかないかぬところなんだと私どもも思うんです。
 今ほどではありませんけれども、景気の良かったときは良かったときで、やっぱりフリーに移動できる、勤めた会社に生涯ずっといる終身雇用というようなものが崩れて、いろんな形で移動できる方がいいというようなアメリカ的に、ものに考えが随分一時期はやった、これが一つ。二つ目は、更に悪くなってきて、景気が悪くなってくると、今度は今言われたように正規を望んでもなかなか正規雇用してもらえないという方が増えてきた。これ、両方の理由が起きておると私どもも思っておりますけれども。
 その意味では、正規雇用の方が基本的には、御存じのような年金の話やら何の話やら、企業の負担が大きいというのが不正規雇用というのに走るという、経費節減の意味から走るというのは、私は経営者側からいったらある程度理解ができるところなんです。
 それからもう一点は、やっぱり企業側にしてみれば、そういった不正規雇用をあっせんするいわゆる人材派遣というようなもの、昔でいえば口入れ稼業ですな、又市先生や我々の世界だと口入れ稼業の方が通じやすいのかもしれませんけれども、こういった職業というものが物すごく実は進みまして、私どもの会社でも、生産部として営々と三十何人、超優秀な建築士やら何やら何十人持っていたのは、もう全然、大きな資産を、新たに設備投資をするというとき以外はふだんは余り使わないというようなのでも持っとかなきゃいかぬかったのが今までですけれども、今は、そういう大きな百億単位の工場を発注するときには、そういったできることを持っている人材派遣業のやつを呼んで、その会社にやらせた方がはるかに、五年に一遍、六年に一遍の設備投資の間、ずっと雇っているよりはそっちの方が安いという計算にみんななってきた。その雇われている人たちもそういう意識になってきたというような、今具体例を引きましたけれども、そういうものを含めて、すごく意識が変わってきたので、両方起きておりますので。
 今言われましたように、確かに不定期雇用の方が増えてきておりますが、その不定期雇用の方の給与もここに来て、何となく今ずっと下がっておりましたのが、今年度に入ってから不定期雇用の方の給与は下げ止まった形の数字が上がってきていると思いますけれども。
 そういった意味で、いろいろ不景気というのが大きく作用して生活保護が増えてみたり、いろいろなことになっておると思いますけれども、今言われたような部分も併せて考えておかねばならぬ経済の実態かなという感じと、両方の感じがしております。

○又市征治君
 そういう指標がないわけじゃありませんけれどもね。大臣、やっぱり勤労者全体の三分の一を超える非正規雇用、一千五百万超えているわけですよね。それはもう経営側が意識的にこれやっぱり推進しているわけですよ。こういう社会がどうかということを、私はむしろ、これは日本の社会がおかしくなっていってしまうということで大臣の認識をお聞きしたので、ちょっと擦れ違っていますが。
 先に進みますけれども、大企業は減収なのに増益だ、こういうゆがんだ形で、むしろ、もちろんそれ、増収増益もありますけれどもね、二期連続で過去最高の利益を上げているというのは、これは出されているわけですね。だから、三月三日の朝日新聞見ていましたら社説で、「春闘 そろそろ出せるはずだ」、こういう見出しで、「正社員が賃金の安いパートなどの働き手に置き換わったため、GDPが実質的に一・七%も押し下げられている」というふうに指摘しているわけですね。そして、現状、「踊り場だからこそ、払う賃金を増やし、個人消費を押し上げる意義は大きい。」、こう述べているわけです。
 労働者への分配が回復されていないのに、今ここで論じているこの税の問題ですが、早々とこの消費マインドに冷水を浴びせる、正にそういう意味では時期尚早の一語に尽きる。さらに、今回の法案の中には、今も出ましたがフリーターあるいは老人への課税強化も含まれている。
 では、一体どこにこの財源を求めるべきかということでありますけれども、これはもう先ほどからずっと出ておりますように、定率減税と一緒に行われていた法人税や法人事業税の税率の引上げと、そういう意味では所得税、住民税の最高税率の引下げ、あっ、さっきの引上げじゃない、引下げですね、両方とも。つまり、大企業と高額所得者への減税分をやっぱり復元すべきだろう、これだけ格差が開いているわけですから。国税と地方税で法人が二兆五千億、個人の高額所得が一兆円と、こういう格好に前のときはなっていたわけですが、ここら辺のところをどういうふうにおっしゃる、これは事務方ですかな、是非答えてください。──いや、簡単に、前の、要するに数字言ってやればいいんです。

○政府参考人(板倉敏和君=総務省自治税務局長)
 済みません。十七年度一・一兆円、十八年度一・一兆円程度の負担増になるというふうに見込んでおりますけれども。
 各種のこういう負担増が経済に与える影響につきましては、それぞれの税制改正による個々の負担増のみを取り上げて議論をすることは適当ではなくて、例えば歳出面を含めて、経済全体の中で総合的に考えていただく必要があるんではないかというふうに考えております。こういう……

○又市征治君
 いや、それを聞いているんじゃない。大企業、高額所得者の減税分は幾らだったかと聞いている。

○政府参考人(板倉敏和君)
 大企業……

○又市征治君
 一年間で幾らだったかと、こう聞いている。

○政府参考人(板倉敏和君)
 これまで。

○又市征治君
 いやいや、それを復元したら幾らになるのかと。

○委員長(木村仁君)
 発言は許可を求めてください。

○政府参考人(板倉敏和君)
 済みません。

○又市征治君
 いやいや。一体全体、国税と地方税合わせて、この減税をした法人税やあるいは所得税、住民税の方を下げたわけでしょう。これを元へ戻したら幾らかと、こう聞いているんですよ。

○政府参考人(板倉敏和君)
 失礼いたしました。
 先ほど御答弁させていただきましたとおり、国、地方合わせまして四千数百億、大体最高税率を元に戻せば、まあ五千億弱ぐらいになるということでございます。

○又市征治君
 法人税、また──いやいや、法人、法人税の関係、全然抜かしているじゃないですか。答えられないならいいですよ。時間ばっかりたっていくんだ。

○国務大臣(麻生太郎君)
 いや、所管じゃない、所管じゃないから……

○又市征治君
 いやいや、聞いておかなきゃ、聞いているんです。質問したんだから。
 委員長、いいです。
 いや、それは後で資料ください、それをちゃんと通告してあるんだから。
 そこで、法人や高額所得者を擁護するのが抜本改革であって、これは恒久的に続けるという発想というのは、私はもう税収増のための政策として、それこそ抜本的な誤りではないかと、こんなふうに思っています。
 述べたとおり、日本社会も急速に今、階層分化が進んでいるわけですね。生活保護基準以下と言われる年収二百万円以下の世帯が一七%、六軒に一軒ですよ。こういうところまで進んできている。恐らく、戦後最大の社会的格差と言ってもいいんではないか、こんなふうに思います。これが小泉構造改革の結果じゃないのか。だからこそ、今、税の所得再分配機能の発揮が大事なんじゃないか、こう思うわけです。
 大臣、こうした社会的な、社会経済格差が拡大をしているこの事実、どのように御認識されますか。

○国務大臣(麻生太郎君)
 今の言われたように、この数字を見ましても、昭和四十二年当時に比べて、いわゆる例のジニ係数ですよね、ジニ係数というのは高くなっているということは確かなんですが、いわゆる再分配というところで引っ掛けてきますので、結果としていわゆる格差というものをいろんな再分配機能で上げて、その差を押し詰めているというのが実態なんだと思っておりますので、今言われましたように、個人所得税のフラット化というのが傍ら進んでおります中で、社会保障の再分配機能というものも高まっているというんで、財政全体から見ればかなり消費が上回っているとは言えないんじゃないかと思っております。
 もう一つの、分配構造の話が出ておりましたけれども、これを見ますと、これは世界じゅうの比率でいかないとなかなか難しいところなんだと思いますけれども、所得の分配状況の国際比較を見ますと、最下位、いわゆる一〇%の人口の所得シェアというのを先進国で見ますと、日本はほぼ最下位で差が一番少ない、四コンマの八ということになろうと思いますので。それから、逆に最上位の一〇%のところの人口比という割合の場合は、日本の場合は極端に少なくて四・五%しかいない。メキシコ、アメリカの三〇%だ、一〇%だというのとえらく違うという形になっておりますので、そういった意味では随分広がったという御指摘はよく聞くところでありますけれども、それでも先進国の中じゃ今でも一番低いという、差が一番少ないという形にはなっておるような感じがいたしますけれども。

○又市征治君
 どうも、この事務方が準備するのは、都合が悪くなってくると外国のどっか都合のいいところの数字持ってきて大臣にそんな話させるわけですが、日本の社会で格差が本当に非常に開いてきているということを私は申し上げているわけで。そこで今、一体全体この増税というのは、実質増税というのはいかがかと、こう申し上げているわけです。
 次に移りますが、財務省は先ほどの主張でも消費が回復していると、こう言っているわけですけれども、それは二極分解した上層の富裕層のミニバブルの需要にすぎませんよ。
 今回の増税は、夫婦と子供二人のモデル世帯で給与収入五百万円と仮定すると、一万八千円、これに配偶者特別控除の減、さらに昨年の年金と雇用保険の改悪、合計約四万六千円の負担増と、こう言われるわけですね。
 橋本内閣の一九九七年の減税廃止と消費税二%アップと医療費を含む大幅な負担増の誤りというのは、もう大臣も先ほど御指摘なさったように、正に大不況の招来によって証明をされたということでした。あのときに比べると、むしろ今回、小さいんじゃないのかと言う人がおります。
 しかし、私は、重要な違いは、一番冒頭に戻るわけですけれども、今回は九七年当時に比べて労働者への分配がどんどん落ちてきている。それも六年連続、こういう実は状況と、可処分所得が減り続けている、こういう状況なんですね。その中で増税がもたらす最後の一撃、消費、経済全体の失速のおそれは本当にないのか。大臣は、いや、おそれは若干ないわけじゃないと、であるから、だから半減だというお話ですが、この点、もう一度丁寧にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君)
 今言われましたように、橋本内閣のときのは、よく通称九兆円と言われるときには、あのときにはいわゆる社会保障関係並びに消費税合計で約九兆とよく言われるところの数字ですが、あのころのほどの影響は今回のであるかと言われると、あのころは御存じのように、アジアの通貨危機の真っ最中のときでもありましたのと、今とは国際的な経済状況は全く違っているのが一点。それから、周り、我々の周りにありますところでいきますと、中国等々からの輸入、中国への輸出、中国の輸入が急激に増えておる。また、アメリカ等々の景気はあのころに比べたら比べ物にならないぐらいいいなどなど、いろんな意味で日本の置かれている経済状況はあのときほどお先真っ暗、不安というところではないというのだとは思っておりますけれども。
 傍ら、その間ずうっと不況、不況、不況と言われた中にあって、少なくとも昭和七年、高橋是清大蔵大臣以来初めて日本というのはデフレ下の不況というのをやっておりますので、そういった意味では、経験者はゼロですから、極めて、不安という気持ちは極めて高い。したがって、可処分所得は減っておるという話ですけれども、同時に物価も下がっておりますので、そういった意味では形が随分変わってきているなとは思っております。
 ただ、今おっしゃいますように、いろんな数字があのころに比べて明らかに良くなっておりますけれども、私は一番の指標にしておりますのは、景気が良くなったと思っている指標の一番にしておりますのは、企業が設備投資のために銀行から金を取るという行動を開始するかしないかなんです。設備投資が増えた、増えたと、機械受注が増えたと大蔵省はよく言うんですけれども、機械受注が増えりゃ半年後には設備投資が増えると。これはこの世界の常識ではありますけれども、増えたならば、当然、その設備投資に見合う五億なら五億、十億なら十億の金をどこかから資金を調達しないとそれはできないはずなんですが、その資金の調達をすれば、通常は銀行から調達すれば銀行の貸出しは増えるはず。
 ところが、一貫してずっと減り続けているという、銀行の貸出額が絶対量が減っているというのは、明らかに企業は設備投資をしながらも自己資本でしかやらない、金を借りてまでやらないというところは、企業が自分の財務体質を考えてやっているというのは、やっぱり絶対だと思えば金借りますよ、金利はえらく安いんですから。それにもかかわらず、金を借りないというのは、企業側の方も、あの貸しはがしだ、あの騒ぎの真っ最中で、もう嫌、痛い目に遭いましたから、銀行は不信、こいつら信用でけぬとおなかの中で思っているのが普通だと思いますね。
 したがって、金借りてまでということをやる気はないということが一番大きな理由ですから、したがって今回もあのときほどはないけれども、しかし今まで、今でも景気は間違いないというところまでは、企業の意識はそんなほど前向きにはなっていないと思っております。

○又市征治君
 まだ幾つか質問残ったんですが、時間の関係で最後にいたしますが、大臣ね、先日、所信質疑のときに、政府による交付税の計画的な切下げで地方経済が崩壊するのはもう止めるべきじゃないかと、私、こんなふうに申し上げました。で、大臣は、やはりめり張りを付けにゃいかぬ、こういう格好で答えられているわけですね。
 そこで、この住民税の階層制についても同じことが言えるんではないかというふうに私は思います。政府は、住民税のフラット化をしたいようにどうも聞こえてきてしようがないんですが、それは逆で、ある程度の累進性を回復をして、担税力のある階層からやっぱり税をいただくということこそが正しい意味での公平な負担、そういう意味では応能負担の原則、そして地方への、地方税への住民参加になるんだろうと私は思うわけですが、この点についての大臣の御見解をお伺いいたします。

○国務大臣(麻生太郎君)
 御指摘のありましたように、個人住民税につきましては、いわゆるフラット化することによって、いわゆる住民税というのは人、地域におります会員、その地域の会員みたいな、会員税みたいなものですから、そういった意味では広く平等な税にというのが、地方税からいったら、応益原則から見ても普通、それ応分の、負担としては、税制としてはふさわしいんだと思っておりますが、税源の偏在というものを縮小するのに資するんだと思いますが、今言われたような累進の話というのは、これは基本的には個人所得税の累進性ということになると、これは国税の方になる所得税で考えて、個人所得全体の中で考えないといかぬのじゃないかなというような感じがいたします。

○又市征治君
 時間が参りましたから、そこのところはまた更に論議をさせていただきたい、今日のところはこの程度で終わりたいと思います。