第162回通常国会

2005年4月11日 決算委員会



(1)社会保険庁批判の根底にある改悪への反発
(2)改革と称して業者に丸投げし多額の投資をする政府
(3)年金の徴収は外部委託ではなく市町村との協力を
(4)民間委託に馴染まない年金の徴収・相談業務
(5)問題を熟知する職員の声を取り入れて改革を進めよ


○又市征治君
 社民党の又市です。
 社会保険庁改革が取りざたをされてきておりますけれども、年金掛金の流用であるとか、先ほども出ていましたが、レガシーシステムの無駄遣いだとか、こんなことの是正は当然のことですけれども、ただ、今、国民の批判の中には、小泉内閣の度重なる医療、年金の改悪に対する反発や不信というのがやはり根底にあるということを、これを見とかにゃいかぬと、こう思います。これを忘れて、国民の年金と健康をどう守っていくか、こうした基本論議をないまま、安直に組織いじりをやったり人員削減に矮小化するということは、そういう点では、本来的な政府やあるいは官僚の責任を隠して、国民からの批判を、むしろ徴収などの末端で苦労している、現場で働いている職員の皆さんへのいじめにすり替える、こんな格好になりかねないということをまず申し上げておかなきゃならぬと思います。

 そこで、大変、御就任以来大変御苦労なさっている大臣にまずお伺いをいたしますけれども、今いる職員を削ったり民間に委託すれば、表面上はもちろんコスト下げれるかもしれません。しかし、正規職員、正規雇用を縮小して下請や非正規労働者に置き換えて賃金や労働条件を切り下げるのは、私は何ら改革にはならないんではないか、ひいては国民年金の空洞化をも進めるんではないか、このように思います。
 まして、この労働行政の元締でありまして、今同僚からも出ましたけれども、均等待遇を推進する立場の厚生労働省として、これは逆に、今申し上げたような事例は大きな自己矛盾じゃないかと、このように思いますが、大臣の基本的な認識をお伺いをしておきます。

○国務大臣(尾辻秀久君=厚生労働大臣)
 社会保険庁の組織の在り方については、いろいろ御議論を今いただいているところでございます。そして、いろんな御意見があることも承知をいたしております。その中ででありますけれども、現在、まず、内閣官房長官の下に置かれた社会保険庁の在り方に関する有識者会議で御検討もいただいておりますけれども、そこでの御検討の中身でありますが、先般、三月三十一日になりますけれども、グランドデザインを示されました。
 幾つか言っておられるんですけれども、その中で、今お話しいただきましたことに直接かかわる部分で申し上げますと、システムの刷新等による業務そのものの削減等進めることにより、職員数の相当程度の削減を図ることとされております。
 そのグランドデザインがございましたので、社会保険庁といたしましても、これは一定の前提の下で試算を、試しの計算を行ったんでありますけれども、どういう計算になりましたかといいますと、今、正規職員が約一万七千人でございます。それから、非常勤職員を含めますと約二万九千人というこの体制でございますけれども、このグランドデザインが、まず政管健保の組織をちょっと移すと、別にするということでございますから、そうした部分を含めて正規職員について約三千七百人、非常勤職員を含めると約一万六百人程度の削減ができるという見通し、これをまずはお示しいたしております。そうしたことを示したということを率直に申し上げるところでございます。
 そうしたこと、私どもは今申し上げたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、五月の最終的な取りまとめが行われますので、このことについて、職員の削減可能数とか、こうしたものも含めて御議論をいただくことになっております。
 そうした御議論の結果を踏まえて私どもがということになりますけれども、これは今先生お話しいただきましたように、私どもは労働者の保護を所掌するという大事な役目を担っている役所でございますから、そうした立場も当然踏まえて事に当たらなきゃいけない、これはもう当然のことでありまして、そう考えておりますし、有識者会議の結論がどういう結論になるか、それに沿って、また一方からは国民の皆さんの信頼回復することができる組織改革というのが求められておりますので、そうしたものに両方踏まえて答えを出していきたいと存じております。

○又市征治君
 小泉内閣で言ってこられた、規制改革会議とか、何でも民営化路線というのは、ちょっと正直結論が出てきたと思うんですよ。そういう意味では、格差社会をますます助長させたり、社会問題をもっと拡散させるようなこともあるわけで、今大臣最後におっしゃっていただきましたけれども、少なくとも厚生労働省は公的行政の中核たるコアの業務については外部化しないという、ここはやっぱり基本として当初方針はしっかり守っていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。
 そこで、少し具体的に伺ってまいりますが、アウトソーシングで本当にじゃコスト下がるのかということですけれども、どうも一連の政府の改革案すべてにこれは共通しているわけですが、まともに検証されてないわけですね。
 初めは割安に見えても、ノウハウを全部業者に握られて、結局高く付く。これは典型的な例が社会保険庁のこのNTTデータへの丸投げ。そして、無駄遣いが批判されたばかりなわけですよね。
 今回、またも電子システムの刷新をすると、こう言っておられるわけですが、それには再び多額の投資がまた必要になってくると。こういうわけで、この人減らしのためという甘い言葉に乗せられていくんではなくて、発想を転換して、システムの経費そのものの絶対額を年次計画を立てて削減すべきではないかということなんですが、この具体策、改めてお示しいただきたいと思います。

○政府参考人(青柳親房君)
 オンラインシステムについて、経費を計画的に削減していくべきではないかとのお尋ねございました。
 オンラインシステムにつきましては、御指摘もございました刷新可能性調査の結果を踏まえまして、まずは十七年度の末までに業務、システムの将来像を見据えた最適化計画を作ると。そして、十八年度以降、この十分な安全性、信頼性を確保した上で、競争性や効率性が高まるような見直しを行い、経費の削減を図るということにしております。
 もうちょっとシステムに要する経費について幾つかの点を申し上げますと、一つには、この昨年の十一月に社会保険庁内にシステム検証委員会という組織を設置いたしまして、専門知識を持つ民間スタッフの参画を得て、システム開発の必要性や開発規模の妥当性ということを独自に検証しております。また、この結果は庁内の調達委員会にお諮りを申し上げまして、最終的な契約の妥当性、コストの妥当性等の検証を行う体制を構築して、これに基づいて具体的な調達の適正化に努めておるというふうに考えております。
 先ほど引用ございました刷新可能性調査の結果におきましても、開発規模や費用の妥当性の検証が不十分であるという御指摘をいただいているところでありますので、私どもといたしましては、今後、ITガバナンスの強化という観点、そして契約の透明性の確保という観点からシステムの妥当性をきちんと管理できる体制づくりをつくりまして、全力を挙げて努力してまいりたいと考えております。

○又市征治君
 社会保険庁がこの五日に自民党に示したという案が発表になりましたが、先ほど大臣からお話があったように、現在の正職員一万七千三百人余り、非常勤職員一万一千四百人余り、合わせて二万九千人余りの四割弱に当たる一万人ぐらいを削減するという話なわけですが、率直にこれを見て、これ今まで一体何していたんだろうかなというのが一つはありますし、本当にこれで大丈夫なのかいと、社会保険庁の仕事がと、こういうふうに感じました。
 具体的に少しお聞きをしてまいりますが、まず一つ、その中で言われている政管健保を移管するという、この公法人というのはどういう中身なのか。これ、公務員型の独立行政法人なのか、どういうことをお考えですか。

○政府参考人(青柳親房君)
 政管健保の組織につきましては、先ほど大臣からも御紹介ございましたグランドデザインにおきまして、「被用者保険の最後の受け皿の機能は確保しつつ、医療費適正化等の保険者機能を強化する観点から、国とは切り離された公法人において運営することが適切」とされております。
 この政管健保の新組織の具体的な在り方につきましては、今後、社会保険庁改革の議論のみならず医療保険制度改革の議論もございますので、この中で更に検討が進められる予定でございます。御指摘の具体的な法人形態あるいは職員の身分につきましても、こうした検討と併せて御議論をいただきたいというふうに考えております。

○又市征治君
 政管健保は組合健保よりも政府支援の性格が非常に強いわけですから、最低限やっぱり公務員型でなきゃならぬというのは私はそう思うんですが、そんな点も是非御検討いただきたいと、こう思っています。

 次に、これも大臣にお伺いをしたいんですが、この徴収や相談業務ですね、これを外部委託するというふうに言われているんですが、これらは年金の基幹的な業務、公権力の行使そのものですよ、これは。
 まず、この徴収業務についてですが、今、年金への信頼が失われて国民年金の徴収率が史上最低に下がっている、こういう状況ですが、これを回復するためには、十分な経験を積んで年金の意義に精通した職員による説得力ある活動というか、そういう取組が必要なわけですよね。
 だから、私はもう繰り返し、これはもう何度も申し上げてきたんですが、市町村の協力制度を取ってしまったところに問題がある、これは大臣にも前にちょっと申し上げましたけれども、これやっぱりむしろ復活すべきだと、こう提案を申し上げてきたと。市町村職員こそが個々の未納者の実態を一番よく把握をしているわけで、ここを遮断してしまったんですから、むしろ、この柔軟かつ説得力ある対応ができるこの市町村にむしろ努力すべきではないかと。坂口前大臣もこの点についての意義は認められておるわけです。それを行わずに逆に外部委託するというのは、納付率は私はまだまだ下がっていくと、こう言わざるを得ぬと思いますよ。
 この点について、大臣、もう一度そこらのところは再検討する余地はないのかどうか、検討されるべきじゃないですか。

○国務大臣(尾辻秀久君)
 確かに収納率の問題考えますときに、今御指摘いただいたような面が否定できないところではあると私も率直に思っております。
 そこで、それじゃ元に戻せるかという話、先生はそうしたらという御提案いただいておりますけれども、戻せるかなということを考えますと、まず各市町村がどういう体制を今取っているか。もう体制崩してしまっておりますから、どういう体制今取っているかというより、一遍崩した体制、人を外に、ほかに回してしまった、それをまた元に戻せるかなとか、こういうことを考えますと、慎重に検討しなきゃならないというか、非常に現実的に相当いろいろ検討すると問題があるだろうなというふうに思いますということをこれまた率直に申し上げるところでございます。
 したがいまして、今私どもが申し上げたいことは、市町村との連携はもう欠かせません。そして、市町村が持っておられるいろんな情報というのは今いただきながらやっておりますから、まずそうしたところから取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。

○又市征治君
 これは大臣も大変苦しい立場でしょうけれども、私は、やっぱりその資料をもらったって、現実に具体的なことを知っているのは市町村の職員なんですよ。これ、だから協力員なんて何ぼ増やしたって駄目だってふうにこれ申し上げてきたんですよ。まだこれを増やしますと、こういうふうに言っているわけで、やっぱりもう一度検討されるべきだと。これは単に国の責任だけではなくて、市町村も含めて年金制度をどうするかという、この信頼を取り戻していく課題ですから、これはやっぱり是非模索いただくようによろしく御検討いただきたいと、これを申し上げたいと思います。

 一方で、今回千五百人、これをシフトすると、強制徴収等の業務等、こうなっていますけれども、ただ、大半の未納者に対しては回数を重ねて説得をする、あるいは分割納付などのきめ細かな誘導が必要で、ここに今申し上げたような意味も含めて大量のマンパワーが要るわけですけれども、ここで言われている、強制徴収等とあるけれども、これは全体としてのコアの業務のことであって、それは正規職員の増員だということで理解していいですか。

○政府参考人(青柳親房君)
 ただいまのお尋ねの件につきましては、正規職員を、例えばシステムの刷新あるいは定型業務の外部委託あるいはバックオフィス業務の定率化による減、それから、非常に例示で具体的に申し上げれば、例えば市場化テストによる減といったようなことによって削減していこうと、その部分をただいまお話の出ました強制徴収等の強化する業務にシフトしていこうということで考えておりますので、この間のシフトは基本的に正規職員についての増減というふうに理解をしております。

○又市征治君
 そこで、この相談業務ですね。これは、正に国の年金制度の内容、一人一人の国民の実態に即して説明をする、まあ対人サービスの最先端に位置する業務ですよね。ただでさえこの制度が複雑化をして説明がし難い、この上に、相談者は大抵が国に対する苦情や不満をぶつけてくる、その苦情に対して言わば国を代表して応対をする仕事、大げさに言えばそういうことなんですが、これ民間委託に全くなじまないんじゃないですか。

○政府参考人(青柳親房君)
 お尋ねにもございましたように、年金相談、近年の高齢化でございますとか、あるいは国民年金制度への関心の高まりということで、大変量的にも増加しております。また、御指摘にもございましたように、度重なる制度改正で相談内容が大変複雑化しておるということは御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、実は私ども、現在でも年金相談件数の増加に対応するというために、社会保険庁の正規職員だけではなく、年金相談員等の謝金職員も活用いたしましてこれらの対応を行わしていただいております。この謝金職員については、相談者のニーズに応じた的確な対応が図れるようにということで、一つには例えば社会保険労務士の資格を持っておられる方、あるいは社会保険業務の経験者に委嘱をするというようなこと、それから、地方の現場だけではなく中央におきましても毎年五回程度研修会を開催してその資質の向上に努めております。
 また、今お尋ねのあった点の御懸念につきましては、年金相談についても、例えば裁定請求書の受付だとか審査業務など権利義務の確定に直接結び付くような面談による年金相談、これは年金の裁定権者である国が責任を持って直接実施すべき事務であると考えておりますが、他方、主に各種の通知書等への問い合わせの対応等を行うような業務、典型的には年金相談、電話相談センターの事業を念頭に置いておりますが、こういったものにつきましては市場化テストのモデル事業としても取り組むということで考えております。
 なお、その際には、当然のことでございますが、個人情報の保護あるいは国民サービスの質の確保という点には十分に留意して進めてまいりたいと考えております。

○又市征治君
 そこで今、あなたの口から二回、市場化テストの話出ましたからね。本年度から始めて全国に波及させることで四千六百人の減というふうに言われているんですが、民間業者に落札したら、片一方で非常勤職員から順に解雇していくんでしょう。解雇すれば、次の年度、役所側には委託業者と競争すべきマンパワーがないんですよ、これ。マンパワーがこっち側にないのに次回の競争成り立つんですか、これ。論理矛盾もいいところじゃないですか。この人たちには徴収など大事なノウハウの蓄積があるわけで、これを市場化テストといって競争したけれども、競争する相手がこちら側にはなくなってしまって、こんなばかな話成り立ちませんよ。これ人的資産の正に浪費でもありますし、これは再検討すべきだと思います。

○政府参考人(青柳親房君)
 私ども、国民年金保険料の納付率の回復という観点のために、現在でも、例えばコンビニエンスストアにおける保険料の納付委託など、民間活力を活用した様々な収納対策をやらせていただいておりますが、今回その一環として、市場化テストのモデル事業におきまして、電話あるいは戸別訪問によるところの納付督励をやらせていただく、あるいは保険料の納付委託というふうなことを包括的に委託しまして、その受託した事業者の創意工夫を生かした納付督励によって納付率の向上を目指すという目的がございます。御理解をその点についてはいただきたいと存じます。
 その上で、今回の市場化テストのモデル事業でございますが、五か所の社会保険事務所の収納業務を対象に実施するということでございますが、そのうちでも、所得情報を活用した免除勧奨あるいは強制徴収などの業務は、これは引き続き社会保険庁自らが実施をするということで、必要な職員をシフトさせるということで、全体としてより強固な収納体制を整えていくという観点で取り組んでおります。
 また、市場化テストの対象となります納付督励と社会保険庁自らが行います免除勧奨あるいは強制徴収というのは、これは密接不可分な関係でございますので、言わば受託事業者と一体となって納付率の向上を図っていくということでございますので、御懸念のような点は生じないように努めさせていただきたいと考えております。

○又市征治君
 御懸念があるから言っているんですよ。御懸念がないようにと言ったって、こんな片一方側の競争の条件なくしてしまっておいて、それは話になりませんよ。
 そこで、何でもね、はやり言葉さえ唱えりゃいいというものじゃないんですよ、改革やるときに。ここは是非再検討し直してほしいと、こう思います。

 最後に、大臣にお伺いをいたしますが、以上、この案全体が、私はどうも現状を正しくとらえて改革しようとしているとは思えないんですね。手続上も、どうも一政党の内部機関に示されたと、こういうことでありまして、我々は正式に一度も聞いたことない。実施にこれがそのまま移されて、実施に移されていくとしたら大問題でありますし、この法案とする部分、その他国会にやっぱりきちっと示していただきたい。
 同時に、やっぱり問題を熟知している現場の職員の声をもっと取り入れて進めるべきだろうというように思いますね。何か、有識者会議、どこか何か会議さえやりゃ改革進むみたいなのは、これは駄目ですよ。
 最後に、この案には実施期限が示されていませんけれども、内容の可否を含めて十分な期間を取って検討をいただきたいと思いますが、この点について大臣の御見解を承って、終わりたいと思います。

○国務大臣(尾辻秀久君)
 今お触れにもなりましたけれども、有識者会議において五月に最終的な取りまとめが行われる予定でございます。まあ、これは有識者会議に御議論をお願いしたわけでございますから、私どももそれはそれで取りまとめをお願いしております。そして、それをまた踏まえて私どもの答えを出していかなきゃならぬと思っておるわけでございます。
 当然、それから先は法律改正必要な部分も出てまいりますし、法律改正となりますと国会の御審議をお願いするということになりますから、そのような手順で進めていきたい、当然のことでございます。そう考えております。
 また、いろいろ現場の皆さんの意見もその答え出すに当たって聞くべきであろうというお話でございますけれども、昨年十月に既に個々の職員の皆さんが業務改善を提案できる内部改善提案制度も開始をいたしておりますし、また、村瀬長官、民間から来ていただいて精力的に、もう既に九十五か所と聞いておりますけれども、社会保険事務所を回って皆さんとの意見交換をしておられる。そうした皆さんの御意見をお聞きしながら、申し上げておるのは、現場の皆さんのお声もよくお聞きしながら私どもは答えを出し、そして国会での御審議をお願いします、そうさせていただきますということを申し上げたところであります。