第162回通常国会

2005年7月21日 郵政民営化に関する特別委員会



(1)民営化は郵貯・簡保の金融資産の流動化
(2)国民ではなく銀行・生保のための民営化論
(3)私企業である銀行を守るなら国民の貯蓄はもっと大事にすべき
(4)安心を求める利用者の貯蓄にリスクを負わせるな
(5)安全な公社のまま、銀行が貸し渋る地方・中小企業・NPOなどに融資を
(6)民営化されれば日本国内に安全な預け先はなくなる


○又市征治君
 引き続き、竹中大臣に伺ってまいります。
 この法案の最も核心的な部分というのは、郵貯、簡保の民営化、廃止であって、三百四十兆円の金融資産の流動化、つまり官から民へ切り離すということで考えてよろしいかというのがまず一点。
 あわせて、とすると、移行期間を十年も取るとか、あるいは政府の保証が残っている状態、例えば株を再度持ち合いをするとかというのは好ましい状態ではなくて、理念的には、一日も早く完全に政府保証を断ち切ることが理想だということで理解をしてよろしいか。
 この二点、まずお伺いしたいと思う。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 郵政民営化の必要性は決して金融だけではございませんが、委員は核心とおっしゃいましたが、核心と申し上げてよいかどうか。ただ、非常に重要な側面として金融の問題がある。そして、それは三百四十兆円のお金が、官で集めて官で使うだけではなくて民間にも流れるような道を開いていく。このことはそのとおりであるというふうに申し上げたいと思います。
 そして、それならば、十年という移行期間をどう考えるかということでございますが、これは、そのように民にお金を流していくということに関してはやはりノウハウの蓄積も要ります。そして、市場に対して混乱を、ショックを与えないようにするというような配慮も要ります。
 より具体的に申し上げますと、今日も御議論いただきましたように、郵便貯金に関しては十年間は旧勘定が残ります。政府保証付きの勘定が残ります。そうしたことも総合的に勘案をしまして、ここは徐々に自由度を拡大をしていく、十年程度の時間を取って徐々に段階的に自由度を拡大する、そして株式を売却をしていく。そのようなやはり経過期間、移行期間は必要であるというふうに思っております。

○又市征治君
 そこで、あなたがおっしゃる銀行や保険会社は信用が大事であり、だから政府保証を断ち切らねばならないというのはどうも矛盾して聞こえるわけであって、非常に分かりにくい論議なわけです。
 そこで、足りない部分を補足して申し上げると、民間の一般銀行、保険は信用を自分で築き上げてきたと。これに対して、郵貯銀行や簡保会社がそれらと同じスタートラインに立つためには政府保証を断ち切らなきゃならぬ、そうしなけりゃ公平ではないと、こうおっしゃりたいんではないかと、こう思うんですが。
 そこで、あなたには大変愚問だと思われるかもしれませんけれども、国民には大事なことなのでお聞きをいたしますが、誰と誰とのイコールフッティングなのか、この点についてお答えください。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 今論点となっておりますその郵便貯金銀行、郵便保険銀行の活動に関して申し上げるならば、これは、イコールフッティングを図るべき相手は、これは端的に言えば、郵便貯金銀行については民間の金融機関、そして郵便保険会社については民間の生命保険会社ということになります。

○又市征治君
 つまり、今最後におっしゃっていただきましたが、民間の銀行、生保と国営の今の郵貯、簡保との関係ということであって、そこには預金者や契約者である国民というのは余り関係ない、こういうことですね。

 そこで、疑問が二つありますが、まず第一に、先ほども申し上げましたけれども、あなたは、民間銀行は信用を自前で築いている、こうおっしゃるわけですが、現実はそうでもないわけであって、例えば長銀は、破綻をいたしまして、政府によって救済をされて、最後は二束三文でアメリカ資本に買収をされた。大手都市銀行でさえ、一行当たり一兆円あるいは二兆円という公的資金注入を受けて、いまだに返済できない銀行もあるわけです。
 未返済残高は、りそなだけでもまだ二兆九千六百億円残っているはずですね。
 そのときに、あなた方は、信用不安を生じさせないことが必要だと言って、国民の税金を平気で救済に使ってきたわけです。プライベートな資本を守るために、国民、国の巨額の資金を投入したわけですね。
 で、民間銀行が信用を自前で築いているというのは、正にそういう意味で私は事実に反しているんじゃないか、こう申し上げざるを得ません。
 こうしたプライベートな銀行がこんなに政府に守られているならば、だったら、庶民の零細な貯蓄である郵貯、簡保は政府保証から断ち切るどころか、もっと大事にされて当たり前じゃないか、こういうふうに国民の声があるわけですが、このことについて納得のいく御説明をいただきたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 まず、又市議員は、これはイコールフッティングというのは銀行や生保のためであって国民はどこにもないという御指摘でございましたが、これは決してそうではなくて、対等な健全な市場競争をしていただくことこそが国民の利益につながると、これは当然私たちはそのように考えているわけでございます。そして、そのような健全な競争に参加をして自ら切磋琢磨することは、郵政のためにもこれはなるわけでございます。その意味で、イコールフッティングを実現して健全な競争をしていただきたいというふうに考えます。
 御指摘のありました公的資本増強についてでございますけれども、これはもう委員御承知のように、金融システムが、この民間金融システムが信用不安から機能の不全に陥ることのないように、正にシステミックリスクを回避するために、言わば市場の失敗を公的関与によって防御するという性格のものでございます。
 市場は、時に市場の失敗を招くことがございます。しかし、それに対しては、政府はしっかりと手当てをするということは必要でございます。しかし、時に市場の失敗があるから、だから民間経済は良くないと、民営化は良くないということにはこれは当然ならないわけでございます。この市場の失敗を、その穴はしっかりふさぎながら、しかし民間経済の活力をしっかりと発揮していただくようなシステムをつくっていくことが、市場経済の中に住む我々の、そして政府の役割であるというふうに考えております。
 郵貯、簡保は、官業として制約のある中で今までこの業務を行ってきましたですけれども、そうではなくて、民間とイコールフッティングに十分配慮をしながら、しかし経営の自由度を思い切り発揮していただいて、そして国民経済のために貢献をしていただきたい、それが今回の民営化の趣旨でございます。

○又市征治君
 私が申し上げたのは、民間銀行は信用を自前で築いているとおっしゃるから、必ずしもそうでないということを申し上げたのであって、それは当然破綻をすれば、信用を本当に守っていくために国が幾らかの手当てをすることは、それは当然出てくることでありまして、それまで否定しているわけじゃありません。

 そこで第二に、あなたのおっしゃる、この郵貯、簡保は普通の銀行、生保に変身をしてリスクを取るような運用に変えなきゃならぬということは、具体的に何に投資しろということを意図されているのか。まさかアメリカの国債を買いなさいということではないんだろうと思います。幾ら金利差が高いとはいえ、現在時点でも八千億ドル、約九十兆円弱も保有をしているわけで、そうするとアメリカの投資顧問会社に投資しろというのか。まあ、これは答弁求めませんけれども。

 そこで、あなたの理想とされる金融商品の構成比率、つまりポートフォリオはどんな比率をお考えなのか。また、その具体的な商品名を代表的なものを挙げていただきたいと思います。移行期間ではなくて、完全民営化した場合のことでお願いをしたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 これは民営化でございますから、正に民間の経営者の下で戦略的にそれを考えていただく、これが正に民営化の趣旨でございます。国から、国があらかじめポートフォリオを示すというのは、これは民営化の趣旨にこれはもう自ら反することになるのではないかと思います。
 しかし、私たちはそういった経営者の判断がしっかりできるような枠組みをつくる、しかしそのとき、それがある程度の想定内であるということ、これは確認をしておかなければいけないと思っております。そうした観点から骨格経営試算を出させていただいておりますし、それに関連する収益性に関する試算をお示しさせていただいております。
 この収益性に関する試算に関しましては、ポートフォリオと言われましたので、想定として全体の四分の一程度を信用リスクのビジネスに進出するということにしておりまして、その可能性としましては、これは融資等々も挙げられますけれども、シンジケートローンへの参加、さらにはABS等々、まあ証券関連のビジネスに参入するということも考慮に入れているところでございます。
 具体的に何%をどこに割り当てるというのは、これは政府の人間として、しかも十年後のことを今申し上げることはできませんですけれども、そのような可能性を是非探っていただきたい。常識的に言いますと、民業圧迫の度合いが少なく業務遂行能力の点でも現在、公社が行っている業務と親和性のある業務、例えばABSや私募債やシンジケートローンと、そういうようなことを手始めに、順次拡大を図っていくというふうに考えております。

○又市征治君
 衆議院段階でも、十年後三十五兆円を信用リスク商品に充てるという御答弁があったと思いますが、そういう点で大変威勢のいい割に中身の具体性が余りない。あらかじめそんなことを言うわけにいかぬと、こう前触れでおっしゃっておりますけれども、まあ本音は、郵貯資金を下ろして株を買ってほしいというのが本音かなというふうに思ったりします。

 数年前から株価の低迷に困って、証券業界と政府は、郵貯資金を何とか株式市場に引っ張り出そうとして税制優遇などあの手この手を使っておいでになるわけですが、郵便局で投資信託を売るというのもその手の一つだろうと思います。
 昨年、公社が妥協されて開始されていますが、投資信託そのものを売るということになったわけですが、これはもう元本保証なしのリスク商品であることはもう言うまでもありません。
 さっきのは、民営化後のリスク商品の例示の中に投資信託が入ってないわけですけれども、なぜかと思って事務方に聞いてみましたら、郵便局は仲介だけでリスクを負わないからだというふうにお答えでありました。
 しかし、利用者にとってみては、正に投資信託も紛れもないリスク商品なわけで、そういう意味で、郵便局は窓口を貸すだけで何の責任も負わないと。しかし、その点を利用者は一体全体分かっているのかどうか大変不安なわけで、元本割れをしたら利用者は郵便局にだまされたと言うんじゃないか。こういう立場で私は、総務委員会の場ではこれは反対を申し上げたところであります。

 そこで、金融担当大臣に次、お伺いをいたしますが、今、竹中さんが挙げられた、郵貯、簡保が今後買うべきリスク商品の例を幾つか挙げていただいて、この近年の動きから、それぞれのリスクあるいはリターンがどのぐらいか、若干御説明をいただければと思います。

○国務大臣(伊藤達也君=内閣府特命担当大臣《金融》)
 お答えをいたします。
 竹中大臣が今御説明をされました金融商品にかかわる近時の民間金融機関の取組、運用状況を見ますと、必ずしもすべての商品のデータが整備されているわけではございませんが、貸付けや株式での運用が低迷する一方、私募社債につきましては、十七年三月期と四年前を比べてみますと発行会社ベースで六十七兆九千億円増加、アセットバック証券につきましては四年間で約一千億円の発行会社ベースで増加、シンジケートローンにつきましては一年間で二・六兆円増加をしている傾向にございます。

○又市征治君
 今のどれがリスクが高いのかという説明がないので補足をいたしますと、普通の銀行になれば全面的に企業などへの貸付けもできるし、株式も買える。しかし、これらは当然リスキーなわけですね。
 現に、銀行はみんなこれで金融不安を起こして公的資金注入に至ったわけです。
 ハイリスク・ハイリターンを求めていない庶民の零細な資金、郵貯を、なぜ無理やりこの普通の銀行にしてこのリスクを負わせるのか、まだ納得できませんね。

 そこで、ひとつ生田総裁に次、お伺いをいたしますが、現在の公社の郵貯、簡保のポートフォリオ及び実際はどうなっているか。民間企業の社債だってかなり買っておられますね。しかし、低く抑えられております。また、地方債や自治体への貸付けという地域貢献も多いと思いますが、御紹介をいただきたいと思います。

○参考人(生田正治君=日本郵政公社総裁)
 お答えいたします。
 郵貯、簡保の資金運用は、あらかじめ経営計画で定めました資金運用計画、それからALMの方針に基づきまして、安全、確実性、これは公社でございますから非常に重視しております、これを重視して実施しているところでございます。

 十六年度末の運用状況につきまして主な運用資産を挙げますと、まず初めに、郵便貯金は、二百六十一兆円の残高のうち国債が百十二・六兆円です。地方債に九・三兆円です。社債に、社債などに七・四兆円でございます。
 こうやった運用をするほか、地方公共団体への貸付けというのがあります。貸付けが二・九兆円ということでございます。

 二番目に、簡保の方でございますけれども、これは資金量が百二十兆円、百二十兆円の残高のうち、国債が五十七・五兆円、地方債が六・五兆円、社債などに十九・一兆円。この運用のほかに、地方公共団体への貸付けが十九・三兆円と、こういうポートフォリオになっております。

○又市征治君
 金額でおっしゃいましたからちょっと分かりにくいかと思いますが、郵貯資金でいえば、国債で五〇%、社債や地方債四%ずつ、こんな格好でありますし、簡保資金でいえば、国債が四九%、地方債が五%、社債等が一六%、地方公共団体へも一六%と、こういうことで相違ございませんね。

 お聞きのとおり、公社のままで安全を守りつつこれだけのことができるわけですね。

 投資先を広げるというならば、私は、前にも申し上げたんですが、郵貯、簡保は現在の公社のままでもっと地方債や、大手銀行が貸し渋りをしている地域金融あるいは中小企業やNPOへの金融に融資をしてもいいんだろうと思うんですね。
 これは一種の地域還元でありますし、庶民の資金を身近なところへ回すということにもなります。しかし、どうも竹中大臣がおっしゃっているのは、どうももっとリスクの高いところへ回せと、こうおっしゃっているように聞こえてしようがないわけですね。

 そこで、いや、そのことが今日の質問ではございませんが、そこで、竹中さん、昨日、政府保証でリスクビジネスをやるのは、損したらリスクを国民に負わせることになるから駄目だ、だから民営化すると、こんなふうに高橋委員におっしゃったわけですけれども、これ自体、リスクビジネスの方が、誰にとってもいいんだというように誤った前提に立っておって賛成はできませんけれども、それはおくとして、では民営化したらリスクは一体だれが負うのか。
 株主だけが負って預金者は全然負わなくていいのか、また株主の中にいる政府もリスクを負うのではないかと私は思うわけですが、民営化した郵貯銀行などがリスクビジネスで損したら、預金者も政府も、そして公的資金、つまり税金の注入をしなければならなくなるわけであって、国民全体のリスクを払わされること、国民全体がリスクを払わされることになるんじゃありませんか。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 これはいろんな、国民としてはいろんな形で資産を運用したいということなのだと思います。それは、国債、安全な国債を買いたいという方もいらっしゃれば、もう少しリスクを取りたいという方もいらっしゃる。しかし、今問題になっていますのは、このような形で銀行に預金されたものについて、それが国が、国が行っている銀行であるがためにその運用先が安全資産に限定されているということであろうかと思います。
 同じような預金を集める場合でも、民間の銀行はしっかりとリスクを取って、その分、まあ民間のお金というのは、これはある程度リスクが高いわけでございますから。しかし、民間は民間で、しっかりと自分たちにお金を回してほしいというやはり強い期待を持っているわけでございます。そうしたお金の流れをそれぞれの各経済主体が自らの責任においてしっかりと判断をして、その結果、お金が流れるべきところに流れていく、そして資源の最適配分が実現できるようにする、そのような仕組みをやっぱりつくっていくことが私たちにとっては重要なのであろうというふうに思っております。
 委員は、公社のままで改革をするということを今おっしゃったと思いますが、例えば現在も、これは地方債、これは市場から取得が可能、地方公共団体については財投の枠組みの中で国会の議決を受けて政策的融資として総務大臣が認めた金額等々の条件の下で可能である、民間金融機関に対しては預金やコール資金の貸付けを行うことが今でももちろん可能となっております。しかし、それ以外のやはり制約は受けているわけでございます。
 我々は、やはり日本を改革していく、しかしこの改革というのはやはり経営の自由度を拡大して収益力を上げるということをやはり意味すると思います。しかし、収益力の高い業務というのは、その裏でやはりある程度のリスクがあるわけで、そういうことをしっかりと判断をしていただいて、そのお金が必要なところに回るような仕組みをつくっていきたいと、それが今回の民営化の趣旨でございます。

○又市征治君
 時間が参りましたから、幾つかまだ残ったんですがやめますけれども、つまり竹中大臣が結局、あなたの政府保証を断ち切るという考えは、民間銀行、生保会社の利益の立場に立って、郵貯、簡保を一日も早くリスクマネーに変質させる政策と言わざるを得ませんよ。

 では、その反面、国民、預金者の立場はどうなるか、ローリターンでもいいからと、郵貯、簡保を頼っている三百四十兆円の庶民のとらの子はどうなるか。

 リスクは個々人で負いなさい、もはや日本国内に安全な預け先はなくなる、このことを国民は肝に銘じなさいと、こう言われているに等しい、こう申し上げざるを得ない。その点を申し上げて、今日は終わりたいと思います。