第162回通常国会

2005年7月25日 郵政民営化に関する特別委員会



(1)政府方針を法律より上位におく民営化法案
(2)行政と立法の逆転関係は三権分立に反する
(3)違法・独断の民営化法案は出し直すのが筋だ
(4)民営化後は誰も責任を負わなくなるシステム
(5)小規模局の契約がなくなれば7割の雇用を切り捨てるのか


○又市征治君
 社民党の又市です。
 十五日の日に、自民党の山崎理事が重要な法制上の疑義をただされたわけですが、政府はこれにまともに答えておらないわけですね。それは、行政府の方針を実定法よりも上位に置くという議会制民主主義に反する立法構成だという問題だったと思います。

 すなわち、この郵政民営化法案それ自体の中に定義を書かないで、平成十六年九月十日の閣議において決定された郵政民営化の基本方針に則して云々と、閣議決定を引用した法体系になっている、こういうことですね。
 こういう例は他の法律にも用例があるんだという答弁ですが、その例を伺いたいと思います。竹中大臣。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 法律の目的規定におきまして更に閣議決定よりも下の審議会の意見を引用している例としては、例えば中央省庁等改革基本法におけます中央省庁等改革の目的規定の中でございます。これ、中央省庁改革を括弧で、行政改革会議の最終報告の趣旨にのっとって行われる改革と定義したような例がございます。
 また、閣議決定を法律に引用している例としては、これは戦没者の遺族等に対する援護関係の法律において、その対象者等を特定するに当たりまして、閣議決定に基づいて組織された○○何々の隊員というような規定例が複数見られるというふうに承知をしております。

○又市征治君
 今言われた中央省庁等改革基本法については、あなた方がおっしゃる問題とは別問題で、先ほども出ておりますが、この間から私も取り上げましたが、三十三条一項六号、つまり公社制度の維持と抵触をする、こういうふうに私たちは思いますが、あちらを廃止提案しない限り今回の民営化法案は違法な提案だとして、大変疑義が今出ています。
 修正案の提案者である山崎拓さんにも先日ここで質問いたしましたが、当時は、公社は民営化の一里塚ではなくて、公社化で民営化論議は打ち止めとするというのがうそ偽りのないものだったと、全然前言をひっくり返した御答弁をいただいたわけでありますが、再三にわたって紛糾しているところですから、ここでは論外といたします。

 今答弁された後段の部分ですね。これは、言われた、昭和二十七年以降に戦時中の閣議決定を引用した六本ほどの法律があるわけですね。ところが、これらはいずれも旧軍人軍属の定義について戦後に決めたという同一のパターンの中身です。戦後、軍人軍属の定義をしようとしたけれども、当時、昭和二十年三月、戦争も敗色濃い末期でありまして、また国会は翼賛議会であり、立法権が機能していなかった、こういう時期ですね。
 しかも、戦後は我が国は現憲法の法体系に変わっていたわけでして、やむなく既存の戦時中の閣議決定を立法に準じた扱いとして引用した、正に例外中の例外なんですね。今問題にしているのは、第一条の目的に閣議決定の基本趣旨を持ってきた法律、このことが問題だというふうに言っているわけです。

 そこで、官房長官、お伺いしますが、改めて言うのは大変恐縮ですけれども、少なくとも、こうした憲法から政令、省令などにわたる立法体系があるわけですけれども、当然、憲法が一位、二番に法律が来て、その後に政令、省令となるわけだと思いますが、間違いございませんか。

○国務大臣(細田博之君=内閣官房長官)
 法律論として、法令の順番はおっしゃるとおりでございます。
 それだけでよろしゅうございますか。

○又市征治君
 今答弁がありましたように、私が申し上げたように、閣議決定というのは、こうした法体系の中では更に外側にある、あくまでも行政府の決定なわけですね。
 閣議決定の方が法律を縛るなどという逆転した立法構成、この立法府と行政府の逆転した在り方というのは、やっぱり三権分立の憲法原則からしてもあってはならないことだろうと思うんですね。このようなことが野放しにされるとしたら、これからは法律はすべて、この法律は何々に関する閣議決定を法律とするという一か条だけあればいいことになってしまうんです、これ。理念、方向などというのは全く抽象的なわけですから、時の権力者の解釈次第になってしまう。正に、翼賛議会並みの立法権のじゅうりん、ナチス・ドイツの全権委任法並みのファッショ的な立法だと言わなきゃならぬ、そういうことになるんじゃありませんか。

 なぜこんな、ずさんな法案、三権分立を侵すような法律がこの国会に提出されてきたのか。それはやっぱり小泉首相の個性や政治手法に大きく影響されているように私は思えてなりません。
 国民が全く求めてもおらない、そして自民党の合意さえも得られないこの郵政の民営化を、年金改革であるとか雇用対策やってほしい、多くの声があるのに、こんなのをほったらかして、郵政民営化こそが改革の本丸だと、こう言って強行しようとする独断的な政治が必然的にこのようなファッショ的な立法を生み出した、こういうふうに私は言わざるを得ぬと思います。
 何か今度の答弁は、丁寧に、誠実に、真摯に、いろんなことが言われていますけれども、法律自身がまずのっけから、そういう意味では真摯で誠実な対応が損なわれているわけですよ、これ。

 そこで、官房長官、この目的条項の修正を含めて、改革基本法三十三条との関係も含めながら、この法案を出し直すのが筋じゃありませんか。

○国務大臣(細田博之君)
 御趣旨については、特に目的の点については、私もおっしゃることを理解しないわけではないわけでございますが、より丁寧にいろんなことを一条に書き込むということも一つの考え方であったかもしれませんが、かといって、後の条文で膨大な中で実際の規定が盛り込まれているわけでございますので、御指摘のようなことは当たらないのではないかと思っております。

○又市征治君
 後世に、この時期にこんなおかしな正にファッショ的なものを作りましたということにならないように、是非そのことは勧告を申し上げておきたいと思います。

 次に、竹中さんにお伺いしますが、法案が引用している閣議決定では、三年ごとに民営化の進捗状況と併せて経営形態の在り方をレビューするとしっかり明記されていますね。
 では、出されているこの法案は、本当に閣議決定、つまり基本方針の内容を過不足なく満たしているのかどうか、お伺いします。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 まず、先ほど何度も又市議員から御指摘をいただいた点で是非申し上げておきたいのは、これは郵政民営化を定義する必要があったから、それのために他の用例を参考にしてこれを引用させていただくという、極めて立法技術的な、あくまで立法技術的な問題でございます。法律を縛っているとおっしゃいましたが、これは法律を縛っているものではございません。ここで基本的な定義を行った後、それぞれの条文の中でこれ、それぞれ法律を定めているわけでございますので、法律を縛っているわけではない、そういうことでございます。
 お尋ねの点でございますけれども、これは基本的には、この郵政民営化の基本的な考え方というのは、国民の利便を高める、国民経済に資するということでございますので、そのためにいろんな諸施策を講じていく、そして民営化を推進をしていく、その方向に、ここで定められた、法律で定められた民営化の方向について、それがうまくいっているかどうかということをレビューすると、それが見直しの意味でございます。
 しかし、基本的にはその場合も、法律そのものはこれは国民経済のためになっているか、国民の利便性を高めているかというところが基本的な大きな視点でございますので、そういうことを踏まえて見直しが行われると思っております。

○又市征治君
 いや、ちょっとよく分からなかったんですが、法案は基本方針と同じではないということですか、そこのところは。法案は基本方針と同じではないということですか。それとも、私が聞いたのは、すべて、この経営形態の在り方の問題などを含めて基本方針の内容を過不足なく入れているんですかと、こう聞いたんです。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 これは、基本方針はあくまで基本的な大枠でございますから、それに基づいて制度設計を行っております。その法案の、基本方針の骨子をしっかりと生かす形で詳細な制度設計を行っているというふうに承知をしております。

○又市征治君
 結局、今回の法案は経営形態の見直しを盛り込まなかったわけであって、その部分は閣議決定と違うということですよね。少なくとも法案のこの部分は撤回をして出し直すべきじゃありませんか。その点だけ、これは御指摘だけしておきます。

 次の、時間がありませんから次の質問に移りますが、郵貯銀行及び郵便保険会社は完全に政府から遮断をして完全独立の民間企業にする、したがって、小口の生活資金の出し入れなどの金融ユニバーサルサービスには四つの会社のだれも責任を負わないで、廃止になっても構わないというのがここへ出されている案だというふうに私はもう言わざるを得ません。

 竹中さんは、お互い営利企業同士でメリットを見通して継続するだろうと、こういうふうに楽観論でおっしゃっておるわけですけれども、営利企業同士でそんなことはあり得ないというのが、随分と多く質問がございましたが、質問者の多くはそのことを警告しているわけですね。
 とりわけ、過疎地などの小規模郵便局では、金融サービスが正に資本主義の契約の論理によって切り捨てられるんじゃないか。さらにその結果は、金融サービスにとどまらずに郵便局そのものの存続も経営的に成り立たなくなるんではないか。この点も多くの委員が懸念を表明し、指摘しているわけです。

 そこで、公社にお伺いをしますが、全国の郵便局二万四千七百局のうち、およそ一万五千五百局が無集配の特定局として郵貯、簡保を主に取り扱っていますね、これは。これらの郵便局は一般的に少人数で経営をされておりまして、まあ二人から五人ぐらいというこういう局であるのが多いんですけれども、こうした局では人件費は三事業の間でどのように負担をされているのが実態ですか。

○参考人(藤本栄助君)
 お答えをいたします。
 公社の小規模局の経理でございますが、郵便、貯金、保険のそれぞれの事業ごとの財務状況が分かるように日本郵政公社法に基づきまして区分して経理するようにされてございます。
 より具体的に申し上げますと、先生御指摘の小規模局、まあ特定郵便局の中でも無集配特定郵便局ということに関して申し上げますと、費用の配分の方法でございますけれども、年二回勤務時間調査というのを実施をいたしております。どの事業に何時間何分要したかということに基づきまして配分の比率を決めております。その結果に基づきまして平成十六年度決算において配分いたしました結果は、年間二回これは計算いたしておりますので、上期が郵便事業三〇%、貯金事業六二%、保険事業八%、下期が郵便事業二五%、貯金事業六六%、保険事業が九%でございます。
 以上でございます。

○又市征治君
 そこで、竹中大臣、このように少人数の郵便局は現在、郵貯、簡保を経営の柱、今おっしゃったように七五%、まあその前は七〇%ですね、これを経営の柱としているわけです。
 将来、十年後よりも後に郵貯銀行、保険会社が郵便局に業務を委託しなくなった場合、七五%相当の労働力が不要になる。小規模郵便局はどのようなモデルで経営をしていけることになるのか。それが五〇%になったら、あるいは二五%になったらどうか。
 シミュレーションは当然おやりになっているんだろうと思いますが、例えば労働力は一体切り捨てるのか。ほかの商売やって、まあ幾つか出ていますけれども、住宅リフォームだとかコンビニだとか何か載っているようですけれども、そういう配分の変更はするのかですね。また、収入面では基金から幾らもらう予定になっているのか、ここらのところを示していただきたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 委員御指摘のように、無集配特定局ではまあ七割とか、場合によっては八割が実はいわゆる郵便窓口業務ではなくて金融の仕事をしている。実は、この点はもう大変重要な点だと思います。であるからこそ、実は郵便局側からすると、金融業務を続けるという非常に強いインセンティブが働きます。
 また、郵便貯金銀行、郵便保険会社、これは窓口を持たない会社でございますから、まあ委員が御懸念なのは、長期的な契約期間が切れた後どうするかということだと思いますが、その点についても、この窓口の存在というのは非常に重要なわけでございます。
 特に、金融、保険ともネットワークを重視するネットワーク型のビジネスですから、ですから私は、両者の会社のインセンティブとしてこうしたネットワークをお互いに活用すると、そういう、とかが続くであろうというふうに想定されるということを繰り返し申し上げているわけでございます。
 しかし、それでも、それでも過疎地のネットワーク等々で、最前線等々でネットワーク価値がなくなる場合、これは基金を使えるようなシステムを同時につくっている。そしてまた、これは、経営上必要があれば、相互に株式の持ち合いを認めるというような形で一体経営ができるようにしている。そういう形で、ユニバーサルサービス、金融のユニバーサルサービスの義務は掛けないけれども、実態的にそれが続けられるような実効性のあるシステムを二段階、三段階でつくっているわけでございます。
 委員のもう一つのお尋ね、具体的に、じゃ基金はどの程度使えるのかということでございましたですけれども、これはよく申し上げますように、地域貢献で百二十億、社会貢献で約六十億、そして合計百八十億、これを一兆円の基金の運用益で賄うということを想定しているわけでございます。
 いずれにしましても、その郵便局の存在そのものを確保するための設置基準を作って、そしてその上でしっかりと金融を含むサービスが提供されるように、二段、三段のしっかりとした措置を講じて実効性を担保しているわけでございます。

○又市征治君
 私が聞いたことと全然違ったお答えになっているわけですが、問題は、私は少なくとも、今申し上げたように一万五千五百からのこの小規模のところの、もしそういう意味ではこういうところの契約がなくなった場合にどういう経営のシミュレーションがやられているんですかと、こう聞いているんです。シミュレーション出してくださいと、こう言っているわけですよ。
 これは、もう時間ありませんから、是非急いでこの委員会に出していただきたいと思います。
 このことは大変雇用問題にも発展したり、様々な多くの問題を持っているわけでして、トータルで計算して、そして何かしらバラ色だけ描いていてここで言われても、こういう不安はなくならないわけですから、委員長、是非その点の資料提出については要求いただくようにお願いしておきたいと思います。

○委員長(陣内孝雄君)
 後刻理事会で協議します。

○又市征治君
 なぜこのことを申し上げるか。あなた方の法案は、十年後からは、契約は郵便局会社と郵便貯金銀行、保険会社との合意によるものであって、結局は郵貯銀行、保険会社が経営者の判断で郵便局に業務委託しないことは当然あり得ることなんであって、そうすると、銀行、生保はもうからないところからは順次撤退していくのが、これは市場の原理ですよ。大きな都市に置いた彼らの直営店舗で営業したり、郵便局ではない一般の代理店に委託することも、当然民間の世界ではこれは考えられるわけであって、その際に無集配特定局は存続できるのかどうか。
 その答えがコンビニや住宅リフォームということになっていくんですか。こういう問題を抱えていることを申し上げているわけです。

 そこで、あなたは、公社の将来については極端な悲観論を押し付ける一方で、新会社の委託契約についてはどうもアダム・スミスまがいのバラ色の予定調和説をお説きになるわけですが、安定的な代理店契約とお題目のようにおっしゃるけれども、契約者の甲と乙との間柄というのは、正にグループ経営も遮断されたわけですから、利害が正反対になるわけでしょう。
 買う方、つまり郵貯銀行、保険会社は委託料を一円でも安くしたいわけでしょうし、委託料、委託単価を下げるか委託する箇所を減らすかどうするか、また売る方は、つまり郵便局会社も全部切られたら困るから局単位で良い店だけをばら売りをするなり総額で赤字受注をする。結局、過疎地の局は成り立たずに閉鎖をされていくんじゃないですか。
 改めて、契約について、両社の利害条件というものを述べていただきたい。特に、その対立面というのはあるわけでありますから、その点を是非しっかりと説明いただきたい。

○国務大臣(竹中平蔵君)
 又市議員の御懸念は、もう一言で言えば、窓口全体が持っているネットワークの価値というのをどのように評価するかということだと思います。私は、このネットワーク価値は非常に高いと思っております。先ほど大門議員からもアメリカが簡保云々とありましたけれども、これはやはり大変重要な販売力をこのネットワーク全体で持っているからであります。そうした意味で、私はそれに新規の業務を加えればそうしたものはしっかりと成り立つというふうに考えております。
 お尋ねの委託手数料でございますけれども、この手数料体系は、これは各社の交渉でいろんな形があり得るのだと思います。これ、業務の取扱量、郵便局ネットワークの維持経費、民間の同種の事業における手数料などを考慮しながら設定されるものになる。いずれにしても、それは、そうしたことを通して各社の自営的な経営が可能になるような手数料体系がセットされ、設定されると思いますので、これは全体の承継計画等々の中でも我々はしっかりとチェックをしていきたいと思います。

○又市征治君
 時間が参りましたので、最後に。
 本当に悲観論ではなくて、あなたの方はバラ色ばっかりおっしゃっている。もうちょっと厳密な、そういう地域の実態の問題を、しっかりと資料を出して我々に提示いただかなければ、この問題は擦れ違ったままです。そのことを申し上げて、終わりたいと思います。