第168回臨時国会

2007年12月13日 総務委員会



(1)放送業界の不祥事の背景にある恒常的な偽装請負的行為
(2)総務省の行政指導が増えているが根拠不明の指導が多い
(3)放送業界は法の趣旨に反する国の指導に従う必要はない
(4)BPOで審査中の案件に指導は無用というほどの姿勢を
(5)デジタル化の時代こそ地域ジャーナリズムの役割が重要


○又市征治君
 社民党の又市でございます。
 お三方には、大変師走のお忙しい中、放送法の審議のために御出席いただきましてありがとうございます。
 随分といろんな話が出てまいりましたが、特に今放送界、様々事件というか問題が起こっておりますけれども、総務省や国会からとやかく言われる前に、放送業界は、これは制作会社やNHKも含めてですけれども、正に自己規律を高めるべきだ、こんなふうに思います。
 これまで、国会審議の中でも、元郵政大臣あるいは総務大臣、かねがね業界の自主努力や向上に任せるんだと、こう言ってきたわけですが、それでも問題が起こっているということだと思います。やはりその中で私は、業界幹部が自主性の中で質の向上や制作倫理というものを発揮し切れているのかどうかというところが問われているんだろうと思うんですね。
 そこで、放送界の問題を問うていますから、音参考人と川端参考人にお伺いをするわけですが、私は、「あるある」事件の問題、この不祥事が生まれた原因は、先ほどから何人も述べられていますけれども、営業優先ないしは視聴率問題ということがありますけれども、例えば関西テレビの報告書などを見ていますと、予算の額と制作現場に渡るお金の額の落差がすごい大きい、こういう問題があって、社会常識からすれば何分の一という額しか渡っていない。そして、偽装請負的な行為が恒常的に行われておるという、こういう問題があるというのは一端がかいま見えるという気がするんですね。
 ということはつまりどういうことか。事実上そこに働く現場の人たちの責任にされているけれども、その労働条件の問題というか、現場の人々がどんなふうに置かれているかという問題もこれあるんではないか。そういう意味では、法令遵守あるいは倫理観、職能人意識を求められるのは、もちろん現場の人たちもそうですけれども、むしろ私は局幹部や経営者、ここにもそうした意味で大きな責任がある。現場責任に任せてしまう、現場が悪かったみたいな話にはさせてはならない、こんなふうに思うんですが、この点について、労働条件の問題や現場責任みたいなことだけに寄せられているというところは問題ではないのかと、こう思っているんですが、お二方から順次お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(川端和治君=放送倫理・番組向上機構放送倫理検証委員会委員長)
 TBSの「みのもんたの朝ズバッ!」に関する見解を例に引いて申し上げたいと思います。
 この見解の中で、実際の番組制作に当たられた方の放送した告発内容の裏付けの取り方あるいはその記録の仕方、そういった体制に問題があると。しかも、それは、現場で制作に当たられた方がそういう意味で十分な教育を受けていない、プロフェッショナルとして十分な見識をお持ちでないということが一つの原因であるということも分かりました。そのことは見解で申し上げて、その結果、TBSではそういう事実認定の在り方とか取材の在り方についても研修をするということになったと伺っております。
 我々としては、その今御指摘になられたような点はこのように具体的な事案についての見解を明らかにする中で是正していただくというのが我々のポジションというふうに思っております。

○参考人(音好宏君=上智大学文学部新聞学科教授)
 先ほども申し上げたのですけれども、「あるある」に関しては視聴率だけが問題だというふうには全く考えておりません。それから、現場の責任にのみ押し付けたというふうな形の報告書にもなっておりません。もう少し構造的なことを含めて問題にさせていただきました。
 それから、御指摘の制作費の問題でございますけれども、実はこの報告書を作った後に、ある放送局の方から制作費のところまで踏み込んで書いたものは初めてではないのかというふうなことを言われたのですが、実際に調べていく過程の中で、多分今の御質問の御趣旨は、中間搾取といいましょうか、というものが構造的に行われているのではないのかということをお含みの中での御質問かと思うのですけれども、実際問題調べてみますと相当きつきつの中で作られていたというのが実態でございます。非常に細かなことはここでは申し上げませんけれども、そのことで言うと、実は意外と放送局はこれでもうかってないんですね。
 それから、今のお話の延長線上、御質問の延長線上では、ひょっとすると一番末端の番組制作会社は非常にお金が少ないのではないのかというふうに思われていらっしゃるんじゃないのかなと今お聞きしていて思ったんですけれども、一番末端の番組制作会社は、意外とこれは、何というんでしょう、もうかる仕事というふうに受け取っていたんですね。細かいことはここでは申し上げませんけれども、若干その辺りのところはやや読みにくかったかなと、今御質問をいただきながら反省をしております。
 ただ、正に御指摘のとおり、「あるある」の場合は、私たちはあえてこの報告書では下請、孫請という言葉は使わなかったんですが、委託契約、再委託契約という非常に構造的な制作システムが恒常的になされていた、そこは非常に問題であるであろうというふうに認識をしております。正にそういうことを放送界全体でどう変えていくのか、加えて、制作現場の方々が正に番組を作っていく、文化をつくっていくという当事者意識をどうつくっていくのか、そこが非常に大事なんではないのかというふうに認識をしております。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 それじゃ、引き続き川端先生にお伺いしますが、私の事務所にBPO報告、定期刊行物として届けていただいているわけですが、たまたま十一月十五日付けのナンバー五十三では、特集がBPOの青少年委員会による「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」というものでありますが、委員会の見解だけでなく、その背景に集められた視聴者の意見を実に多く、詳細に載せられておりまして、平素から熱心に広聴又は広報活動をされていることがうかがい知れます。
 番組内容の自律的な向上のためにはこういった業界独自の不断の取組が貴重なんだろうと、こう思うんですが、この中に、一ページの一番下の方から載っていたんですが、十月十二日の放送倫理検証委員会の審議の概要が載せられておりまして、ここでは昨年から件数が増えている総務省の行政指導についてというのが載っておりました。幾つか見てみますと、総務省がどういう根拠で指導を行ったかが分からないものが多い、社会に公開する仕組み、言わば可視化が重要だ、こういうふうに述べられている委員、また、何か問題があるとしても行政指導に対して表現する側、つまり放送局が毅然とした態度を示さなければ委員会としてはやりようがないのではないかというふうに、こんなことなどが載せられておりました。
 これだけ読ませていただく限りにおいては、現時点では正鵠を得た意見だとは思うんですが、この点で先生の方から補足されることがございましたら、御説明いただければと思います。

○参考人(川端和治君)
 私個人といたしましては、たとえ行政指導という形でありましても、その背後に電波法の強大な権限をもって行われた場合には、これは表現に対する非常に重大な萎縮効果を与えるという意味で決して好ましくないというふうには考えております。
 ただ、ここで、放送倫理検証委員会で議論した結果、その行政指導の問題それ自体を取り上げることにはしなかったのでありますけれども、それは、あくまでも放送倫理検証委員会というのは、先ほどから申し上げているとおり、具体的な番組について問題点があった場合、その背景となっている問題を探るということでありますから、その過程で行政指導が問題になることはあるとは思いますけれども、行政指導それ自体を取り上げるのは委員会として現時点で適当でないということで取り上げないことにしたということが報告されているわけでございます。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 引き続いて、今、同じことになるのかもしれませんが、総務省が行政指導を乱発をしている現状を見て、放送法第三条などが正しく運用されているとかどうかということを今言わずもがなおっしゃっているんだろうと思いますが、本来ならば政府や国会が言論活動を許すとか許さないとか議論すること自体が異常なことであって、放送法はそこまで行政指導を認めるものではなかったはず、私はこんなふうに思っています。BPOの機能強化が放送人によって自主的に本来やられるべきなんですが、そうではなくて総務省から行われることは、むしろこれはもう警戒すべき問題と、こんなふうに思います。

 先般、衆議院で附帯決議が上げられているんですが、ちょっとこの中でも、附帯決議の中身はお目通しなさっているかもしれませんけれども、六項のところは随分問題だなと。政府は、環境整備に配慮することなんて、政府に何か義務付けるみたいなことが衆議院側で上げられているのはいかがかなという危惧もいたしておりますが。現行法の趣旨からしてこの行政指導は趣旨に反している疑いがあるわけであって、放送業界、BPOが唯々諾々と従う必要はないし、むしろここは毅然と物を言ってほしいなと、こういう感じを私は持っています。BPOには正に放送人の自己規律という大任を担っているわけでありまして、総務大臣答弁で最終的な評価が総務大臣にあるとしている部分は、むしろ放送法第三条に照らして越権行為ではないのかと、こういう感がいたします。
 そういう意味では、BPOの独立性というものを自覚をして今やっていただいているんだろうと思うんですけれども、このBPOでの審査中の案件であるとか結果が出た問題について、行政指導はむしろ御無用に願いたいというくらいの強い姿勢が必要ではないかと、こんなふうに私は考えますけれども、お二方の御意見をお伺いしたいと思います。

○参考人(川端和治君)
 放送界が自主的、自律的に問題を解決していくべきであるというのはおっしゃるとおりでありまして、私自身は法科大学院で憲法訴訟を教えている立場でもありますけれども、言論の内容に対する政府あるいは国家権力の規制というものは、非常に重要な目的を実現するためにどうしてもそれをしなければならない、その規制が必要最小限であって、ほかに手段がないというようなことが必要であろうというふうに考えております。
 その意味で、やはり行政指導というような形で内容に対する規制が行われることは放送界にとって決して好ましいことではありませんので、自主的、自律的にきちんと問題を解決していかなければならないというふうに考えます。であるからこそ、この五月に放送倫理検証委員会というものも設置されたというふうに理解しております。
 したがって、この放送倫理検証委員会が、あくまでも放送界の自主的、自律的なルールを尊重しながら、いろいろな問題に対する見解を明らかにしていくことによって政府がわざわざ口を出すまでのことはないという実績がつくられていくということが非常に重要であるというふうに考えております。

○参考人(音好宏君)
 私も全く川端先生と考え方、同様でございます。
 本来であれば、変な言い方なんですけれども、BPOは暇である方がいいんだと思うんです。つまり、放送局自身が自らを律して、そこで視聴者と向き合って問題が解決できればいいことで、できるだけそれがBPOに行かない方がいいんだと思います。ですけれども、正に同じ放送業界、放送界の中で起こった問題を自ら解決をする、自らそのことについてチェックをしていくということでBPOというものがあるんだというふうに思います。
 変な言い方ですが、民主国家というものを考えると、正に言論、表現の自由がどれだけたくさん、しっかりと担保されているのかということが民主国家の一つの指標だというふうに言うことができるかと思います。その意味においては、放送ということに関して公権力が介入がいかにされないかということはやっぱりすごく大事だというふうに認識をしております。

○又市征治君
 ありがとうございました。
 最後に上澤参考人にお伺いをしたいと思います。
 今日ずっとここで議論をされてまいりましたように、放送業界は当面BPOの機能を強化する方法によって自浄作用を働かせようと、こういう努力をされているんだと思います。ただ、本来は、それぞれの放送事業者が放送倫理を守って、ジャーナリズム精神をしっかり発揮して番組作りをするのが良いことは今もおっしゃったとおり望ましいことであります。

 そこでお伺いをするわけですが、北海道文化放送は、今年、民放連の番組コンクールでテレビ報道部門の最優秀賞を受賞なさったそうでありまして、受賞された番組は財政破綻をした夕張。私はこの破綻という言葉は余り好きじゃないんで、この破綻の責任は大いに中央政府にもあると思うんで、破綻という言葉は括弧付き、留保付きにしたいと思うんですが、この夕張市と東京と石炭の産地でもあるベトナムを石炭というキーワードでつながれたドキュメンタリー番組、これを作られたということで、そのことが受賞されたことのようですけれども、このように世界の中で自分たちの地域をとらえる視点もこれからの地域メディアには望まれることなんだろうし、先ほどもそのようにおっしゃったというふうに聞きました。
 デジタル化で中央からの雑多な情報の洪水の時代ということになるんだと思うんですが、大切なのは、この例のように、自分たちの地域に奉仕する、あるいは地域ジャーナリズムの担い手としての心意気が非常に大事になってくるんではないか、このように思うんですが、そういう意味では、民放を代表してということになるかどうか分かりませんが、上澤参考人の御決意も含めてお伺いをしたいと思います。

○参考人(上澤孝二君=北海道文化放送株式会社代表取締役社長)
 今日は、北海道の事例を中心に、今進めておりますデジタル化計画の状況について、放送事業者の経営者の立場から、国の支援をお願いしておりますということをお話し申し上げ、さらに、今先生がおっしゃった自浄努力ですね、これについても努力していかなければならないと、このようなことを申し上げました。
 そこで、私どもの番組の紹介もしていただきましたが、決意表明しろということでありますので。
 私、四年前に地元の新聞社からテレビ局に来まして、最初に耳にしたのが、地方のテレビ局で自主制作番組を作ると経営が危うくなるぞ、注意した方がいいぞと、こういう非常に親切な御忠告をいただきました。実際に地方の番組を支えるマーケットといいますか、これは圧倒的に中央に依存しておりまして、なかなか経費をつぎ込んで自主制作番組を作っても、それをサポートする体制というのはなかなか難しいんでありますが、しかし、先ほどもちょっと紹介しましたが、他局の例で見事にそういう状況を克服して成功されている局もございます。したがって、構造的には確かにそのように言えるかもしれませんが、歯を食いしばって、そうではないぞというふうに申し上げて社員を督励しているところであります。
 たまたま今年度の民放連の報道部門で私どもの社の夕張問題を取り上げた作品が有り難いことに最優秀賞という賞を得ましたが、北海道文化放送、開局してちょうど今年で三十五年です。三十五年にして初めて栄えある賞をいただいたということで、非常に励みになっているところでありまして、これは何度も先ほどから出ております視聴率ということで言えば、これは圧倒的に視聴率は取れないんです、この種の番組は。ドキュメンタリーで、もう本当に見ていただきたいと思っているんですけれども、なかなか視聴率は取れません。
 しかし、視聴率は取れなくても、今先生御紹介いただきました夕張のエネルギーの問題が、今そのエネルギーの石炭開発技術がベトナムに行って花を開いているという側面があって、しかしまた花の東京の膨大なエネルギーの消費量という社会があってという、地方から見た東京、それから世界といいますか、そういう人々がいずれもきちっと住んでいる地域地域の落差といいますか、こういうものについてどう考えたらいいのかと。別に特段の主張があるわけでもありません番組ですが、そういう番組を地方から発信していく余地は十分にあるものだというふうに考えています。
 デジタル化も一生懸命やらなくちゃいけませんし、あわせて、番組内容、地域への貢献といいますか、引き続き頑張ってまいりたいと思います。
 ありがとうございました。

○又市征治君
 終わります。ありがとうございました。