第190回通常国会

2016年3月16日 予算委員会



■2016年度政府予算案
@法人税減税が、設備投資の増大や、賃上げにつながるために有効だという理由を明らかにせよ。
A利益剰余金の推移を見るならば、減税をしないと企業は設備投資ができないという資金不足には陥っていないのではないか。
B富の適正配分の観点から、利益剰余金への課税を検討すべきではないか。
C消費増税を見送っても景気は一向に上向かなかったのではないか。アベノミクスは一部大企業を儲けさせる一方で、むしろ社会的に格差を拡大させただけではないか。
D日本経済と国民生活は、消費税を10%に増税をするような体力はないのではないか。


○又市征治君 社民党の又市です。
 最初に、法人税減税について伺います。
 政府は、来年度の法人実効税率を現行の32.11%から29.97%に、そして18年度には29.74%に引き下げる、こういう方針ですね。現在でも企業は高収益を上げ続けているわけですが、これが、この減税が企業の設備投資や賃上げ、あるいはGDPの増大につながる政策的な有効性というものを説明いただきたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) まず、今回の法人税のいわゆる改革というものは、経済の好循環を確実なものにしたいという観点から、これは、ただただ、単に法人税を減税するのではなくて、課税ベースを拡大することによって財源というものをまずしっかり確保しながら税率を引き下げ、法人課税をより広く負担を分かち合うという構造へ改革していくことによって、いわゆる企業というものの収益力というものを高めてもらって、設備投資とか賃上げ等々に積極的に取り組めるように促していこうとするのがその背景であります。
 例えば、これは総務省の所管になると思いますが、大法人につきましては、これ中小は別です、大法人につきましてはいわゆる外形標準課税の拡大というものを行わさせていただきますが、これは、御存じのように稼ぐ力が高い企業の税負担が減ることになりますし、また、赤字の大法人にとりましても、黒字化した場合の税負担の増加度合いというものが一挙に緩和されますので、こういったことから企業に対して収益力を高めるという意欲をもたらすんだと、私どもはそう思いますし、結果として、収益力の拡大に向けた前向きな国内投資とか、また継続的な賃上げというものが可能な体質でないと、生産性が上がらない限りは賃上げなんて長くはもちませんから、そういった意味では、経済成長にもつながっていくことが期待されると思っております。

○又市征治君 私は、税というのは応能負担が原則だと思いますが、黒字企業に対しては減税で、赤字企業にも外形標準課税拡大という形の中で課税というのは到底理解がされないのではないかと言わざるを得ません。
 ところで、企業の利益剰余金、これが、安倍政権が成立した2012年度の第4・4半期で323兆円余りでしたけれども、15年度の第3・4半期では約406兆円、指数でいうと26%近い伸び、こういう格好でして、黒字企業は減税をしないと新たな設備投資であるとか賃上げができないという状況にはない、そのことは御認識一緒ですね。

○国務大臣(麻生太郎君) 正確には、24兆円と25兆円、合計49兆円が過去2年間、去年の数字はまだ出ていないと思いますので、その前の2年間の数字で、24・5の25ですから49.5兆円伸びたということはもう確かであります。
 そのものが基本的には、いわゆる利益の内部留保金という別の言葉がありますけど、その内部留保金にたまって、その分が、給与等々に支払われている分が幾ら支払われたかといえば5千億です。
 正確に言いますと5千億しか増えていないというのは、これは極めて大きな問題なのであって、その分は本来なら配当とか賃金とかいうものに回ってしかるべき。それが回っていないところに問題があるのではないかということで、私どもは、少なくとも、何でしょうね、日本は社会主義をやっているんじゃありませんから、自由主義経済下で政府が企業に対して、企業に幾らと言うのは、差し込むというのはいかがなものかというのは、基本的に私は今でもそう思っていますけれども、非常事態でもありますのでそういったことを言ってくれといわゆる連合側に頼まれるという、頼む先は民主党に頼まれて、私どもじゃないんじゃないですかと2回も3回も公式の場で申し上げましたけれども、私どもの方から代わって言うのはいかがなものかと思いつつも企業側にそういう話をさせていただき、結果として、過去2年にわたりまして春闘等々において引上げがなされるという事実は起きておりますので、まだまだ足りないと思っておりますが、私どもは、これベースアップとは言いませんが、少なくとも年間給与として、賞与等々の類いでしかるべきものが払われておかしくないと、私ども、その点に関しましては意見は一致しております。

○又市征治君 いろんな理由がありますけれども、貯めた金、海外投資、そしてまた長期の株保有、こんなところに回って、今大臣がおっしゃったように、残念ながら設備投資や賃上げに多く回っていない、こういう問題があるわけで、そうすると、財界に口を挟むのがいいかどうかというのはありますけれども、問題は、日本経済をどうするのかという立場から言うならば、当然のこと、政府としてはそこに向かって要請していくのは当たり前であると思うので、私は、そういう意味でこの法人税減税は納得できない。むしろ、富の適正配分という観点からも、この利益剰余金への課税という問題も本当に真剣に検討すべき時期に来ているんじゃないかと思います。その点いかがですか。

○国務大臣(麻生太郎君) いわゆる利益剰余金、内部留保、約350兆ぐらいのところまで積み上がっておりますので、そういったものとしては、私どもとしては、いわゆる内部留保金に対しては、留保金課税とか剰余金課税とかいろんな表現がありますけれども、こういったアイデアは政府として今検討しているわけではありません。
 ただ、政府といたしましては、今、いわゆる投資拡大、賃上げを、取組をいろいろ促しているところなんですけれども、こういったものが、今後とも日本の経済というものに対して先行きというものがきちんと示されないと、企業としても、かつて、ついこの間までデフレで悩んでいた企業側にしてみれば、またデフレに逆戻りということを考えたら、それはとてもじゃない、内部留保をじっとためて、銀行なんというのは金貸してほしいときには貸さぬわけで、貸してほしくないときには借りろ借りろと言うのが銀行だと、経営者なら誰でも知っている話ですから。
 そういったような話を前提に立ちますと、なかなか銀行というものに対して、今、金を借りてまで設備投資をするという気がないからマネーサプライが増えていないという実情が現実問題としてそこにありますので、20数年間続いたデフレ状況のマインドがなかなか変更してこない、今のものに変わってきていないというのが現状だと思いますので、引き続きこれを積極的に進めていきたいとは思っております。

○又市征治君 企業に社会的責任を求める一方策として、そういう言ってみれば内部留保に課税を検討するということがあって私は当然いいだろうと思います。
 さて、そこで、安倍総理が2014年11月に、消費税10%への増税の延期について信を問う、こういう形で衆議院を解散をした。その理由は、アベノミクスを確かなものにするんだと、こういうことだったと思うんですね。
 だが、じゃ、増税は延期したけれども景気はどうなったか。残念ながら、実質GDPはずっと低迷、今年度も一体全体プラスになり得るのかどうか、こんな状況になっている。或いは消費者態度指数を見ましても、40ポイント前後で低迷をし続けている。世論調査、いろんなのを見てみても、アベノミクスを評価しない方が50%を占めている。
 つまり、消費増税を見送っても景気は一向に上向かなかったんではないのかと。アベノミクスは一部大企業を儲けさせる一方で、むしろ社会的に格差を拡大させた、これが実態じゃないですか。

○国務大臣(石原伸晃君) 経済指標の話でございますので、私の方から御答弁をさせていただきたいと思います。
 今、又市委員が御指摘をされました2014年11月と足下の状況を比較させていただきますと、失業率でいいますと3.6%から3.2%に低下、有効求人倍率は1.10倍から1.28倍に改善、地域別に見ても全都道府県で改善、名目雇用者報酬は一貫して増加傾向にあり、一昨年の7―9月期に比較して1.9%の伸び。企業関係をお話しさせていただきますと、民間設備投資額は、名目ベースでございますが、67.6兆円から70.9兆円と、およそ3兆円増加しております。中小企業の景況感は3ポイント改善しております。
 委員が、成長についてマイナスではないかというお話がございましたが、2015年の暦年が出ておりますけれども、名目で2.5%、実質で0.5%、2年ぶりのプラスでございます。GDPデフレーターもプラス2.0と、名目GDP、実質GDP、物価のいずれも上昇して、デフレ脱却に向けて経済再生が着実に前進していると認識をさせていただいております。

○又市征治君 石原大臣のお話聞いていると、何か日本の社会はバラ色のように聞こえてくるんですが、余り都合のいい話、数値だけを取られても、別の数値もしっかりと認識されないと政治にはならないんだろうと思うんです。
 様々な世論調査を見ましても、アベノミクスで景気が回復したと思っているか、こういう人々は残念ながら2割台、そう思っていない人が7割台、こういう状況が今あるんだろうと思うんです。政権に都合のいい数字を並べても国民はやっぱり信頼されないということが如実に表れていると思うんです。
 さて、そこで、最近、総理は10%の増税、ためらいを見せておられるように報道されています。一昨年の増税延期の際は、先ほども申し上げましたが、アベノミクスを確かなものにするんだという理屈付けだったということですが、最近では、世界経済の収縮なども再延期の条件に挙げられているようでありますけれども、しかし、私は、それ以前に、日本経済と国民の生活というのが消費税増税を行えるような体力でないんじゃないのか、こんなふうに認識をしますが、その点の見解をお伺いします。

○国務大臣(麻生太郎君) 今ほど石原大臣の方からいろいろな主要な経済指標の数値について述べられましたけど、これはいずれも事実ですから、その事実を認めていただかないと、そちらに都合のいい数字とこちらの都合のいい数字と違うのは当たり前の話ですから……(発言する者あり)しゃべっても、発言したって参議院では駄目ですよ、ここは衆議院とは違うから。
 是非、そういった意味では、海外要因を主として世界的なリスクの回避や動きが金融市場で広がっておりますのは、これはもう間違いない事実だと思っておりますけれども、この点につきましては、この間行われました、上海で行われたG20の中におきましても、世界的な見方として、現在のファンダメンタルズは世界経済の現状を反映したものではないということをはっきり示しておりますので、我々として見ますれば、今の実体経済というものを見ますと、今、石原大臣が言われた数字のとおりでもあろうと思いますので、私どもは、日本のファンダメンタルズ、実体経済のファンダメンタルズはしっかりしたものだと思っておりますので、私どもとしては、今、私どもの元々の消費税というものは、これは社会保障と税の一体改革という、人口の今の構成を考え、高齢化というものを考えたときに、我々はこれをやらねばならぬという前提に立って3党合意をされてスタートしておりますので、私どもとしては、よほどのことがない限りということで、リーマン・ショックとか大震災とか、いろんなことが使われておりますけれども、確実にこれを実施させていただきたいと思っております。

○又市征治君 そうおっしゃるが、首相の経済ブレーンの本田内閣官房参与は、来年4月の消費税率10%への再引上げを凍結すべきだ、これこそ最大の景気対策となると語っておられる。今日やられた政府の経済分析会合ですか、そこでも著名な外国の経済学者が延期したらどうだと言っておられる。このような意見が出てくることそのものをやっぱり真剣に国民生活の立場から見るべきだと、こう申し上げておきたい。
 そこで、この消費税率、消費税導入の1989年以来、消費税をどんどん上げてきたけれども、事実上は、法人税が減税をされたために、ほとんど法人税減税の代わりに回っていったというふうな数値が出てくるわけです。是非、そういう意味では、大企業と富裕層がますます富が集中して、国の予算では軍事費が肥大していく、一方で国民は格差と貧困が拡大する、こういう中で一億総活躍社会というのは空々しく聞こえる、こういう点をやっぱりしっかりと是非見詰めて政策を打ってほしい、このことを申し上げて、私の今日の質問を終わりたいと思います。