第190回通常国会

2016年3月24日 総務委員会



■公共放送の在り方に関する集中審査
@NHK全体にコンプライアンスが徹底していない。その原因は、どこにあるのか。
Aクローズアップ現代の出家詐欺に関するBPOの意見を、どのように受け止めているのか。
Bクローズアップ現代の当時の大阪の責任者が理事に就任しているが、問題ないのか。
C不祥事の調査に関して、アドバイザリー業務を監査法人と契約を結んだ経緯は。
D内部監査、ガバナンス調査委員会で、不正を見抜けなかったことについての責任は誰が、どのようにとったのか。
ENHKは次々に改革案を出すが、それぞれがどのように検討され、その実現のためにどのようなことが行われたのか。


○又市征治君 社民党の又市です。
 会長が就任されて以来、今年で3年目。予算、残念ながら全会一致で承認されるという事態にはならない状況です。先ほど会長は、十分に理解をいただけなかった、残念だという趣旨のことをおっしゃいましたが、予算は単に数字をいじる話じゃなくて、業務運営の在り方も含めて、人事も含めて、当然のこととして、問われるわけであって、そういう点で言えば、このまさに会長の、先ほども出ましたタクシーの利用問題やら、「クローズアップ現代」のまさにやらせのような演出問題であったり、あるいはNHK関連会社における架空発注による横領事件、また関連会社による土地購入問題をめぐるドタバタ劇であるとか、或いはまたNHK職員のタクシーチケットの不正利用など、報道機関でありながら他の報道機関から報道対象になるという事態が続いている、こういうことが問われているということでしょう。
 そういう意味で、これらの問題についてそれぞれ、そのたびにコメントを出したり、或いは対策とかを出されているんだけれども、私は一言で言うならば、先ほど来指摘されていますけれども、NHK全体にコンプライアンスが徹底されていないということに尽きるんだろうと思うけれども、そのこと、その原因はどこにあるというふうに総括されているのか、会長、そしてまた経営委員長から簡潔にお答えをいただきたいと思います。

○参考人(籾井勝人君) 一連の不祥事につきましては、視聴者からの信頼が欠かせないNHKとしては、決して許されないことでありまして、我々としても深刻に受け止めており、誠に申し訳なく思っております。深くおわびをしたいと思います。
 民間企業で不祥事が続けば当然業績に大きく影響するわけでございますが、我々NHKや関連団体の職員にはそうした意識が薄いと私も認識いたしております。私が、別に私の責任を回避して職員に転嫁しているわけではございませんが、やはり組織のことに関する責任感が希薄なのではないかというふうに感じております。
 信頼確保のために、私は先頭に立ちまして、全ての職員に受信料の重みを改めて認識してもらい、不正を許さない意識改革というものをグループ全体の抜本的経営改革とともに不退転の決意で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○参考人(浜田健一郎君) 一連の不祥事は、公共放送NHKの社会的使命と責任に対する自覚の欠如だと思わざるを得ません。
 経営委員会としても痛恨の極みであり、国民、視聴者の皆様には改めておわびを申し上げたいと思います。
 制度やマニュアルの整備だけではなく、一人ひとりの自覚と覚悟が求められていると思います。この原点を踏まえ、役職員が一丸となって取り組んでいただきたいというふうに思っております。

○又市征治君 いろんな問題が出てきているけれども、しかし受信料の支払率が向上しているというのはどういう理由か、つまりは、私はニュース番組については異論を持っておりますけれども、現場の努力で良質な番組が提供されているということ、またその徴収に当たっている方々の大変な努力もあるということだろうと思うんですね。
 しかし、昨年の「クローズアップ現代」が取り上げた出家詐欺に関する番組、NHKの信頼を大きく損ないました。NHKも調査委員会を立ち上げて、事実関係を調査して再発防止策を講じたと、こう言われている。
 一方で、BPOもこれを調査して意見を公表されているわけですが、その中で、NHKの調査報告書に対して、告発者であるA氏の言い分への反論とやらせと認定すべき事実があったかどうかに調査の焦点が絞られ、2つの番組の取材、制作過程について放送倫理の観点から検証が不十分であるとの印象を拭えなかった、こういうふうに問題点を指摘をBPOはしているわけですね。
 これについて、NHKは簡単に8行ほどのコメントを発表しているわけですが、このBPOの意見をどのように認識されているのか、その文言を読むんじゃなくて、会長の言葉でお答えいただきたい。

○参考人(籾井勝人君) 「クローズアップ現代」について、我々、内部調査も行いました。その結果は、今委員が申されたとおりでございます。
 それについて、だからいいんだということは私は決して思っておりませんし、実際にそういう疑惑を持たれること自体が問題であろうというふうに認識しており、この点については中でも当初から申し上げております。
 今後、そういう疑惑を持たれないように、どういうBPOの判断であろうと、やらせであったかやらせでないかということではなくて、そういうふうに思われること自体がやっぱり問題であるということを踏まえまして、今後、こういうことが起こらないように努力していきたいというふうに思います。

○又市征治君 BPOの意見も真摯に耳を傾けるということですね、はい。
 この問題で、NHKは関係者の懲戒処分を行ったわけですが、さらに役員報酬の自主返納も発表されました。その役員の中に、この「クローズアップ現代」が制作された当時の大阪局長も入っておられるわけですね。この方に私は何の恨みつらみも一切ありませんけれども。
 私は、昨年5月の本委員会において、自分が責任者であった局あるいは担当部署でこのような事態が起こって、報酬の自主返納を行った人でも理事になることは支障はないのかと、浜田委員長にこの点はただしたと思うんですね。その時点で浜田さんは、「経営委員会ではまだそのような議論はしておりませんけれども、今後も適時適切な判断をしてまいりたい」、こう答弁をされた。
 BPOの見解も発表されて、この件に関しては一応の決着が付いているわけですが、改めて、放送局としてあってはならない、「クローズアップ現代」のような不祥事があったとしても、その責任者が理事に選任されることに問題はないと経営委員長はお考えなのかどうか、改めてお聞きします。

○参考人(浜田健一郎君) 経営委員会が昨年4月の役員人事の同意を審議した際は、その件とは区別して任命について適切に判断したと考えております。
 この件に関する御指摘の理事を含めた執行部役員の報酬の自主返納は、調査結果に基づき、その責任を自覚して執行部が自律的な対応を行ったものであり、経営委員会はそれを尊重しております。BPOの意見は重く受け止めておりますが、執行部の自主対応に加えて責任を問うような新たな重大な事実があったとまでは認められなかったということだと理解をしております。

○又市征治君 人事というのは誰が見ても納得できる、そういうものが必要ですよ。あれだけ報道番組の信頼を失墜させても給料を返納すれば理事にもなれますというのでは、それは大方の私は理解を得られる話じゃない、甚だ疑問だ、そのことは申し上げておきたいと思います。
 次に、この委員会質疑や報道等によるNHKの関連団体における不祥事について、いわゆるガバナンス調査委員会、先ほども出ましたが、この調査とは別に、それ以前にアドバイザリー業務ということで監査法人と契約を結んでいたということですね。改めて、この事実経過について簡潔に御説明ください。

○参考人(今井純君) 御指摘の監査法人への委託は、NHKの内部監査室の特命調査の一部を委託したものでございまして、この特命調査は、当時問題となっておりましたNHK出版と同じような不正案件がほかの子会社12社にないかどうかを調べたものでございます。調査期間は平成26年の4月から7月、このときに人的応援をいただいた監査法人の費用は約5000万円掛かってございます。この結果は、一部の子会社で経理ルールや売上管理などの課題について指摘をし、管理の向上につなげたものでございます。
 一方、NHK関連団体ガバナンス調査委員会は、外部の方の目でNHKの指導監督や各関連団体に共通する内部統制上の課題を洗い出して提言をしていただいたものでございまして、調査期間は平成26年の3月から8月、費用は約5600万円掛かってございます。いただいた提言は、現在取り組んでいるNHKグループ改革の策定等にも大いに参考にさせていただいているところでございます。

○又市征治君 何か私は、同じ不祥事を契機に、趣旨が違うのかもしらぬけれども、2つの調査委員会あるいは監査が行われているというのはどうも理解ができない。受信料の無駄遣いだと指摘されてもしようがないんじゃないかと思うんですね。
 しかも、この内部監査やガバナンス調査委員会でアイテックの不正が見抜けなかった、このことについての責任は一体誰がどのように取ったのか、また、不正を見抜けなかった調査委員会あるいはメンバーに対してどのような対応を取られたのか、この点、会長、お聞きします。

○参考人(今井純君) このアイテックの事案で不正行為を行いました2人を懲戒解雇、管理監督責任がある上司16人を減給から停職までの懲戒処分といたしました。また、アイテックの常勤の役員8人のうち5人が辞意を表明し、3人が役員報酬の一部を自主返納したところでございます。また、NHK本体の社会的責任を明らかにするために、会長を含め執行部の役員全員が報酬の一部を自主返納したものでございます。
 先ほど御指摘ございました2つの調査については、双方目的が違っておりまして、相互に重複はないものというふうに理解しております。

○又市征治君 もう少し本当は突っ込みたいんですが、時間の関係もありますから、次に移ります。
 NHKは2月に、NHK関連団体に対する指導監督の強化と抜本改革というのと、NHKアイテック不正事案、構造的な原因究明と再発防止策、この2つの文書を公表されましたね。
 一昨年8月には、NHK関連団体ガバナンス調査委員会が、この再発防止策・ガバナンスに関する提言と、そしてまた、NHK関連団体のガバナンス根本的解決についての提言を取りまとめている。そして昨年6月には、関連団体ガバナンス向上プロジェクト報告書が公表されている。つまり、このアイテックをめぐる不祥事が発覚する以前に、関連団体の改革に関する提言が幾つも出されているんですね、これ。その後、アイテックの不祥事が公表されて、また改革案が提示された。
 このように次々と改革案が発表されると、本当に真剣にこれを検討されて決定されたのか、どうも疑問が湧いてくるんですね。昨年6月の提言、報告書は、NHK内でどのように検討され、課題実現に向けて体制が整備されてきたのか、そして、それらと今年新たに出された改革案との関係についてどういうことになるのか。
 私は、もう拙速に、何だろうと、何か問題が起こったらぱっと対策を打ち出す、そんなことよりも、NHKが公共放送としてどのような経営方針・哲学を持って、その実現のために関連会社それぞれの位置付けを含めてどういう体制が望ましいか、このグランドデザインを描くことこそが大事なのではないのか。今回の改革案は、NHK予算案の審査を目前にして慌てて取りまとめた、そんなふうに私は思えてならない。不信を持ちます。
 いずれにしても、今の点についてお答えください。

○参考人(籾井勝人君) 先ほどから申しておりますけれども、やはり今や我々としては実行あるのみと。要するに、いろんな対応、対策が打ち出されているんですけれども、それを実行していかない限りはまた何も変わらないと、こういうことでございます。
 いろんな調査委員会があって重複しているとかいう御意見もあるんですが、それぞれ、やはり、例えばガバナンス調査委員会というのは、関連企業の組織どうするとか、どういうところに弱点があるとか、そういう構造的な問題を指摘してもらっております。これは今、実行に移している最中でございます。それから、実際の内部監査の問題については、これはある特定の問題について調べたと、こういうことでございますが、いずれにしましても、我々としましては、問題点についてはかなり浮き彫りになっておりますので、いろんな考え方をどうするというよりは、後は実行に移してまいりたいというふうに思います。
 関連企業の組織も含めまして、今まさしく実行に着手した段階でございます。これをまた、我々、NHK本体についても同様のことをやっていきたいというふうに考えております。

○又市征治君 時間がなくなりました。
 過去2回のこのNHK予算承認に関して附帯決議が付いたことは、吉川委員から話がありました。まさに、この不祥事の多発、頻発、こういう言葉がその附帯決議にも載っているわけで、本当に重く受け止めておるならば、こんな問題は起こらないんじゃないのかと。
 やっぱり、役人の皆さんの本当に緊張感のある運営をしっかりやっていただくように注文を付けて、終わりたいと思います。