第190回通常国会

2016年4月14日 総務委員会



■一般質疑
@臨時・非常勤職員の処遇改善に関して、2014年に公務員部長通知が発出された背景は何か。
Aなぜ多くの団体が公務員部長通知に対応していないのか。総務省はそのことについてどのように把握をしているのか。また、それらの団体に対してどのような助言を行っているのか。
B臨時・非常勤職員の処遇に関する調査を行うべきではないか。
C常勤職員と同じ勤務時間で33年間働いていた特別職の労働者が、雇用形態を理由に退職手当が支払われなかったことを是とする最高裁判決が出た。どのように受け止めているか。Dこういうことをなくすために、地方自治体の非常勤の職員のうち勤務形態が常勤の職員等に準ずる者に対して、常勤の職員等と同様に時間外勤務手当や期末・勤勉手当あるいは通勤手当等の各種手当を条例によって支給できるように、地方自治体法を改正するべきではないか。


○又市征治君 社民党の又市です。
 今日は、先般の地方交付税、地方税法等の一部改正案の審議の際に総理にも質問をいたしましたが、非常勤職員の処遇問題について改めて質疑をしたいと思います。
 政府から、1億総活躍社会であるとか、あるいは同一労働同一賃金、あるいは最低賃金の引上げなどという言葉が次々と出てくるわけですが、しかし、やっぱり多くの国民の皆さんはどうも半信半疑でそのスローガンを聞いている、こういう感じじゃないのかという気がします。特に自治体の非常勤職員の人たちは、そのようなスローガン、絵空事に聞こえてしようがない、こういうことではないかという気がいたします。
 もちろん、総務省もこれまで非常勤職員の現状を是としているわけではありませんから改善に努力されてきたことは認めるわけですが、また、組合の働きかけもあり、処遇改善に努められてきたことはそのとおりですけれども、その一つが2014年に発出された公務員部長通知なわけでしょうけれども、この公務員部長通知発出の背景について改めてもう一度お聞きをしておきたいと思います。

○政府参考人(北崎秀一君) お答えします。
 臨時・非常勤職員の任用や勤務条件については、地方公共団体が制度の趣旨、勤務の内容に応じ責任を持って確保いただくべきものと考えております。
 総務省としましては、地方公共団体における臨時・非常勤職員の任用それから勤務条件について平成21年の4月に通知を発出しておりました。そして、留意すべき事項についてお示しをしました。
 しかし、その後数年が経過して、一つには、地方公共団体において行政ニーズの多様化に応じ臨時・非常勤職員の働く場がこれまで以上に拡大し、その数も増加傾向にあること、また二つ目には、臨時・非常勤職員の任用、勤務条件に関連する法令改正等が行われたことに加えまして、任用、勤務条件について21年に出した通知の趣旨がいまだ必ずしも徹底されていない実態が見受けられましたことから、制度の趣旨、勤務の内容に応じた任用、勤務条件が確保できるよう、26年の7月に通知を発出したところでございます。
 総務省としては、この通知に基づき臨時・非常勤職員の制度の趣旨を踏まえた適切な運用が行われるよう、引き続き助言をしてまいりたいと思っております。

○又市征治君 問題はその実効性ですよね。
 昨年6月の委員会で問うたことと同じことを答えられたと思うんだけれども、この14年通知でどの程度臨時・非常勤職員の処遇が改善されたのかと昨年聞きました。丸山政府参考人は、通知はまだ周知徹底の段階だが、2008年と2012年の調査では通勤費相当分の費用弁償をしている市町村が442団体から557団体へと増加をした、これは2009年通知に対して一定の対応が取られた結果だ、こういうふうに述べられたわけですが、確かに一定の改善を行っている自治体もあるんだけれども、まだまだ対応していない団体が多いということだと思います。
 なぜ多くの団体が通知に対応していないのか、総務省はそのことについてどのように把握しているのか、また、それらの団体に対してどのような助言を行っているのか、お伺いします。

○政府参考人(北崎秀一君) 総務省としましては、先ほど申しましたように、21年の通知の趣旨が必ずしも徹底されておりませんでしたので、26年、改めて通知を発出しました。
 各地方公共団体においては、この通知で示した留意事項等を踏まえて、現行の任用、自分たちが行っております現在の任用の取扱いを再度検証した上で、それぞれの実情に応じて必要な対応を検討いただいているものと承知をしています。この検討に当たりましては、多様な職場の実態でありますとか職務内容などを把握した上での課題の洗い出しを行ってその後の在り方を決定する必要がございまして、またその過程におきましては、職員の方を含めた関係各方面との様々な調整が必要となりますために一定の期間をどうしても要しているものだと認識をしております。
 私ども総務省としましては、26年の通知の助言内容について、地方団体に対し更に周知徹底を図りますとともに、適切な時期に取組の進捗状況についてフォローアップを行い、臨時・非常勤職員の必要な勤務条件の確保に取り組んでまいりたいと考えておるところであります。

○又市征治君 もう今やこの臨時・非常勤の職員の問題、自治体では60万人以上いる、ここまで広がってきてしまったということなわけで、同時に、この処遇改善問題、後ほどもまた触れますけれども、社会的な問題になっているわけですよね。
 そういう意味で、これは急いでやっぱりやってもらわにゃいかぬ。2012年に調査をやられたようですから、改めて全国的な調査をする、同時に今あなたがおっしゃったような中身をしっかりと周知徹底をしていく、その後に起こってきている問題なども含めて周知徹底を図っていく、こういうことが必要だと思いますが、調査改めてやるつもりございませんか。

○政府参考人(北崎秀一君) 臨時・非常勤職員の実態調査は、これまで必要に応じまして、平成17年、平成20年、それから先生御指摘ありました平成24年の3回実施をしてきております。次回行います調査におきましては、先ほどの、26年7月に私ども出させていただきました通知を受けた各地方公共団体の取組状況の把握を主な目的とさせていただきたいと考えております。
 平成26年7月の通知を受けた地方団体における検討は、各方面との様々な調整必要となりますため、どうしても一定の期間を要しておると見ております。このため、今後の地方公共団体の取組状況をひとつ見極めるとともに、適切な時期に調査を実施して取組の進捗状況についてフォローアップを行って、臨時・非常勤職員の必要な勤務条件等の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

○又市征治君 4年たっているわけですからね。是非、全国的な調査、その間に、それこそ冒頭に申し上げたように、政府も同一労働同一賃金とまで言い出している、こういう状況がある中で、依然として全く通勤手当さえも出していない自治体というのがあるわけですよ、まだ。だから、そういうことを含めて、是非、全国的な調査をやるように強く求めておきたいと思います。
 次に、大臣にお伺いしますが、総理との質疑でも取り上げたわけですが、この2014年のせっかくの通知だけども、これの限界も一面では明らかになってきているというのが大分県の中津市の非常勤職員退職手当支給請求事件に対する昨年11月の最高裁判決だった、こういうふうに思うわけです。
 この原告は、中学校の図書館司書として勤務日数及び勤務時間は同校の常勤職員と同じで33年間働いてきたという人ですね。退職に当たって原告は、市に対して、市の退職手当条例に基づいて約1090万円の退職金の支払を求めたわけですけれども、払われないということがあるから訴えたわけですけれども、地裁段階では、原告が特別職の職員であることから条例の適用を受ける職員に当たらないとして請求は棄却。他方、高等裁判所へ移って、ここでは原告が正規職員と同一の条件で勤務していたことを重視して、市に退職金の支払を命じた。極めて常識的な判決だったんだろうと思うんです。ところが、これが、市側が最高裁に上告をして、最高裁では、勤務時間などが常勤職員と同一であっても採用の形態等から退職金の支払対象ではない特別職に当たるという理由から、この原告の請求を退けた。全くゼロ。
 高市大臣、労働の実態ではなくて、こうした任用の形態、任命権者が勝手に同じ仕事を、一般職員と同じことをさせているのに、あんたは特別職だと言っただけでこういう格好になる。まさに、先ほども申し上げたように、同一労働同一賃金を訴えるようなこの安倍政権の下で、こんな全くこれと矛盾したようなことが最高裁の判決で起こってくる。やっぱり、これ法なり条例に問題がありということになるんだろうと思うんですが、この受け止め含めて、いかがでしょうか。

○国務大臣(高市早苗君) 最高裁の判決への受け止めということで、大変難しい御質問なんですが、被上告人は、中津市の規則により、地方公務員法第3条第3項第3号の特別職として設置する旨が定められていた三光教育センター嘱託員等として任用されていたということ、これを踏まえると、中津市は、被上告人が任用された職を特別職として設置する意思を有し、それを前提する人事上の取扱いをしていたと認められ、被上告人は特別職の職員に当たること、また、特別職である市長、副市長を対象とする中津市特別職の職員の退職手当に関する条例が別に制定されていること、さらに、改正経緯などから、中津市職員の退職手当に関する条例は特別職の職員を適用対象とされないものと解すべきであることということから、被上告人の方が退職手当の支払を請求することはできないと判示したと、そういう認識でございます。
 しかし、地方自治法では、条例で退職手当を支給することができるとされていて、これは一般職、特別職を問わないものでございます。特別職の職員のうち、例えば職務の内容が一般職の職員と同一と認められるような職や、勤務管理や業務遂行方法において労働者性の高い職については本来一般職として任用されるべきという助言を総務省は行ってまいりました。
 地方公共団体に対しましては、引き続き、この制度の趣旨、それから勤務内容などに応じた任用、処遇を行うように助言をしてまいります。

○又市征治君 今大臣がおっしゃったように、行政側として最高裁を批判するわけにもいきませんからそういう御答弁になるんでしょうけれども、最高裁は極めて形式的な判断をしたと言わざるを得ないということだと思いますけれども、やはり労働実態から見て任用形態が誤っているわけでありますから、そのしわ寄せを一方的に労働者に寄せているこういう状況、そういう判断がなされることを避ける努力をやっぱりすべきだと思う。
 33年間も常勤の職員と同様の勤務をしながら退職金が支払われない労働者が現に存在する、こんなこと許されるわけないでしょう。もし我々の中で、自分の家族あるいは親戚で、このような33年間も働いて退職金ゼロ、おまえは特別職だったからなんてことを言われて黙っておれるのかと。それが当たり前の常識だろうと思うんですね。
 だから、この2013年に我が党も含む当時の野党6党が、地方自治体の非常勤の職員のうち勤務形態が常勤の職員等に準ずる者に対して、常勤の職員等と同様に、時間外勤務手当や期末・勤勉手当あるいは通勤手当等の各種手当を条例によって支給できるようにする地方自治法改正案を共同でこの参議院に提案をしたんです、この委員会に。しかし、残念ながら、与党の賛成を得られませんでした。条例の制定又は改正で手当が支給できるようにすることであって、地方自治の本旨に反するわけでも全くない、こういうことですから、なぜこのような内容の地方自治法の改正に総務省が消極的なのか、どうも私は解せない、こういうことでありますし、是非、大臣、前向きな検討を行っていただきたいと思いますが、この点についての御見解を伺います。

○国務大臣(高市早苗君) そうですね、先ほど部長からも答弁しました平成26年7月の通知を受けた取組ですね、これについて調査を行うということ、各方面、職員団体や議会などとの調整が必要で一定の期間を要するからということでございましたけれども、もう4年たっているということでございますし、実態をしっかりやはり把握した上で、今委員がおっしゃった件についても検討しなきゃいけないと私は考えます。
 ですから、立法措置というよりも、通知で示している事項についてなるべく早く今後の取組状況も見極めつつ必要な調査を行いまして、臨時・非常勤の職員の方々の必要な勤務条件などの確保に向けた取組を総務省としても進めてまいりたいと思います。

○又市征治君 大臣から一定前向き、局長、是非早急に調査をやってくださいよ、今大臣からあったように。早くやらないと、こういう人たちがまだ次々出てくるわけです。この間も年度末だったわけだ。
 そういう、言ってみれば、政府が同一労働同一賃金と言いながら、そのお膝元の公務職場でこのような差別待遇がまかり通るようでは、政府の本気度そのものが問われるということでもあるわけですから、早く自治法の改正をすれば私は一番いいと思うけれども、しかし、条例改正などを含めて実態としてこのことがなくなるように是非努力いただくことを重ねて要請して、今日の質問を終わりたいと思います。