第190回通常国会

2016年4月18日 決算委員会



■平成26年度決算他2件
省庁別審査:法務省、外務省、防衛省、裁判所及び独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門
@昭和19年、20年の旧外地特別会計は、日本が支配をしていた旧植民地を統治、支配するために設けられていた特会という理解で良いのか。特会の中身、目的は何だったのか。
A1946年の法律で、この決算の提出を答弁延期することが認められたが、具体的にはどのような困難があったのか。
B特会の剰余金を一般会計に繰入れることになるが、当時の債権・債務の関係が未整理な中で、問題ないのか。例えば剰余金は、朝鮮半島出身の強制動員被害者が加入した保険と年金の残額であるとの指摘もある。
C今回対象となっている5地域における債権債務の関係は、どのように整理をされてきたのか。
D戦後処理問題において国家間、地域間で合意していない部分もある。日本に大きな責任がある先の大戦におけるそれぞれの国の被害については、今後とも是非真摯に向き合っていくことが必要だ。
E防衛費が現在のまま拡大すると、26中期防衛力整備計画の枠内に収まらないが、どのように対応していくのか。
F一方で防衛大綱、中期防は集団的自衛権の行使を前提としないと言われ、他方で集団的自衛権の行使も視野入れて自衛隊の戦闘能力を高めるというのは矛盾だ。防衛大綱、中期防の見直しが必要になるのではないか。
G会計検査院が防衛装備品のライフサイクルコスト(LCC管理)について検査を行ったが、LCC管理とは何か。検査院はなぜ検査を行ったのか。防衛省は検査院の意見表示にどのように対応したのか。


○又市征治君 社民党の又市です。
 質疑に入る前に、この度の熊本から大分にわたる広範囲な大地震、亡くなられた方々の御冥福をお祈りすると同時に、また被災に遭われた皆さんのお見舞いを申し上げるとともに、また政府には全力を挙げての救援やあるいは人命救助、様々な諸対策、是非進めていただくことを強く要請をしておきたいと思います。
 今日は最初に、旧外地特会の昭和19年、20年度決算についてまず伺いたいと思います。
 今回、この5地域における10の特別会計の決算について承認が求められています。これらの特会は、日本が支配していた旧植民地を統治、支配するために設けられていた特会という理解でよいかどうか、特会の中身、目的について簡単にお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(大菅岳史君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、旧外地特別会計、これは朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋、これらの地域に係る10の特別会計の総称でございます。それぞれについて、それぞれの地域の行政庁の一般会計に当たる5つの特別会計、それ以外に、それぞれの地域について、食糧管理、簡易生命保険事業、郵便年金事業の経営、鉄道等の事業用品の購入、こういったことに充てるために設置された特別会計でございます。

○又市征治君 今お答えがあったように、歴史事実として朝鮮総督府や台湾総督府等というのは植民地支配の行政機関であった、そのための会計だったということになりますね。
 そこで、1946年の法律によって、44年、45年のこの決算提出を当分の間延期をする、こういうことが認められたということでありますが、具体的にどのような困難があって今日まで延びてきたのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(大菅岳史君) お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、昭和19年度、20年度の決算につきましては当面の間延期することができるということを昭和21年の法律で定めております。
 この理由につきましては、当時、現地占領軍の命令等により書類の持ち帰りができなかったこと、それから終戦時の混乱により、通常提出されるものと同様の決算書等を作成するために必要な会計資料が散逸したこと、こういったことにより作成が困難であったという事情がございます。
 このため、現存する資料を基に決算を作成しようとした場合であっても、全く資料がないか、あっても一部の資料のみの状況でございましたので、当時の会計手続により決算を作成することができる特別会計は全く存在しないという状況でございました。

○又市征治君 つまり、必ずしも実態を反映したものではないということの御説明です。
 今回、総額約8億円の剰余金が一般会計に繰り入れられるということになりますが、この剰余金は日本の資金だというふうに言い切れるのかどうか、ここがちょっと問題だと思うんですね。もしこれが当時の現地の人々が納めた資金だとすれば、それを日本の国庫に入れるということに抵抗感を持つ人が現れるのは当然のことだと思うんです。
 例えば、さっきもありましたが、朝鮮簡易生命保険・郵便年金特会では300万円の剰余金とされていますが、この資金は朝鮮半島出身の強制動員被害者が加入した保険と年金の残額であるとの指摘もあります。これに対する利息が2億9千万円、こういうふうにされているわけですけれども、これを日本の一般会計に繰り入れることに何ら問題はないのかどうか、この点いかがでしょうか。

○政府参考人(大菅岳史君) お答え申し上げます。
 先ほど御説明しましたとおり、通常同様の決算書を作成するために必要な会計資料が散逸したということで、例外的な形で決算を今回提出した次第でございますが、現在提出しております決算にありますとおり、例えば予算における歳入につきましては様々な財源が記載されておりますけれども、実際の収入済額、これの内訳については全く不明でございまして、御指摘の当時の現地の人々から納められた額、こういったものを特定するということは困難でございます。
 このため、今回の特別会計決算の結了の結果として発生する剰余金、これにつきましてもその原資といったものを明らかにするということは困難ということでございます。

○又市征治君 この説明は元々が、旧憲法下においてこれら特会の剰余金の処理というのは政令で定めるというふうに決めているわけですよね、旧憲法下。ところが、今回は現憲法の下でこの剰余金を一般会計に繰り入れるというふうにしているわけでありまして、自国に有利な清算ということは一体いかがなものか、こういう疑念が実はあります。
 そこで、外務省は、ホームページで日本語で、旧外地特会に属する日本政府に対する債権に関する問合せに関する告知を行っているわけですが、そこには、日本政府からの支払を受ける必要があると思われる旧外地特別会計に属する債権をお持ちの方は次の必要書類を郵便にて御送付の上お問い合わせください、こう述べられているわけですが、この特会に属する未知の債権債務関係が存在するかもしれないという認識からこうおっしゃっているんだろうと思うんですが、この点と、また、日本人だけではなくて、先ほど述べたように、現地の人々との間にも債権債務の関係があるかもしれない。今回対象となっている5地域における債権債務の関係というのは、これら諸国との間においてどのように整理をされてきたのか、この点をお答えください。

○政府参考人(大菅岳史君) お答え申し上げます。
 今回のこの決算につきましては、収入済額、支出済額については既知の国庫金出納記録、いわゆる日銀の帳簿、これを基に整理したものでございます。したがいまして、今回この作業を行ったことで新たに未知の債権債務が把握されたということはございません。
 ただし、先ほど申し上げたとおり、終戦直後の混乱等により会計資料が散逸した、こういった事情の中で旧外地特別会計に属する債権債務の全体像について明らかにするのは困難な状況でございまして、どのような個別の債務が残っているかについて具体的には把握しておりません。その意味では未知の債務が存在するということでございます。
 このため、旧外地特別会計に属する債権について外務省に問合せの窓口を設置いたしますとともに、告示等を通じてこれを案内いたしまして、今後、個別の問合せについて、この窓口を通じて誠実に対応していくという方針でございます。
 二点目の個別の国、地域等の財産請求権、これにつきましては、既に、例えば韓国との間では、昭和40年の日韓請求権協定、これにより完全かつ最終的に解決されたということは解決されておりますし、旧太平洋諸島信託統治地域についても同様でございます。中国については、1972年の日中共同声明発出後、請求権の問題は存在していないという立場でございます。

○又市征治君 今のお答えからいくと、簡単に言えば、北朝鮮、台湾、樺太などについては未処理ということになるんだろうと思うんですね。大変ややこしいことで、昨年は戦後70年を経たという節目の年だった。だから、特会の決算もそれを考慮して今日やられたんだと思うし、これはやむを得ないことだなという感じはしますが、しかし、本来この戦後処理問題というのは国家関係だけでは済まされない問題がある。
 先般も、外務大臣、大変御努力をいただきましたが、その一例がいわゆる従軍慰安婦問題だったと思うんですね。ましてや国家や地域間で合意していない場合、これ大変複雑な問題が起こってくる可能性がある。日本に大きな責任があるさきの大戦におけるそれぞれの国の被害については、今後とも是非真摯に向き合っていただく、この努力が必要かと思うので、この点については岸田大臣からお答えをいただきたいと思います。


○国務大臣(岸田文雄君) 戦後処理の問題につきましては、我が国は、サンフランシスコ平和条約、さらには様々な2国間条約など、この関連条約に従って誠実に対応してきたところであり、今後とも我が国の立場を堅持しつつ、近隣諸国との関係、一層深化させていかなければならないと認識をいたします。
 そして、先ほど、財産請求権問題について、現状について答弁をさせていただきました。韓国、そして旧太平洋諸島信託統治地域、あるいは中国との関係については答弁させていただきました。逆に、北朝鮮、台湾、南樺太について委員の方から御指摘をいただきましたが、こうした地域との関係においては、財産及び請求権の帰属が確定した際にそれに従って適切に処理されることになると認識をしております。
 そして、先ほど問合せについても御質問をいただきましたが、こうした様々な対話の枠組み等も重層的に活用しながら、近隣諸国との関係、これ一層深化させていかなければならない、このように認識をいたします。

○又市征治君 是非しっかりとやっていただくように要請をしておきます。
 次に、安全保障問題、防衛予算について伺いたいと思います。
 先日の全国紙の世論調査では、さきに成立した安保関連法案、まあ法案ではなくて法ですが、これへの賛成は35%、反対が46%と、依然反対の声が強いわけです。国民に十分な説明もないまま、先月29日に戦争法が施行された。このことについては強く抗議を申し上げておきたいと思います。
 さて、この防衛関連予算は、第2次安倍政権成立以来、拡大の一途であります。2013年度が4兆7538億円、14年度が4兆8848億円、15年度が4兆9801億円、そして今年度がついに5兆円を超えて5兆541億円と、こうなっています。現在の防衛予算は、26中期防衛力整備計画に沿って編成をされておりますけれども、このまま拡大するとすれば、この中期防の上限23兆9700億円で収まらないということになっていくのではないのかと。いや、収めるためには来年度から伸びを抑えていかれるのかどうか。この点、まず御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 防衛予算につきましては、防衛大綱及び中期防に従いまして着実に防衛力を整備しているわけでございます。今後とも、中期防で定められた所要の経費の範囲内、これで着実かつ効率的に防衛力整備を進めてまいりたいと考えております。
 来年度から防衛費の伸びを抑えるのかという御質問でございますが、平成29年度以降の防衛関係費につきましては、その時点における経済状況、また安全保障状況等を踏まえて編成されるものでございまして、現時点においてお答えすることは困難でございますが、今後とも、中期防で定められた所要の経費の範囲内で着実かつ効率的に防衛力を進めてまいりたいと考えております。

○又市征治君 今ほどもありましたが、昨年の質疑の中で、自衛隊の活動領域が今後拡大される以上、その拡大に堪え得る自衛隊員の訓練や装備が必要となり、新たな軍備拡大と防衛予算の拡大になるんではないのか、再三のそういう問いに対しても、今大臣がおっしゃったように、中期防の枠内で編成する、こういうふうに答えられていた。
 ところが、政府は、一方で防衛大綱、中期防は集団的自衛権の行使を前提としていない、こういうふうに強調されながら、他方では集団的自衛権の行使も視野に入れた自衛隊の戦闘能力を整備する、こういうふうにおっしゃるわけで、これは大変矛盾した説明だというふうに言わなきゃならぬと思うんですが。そして、防衛省は現在、南スーダンに派遣される第9次要員には戦争法施行以降も新たな任務を付与しないと、こう決定をされて、さらに、5月以降派遣される予定の第10次要員についても慎重に検討をする、こういうふうにおっしゃっているわけですね。
 法施行以降も新たな任務を付与しないということについて、大臣は、訓練等事前の準備が必要だと、こう記者会見で述べられているわけですが、それではなぜあのような拙速かつ乱暴な国会運営を行ったのか、こう言わざるを得ないわけでありますけれども、いずれにしても、自衛隊員には新たな訓練が必要となるわけでありますから、防衛予算は中期防の枠内で収まらないんではないのか。また、この法を踏まえると、防衛大綱、中期防の内容そのものの見直しが必要になるのではないのか。ここのところは、大臣、もう少し明確にお答えください。

○国務大臣(中谷元君) 現在の自衛隊の任務は、国民の命と平和な暮らしを守り、国際平和、国際社会の安全に貢献するということでございます。平和安全法制施行後も、国民の命と平和な暮らしを守り、国際社会の平和と安全に貢献する、この自衛隊の任務には全く変わりはありません。
 この平和安全法制、このような任務を切れ目なくより一層効率、効果的に果たすということができるようにするものでございまして、基本的に、法案の整備によりまして全く新しい装備が必要になったり、また装備の数量、自衛官の定員あるいは防衛費の大幅増、これが必要になるということはございません。この装備、予算につきましては、法整備とは別に防衛大綱、中期防、閣議決定、この中でやっていっておりまして、5か年、先ほども申し上げましたけれども、0.8%の防衛費を伸ばす計画、この範囲の中で着実に実施をしていきたいと考えております。

○又市征治君 この自衛隊に新たな任務を付与する、しかしながら従来の延長線上で防衛力整備を考えるというのはちょっと理解ができないんですね。だとすると、既にあの法案を国会に提出する前から防衛省はこの法案そのものを既定事実として防衛力整備というものを準備してきたんではないのか、そういうふうな疑念が湧いてきて当然、こういうふうに言わざるを得ないわけです。是非その点はもう少し明確にするように、今日は時間がありませんからこれ以上追及いたしません。その点は改めてお聞きしていきたいと思います。
 最後に、会計検査院が意見表示を行った防衛装備品のライフサイクルコスト、いわゆるLCC管理についてお尋ねしておきたいと思います。
 まず防衛省に伺いますが、このLCC管理とはどういうものであり、どのような理由で導入をされたのか伺います。
 次に会計検査院に伺いますが、なぜこのLCC管理について検査することになったのか、何が判明し、それが放置された場合の弊害などについてはどのような御見解か、これを簡潔にお答えいただきたいし、また指摘されたことについて防衛省はどのように対応されたのか、併せて伺いたいと思います。


○政府参考人(田中聡君) お答え申し上げます。
 ライフサイクルコスト管理とは、装備品等のライフサイクル、すなわち構想段階から研究開発、量産、配備、運用、維持、廃棄に至るまでの全期間を通じまして必要なコストの見積額の推移を継続的にモニターすることによりまして、コストの上振れのおそれやその要因を早期に把握し、適時適切な対策を取ることにより、これまで以上に質の高い装備品を適切なコストやスケジュールで取得するためのものでございます。
 この導入の経緯でございますが、平成19年の10月になりますが、装備品等のライフサイクルにわたり一貫したコスト管理等を行うため、ライフサイクルコストを明示し、取得プロセスの節目で、性能、コスト等の要素を的確に評価した意思決定を行うとともに適切な事後検証が行われる制度の整備について検討せよとの防衛大臣の御指示を受けまして、平成20年度以降、主要な装備品の一部につきましてライフサイクルコストを算定しているところでございます。

○説明員(岡村肇君) お答え申し上げます。
 防衛装備品は、高性能化等に伴い高額化する傾向にあり、長期間にわたり運用されますことから、ライフサイクルコストの面からの管理を適切に実施することにより効果的かつ効率的な取得に資するとともに、費用面に係る説明責任の強化を図ることが重要となっております。こうしたことから、ライフサイクルコストの算定及び検証が適切に行われているかなどに着眼して、検査を実施いたしました。
 検査した結果、ライフサイクルコストの算定に当たり、防衛装備品の取得、運用、維持等に係る契約金額のデータの収集等が適切でなかったり、その運用に当たって必要となる部隊での整備等に係る人件費を算定していなかったりしている事態や、その検証に当たり、一部の費目について見積値と実績値に乖離が生じた原因を分析していないなどの事態が見受けられ、このような状況のまま推移すると、ライフサイクルコスト管理の目的を達成できなくなるおそれがあると認められました。
 そこで、防衛装備庁と各幕僚監部等が相互に密接に協力する体制を整備して、ライフサイクルコストの見積値の算定等及びこれに基づく検証を適切に行い、その結果を防衛装備品の取得の意思決定等に適切に活用することができる方策を講ずるよう意見を表示したところでございます。

○又市征治君 時間が参りましたから終わりますが、私もこの決算委員会で何度も防衛省の予算問題、ずさんな使い方の問題を指摘しました。今、会計検査院から指摘があった問題、これがきちっとされなければ、やはりこの予算そのものだってずさんなことになってしまうということがあるわけですから、この点をしっかりと実施いただくように、大臣、指導いただくように要請して、今日は終わりたいと思います。