第190回通常国会

2016年4月19日 総務委員会



■国立研究開発法人情報通信研究機構法及び特定通信・放送開発事業実施円滑化法の一部を改正する等の法律案
@情報通信研究機構(NICT)は、情報通信分野における国唯一の公的研究機関であり、同時に資金も含めた事業支援を行う2つの役割を担っているが、なぜこの2つの課題を併せ持つことになったのか。
ANICTの平成26年度事業報告書によると、約577億円の繰越欠損金が計上されているが、何件ぐらいの事業への支援が焦げ付いてきたのか。総務省は、今年度からの中長期目標において繰越欠損金の着実な縮減に向けた取組みを指示しているが、具体的にはどんな方法でそれが実現できるのか。例えば、今回の法改正によってサイバーセキュリティーの演習がNICTの業務に加えられるが、これが経営改善の一助になるのか。
B日本におけるサイバーキュリティのための各組織、機構の位置づけは、どうなっているのか。
C今回の法案で、NICTも日本におけるサイバーセキュリティー確立の枠組みに法的にも組み込まれることになるのか。またサイバーセキュリティー演習業務は、その分野における他の機構、組織との関係において具体的にどのような役回りになるのか。その役割がなぜNICTに期待をされることになったのか。
Dサイバーセキュリティー確保のための官民連携は、どのように行われているのか。
Eサイバーセキュリティー確保のための国際連携の枠組みは、どのようになっているのか。また体制が異なる中国、あるいはロシア等との連携は進んでいるのか。


○又市征治君 社民党の又市です。
 質疑に入る前に、改めて、熊本・大分大地震、この中でお亡くなりになった方々の御冥福をお祈りすると同時に、被災された皆さん方の一日も早い回復を心から御祈念を申し上げたいと思います。
 質疑に入りますが、この情報通信研究機構、NICT、何か言葉回りにくいんだけれども、いわゆる機構法第4条で、情報の電磁的流通及び電波の利用に関する技術の研究及び開発、高度通信・放送研究開発を行う者に対する支援、通信・放送事業分野に属する事業の振興等を行う情報通信分野における国の唯一の公的研究機関ということの任務と、あわせて、いわゆる円滑化法の第六条により、通信・放送新規事業に対する債務保証であるとか資金出資等の支援事業も行うことになる、こういうことですね。
 つまり、NICTは、一面では情報通信分野における国唯一の公的研究機関という顔と、他面では資金も含めた事業支援を行うというこの両面の顔を持っている。技術的支援ならば公的研究機関として当然の役割でしょうけれども、資金的事業支援は研究機関としてはちょっと異質であって、必ずしもNICTが行う必要はなかったんではないかと、こう思うんですけれども、なぜこの2つの課題を併せ持つことになったのか、その理由についてまず説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(富永昌彦君) お答え申し上げます。
 情報通信研究機構でございますが、旧独立行政法人の通信総合研究所と旧認可法人の通信・放送機構が統合いたしまして、平成16年度に発足した組織でございます。
 旧通信総合研究所の方は主として無線通信等の通信関係の研究開発を行っておりまして、もう一方の旧通信・放送機構の方は情報通信分野における出資、債務保証等の事業支援業務を行っておりました。旧これら2つの法人はいずれも情報通信技術に関する業務が中心を占めていた点で類似性、共通性がございまして、自らの研究開発の推進と事業支援対象の選定等におきまして、両法人の成果、知見を統一的に活用することで以前に比べましてより効果的、効率的な業務運営が可能になると考えたものでございます。
 以上でございます。

○又市征治君 このNICTの平成26年度事業報告書によると、約577億円の繰越欠損金が計上されていますね。衆議院総務委員会では、NICTの委託先が事業環境の悪化によって製品等の売上げの黒字化のめどが立たず、研究開発委託費で焦げ付いた部分である、こういう説明がされているわけですが、何件ぐらいの事業への支援が焦げ付いてきたのか。
 また、総務省は、今年度からの中長期目標において繰越欠損金の着実な縮減に向けた取組を指示しているようですけれども、具体的にはどんな方法でそれが実現できるというふうにお考えなのか。例えば、今回の法改正によってサイバーセキュリティーの演習がNICTの業務に加えられることになったわけですが、これによって経営改善の一助になるのかどうか。

 この点、2点お伺いしたいと思います。

○政府参考人(富永昌彦君) 情報通信研究機構の民間基盤技術研究促進事業でございますが、情報通信分野の基盤技術研究を促進するということで、広く民間企業等から研究開発課題を公募いたしまして研究開発を委託する事業でございます。平成22年度には新規案件の募集を既に停止しております。
 この事業では、まず研究開発委託費が一括して計上されまして、繰越欠損金として累積されまして、研究開発の終了後に、成果物でございます製品等に係る売上げが生じた際にその一部を納付してもらうというスキームになってございます。
 これまで、民間企業への基盤技術研究開発委託でございますが、59件行ってまいりました。いずれも委託額に比べまして納付額はまだ少ない状況でございまして、平成26年度末時点では繰越欠損金として累積された額が約574億円となってございます。
 それで、これからNICTではどのように取り組むかということでございますが、今年度からの中長期計画におきまして、経営、知的財産等の各分野の外部専門家を活用いたしまして、売上げ向上に向けた課題を把握いたしまして実効性ある改善策を助言するなど、その繰越欠損金の縮減に向けた取組を着実、効果的、効率的に進めることといたしております。特に、今後とも納付が見込める案件の重点的なフォローアップですとか、受託者が取得した知的財産権が相当の期間活用されていない場合と認められる場合における当該知的財産権の第三者による利用ですとか第三者への移転ですとか、そういったことに取り組んでいくこととしております。
 総務省といたしましては、これらの取組、着実に実施されるよう、しっかりと注視していく所存でございます。

○又市征治君 研究開発事業と事業支援というのはそれぞれ担当が異なるんでしょうけれども、多額の欠損を抱える法人にサイバーセキュリティー上重要な課題を付与することが果たしてどうなのか、ちょっと私は違和感を感じざるを得ないんですが、いずれにしても、いい結果が出るようにしっかりと取り組んでもらいたい、こう思います。
 次に、一昨年、サイバーセキュリティー基本法が成立をして、サイバーセキュリティー戦略本部であるとか内閣官房セキュリティーセンターが設置をされたわけですけれども、これらが政府中枢のサイバーセキュリティー組織だとするならば、各省庁にもそうした対応をする組織があるんだろうと思いますけれども、これらがどのような組織があるのか、そしてこれらの組織、機構の位置付けはそれぞれどのように整理されているのか、この点、簡単に御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 サイバーセキュリティー戦略本部でございますけれども、サイバーセキュリティー政策の司令塔といたしまして、サイバーセキュリティー戦略の策定など、サイバーセキュリティーに関する施策の総合的かつ効果的な推進のための企画立案、総合調整を行っております。
 また、内閣サイバーセキュリティーセンター、NISCでございますけれども、こちらは、今申し上げました戦略本部の事務局といたしまして、政府機関に係る不正な通信の監視、監査、原因究明調査等の事務を行っております。
 次に、各省庁でございますけれども、今申し上げましたサイバーセキュリティー戦略本部及びその事務局であるNISCが総合調整をする中で、自らの組織におけるサイバーセキュリティーの確保を図るとともに、その所掌に応じたサイバーセキュリティー施策を推進しているところでございます。
 また、NISCは、独立行政法人情報処理推進機構、IPA、それから国立研究開発法人情報通信研究機構、NICTでございますが、この両者との間におきまして、それぞれの機関における専門的な知見の共有等の観点からパートナーシップを締結をし、情報共有等、連携を図ってきているところでございます。
 今後とも、関係機関と一層緊密に連携をしながら、我が国のサイバーセキュリティー対策の強化を図ってまいりたいと考えております。

○又市征治君 今説明があったように、既存のセキュリティー対策の組織が存在をしますけれども、今回、NICTの業務にサイバーセキュリティー演習の追加であるとか、あるいは、この演習に係る中長期目標等に関してサイバーセキュリティー本部の意見を求める等々によって、このNICTも日本におけるサイバーセキュリティー確立の枠組みに法的にも組み込まれることになる、そう理解していいかどうか、また、サイバーセキュリティー演習の業務というのは、その分野における他の機構、組織との関係において具体的にどのような役回りになっていくのか、その役割がなぜNICTに期待をされることになったのか、この点、伺います。

○国務大臣(高市早苗君) 国のサイバーセキュリティー戦略、政策でございますが、サイバーセキュリティー戦略本部が政府全体の総合調整を担い、各府省が個別政策の実施などを進めることになっております。
 本改正法案お認めいただきましたなら、NICTが行うサイバー防御演習は、このサイバーセキュリティー基本法及びサイバーセキュリティー戦略を踏まえてこれから計画的かつ効果的に実施されることになります。その上で、演習の対象ですとか内容についてはサイバーセキュリティー戦略本部に意見を聴いた上で実施するということにしております。
 先ほど答弁がありましたとおり、NICTとNISCとの間でパートナーシップ協定がございます。このパートナーシップ協定の下、NICTが有する演習基盤や知見を活用して、NICTの業務として位置付けていただく予定のサイバー防御演習において得られた成果を共有するということによって、政府全体のサイバーセキュリティー確保に向けて更なる貢献が期待できると考えております。

○又市征治君 政府あるいは関係機関が連携してサイバーセキュリティー対策の確立に努めていることは今の御説明でも分かりましたが、しかし、このサイバーセキュリティーの確保というのは官民挙げて取り組まないと成果を上げることはできないんだろうと思うんですね。
 具体的にはどのような形で連携が取られているのか、若干ここらのところの説明をいただきたい。


○政府参考人(谷脇康彦君) 委員御指摘のとおり、サイバー空間における脅威は深刻化が急速に進んでいるところでございます。とりわけ我が国は、目前に伊勢志摩サミット、また4年後には東京オリンピック・パラリンピックを控えておりまして、現下の厳しいテロ情勢に鑑みますと、サイバーセキュリティーの確保は官民が連携して取り組むべき極めて重要な課題であると認識をしております。
 特に、重要インフラに係るサイバーセキュリティー対策については官民連携が不可欠でございます。先月開催をされましたサイバーセキュリティー戦略本部におきまして、重要インフラの情報セキュリティー対策に係る第3次行動計画の見直しに向けたロードマップが決定をされたところでございます。重要インフラ防護の更なる対策強化に向けまして、このロードマップに従い検討を進め、行動計画の見直しについて今年度末を目途に結論を得ることとしております。
 こうした取組を通じまして、官民の連携を一層強化しながら、サイバーセキュリティー対策の強化に努めてまいりたいと考えております。

○又市征治君 ところで、最近は国境を越えたサイバー攻撃というものも活発になっているということがあるわけでありまして、そのための国際的連携も進んでいるんだろうと思いますけれども、その枠組みは一体どういうふうになっているのか。また、体制が異なる中国であるとか、あるいはまたロシア等との連携というのは容易ではないと思いますけれども、この連携状況はどのようになっているのか、もう少し御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 サイバー空間を取り巻くリスクが深刻化する中、国境を越えた自由な情報の流通を可能とするサイバー空間の便益を享受するとともに、国家の安全保障、危機管理上の課題でもあるサイバー攻撃に迅速かつ的確に対応するためには、委員御指摘のとおり、諸外国等と効果的に連携することが必要でございます。こうした認識の下、昨年9月に閣議決定されましたサイバーセキュリティー戦略におきましても、多様な主体との国際的な連携により、サイバーセキュリティーの確保等に取り組んでいくこととしているところでございます。
 具体的には、アメリカ、イギリス、オーストラリア等との2国間の協議、対話を通じまして各国と連携を強めるとともに、国連の政府専門家会合や官民を含む幅広い参加者を得たサイバー空間に関する国際会議等の多国間の国際会議への積極的な参加を通じまして、サイバー空間に関するルール作り等に積極的に貢献をしているところでございます。
 委員お尋ねの中国及びロシアとの対話でございますけれども、改めて申し上げるまでもなく、我が国のサイバーセキュリティーの確保のためには中国及びロシアとの対話も極めて重要であると考えております。これまでも日中韓の3か国によるサイバー協議、あるいは日ロのサイバー協議の場におきまして、サイバーセキュリティー分野における政策動向等について意見交換をしてきているところでございます。
 今後とも、こうした2国間あるいは多国間の政策対話等を通じまして、我が国のサイバーセキュリティーの確保に取り組んでまいりたいと考えてございます。

○又市征治君 サイバーセキュリティーの確立に向けた本法案には我が党としても賛成をいたしますけれども、多様な課題を持つNICTが真に国民生活の安心や安全のために貢献をする努力を是非とも強く求めておきたいと思いますが、軽々に企業支援を進めて企業との癒着が起きるなどということにならないように、この点は強く求めて、今日の質問は終わりたいと思います。