第190回通常国会

2016年5月2日 決算委員会



■平成26年度決算他2件
省庁別審査:文部科学省及び厚生労働省
@在宅高齢者の介護について市町村が本格的な実態調査を行い、利用者、家族あるいは事業者など現場の声を聞いて、国民が納得できる在宅介護の方向を設計すべきだ。
A決算委員会は、昨年6月に会計検査院に対して、介護保険の財政状況と介護サービス等の実施状況等に関して検査要請を行った。検査の着眼点や結果に基づく所見の要点はどういうものか。
B検査院の検査結果を受けて、厚労省としては今後の施策にどのように活かしていくのか。
C厚生労働省の見通しでは、2025年度では、介護人材の需要見込みは253万人に対して供給見込みが215万2千人、需給ギャップが37万7千人だ。社会福祉、介護事業における常勤労働者の給与は産業平均と比較して約8万円低い。ハードの問題あるが、人材確保が大きな課題だ。施設があっても人がいない、この問題をどのように解決していくのか。
D原子力規制委員会は、昨年11月に文科省に対して「もんじゅ」に関して勧告を行った。日本原子力研究開発機構に代わり「もんじゅ」の出力運転を行う能力のある者を選定すること、それが困難な場合は「もんじゅ」という発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すことを求めた。この勧告に至った最大の要因、そして「もんじゅ」の廃炉を求めなかった理由は何か。
E勧告の中に、「もんじゅ」の出力運転を安全に行う能力を有する者を具体的に特定することが困難ならば、「もんじゅ」の安全上のリスクを明確に減少させるために「もんじゅ」の在り方を抜本的に見直すこととあるが、これは廃炉も選択肢のうちに入るという意味か。
F原子力規制委員会の勧告に対する文科省の対応は。
G昨年の14の原発関連事業のレビューでは、ほとんど使用されていない核燃料運搬船の維持費等について年間12億円も掛かっていると批判をされているが、このような批判を文科省はどのように受け止め、対応しているのか。
H報道では、自民党行革推進本部プロジェクトチームの調べでは、機構の発注業務で関連企業、団体だけが入札に応じた719件の平均入札率が99.07%だったというが、余りにもずさんではないか、どのように対応するつもりか。
I「もんじゅ」は70年代、建設計画からいえば350億円ぐらいから始まったが、2015年まで「もんじゅ」につぎ込まれた事業費は1兆215億円、これに昨年度の事業費などを合わせると、年間に220億円余りになる。大変壮大な浪費だと言わざるを得ない。先進国の中でも日本の教育予算はGDP比において最下位クラスになっている。直ちに廃炉を決断して、この予算を教育に回すべきだ。


○又市征治君 社民党の又市です。
 この決算委員会は、昨年の6月に会計検査院に対して、介護保険の財政状況と介護サービス等の実施状況等に関して検査要請を行いました。その結果、今年の3月に検査報告書が提出をされたわけですけれども、私は、地域医療介護推進法の成立に伴って、市町村の財源や取り組む姿勢、あるいはまた地域の基盤等によって介護サービスの地域間格差が広がりかねないという感じがしますし、さらに、一部で介護保険の利用者負担増が起こって、必要なサービスの利用を手控えて要介護が上がってしまう、そういう可能性や危険性というものもあるのではないか、こんなふうに考えてまいりました。
 今後、サービスを必要とする人がしっかりとサービスを受けることができる体制づくりというのが介護保険制度の信頼を高めるために必要だ、こう思いますが、そのためにも、在宅高齢者の介護について市町村が本格的な実態調査を行って、利用者、家族あるいは事業者など現場の声を聞いて、国民が納得できる在宅介護の方向というものを設計すべきなんだろうと思うんですね。
 そのために今回の報告が生かされるべきでしょうし、その観点から、まず検査院に検査の着眼点や結果に基づく所見の要点を簡単にお伺いしたいと思います。

○説明員(岡村肇君) お答え申し上げます。
 会計検査院は、介護保険制度の実施状況に関しまして、保険者における保険料基準額の設定の状況はどのようになっているか、居宅サービス、施設サービス及び地域密着型サービスの実施状況はどのようになっているか、ケアマネジメントの実施状況はどのようになっているかなどの点に着眼して検査をいたしました。
 検査をいたしましたところ、市町村において地域密着型サービスの利用状況等の把握が十分であるとは言えない状況となっておりましたり、特定事業所集中減算が必ずしも合理的で有効な施策であるとは考えられない状況となっていたりするなどしておりました。
 会計検査院の所見といたしましては、検査結果等を踏まえまして、地域密着型サービス事業所の利用状況等の一層の把握に努めること、ケアマネジメントの公正中立を確保するための施策の在り方等について十分に検討することなどが必要であるとしているものでございます。

○又市征治君 それじゃ、大臣、こうした検査院の検査結果を受けて、厚労省としては今後の施策にどのように生かしていくお考えか、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) まず、会計検査院からの指摘については真摯に受け止めなければならないというふうに考えております。
 まず、この御指摘につきまして、今お話がありましたとおり、地域密着型サービスについて十分な情報収集等を行っていないためにその必要性を判断できずに、サービスの利用状況等の把握も十分でない市町村が見受けられた。それから、市町村において必要性の有無の判断や利用状況等の把握に努めることや、国においてもサービスの特性や利便性を保険者に対しても一層の周知等を行うべしと、こういうことがございました。
 それから、居宅介護支援における特定事業所集中減算、これについて、ケアマネジメントの公正中立を確保する観点からは必ずしも合理的で有効な施策ではないということが、その見直しを含めて指摘をされたところでございますが、まず、地域密着型サービスについては、定期巡回・随時対応型の訪問介護看護などの地域密着型サービスについて、地域包括ケアシステムの中核的な役割を担うサービスでございまして、市町村が保険者としてその適切な確保に取り組むことが重要であると私どもは考えております。
 厚生労働省としても、都道府県の担当者が集まる会議等において、市町村がサービスに対するニーズも含めた利用状況の一層の把握等に努めるよう要請をしっかりとするとともに、地域密着型サービスの普及が進んでいる地域の事例を周知すること等によって、市町村が保険者としての機能を発揮をしながら、先ほど御説明申し上げましたが、保険者としての機能をしっかり発揮してサービスの普及につなげることができるように支援をしていかなければならないと考えております。
 また、特定事業所集中減算につきましては、現在、社会保障審議会介護保険部会で、次期介護保険制度改正に向けて市町村の保険者機能の抜本的強化策等について御議論を賜っておりますが、その中で、ケアマネジメントの公正中立そして独立性を確保するための方策について十分な検討を行ってまいりたいと考えております。

○又市征治君 私は、今回の報告では介護職員の確保問題について注目をいたしました。
 報告書によると、介護職員の不足によって定員利用となっていない介護老人福祉施設が5保険者の管内で5施設、介護老人保健施設が2保険者の管内で2施設、地域密着型介護老人福祉施設が4保険者の管内で6施設、グループホームは2保険者の管内で2事業所、合計すると11保険者の管内で15施設が職員不足を理由に定員利用となっていないということでありました。
 厚生労働省の今後の見通しでは、2025年度では、介護人材の需要見込みは253万人に対して供給見込みが215万2千人、需給ギャップが37万7千人、こういうことになるわけでして、国、都道府県が各種施策によって人材確保に今努めていることは承知いたしておりますけれども、例えば、処遇改善として施設の予算を加算することによって月額12,000円相当の賃金改善を図るというのもその一つだろうと思う。しかし、実際に12,000円上がるかどうかという問題は、これは職員全体にそういう意味で上がるかどうか。そうならないわけですね。例えば、看護師やあるいは調理師、この加算金が使えないわけでありますから、そうすると、この賃金改善資金というのは一部事業者が負担しなきゃならぬということになってくる、こういう格好になるわけでありますから、そういう意味では単純にはいかないということでしょう。
 元々、社会保険、社会福祉、介護事業における常勤労働者の給与は産業平均と比較して約80,000円低い、こういう格好になっているわけですが、待機児童の解消の問題でもそうですけれども、ハードの問題もさることながら、この人材確保が大きな課題ですね。施設があっても人がいない、この問題をどのように解決していくおつもりなのか。ここのところの見通し、大臣の方からお伺いしたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘のように、2025年、平成37年には約37.7万人の介護人材不足が予想されているわけでございまして、政府としては、ただいま1億総活躍社会の実現のために介護離職ゼロを掲げて、人材の確保についても処遇改善を図るとともに、介護人材の呼び戻し、それから介護の生産性の向上、言ってみれば介護の魅力を向上することによって最大限の人材確保を図っていくということで、様々な施策を既に打っているわけでございます。
 例えば、奨学金制度の拡充、それから再就職準備金貸付制度の創設、それから介護施設などにおける職員のための保育施設の開設支援といったこともやってきておりますし、また介護ロボットの活用の一層の推進、それからICTを活用して生産性を向上する、そしてペーパーレスをなるべく進めて過度な負担をなくすことによって、我々今、業務量の半減というか、ペーパー、文書量の半減ということを言っておりますが、そういうことを今組んでいるわけでございます。
 1億総活躍国民会議の総理からの発言でも、介護人材の処遇改善についてはキャリアアップの仕組みを構築をして、つまりちゃんとした賃金テーブルをつくるというようなことを含めてキャリアアップの仕組みを構築をして、競合他産業との賃金差がなくなるように、今後、更に処遇改善を行うということを今考えてプランを作成中でございます。
 いずれにしても、介護の生産性の向上を図ることによって介護の仕事をより魅力あるものにするため、これは、今御指摘のように、介護福祉士だけではなくてその他の介護の現場で働いていらっしゃる皆様方にとっても、生産性の向上を図っていくということは、魅力的な仕事にすることによる、言ってみれば人材確保の手だてにもなるわけでありますので、これについてはしっかりと今懇談会で議論をしていただいて、1月から今取りまとめをしつつありますけれども、先進的な動きを全国で展開していただこうというふうに考えておりまして、そういったことも相まって人材確保が進むように更に努力をしてまいりたいと思っております。

○又市征治君 待機児童の解消問題でもそうなんですが、どうも定員を増やせばいいという安易な発想が厚労省の中にはあるように思いまして、今も大臣言われましたけれども、人材をしっかり確保する、その人材を育成を図っていく、こういう努力というのがやはり何といっても一番大事なんだろうと思うので、そういう観点をしっかりと持って対応いただくように要請をしておきたいと思います。
 次に、「もんじゅ」の問題に、馳大臣中心にお伺いをしたいと思います。
 本委員会は5年前、2009年度決算、これ是認をしなかったんですね、この決算委員会では。その際、政府に対して全会一致の警告決議の中で、「福島第1原子力発電所の事故を踏まえたエネルギー政策の見直しに当たって、積極的な情報開示を行いつつ、もんじゅの在り方についても十分に検討すべきである。」という指摘を行いました。しかし、政府はその後、何ら具体的な対応をされてこなかった、こういうふうに見えてしようがありません。
 一方、原子力規制委員会は、昨年11月に文科省に対して「もんじゅ」に関して勧告を行って、日本原子力研究開発機構に代わり「もんじゅ」の出力運転を行う能力のある者を選定すること、それが困難な場合は「もんじゅ」という発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すことを求められました。
 この勧告に至った最大の要因、そして「もんじゅ」の廃炉を求めなかった理由について、田中委員長からお伺いをしたいと思います。


○政府特別補佐人(田中俊一君) 「もんじゅ」につきましては、平成24年に多数の保守管理機器等の不備に係る諸問題が発生し、その後の定期保守検査においても度々そういった不備が発見されました。その都度、原子力研究開発機構に対しては規制上の措置を講ずるとともに、研究開発機構の主務省であります文部科学省に対しても適切な指導監督を行うよう2度にわたり要請しましたが、現在に至るもまだ十分な改善は見られていないという状況にありました。
 こうした状況を踏まえ、原子力規制委員会としては、原子力研究開発機構が「もんじゅ」の出力運転を安全に行う主体として必要な資質を有していないと考えるに至ったため、安全確保の観点から文部科学大臣に対して勧告を行うに至ったものであります。勧告の内容については今先生の方からお話しになりましたので省略しますが、廃炉についての言及がありました。
 私どもとしては、「もんじゅ」が有する安全上のリスクを減少するということを求めております。そのための方法としてはいろいろ考えられると思いますが、その対応については文部科学省の責任において検討されるべきものと考えております。

○又市征治君 今ありましたように、この勧告の中には、「もんじゅ」の出力運転を安全に行う能力を有する者を具体的に特定することが困難であるならば、「もんじゅ」が有する安全上のリスクを明確に減少させるよう、「もんじゅ」という発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すこととあるわけですが、これは廃炉も選択肢のうちに入るという意味ですか。

○政府特別補佐人(田中俊一君) 先ほどもお答え申し上げましたが、リスクの減少の方法については様々なことが考えられます。施設を廃止するか否かも含めて、勧告への対応については文部科学省の責任において検討されるべきものと考えております。

○又市征治君 そこで、文科大臣にお伺いしますが、規制委員会からおおむね半年をめどに勧告への対応を求められているわけですね。そもそも文科省は、機構に対して適切な監督を行うよう規制委員会から求められてきたけれども、今もお話がありました、機構の活動に実質的な改善は認められずに、文科省のこれまでの対応は結果的に功を奏していないと指摘されるなど、事実上監督責任が問われてきたわけですね。
 そういう文科省に機構に代わる組織を選定する資格があるのかちょっと疑問ですが、勧告への対応というのは現在どうなさっているのか、お伺いをしたいと思います。

○国務大臣(馳浩君) 文科省としては、「もんじゅ」について勧告を受ける状況に至ったことを大変重大なことと受け止めております。これまでの課題の総括、「もんじゅ」の在り方の検討、具体的な運営主体の検討という3段階で検討を進めることといたしました。
 昨年12月には、私の下に有識者による「もんじゅ」の在り方に関する検討会を設け、委員にはこれまで「もんじゅ」の現地を視察いただきつつ、7回にわたる会議で大変精力的に議論をいただいておりまして、現在は取りまとめに向けて議論を深めているところであります。
 文科省としては、検討会での議論を踏まえ、可能な限り速やかに課題が解決されるように、前面に立って対応を進めてまいりたいと思います。

○又市征治君 少し観点を変えてお伺いをしていきます。
 先日の当委員会で、河野行革担当大臣に昨年の14の原発関連事業のレビューについてお聞きをしたんですが、4つが文科省の所管、こういうことと思いますが、その中で、ほとんど使用されていない核燃料運搬船の維持費等について年間12億円も掛かっていると機構が批判されているわけですね。事業レビューにおけるこのような批判をどのように受け止めをされているのか、あるいは対応されているのか。
 また、報道では、自民党行革推進本部PTの調べでは、機構の発注業務で関連企業、団体だけが入札に応じた719件の平均入札率が99.07%だったということでありまして、余りにもずさんではないのか、こう自民党部会の中でも指摘をされていますが、これについてはどのように対応するおつもりなのか、この2点をお伺いをします。

○国務大臣(馳浩君) まず、基本的にいずれの指摘についても真摯に対応すべきと考えております。そこで、行政事業レビューにおける指摘を踏まえて具体的に申し上げます。
 開栄丸については、維持管理経費を最低限に絞り込み、平成28年度予算に約6億円を減額して計上するとともに、平成28年2月24日に、原子力機構から原燃輸送に対し使用の終了に係る通知を行いました。RETFについては、利活用検討に係る予算約2.1億円の平成28年度予算への計上を見送りました。電源立地地域対策交付金等については、交付規則を文科省ホームページにて公開するとともに、成果指標の見直しを開始したところであります。
 また、落札率の問題等、自民党の行革本部の行政事業レビューで指摘をされた件についてでありますが、報告書においては、原子力機構の契約に関して、高落札率や特定少数の事業者以外の者が競争入札に参加していない旨を指摘されております。これを受けて、同機構において、電子入札の完全導入や、公告期間の延長といった契約に関する改革や役職員の再就職制限の強化などを行ったところであります。

○又市征治君 時間が参りますから、最後はもう私が一方的に物を申し上げるしかないんですが、そもそも、この「もんじゅ」そのものは70年代、建設の計画からいえば350億円ぐらいということから始まったんですが、既に2015年まで「もんじゅ」につぎ込まれた事業費は1兆225億円、これに、先ほども話がありましたけれども、昨年度の事業費などを合わせますと、これは1年間に220億円余り、こういう格好で1キロワットも発電をされていない、大変壮大な浪費だと言わざるを得ないのではないか。何の役にも立っていない「もんじゅ」を維持し続けて、こういう格好で何の意味があるのか。先進国の中でも日本の教育予算はGDP比において最下位クラスになっている。文科省がこれを担当していること自体も何となく違和感を感じるわけですが、直ちにやっぱり廃炉を決断して、この予算をむしろ教育に回すべきじゃないのか、こう言いたいと思います。
 いずれにしても、事業用でないものですから止まっておっても赤字も何も出ない、単に毎年毎年予算が付いてくる、こんなばかな、無駄なことを本気でやっぱりやめることも含めて、馳大臣の決断を強く求めて、今日のところは質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。