道路特定財源の見直しに関する見解(案) |
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2001.8.31 | ||
1. | 特定財源とは、特定の行政サービスに使途を限定した目的税源である。道路整備に充てるガソリン税(揮発油税)、自動車取得税、軽油引取税、空港整備に充てる航空機燃料税のほか、電源開発促進税、入猟税、水利地益税、石油ガス税、石油税など11の国税・地方税がある。今年度予算では、国税5兆2600億円と地方税1兆7500億円の約7兆円であるが、このうち8割を占めるのが道路特定財源である。 |
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2. | 特定財源が利権の巣と化し、予算配分の硬直化をもたらし資源配分を歪めていると指摘されて久しい。特に道路特定財源は、国土交通省や、自民党の建設族とりわけ道路族議員の既得権益と化してきた。公共事業の事業別配分が硬直化した原因の一つでもある。かつてのようなペースで道路建設を進める緊急性が薄れた下で、公共事業関係費の3割を占める道路予算は過大に過ぎよう。 一方で、数度の税率引き上げにより過重な負担となっているとの指摘がある。 |
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3. | 小泉首相のいう「道路特定財源の一般財源(何にでも使える財源)化」は、性急に過ぎ問題が多い。この主張に対しては、当然、暫定税率の解除論(現在、本則の2倍を課税しており、他に転用するなら本則に戻すべきだとする意見)や、道路特定財源自体の廃止論(目的外に転用するなら廃止すべきだという意見)が出され、早急に結論を出すことは困難である。また、小泉首相は「福祉や教育にも使用を」と発言しているが、安易な一般財源化論は、都市再生という名のゼネコン支援をはじめ、財務省に“打出の小槌”を与える危険性がある。 | |
4. | これまでは担税者の理解を前提として使途の拡大が行われてきたが、本来、自動車利用者が負担すべき社会的費用を自動車関係者に適正に負担してもらうことは当然である。道路整備が相当進んできた今日、従来の発想を転換して、環境対策と総合交通体系の構築という新しい国づくりのビジョンの下、そのあり方を見直して活用を図るべきであると考える | |
5. | そのあり方の見直し案として、次の諸点を提言したい。 | |
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道路を使用する自動車は排気ガス公害や地球温暖化の大きな原因となっていることから、道路特定財源の使途を環境対策にも拡大すべきである。 | |
A |
また、自治体においても地域の特性を反映した自主的・効果的な環境政策への取り組みが課題となっており、その税収の相当部分を自治体の行う環境保護対策事業の実施に向けるよう、環境税的色彩に改めることも必要である。 | |
B |
国土交通省への統合の趣旨を活かし、各局の縦割りを廃止し、横断的・体系的な総合的交通政策を推進するため、道路財源等を一本化し、「総合交通会計」制度を創設し「総合交通財源化」を図る。特に規制緩和によってクルマ社会に取り残された人々をはじめあらゆる移動制約者の交通手段がなくなろうとしている現状に鑑み、通勤、通学、通院、買い物の「足」を確保するため、地方の生活バス路線やローカル鉄道に対する財政措置の強化に充当すべきだ(ドイツではガソリン税にあたる鉱油税を公共交通のための財源として活用している)。 |
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C | 少なくとも自動車重量税は、法律的にはあくまでも一般財源であり、政策的 に一般財源としての活用を検討すべきである。他の道路特定財源については、 現在の仕組みのままで転用することは困難であり、納税者・国民の理解を得つ つ新たな発想や仕組みで幅広く検討していくべきである。 また、地方の税源である軽油引取税と自動車取得税については、分権・自治の視点で見直しを行うべきである。 なお、地方道路税は国税であるが、地方財源として交付税特別会計に直入されており、引き続き地方の道路財源として維持すべきである。 |
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以 上 |