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●皆さんのご支援で、昨年、国会に出させて頂いて1年近くになります。
昨年の臨時国会では16回、今国会ではこれまで総務委14回、行政監視委6回、憲法調査会1回の計21回、質問に立ちました。この後、郵政法案5〜6回、あっせん利得処罰法2〜3回質問を予定していますので、1年で45回前後、平均週2回の質問というのは、自民党や民主党の議員の4〜5年分ですから、大変です。
また、党では昨年11月から政策審議会副会長、今年4月から参議院国会対策委員長を仰せつかって野党共闘を担当しています。加えて、金・土・日は可能な限り有事法制の講演や演説などに出向いて、超多忙な日々に追われています。
●さて今国会は、(1)雇用はじめ景気対策で国民生活の安定と安心の保証、(2)鈴木、加藤、鹿野、井上議員らの相次ぐ口利き疑惑の解明と政治への信頼回復、(3)BSE(狂牛病)対策と食の安全安心、(4)これらを含む予算成立…などが課題でした。
ところが小泉内閣は、これらをそっちのけにして、(1)「戦争をする国」を目指す有事法制、(2)個人情報保護法・人権擁護など国民統制とメディア規制法、(3)郵政民営化法、(4)健康保険改悪法…などの反動諸法案を次々出してきました。
●その上、小泉内閣は、瀋陽総領事館事件、福田官房長官の「非核3原則見直し」発言、防衛庁の情報公開請求者の身辺調査とブラックリスト作成などの重大な問題を曖昧にしたまま、野球に例えれば「8回裏まで点数が入らないから11回にする」というような、ルール違反の42日間の会期延長を19日に強行し、これら反動諸法案を押し通そうとしているのです。だから、増えるのは不祥事と疑惑、減るのは小泉内閣の支持率といった具合で、最新のNHK調査では、支持が39%、不支持が52%と完全に逆転しています。
●ともあれ、有事法制は必要と言う民主党や自由党、審議拒否はいやだと言う共産党という野党状況の中で、150日間の長丁場、4大対決法案を通さないできたのは、小なりと雖も社民党が野党共闘の要となって曲がりなりにも野党4党の結束を維持してきたからで、率直に褒められてよいと中間総括をしています。しかし、これからがまさに正念場です。
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●さて、本題に入ります。小泉内閣は、国と国民の安全にかかわる重要法案と称して有事関連3法案を国会に上程してきました。今国会の最大の対決法案です。
辞典によると「有事」とは「戦争や事変が起こること」とあります。ですから「有事法制」とは、戦争や事変に備えた法律ということです。
3法案の概要を紹介しますと、
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「武力攻撃事態法」は、外国から武力攻撃を受けたときの対応を定めたもので、有事法制の基本となる法律です。ここでは「武力攻撃が発生したり、そのおそれのある事態、または武力攻撃が予測される事態」に対処すると規定しています。つまり政府が攻撃を受ける「おそれ」を好きなように「予測」して、いつでも自衛隊を出動させるというものです。 |
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「自衛隊法改正案」は、その際に自衛隊が自由に動けるようにするもので、国民を自衛隊の活動に協力させる、自衛隊が国内で陣地を構築するために民間の土地や物資を使う規定が設けられ、それに非協力の者には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科すというものです。 |
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「安全保障会議設置法改正案」は、武力攻撃事態などを認定し、またそれへの対処方針を立てるために安全保障会議の機能を強化するものです。 |
●そして、有事法制はこの3法案で完了ではなく、武力攻撃事態法には今後2年以内に有事に備える様々な法律、例えば米軍支援や国民保護の法律などを作ると書いており、その中身不明のままこのあと膨大な法改正で日本の国の仕組み全体を大きく変えるというのです。言わば、表紙と見出しと前書きだけで中身が真っ白の欠陥本・欠陥法案と言わねばなりません。だからNHKの調査でも「今国会で成立を」が8%、「十分審議を」が70%、「廃案を」が17%に変わってきました。
●すなわち、この有事法制とは、「戦争放棄を謳う憲法」を停止して「戦争をできる国・する国」にするものなのです。そこが、これまでの違憲立法と大きく違います。小泉首相はよく「憲法の枠内で」と言いますが、彼の頭の中には「憲法の枠」そのものがないのです。福田官房長官らの「憲法上、弾道ミサイルや小型核兵器は持てる」との発言は、彼らが憲法の枠を取り払おうとしていることを表しています。
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●では一体、どこの国が日本を武力攻撃し支配するというのでしょうか? そんな情勢や環境があるのか? 政府は全くこれに答えません。答えられないのです。
周知のように日本は、憲法の前文で「日本国民は、恒久の平和を念願し、…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と高い理想を掲げ、そして9条で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と、戦争放棄を宣言した平和国家として世界中に知られてきました。
ですから、冷戦時代でも、この平和国家・日本を攻撃する愚かな国はおらず、戦後57年間、他国から武力攻撃を受けるおそれは殆んどなかったのです。「日米安保条約や自衛隊のお陰」ではなく、戦争放棄を宣言した憲法の賜物なのです!
●21世紀を迎えた今日、「人類史上最も残酷な戦争の20世紀」の反省の上に、人類の英知は、各国の「戦争をする権利」を禁止する平和の国際秩序づくり、つまり「21世紀を平和の世紀へ」の努力が大きく力強く前進しています。例えば、インド・パキスタンの対立と核開発に対して、国連は警告を発し、仲介し、非難勧告を出し、集団的に経済制裁を課すなど、国際紛争に際しては平和的解決を図ることが主要な方策となってきました。ただ、米国の好戦的で横暴な態度がこの流れの阻害要因になっています。☆テロの原因と克服策
ですから99年5月オランダのハーグで開かれた100カ国・1万人以上が結集した国際平和市民会議の10か条の宣言に、「日本国憲法第9条のような条文を可及的速やかに各国議会で決議しよう」と、世界平和の羅針盤として盛り込まれたのです。このように今日、日本が武力攻撃を受ける条件は皆無に等しいのです。
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●先ほど、「自衛隊法改正案」では、自衛隊が国内で陣地を構築するために民間の土地や物資を使う、国民を自衛隊の活動に協力させる、そして私たちがその協力を拒んだ場合は罰せられる規定になっていると言いました。つまり政府は、国内での地上戦に備えると言っているのです。
●しかし、湾岸戦争やアフガニスタン攻撃に見るように、現代の地上戦とは、いずれかの国が空と海から猛攻をかけ、制空・制海権を確保した上で軍隊を日本に上陸させた場合に起こることです。その際、戦略的に最小の被害で最大の効果を上げるには、日本の52基の原発を狙うでしょう。原発1基が広島型原爆の1000倍以上の被害をもたらします。15基の原発が集中する福井県の1基にミサイルが打ち込まれたら、その連鎖爆発による核地獄は日本列島の半分を覆い、想像を絶する惨禍をもたらします。つまり地上戦になる前に、日本は壊滅してしまうのです。ですから、「日本本土を戦場にしたら終わりだ。戦争にならないよう平和外交が大事だ」というのが正常な感覚でしょう。有事の「おそれ」を避けるのが政治です! 小泉内閣が地上戦に備える有事法制を提案すること自体、時代錯誤で漫画チック、まさに「亡国への道」の提案という他ありません!
この国の支配層は「北朝鮮脅威論」を喧伝しますが、朝鮮に最も近い日本海側に多くの原発を建設すること自体、攻撃はないと考えていることの証明であり、大きな矛盾です。そもそもそんな能力は米国にしかありません。歴史上2回あった蒙古襲来や第二次世界大戦の沖縄戦はいざ知らず、今日、この日本で陣地を築いて地上戦を戦うということは、軍事的・政治的に全くあり得ないのです。
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●実は、有事法制の本当の狙いは別にあります。前述したように、冷戦終結と世界的軍縮の流れは、日本が武力攻撃を受ける条件を皆無に等しくし、日米安保条約も世界第2位の軍事費や自衛隊も無用の長物になったことを意味しました。
ところが、96年の橋本内閣以降、この情勢に逆行する策動が強まりました。無用になった日米安保を外に拡大し、世界の地域・民族紛争に日米が協力して干渉していく「日米防衛協力の新指針」(新ガイドライン)を97年に決定しました。それを受けて99年に日本周辺有事の際に米軍を後方支援する周辺事態法、次いで01年にテロ特措法と改正PKO法を強行成立させるなど、自衛隊と米軍の共同行動をさらに拡大してきたのです。現に米軍の後方支援に自衛隊をインド洋に派遣し、今もインド洋に居続けています。そして今、「戦争をできる国・する国」づくりに向けて有事法制を、という流れになってきているのです。
●では何故、政府がこのような愚かな道を選ぶのでしょうか。
それは、冷戦終結による経済のグローバル化の下で、大企業の海外権益=海外純資産額世界一を守りさらに広げるために、米国とともに世界の地域紛争・民族紛争に介入し、政治的発言力を強めようというのです。そして軍需産業も育てたい。また高失業時代の社会的不安定性に国民の支配体制の強化も必要だということです。タカ派の小泉首相が登場して、しかも高い支持率を得ている今こそが、有事法制成立の絶好のチャンスだというのです。
●しかしこの道は、イラク・イラン・朝鮮を「悪の枢軸」と名指し攻撃を予定するなど、非常に好戦的で横暴な米・ブッシュ政権の戦略に追随し、今後、アジアで米軍が戦争状態に入った場合、後方支援なり共同行動をとる日本がそれに巻き込まれ、武力攻撃を受ける「おそれ」や「予測」が増すことは当然です!
と同時に、「戦争放棄の憲法体系」を「戦争をする法体系」に変えるのですから、前述のように憲法2章・9条の戦争放棄の宣言を投げ捨てるだけでなく、3章10条〜40条の国民の権利・義務を制限・蹂躙し、8章の地方自治を否定し(首長職務の直接執行)、さらにこれらに従わぬ者は処罰されることになるのです。国民の権利の抑圧と支配強化、ここに有事法制の一方の狙いがあるのです。
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●小泉首相は、有事への「備えあれば憂いなし」と叫びますが、まったく逆です。明治以来、幾度もアジアを侵略して多く人々を殺傷し、その果てに広島・長崎・沖縄・本土空襲など多くの尊い犠牲を出した、その反省の上に到達した国民の決意の結晶が、戦争放棄を宣言した平和憲法=「平和外交の備えあれば有事の憂いなし」なのです! つまり憲法理念の実現こそが有事をなくす道なのです。
今日必要なことは、「21世紀を平和の世紀へ」という人類の英知と努力の中で戦争放棄の平和憲法の理念を積極的に活かし、貧困や差別をはじめ様々な戦争要因を除去し、仮想敵国を作らない平和外交を進めることなのです!
●そのために私たち社民党は、(1)「非核不戦国家宣言」を衆参両院で上げ国連総会で認知を求める、(2)当面、領海・領空・領土を越えて戦闘する自衛隊の戦力を削減する、(3)在日米軍基地を整理・縮小、撤去する、(4)朝鮮との早期国交回復を含めた北東アジア総合安全保障機構を創設する…などを提唱してきたのです。
小泉首相の靖国参拝に見られるように、尊い犠牲による歴史の教訓も政治哲学も弁えない、危険な有事法制・「改憲なき憲法改悪」は絶対許してはなりません。その声を早急に大きく広げ、強め、大衆運動を起こすことが重要です。
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●小泉内閣の下で、デフレ不況は深刻化し、失業は増え続け、誰もが雇用・生活・将来の不安を高めるなど国民犠牲が強まり、一方で憲法改悪の動きが急速です。
しかし、これに抗する労働運動も動きは非常に弱いと言わざるを得ません。
また最近の国会では、重要法案でさえ十分な審議が尽くされず、時間が来れば採決される異常な事態が続いています。今国会では、社民党が粘り強く野党共闘を求め、小泉首相の思い上がりも手伝って、有事法制などは継続審議にできそうですが、民主、自由両党は緊急事態法は必要としていますから、秋の臨時国会が正念場です。問題は、これらに厳しく対決する社民党が小さくなり、労働運動も弱体化したことが、こうした政治反動を許しているのです。
●90年代後半にヨーロッパでは、賃下げ・首切りや年金・医療・福祉の改悪に毅然と抗議行動を起こす労働運動の高まりを背景に、社民党や労働党など社民政権が続々誕生しました。日本でも、雇用・賃上げ・医療改悪反対を始めとする生活制度要求と有事法制反対などを堂々と掲げ、中央・地方で音の出る大衆運動が求められます。怒りを込めた大衆行動こそが、資本や政府の横暴を規制するのです。様々な創意と工夫で組織的な大衆行動を強めることが、今こそ必要なのです!
●今「歴史の大きな曲がり角」、新たな戦前が始まろうとしています。世界平和の羅針盤である憲法・国民の権利が、実質的な破壊に晒されています。「許せないことは許さない」の決意と勇気をもって、ぜひ一人ひとりが一歩前に出て、その輪を広げ、ヨーロッパのように、政治を、社会を変えるために、大きなうねりを作り出しましょう! 「真っ暗闇の日本の政治の一条の灯台の灯・社民党」(作家・吉武輝子さん)を、ぜひ強く大きくするために頑張りましょう!そのお願いを申し上げ、国会報告といたします。
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