2003.5.3

1.  小泉内閣は、5月中旬にも、衆議院で有事関連3法案を強行する構えである。
「有事」とは、いずれかの国が空と海から日本に猛攻をかけ、制空・制海権を奪った上で地上軍を本土に上陸侵攻させるような場合のことである。このような場合に、自衛隊を防衛出動させるばかりか、一億国民を総動員して総抵抗の国家体制を取ろうというのが、「有事法制」である。つまり小泉内閣は、時代錯誤にも日本本土の戦場化を想定し、その準備を進めるというのである。

2.  80年代までの東西冷戦時代でさえ、日本の政治も国民世論も、武力攻撃の恐れなどは想定もしてこなかった。その証拠に、一基でも爆撃されれば国土が核地獄と化す原発を次々と構築して何の危機感も持って来なかった。それは、憲法で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と、戦争放棄を宣言した平和国家・日本を一方的に武力攻撃する愚かな国はありえないとの確信であり、合わせて憲法に基づく平和外交によって当時のソ連や中国をはじめ世界の国々と友好を図ってきたからである。すなわち、自衛隊や日米安保条約によってではなく、戦争放棄を宣言した平和憲法によって、日本の平和と安全が保持されてきたのである。

3.  日本を取り巻く環境・条件に基本的変化はない。にもかかわらず小泉内閣は、「備えあれば憂いなし」の俗耳受けする言葉で国民を騙し、また植民地時代を含めて一世紀近くアジアで唯一、不正常な関係を続けてきた北朝鮮との国交正常化を進めず、逆に不審船や拉致事件あるいは核開発を煽り立て、「有事法制」の強行成立を狙っているのである。これは、いたずらに北朝鮮はじめ周辺国への敵意と警戒心を煽り、自ら「有事」を招き寄せる危険な愚策と言わねばならない。

4.  「有事法制」の真の狙いは、経済のグローバル化に伴って多国籍大企業の海外権益を広げ擁護するために、米軍と共に自衛隊を海外派兵できるようにすることにある。だがこれは、イラクへの武力攻撃に見られるように、自らの意に沿わぬ国を力でねじ伏せる米国に追随し、その仕掛ける戦争に巻き込まれる危険性を増大させる。つまり米国と対立する国が「先制攻撃される前にやってしまえ」と、日本とその米軍基地を攻撃する可能性を拡大することになる。万が一、原発52基を持つわが国が攻撃されたら、その核地獄と惨禍は想像を絶し、壊滅するであろう。攻撃を誘発しない・させない平和外交こそが肝要なのである。

5.  有事法制は、「戦争放棄の憲法体系」を「戦争する法体系」に変えることであるから、当然、憲法9条の否定のみならず、10条から40条の「国民の権利・義務」の制限や蹂躙、92条から95条の「地方自治」の否定、そしてこれに反する者への罰則を伴っている。自由と権利の抑圧、国民総動員体制という所以である。

6.  いま求められるのは、憲法破壊の「有事法制」ではなく、憲法の理念を現実の課題にすることである。つまり@「非核不戦国家宣言」を衆参両院で上げ国連総会で再認知を求める、A領海・領空・領土を越えて戦闘する戦力を削減する、B在日米軍基地の縮小・撤去を図る、C北朝鮮との早期国交正常化を図り北東アジアの総合安全保障機構を創設する…などの平和政策と外交である。
以  上