1. |
私は、次の理由で首相の靖国参拝は「行うべきでない」と指摘してきた。 |
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(1) |
靖国神社は、明治2年に天皇の命で創設され、陸軍・海軍が第二次世界大戦の敗戦まで管理してきた歴史的経過があり、一貫して侵略戦争での戦没者を軍神として祭ってきた、侵略戦争を美化する存在である。 |
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(2) |
かかる国家神道の過ちを繰り返さぬために憲法第20条に政教分離の原則が謳われ、戦後は靖国神社も一宗教団体となった。これを首相が公式参拝することは、首相自ら憲法を踏みにじる重大な誤りである。 |
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(3) |
国内に止まらず、日本の植民地支配や侵略で甚大な惨禍を蒙った中国・韓国をはじめとするアジアの人々にとって、その中心であったA級戦犯への追悼も意味する首相の参拝は許しがたく、当然、外交摩擦に発展する。 |
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2. |
ところが小泉首相は、17日の衆院予算委員会で「どの国でも戦没者への追悼を行う気持ちを持っている。どのような追悼の仕方がいいかは、他の国が干渉すべきでない」「A級戦犯の話が度々論じられるが、『罪を憎んで人を憎まず』は中国の孔子の言葉だ」と発言し、重ねて靖国神社参拝の意欲を示した。この問題を含めて中国や韓国で激しい反日デモが広がり、悪化した関係を改善すべき大事な時期に、これは首相にあるまじき妄言と断じざるを得ない。 |
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3. |
それでは、ここまで強弁する小泉首相に改めて次の点を問いたい。 |
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靖国神社を「戦没者の追悼施設」と強弁するなら、なぜ諸外国の元首が誰一人として参拝しないのか。侵略戦争を美化する存在だからではないか。 |
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(2) |
首相の参拝は、何度も裁判で政教分離を定めた憲法に照らして疑義が指摘されてきた。外国の「干渉」を云々する前に、憲法上問題ではないのか。 |
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(3) |
小泉首相自ら、01年に当時の金大中韓国大統領に、靖国神社に替わる追悼施設の検討を約束した経緯、また小泉内閣の福田官房長官の私的諮問機関である「追悼・平和のための記念碑等施設のあり方を考える懇談会」が、02年12月に、「戦没者のため、無宗教の国立追悼施設を建設すべきだ」という最終報告をとりまとめた事実をどう説明するのか。 |
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(4) |
首相の個人的信念での参拝によって失われる「国益」をどう考えるのか。 |
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4. |
いま日本の首相がなすべきは、多大な被害を蒙った中国や韓国をはじめアジアの人々への「痛切な反省と謝罪」の証として、かかる問題を孕む靖国神社の参拝は行わないことを明言することである。そして01年8月に私が指摘した「沖縄の『平和の碑』のように、無宗教の慰霊施設を建設し(千鳥ヶ渕墓苑の拡充を含む)、誰もがすべての戦没者を追悼し平和を誓い合えるようにすること」である。 |
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