2005.6.20

はじめに
 今日は、55日間の延長国会の始まりの日です。何のための延長か。言うまでもなく郵政民営化法案を押し通すためです。もう一つ、今日は韓国で日韓首脳会談が開かれる日です。首相の靖国参拝をはじめ日本の歴史認識が焦点です。奇しくもこの二つに小泉首相が進める内政・外交の問題点が象徴されています。
 

内政上の問題点
(国民の叫びに無関心の首相)
1.  今日、多くの国民は、年金や医療・介護など社会保障の相次ぐ改悪、勤労者の3分の1近い1900万人にも広がった非正規雇用者と完全失業者の存在、そして生活保護基準以下と言われる年収200万円以下の世帯が17%にも広がった事態、年間3万人を超える自殺者の発生などに不満と不安を募らせ、その改善を強く求めています。だから、どの世論調査でも景気・雇用対策、年金改善などが高い比率を占めています。これらの現実は、小泉内閣が進めてきた構造改革や規制緩和政策の帰結であり、かつての「1億総中流社会」が急速に「弱肉強食の競争社会」化していることの表れです。

2.  元より、資本主義経済の本質は弱肉強食です。だからこそ、政治には弱者救済の施策、つまり社会保障や福祉、雇用面などでセーフティネットの拡充が大事です。そうでなければ社会は荒廃し、持続的発展を期すことはできません。
 しかし、小泉内閣にはこうした観点や配慮はありません。6月11・12日の読売新聞の世論調査によりますと、「内閣の優先すべき課題」の中で郵政民営化は17項目中16番目、郵政民営化を最優先する小泉首相の姿勢に「納得できない」が65%を占めているのに、これを「改革の本丸」と叫び、今国会の課題である年金の抜本改革も、被災者生活支援も、政治と金の規制強化も、全く眼中にありません。日本の政治が、小泉首相の趣味・わがままに振り回されています。野党はもとより、一部良識保守派の意見も「抵抗勢力」と切って捨て、耳を貸そうともしない。大変危険な政治兆候と言わねばなりません。

(「郵政民営化」問題の本質)
3.  郵政問題は、橋本内閣の時代に行政改革をさんざん議論し、結局「国営の公社で三事業一体、身分は公務員、将来も民営化等の見直しは行わない」と法律で決めました。これに基づいて小泉内閣が郵政公社法案を出し、民間から生田総裁を選んで2年前にスタートしたのです。ご存知のように、郵政事業は、これまで人件費も含めて税金は一銭も投入せず、郵貯・簡保で稼いで赤字の郵便をカバーしてきたのですが、相当無理もしたのでしょうけれど、政府の決めた4年間の中期計画の2年目で郵便も黒字になりました。
 ところが小泉首相は、公社設立から1年も経たぬうちに民営化を言い出しました。少なくとも4年間の中期計画の実績を見てかかるべきでしょう。しかも国民の利便性を考えれば三事業一体が不可欠なのに、郵政株式会社、郵便局会社、郵貯銀行、郵便保険会社に4分社化するというのです。それぞれ営利目的の会社ですから、赤字含みの郵便局会社を他の会社が助けるわけがありません。いきおい、現在の郵便局の金融や地域サービスなどが縮小・低下していくことは、諸外国の例からも明らかです。

4.  なぜ、こんなことを性急にやるのか。かねてから米国は日本の郵政民営化を迫ってきました。350兆円の資金を持つ郵貯・簡保を民営化しその株を市場に出せ、そこに米国企業が参入できるようにせよ―と言うわけです。これに応えての民営化です。麻生総務大臣が以前につい漏らしましたが、これでは郵貯・簡保会社の株は外資の餌食になるでしょう。現に、昨年4月から現在までに、郵政民営化準備室が、国会や国民をそっちのけで、米国の通商代表部や生保協会などと17回も協議しているのです。
 庶民の虎の子の資産を守り郵便局サービスを守るために、「国営の公社で、三事業一体の全国均一サービス」は堅持すべきです。そして郵政公社でも世襲の特定郵便局長制、集まった資金の使い道、ファミリー企業のあり方などは見直すべきです。これらは、民営化ではなく公社(国民と国会の監視)の下で、できることです。郵貯・簡保資金をハゲタカ外資の食い物にさせてはなりません。


外交上の問題点
(歴史認識欠如の靖国参拝)
1.  戦後60年の節目の年に、中国や韓国との関係が悪化していることは大変残念です。領土問題などもあり、両国の主張を鵜呑みにはできませんが、関係悪化の原因が小泉首相の靖国参拝や歴史認識にあることは明らかです。
 そもそも靖国神社は、明治2年以来、政府の侵略戦争を美化し扇動する存在でした。だから、かかる国家神道の過ちを繰り返さぬために憲法第20条で政教分離の原則が謳われ、靖国神社も一宗教団体になりました。これを首相が参拝することは首相自身の憲法違反であり、何度も裁判で疑義が指摘されてきたところです。また日本の植民地支配や侵略で惨禍を蒙った中国・韓国はじめアジアの人々にしてみれば、日本の指導者が口では反省と謝罪を繰り返すが、他方で侵略戦争の責任者あったA級戦犯の追悼も含む靖国参拝を繰り返すことはその反省と謝罪が偽りと写り、憤りと不信を募らせることは当然です。
 ところが小泉首相は、A級戦犯が合祀されて以来、天皇家さえ参拝を遠慮されていることも、また01年に金大中韓国大統領に「靖国神社に替わる追悼施設の検討」を約束したことにも、そして首相の行為によって本来失う必要のないアジアの人々の信頼と「国益」を損ねていることも一顧だにせず、逆に「どのような追悼の仕方がいいかは、他の国が干渉すべきでない」とか「A級戦犯の話が度々論じられるが、『罪を憎んで人を憎まず』は中国の孔子の言葉だ」などと開き直って参拝の意向を示し、さらに反感を拡大しています。そもそも『罪を憎んで人を憎まず』は被害者が加害者を許す際に使う言葉であって、加害者の立場にある日本の首相としては破廉恥な発言です。
 これはもはや、政治でも外交でもありません。小泉首相のわがまま・依怙地が、国民の意に反してアジア諸国の友好と「国益」を損なっているのです。

2.  小泉首相のこうした独善的姿勢が閣僚にも伝染し、問題発言のオンパレードです。例えば、対中国ODAを引き合いに「金を出してやっているのだから文句を言うな」と言わんばかりの発言で一層の反感を買った外交トップ・町村外務大臣、また93年の河野官房長官談話で従軍慰安婦の存在を認め、「心からのお詫びと反省」を表し、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」と決意を表明した政府見解を否定し、「歴史教科書から従軍慰安婦の記述が減ってよかった」「従軍慰安婦という言葉は当時なかった」と発言し、中・韓両国から批判を招いた教育トップの中山文部科学大臣などは、閣僚失格です。

3.  戦後60年目の今年、行き詰まったアジア外交を打開し友好関係を発展させるために、今小泉首相がなすべきは、中・韓両国はじめアジアの人々に、過去の過ちへの「痛切な反省と謝罪」の証として「靖国神社への参拝は行わない」ことを明言し、無宗教の慰霊施設を建設して誰もが戦没者を追悼し平和を誓い合えるようにすることを、今日の盧武鉉大統領との会談を通して表明することです。今日の会談はその絶好の機会です。しかし、それはどうも望み薄のようです。


(北朝鮮問題について)
1.  北朝鮮が、韓国の努力で6か国協議に復帰の意向を示したようです。
 私は一昨年、土井前党首と訪韓し、金大中、盧武鉉両氏と会談しました。その折、大統領は「北の経済力は韓国の25分の1だ。そこに2300万人が食糧不足で喘いでいる。いま北は米国の先制攻撃に緊張と危機感を強めている。だから、軍事的圧力でなく対話で『北の体制の維持と経済援助の保証と核開発の放棄』を一体で解決すべきだと米国を説得している。北の体制が崩壊すれば、何百万もの難民が押し寄せて韓国経済は破綻する。また軍事的圧力で北を暴発させれば朝鮮半島は火の海だ」と力説されました。また日本については、「拉致事件もあるが、かつての植民地と未だに国交がないこと自体、不正常だ」とも指摘された。わが党の認識とまったく一致しています。これは中国もほぼ同じ認識です。

2.  いま国内では、「北朝鮮に経済制裁を」「拉致問題の解決無くして国交正常化なし」と声高に叫ばれています。日本人拉致事件は、人権侵害の国家犯罪であり、許すことはできません。しかし、これで問題の解決はできるでしょうか。
 日本は、1910年の日韓併合以来36年間、朝鮮半島を植民地支配し数多蛮行を重ねました。その一環で、何十万もの人々を日本へ強制連行(拉致)して酷使し、また多数の若い女性に従軍慰安婦を強要してきました。敗戦後、歴代日本政府は、ソ連・韓国・中国をはじめアジア各国に戦争の謝罪と一定の補償をもつて国交を正常化してきましたが、北朝鮮に対しては、米国に追従して戦後60年経つ今日に至るも、謝罪も補償も行わず、国連加盟191か国中「最も近くて最も遠い国」の関係で放置してきたのです。
 こうした歴史的事実に目を閉ざし、拉致の責任だけを叫んでも解決できません。もし国連の場にこれを持ち出したら、過去の過ちを清算していない日本こそが世界の笑いものになります。拉致事件の全容解明と謝罪・補償のためにも、日本の過去の侵略と植民地支配についての反省と謝罪・補償を明確にして、02年の「平壌宣言」に基づく粘り強い交渉が不可欠です。この視点から、6カ国協議の成功にも努力することが肝要です。


終わりに
 小泉首相は「裸の王様」で、その乱心・暴走が「弱肉強食の競争社会」と憲法9条を改悪して「戦争のできる国へ」、対米追従とアジアでの孤立化へ、つまり内政・外交の行き詰まりをもたらしています。国民は夢も希望も持てません。小泉内閣を一刻も早く打倒することが不可欠です。



以 上