2007.6.13

(1)  私は4月23日の決算委員会で、「22万件に上る厚生年金の支給漏れ」を追及したが、1か月後、基礎年金番号に統合されていない「宙に浮いた」年金納付記録が5095万件もあるという、信じがたい事実が明らかになってきた。その後の野党の追及で、柳沢厚生労働大臣はさらに1430万件が存在する可能性を表明した。国民に与えた衝撃と不安は大きく、社会保険事務所への問い合わせが殺到している。

(2)  事態の原因としては、@1985年に、国民年金と厚生年金の基礎的部分を統合して基礎年金が創設されたが、その際の手書き台帳のコンピュータ化での入力ミス(氏名・生年月日・性別、台帳自体の誤り、民間委託入力など)、A転職、転居、結婚などで複数の年金手帳番号、B1997年に各年金制度共通の基礎年金番号を導入したが、約1億人の被保険者と年金受給者に対して約3億件の年金手帳番号があり、その照合の遅れ、C保険料を納めたが社保庁の記入漏れなどで「消えた記録」など―が考えられる。総じて、制度変更時の危険性と現場の懸念に対して、国民個々人の年金権の尊重という原則を守るべきトップの政治責任が不在だったのである。


(3)  にもかかわらず政府・与党は、6月1日未明、野党が激しく抗議する中、衆院本会議で「日本年金機構法案」と「国民年金法等改正案」並びに「年金時効撤廃特例法案」の採決を強行した。これは、厖大な「宙に浮いた記録」の存在を10年前から承知しながら、不祥事を口実に社会保険庁を解体して「日本年金機構」への衣替えと民間委託で、国民の年金権への政府責任を消し去ろうとする、極めて悪質な国家的詐欺行為と言わざるを得ない。

(4)  しかし国民の不安・不信の広がりは大きく、衆院での強行採決で安倍内閣の支持率は急落し、全ての世論調査で内閣不支持が支持を上回った。慌てふためいた安倍内閣は、一方では「10年前の厚生大臣は菅直人氏だ」「自治労・国費評という労働組合が悪い」などと責任転嫁を図り、他方では「1年以内に全ての記録と突合する」(安倍首相)と表明せざるを得ず、24時間電話相談などを打ち出した。しかし、「1年以内に全ての記録と突合(照合)する」ことは物理的に困難であり、当面する参議院選挙向け、その場しのぎの発言である。体制を拡充し、年金権擁護の立場で徹底した調査を持続することを求める。


(5)  信頼と安心の年金制度を確立することは政治の責任である。政府の年金機構法など3案は、年金の安定運営のための国の責任を曖昧にし、かつ社会保険庁の責任逃れを容認するもので、認められない。いま行うべきは、@全ての未統合記録を迅速・丁寧に照合する、Aその際、国は、全く落ち度のない国民に立証責任を負わせない、Bその上で国が年金の長期・安定運営を包括的一元的に行う―ことである。
 国民年金ばかりか厚生年金でも深刻な未納・未加入が発生しており、抜本的な制度改革が不可欠である。全額税方式により国民すべてが受け取ることができる《基礎的暮らし保障年金》と、企業の社会的責任を踏まえた《所得比例年金》への改革を訴える。



以 上