2007.8.10

1.  7月末の第21回参議院選挙は、30議席以上の大差で与野党が逆転し、参議院議長が野党から選出されるという劇的な結果となった。
 その原因は、6年余にわたる小泉・安倍内閣の「改革」(新自由主義政策)が社会のあらゆる分野に格差を拡大し、国民の生活のみならず社会を壊してきたことへの不信と批判であり、また安倍首相の叫ぶ「戦後レジームからの脱却」が防衛「省」昇格、教育基本法改悪、改憲準備の国民投票法、集団的自衛権行使容認の動きなどに見られる、憲法9条を改悪して「戦争のできる国」づくり(新保守主義)であることへの不安の高まりにあった。これが、年金の膨大な不明記録と政府の無責任な対応、相次ぐ閣僚の政治資金疑惑や暴言などをきっかけに国民の怒りへ転化し、与野党逆転につながったと言えよう。

2.
 この国民の批判票は野党第一党の民主党へ集中し、その吸引力は他の野党支持層の一部までを吸い取る結果となった。マスコミ各社も二大政党の選択を煽り立てこれを助けた。だが、朝日新聞の選挙直後の世論調査(7月30〜31日)によると、「民主党が議席を増やした理由」は、「自民党に問題がある」が81%に上り、民主党の「政策に期待できる」は9%、「小沢代表がよい」は4%に過ぎなかった。つまり国民は、民主党への期待や政策よりも自民党への批判の受け皿として野党第一党を選択したのである。

3.  わが党は、格差拡大と9条改憲の動きに最も厳しく対決してきた。だから前進できる条件にあったが、改選3議席を1議席減らし、3年前と同じく比例区での2議席獲得と35万の減票という残念な結果に終わった。
 それは、国民の安倍内閣への批判が選挙区での「死に票」を避けて民主党へ流れ、それに引きずられて比例区も減票したことは否めないが、基本的には公認候補の不足(選挙区14名、比例区9名)と事前準備活動の決定的な遅れ、それをもたらした組織力量・財政力や日常的宣伝力の低下などが要因と言える。解散・総選挙に向けて真剣な論議と対策が求められる。

4.  安倍首相は、参院選での歴史的大敗や内閣支持率の続落にもかかわらず、「基本路線は多くの国民に理解されている」と強弁し、「続投」を表明した。「基本路線」とは「経済成長重視の改革と憲法改悪」のことである。
 だから安倍内閣は、当面、内閣を改造し、秋の臨時国会では「改革路線」を堅持しつつも国民の批判に応えるポーズを取り、他方では憲法問題では意見を二分する民主党を揺さぶり、失地回復に全力を挙げてくると見られる。
 かたや参議院で第一党となった民主党は、与野党逆転の条件を生かして、国民の関心が高い課題を法案として次々と参議院で成立させて政府・与党を追い込み、早期に解散・総選挙に持ち込み、一気に与野党逆転・政権交代につなげようとしてこよう。

5.
 民主党が参議院で第一党とは言え、過半数を制したわけではない。したがって国会内でわが党は、国民新党などと共に参議院でキャスティングボートを握った利点を生かして野党の連携・共闘を進め、格差是正・国民生活にかかる最低賃金法(時給1,000円実現)、後期高齢者医療保険制度凍結法、消費税率引き上げ反対、年金制度改革関連法、政治資金規正法改正、そしてテロ特措法やイラク特措法の延長反対、憲法審査会の改憲案作り反対 ―などが実現できるよう最大限努力していく。

6.
 また、解散・総選挙を来春と想定し、その準備を急がねばならない。選挙に示された民意を見ても、いま日本の政治に求められるのは、「平和・自由・平等・共生」を基本理念とする社会民主主義政策の実現である。そのためには社民党の議席増が不可欠である。
 民主党は「政権交代」を賭けて全選挙区に候補者を擁立する構えである。だからわが党も、全選挙区で民主党との競合辞さずの決意と構えを堅持しつつ、11比例ブロックと可能な小選挙区での議席獲得を展望して、12月の全国大会までに候補擁立を図らねばならない。その過程で一部の選挙区で民主との「すみ分け」があり得る。今度こそ、遅れは許されない。

7.
 同時に、支持基盤を広げ固めるための運動が不可欠である。たとえば、憲法9条改悪反対、年金・医療制度の抜本改革、消費税率引き上げ反対、年収200万円未満層をなくす最低賃金法制定などの国民要求署名運動を党(地方議員)が前面に出て街頭・地域・職場で展開することや、従来の憲法意見広告運動の拡大(いずれもブロックでの議席獲得を展望して)が必要である。また10月19日から11月9日の間を護憲・平和運動期間と位置づけ、平和運動センターなどと共に可能最大限の大衆運動を起こしていくことである。こうした運動に支えられて、院内でもわが党が働きかけ、超党派の護憲議員集団の形成が可能となっていく。


以 上