2008.1.24

1.  道路特定財源制度は、「受益者負担」の考え方に基づき、道路の利用者、つまり自動車の所有者やその燃料を使用した人が道路の建設・維持費用を負担する制度として1954年にスタートした。
 その財源は、揮発油税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税など8税目で、08年度の見積総額は5兆4000億円に上る。これは、道路整備が立ち遅れていた時代にはそれなりに意義のある制度であった。だがその中には、例えば法律本則で24.3円である揮発油税が暫定的に2倍の48.6円とされているものなど6税目あり、本則分2兆8000億円に対して暫定分が2兆6000億円となっており、整備の進展状況など時代の変化を踏まえた見直しが課題である。その時期が、租税特別措置法の期限である08年3月末である。


2.
 ところが、政府・与党は、こうした課題を一顧だにせず、「暫定税率は平成20年度以降10年間維持する。事業規模を59兆円以下とする向こう10年間の道路整備の中期計画を策定する」ことを骨格とする租税特別措置法改正案を打ち出した。


3.  私たちは、この問題については大筋次のように考える。


(1)  暫定税率が30年以上も維持され、見直しが求められている時期、さらにこれを10 年間延長しようという政府案には反対である。時代や情況の変化を踏まえ、暫定税率は廃止する方向で見直す。

(2)  その際、ガソリンなどの消費が地球環境に与える負の側面に鑑み、国民の理解を得て、別途創設する環境税(CO2排出源の負担が基本)にその一部を組み入れる。

(3)  暫定税率廃止・見直しに伴う減収対策としては、法人税及び高額所得者の所得税の減税廃止(約3兆3000億円)をはじめ不公平税制の是正で生み出される財源の一部を充てる。特に地方の財源不足(約1兆円)は全額補填する。

(4)  合わせて、10年間の事業規模59兆円とする道路整備中期計画は、必要性・緊急性・優先度を精査し、縮減を図る。また国直轄事業の地方負担金(1兆1000億円、うち道路分6000億円)は廃止する。

(5)  また道路特定財源は、将来的に一般財源化を目指し、当面、交通関係の他の特別会計・特定財源と一本化して「総合交通特別会計」を設け、交通関係の社会資本整備を総合的に行えるようにする。これに合わせて財源の地方分権化を進める。


2008年度自動車関連税制の内訳
(単位:億円)
課税
段階
税目
(税収の帰属)
税率
(本則)
税収額 税率
(暫定上乗せ)
税収額 税収
総額
備 考
取得 自動車取得税
(地方)
取得価格の3% 2,715 取得価格の2% 1,309 4,024 都道府 県及び指定市(30%)、市町村(70%)の比率で配分
保有 自動車重量税
(国)
2,500(円/0.5t)
自家用乗用自動車
2,444 3,800
(円/0.5t)
3,097 5,541 税収10,725億円の2/3=7,150億円の77.5%
運用上、国の道路特定財源
自動車
重量譲与税
(地方)
1,588 2,013 3,601 自動車重量税収の1/3が市町村
自動車税
(地方)
34,500
(円/年額)
1,001〜1,500ccの自家用乗用車
17,148 (一般財源)
道府県税
軽自動車税
(地方)
7,200
(円/年額 )
自家用四輪乗用車
1,690 (一般財源)
市町村税
昭和33年に自動車税から分離
走行
揮発油税
(国)
24.3
(円/g)
13,843 24.3
(円/g)
13,843 27,685  
地方道路税
(−)
4.4
(円/g)
0.8
(円/g)
    国税で揮発油税と併課
地方道路譲与税
(地方)
2,537   461 2,998 地方道路税収の全額。内58%を都道府県・指定市、42%を市町村に配分
石油ガス税
(国)
17.5
(円/s)
140
140 石油ガス税
収の50%
石油ガス譲与税
(地方)
140 140 石油ガス税収の50%(都道府県・指定市)
軽油引取税
(地方)
15(円/g) 4,633 17.1
(円/g)
5,281 9,914 道府県税
道路特定財源税収合計
28,040 26,004 54,043 自動車税・軽自動車税を除く
うち国分は33,366億円(本則16,427+暫定16,940)、地方分は20,677億円(本則11,613+暫定9,064)
※ 太字は道路特定財源。青字は一般財源。

以 上