2010.3.8

1. 社民党の在日米軍基地に関する方針


(1)  21世紀の世界の平和創造に向けた社民党の基本方針は、20世紀末の東西冷戦構造の崩壊を踏まえ、「国連憲章の精神、憲法の前文と9条を指針にした平和外交と非軍事・文民・民生を基本とする積極的な国際貢献」であり、その観点から「日米安全保障条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去」を進めるとしている(06年2月『社会民主党宣言』)。


(2)  したがって昨年の総選挙では、この方針に沿って、「米国に在日米軍再編についての再協議を求め、沖縄などの米軍基地の縮小・撤去をすすめます。普天間基地の閉鎖・返還を求め、辺野古への新基地建設など、基地機能の強化に反対」することを国民に訴えた(「09マニフェスト」)。


(3)  また、今年1月の第12回党大会では、平和・軍縮運動に関して、「三党政策合意を基礎として、沖縄をはじめ全国の在日米軍基地の整理・縮小・撤去、特に、在沖縄海兵隊の撤収と普天間基地の無条件全面返還、辺野古新基地建設計画撤回、…日米地位協定の抜本的改定…などを求めて、米国と交渉に入るように連立政権に求めていく」方針をあらためて決定した。
 つまり、普天間基地については国外移設を求めて、米国と交渉を進めるというのが党の基本方針である。


2.
沖縄の現状と連立政権の課題


(1)  沖縄は国土の0.6%に過ぎず、ここに在日米軍基地の75%が集中している。これは、第二次世界大戦末期の地上戦と、その後の東西冷戦の下で、沖縄県民に多大な負担を強いてきた米国の軍事戦略とそれに追従し続けた自民党政権の負の遺産である。長年の負担に耐えてきた沖縄県民の、普天間基地の代替として辺野古に新しい軍事基地を作るべきではないという強い意思は、一昨年の県議選と昨年の総選挙でも明確に示された。また世論調査でも県民の70%が米軍普天間基地の国外・県外移設を求め、新政権に期待が高まっている。


(2)  こうした現状を踏まえ、昨年9月の「連立政権合意書」では、これに関して「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係をつくる。日米協力の推進によって未来志向の関係を築くことで、より強固な相互の信頼を醸成しつつ、沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」ことに合意した。
 連立政権は、この三党合意に沿って沖縄県民の期待に応えなければならない。その観点から、鳩山首相は、繰り返し「県民の理解、三党の合意、米国の同意を得て、5月までに結論を出したい」旨を表明してきた。


(3)  こうした情勢の下、1月の名護市長選挙でも辺野古への移設反対を鮮明に訴えた新市長が誕生した。また2月24日、沖縄県議会の与野党全会派が一致して、米軍普天間飛行場の「県内移設に反対し、国外、県外への移設を求める意見書」を可決した。党派を超えた、県内に新基地建設を認めない歴史的決議である。これを受けて、沖縄では超党派で「国外、県外への移設を求める県民大会」が準備されている。


3.
問題解決の基本方向


(1)  以上のように、連立政権の合意は、「沖縄県民の負担軽減の観点から、…米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」である。また社民党の方針は、平和憲法と東西冷戦構造の崩壊という現実を踏まえ、「在日米軍基地の整理・縮小・撤去」である。したがって、米軍普天間基地の国外移設こそが、「県民の納得、三党の合意」を得られる唯一の選択肢である。だから、社民党は普天間基地のグアム等への移設を米国に求めるべきだと主張しているのである。


(2)  問題はいかにして「米国の同意」を得るかである。政府は、従来のようにアメリカの主張に唯々諾々として従う姿勢を改め、政権交代に託した民意をしっかり受け止め、米国政府に対し国民の利益を代表して「沖縄の基地負担軽減・国外移設」と、個別普天間問題によって日米関係全体を危うくすべきではないとしっかり主張し、粘り強い交渉によって双方にとって了解可能な方策を見出すべきである。その際、日本の安全保障にとって、沖縄における米軍の軍事的存在意義が、どれほどのものであるかも十分議論すべきである。
(その際、東西冷戦構造崩壊後の米軍再編の戦略、在沖縄海兵隊ヘリ部隊の抑止力問題などにも踏み込んだ議論が必要であろう。)
  また2004年に米国のラムズフェルド国防長官(当時)は、米国議会において「米軍は望まれ、歓迎され、必要とされる場所に配置すべきである」と証言している。沖縄県民の強い世論を無視すれば、さらに反基地闘争が激化することを米国は十分知っている。世論を尊重することが良好な日米関係、「緊密で対等な日米同盟関係」をつくる道であり、これが基本でなければならない。むしろ日本側が過去の経緯にとらわれ、その姿勢が極めて弱い。


(3)  こうした観点で普天間基地の早期閉鎖・返還と国外移設に全力を挙げるが、日米交渉によっては直ちにそれが困難となる場合もあり得る。その際の暫定措置についてはその時点で検討すべきで、いま検討することではない。




以 上