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1. |
臨時国会をめぐって
@ 昨年秋の臨時国会は、混乱と空転続きで64日間を空費した。円高・株安やデフレ脱却対策の補正予算はかろうじて成立したものの、労働者派遣法改正案、郵政改革法案、地域主権改革関連法案、地球温暖化対策基本法案、政治主導確立法案など政府提出の重要法案はすべて先送りされ、最低の法案成立率となった。
この一義的な責任は政府・民主党にある。尖閣諸島や北方領土をめぐる外交問題の対応の拙劣さ、農林漁業などを壊滅させかねないTPP(環太平洋経済連携協定)への参加表明、小沢一郎氏の国会招致に結論も出せず企業・団体献金を受け入れる民主党の無神経さ、デフレ脱却・内需拡大と矛盾する公務員賃金引下げ発言、そして閣僚の失言も相次いだ。政権交代から1年余りが経過したが、未だ政権運営に習熟できない菅内閣・民主党のフラフラ・モタモタぶりがこの混乱と空転を招いた。
A 一方、自民党など多くの野党は、こうした菅内閣に打撃に与えるチャンスとばかり、小沢問題、外交問題、閣僚の問責決議などに血道を上げ、国民生活や景気対策に政治責任を共有しようという姿勢になかった。したがって与野党協議の機運は生まれず、混乱が続いた。そのため「自公政権もひどかったが民主党政権もダメだ」という国民の幻滅が広がり、内閣支持率は20%台に急落し不支持率が60%を超えるなど、国民の政治不信と閉塞感が広がっている。
B こうした中でわが党は、三党連立政権合意の履行を求めて是々非々の姿勢を貫いた。つまり、一方で雇用と需要創出などを中心とする補正予算の早期成立に力を入れつつ、他方でTPP問題、派遣法改正、公務員給与、武器輸出三原則堅持などについては政府に厳しく申入れ、国会論戦でもこれを質した。また政略的な問責決議には与さず、逆に不見識な柳田法相の辞任をいち早く求めるなどの対応をとった。
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2.
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現下の情勢について
C 菅内閣は、「国民生活が第一」から「経済成長が第一」への転換、すなわち民主・社民・国新三党の政策合意を財源不足を口実に軽視する一方で、大企業が国内投資・雇用拡大を行う担保もないままの法人税減税に見られる大企業優遇施策の強化、TPP問題に見られるような輸出主導の経済成長をめざす政策など、新自由主義政治回帰の傾向を次第に強めている。これに対しては、わが党のみならず民主党内からも批判が高まっている。民主党の内部抗争は、表面的には小沢元代表の政倫審出席問題だが、背景には「国民生活が第一」に戻るか否かの対立がある。
菅内閣への国民の批判の高まりは、11月の千葉県松戸市議選で11名擁立2名当選、12月の茨城県議選で24名擁立6名当選という民主党の惨敗をもたらした。だから党内で「『国民生活が第一』に戻れ」の声がさらに強まった。それを糊塗して国民に不人気の小沢元代表追い出しで政権浮揚を図ろうというのであろうが、これが党内対立をさらに深め、地方から「菅首相では統一地方選は戦えない」と悲鳴が上がっていると言われている。そのため1月13日の民主党大会は波乱含みである。
D これを横目に、自民党などは統一自治体選挙を有利に展開するため、菅内閣にダメージを与え早期退陣を迫る構えである。具体的には、(1)参院で問責決議が可決された仙石官房長官・馬渕国交大臣を更迭しなければ通常国会冒頭から審議を拒否する。(2)次いで来年度予算案と関連法案が衆院で採決される2月末に参院で菅首相の問責決議を出し、その退陣と引き換えに予算案に協力する。 (3)あるいは5月下旬に参院で予算関連法案を否決し首相の問責決議を可決して首相退陣又は解散・総選挙を迫る―などが考えられているようだ。自民党の思惑通りに事態が推移すれば、まさに菅内閣は存亡の危機を迎える。
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3.
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わが党の立ち位置
E そこで政府・民主党は、この事態を回避するために社民党に縋ってきている。野党多数の参院で法案が否決されても衆院で社民党が加わることで3分の2以上の賛成で再議決できるよう協力を求めてきている。一方、菅内閣の新自由主義政治回帰を見かね、最近、わが党支持や民主党支持の労働組合からも「社民党は連立政権に影響力を行使できる立場にいてほしい」との声が強まっている。こうした声は尊重するが、「普天間基地の辺野古移設断念」や「法人税減税見直し」はじめ三党連立政権合意の履行が確約されない限り、わが党の連立政権復帰はない。したがって、連立政権合意の実現を基本に菅内閣とその施策・法案にはケース・バイ・ケースで臨んできたし、今後も同様である。
F こうした観点から、この間の補正予算や来年度予算編成の協議に臨んできた。
その結果、(1)基礎年金の国庫負担割合は2分の1(2.5兆円)を確保、(2)高齢者医療制度の1割負担を継続、(3)介護施設整備を10万人分追加し、介護従事者の処遇改善、(4)待機児童の解消緊急対策10万人分を追加、(5)求職者支援、新卒者・若年者支援、正規化支援強化など雇用対策を重視、(6)地方交付税は今年度を0.5兆円上回る17.4兆円を確保、(7)地域医療の再生など臨時特例交付金を拡充、(8)自治体独自の雇用対策・中小企業対策への支援を強化、(9)身近な公共事業や、公立の小中学校・高校、病院の耐震化・太陽光発電化・脱アスベスト化の促進に向け地域活性化交付金を創設、(10)児童虐待対策、DV対策、安心子ども基金を拡充、(11)鉄建機構の利益剰余金の活用は本来目的に十分留意、(12)普天間基地移設の経費は計上しない、(13)小学1年生の35人以下学級実施―などを認めさせることができた。
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4.
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今後の対応
G だから政府・民主党は、来年度予算と衆院の再議決への協力を強く求めてきたが、これは、予算審議での法人税減税や成年扶養控除の縮減などの修正協議と沖縄の基地関連継続事業の調査も踏まえ、衆院審議の山場となる2月下旬に判断することにした。その際、首相が年頭に表明した消費税増税を含む社会保障改革、TPP参加方針、政治と金の問題の内容などの見極め、内閣支持率、そしてポスト菅内閣の動向(自民党などと連携して改憲と消費税増税まっしぐらの内閣とならないか)―なども総合的に勘案して判断することになる。
わが党のこの判断を決定付けるのは、国民の声と院外の大衆運動である。「生活再建」の実現を目指す春闘や統一自治体選挙と連携した闘いを進めたい。
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