2011.12.15

1.  11月30日、震災復興財源確保法等関連法案が成立した。
 その内訳を見ると、所得税で7.5兆円(25年間)、住民税0.6兆円(10年間)及び法人税2.4兆円(3年間)の増税で、合計10.5兆円の増税規模となっている。これだけを見ると国民各層の「負担の分かち合い」がなされているように見える。
 しかし、ここに大きなまやかしがある。というのは、法人税は5%を恒久減税した上で向こう3年間だけ2.4兆円増税であるから、25年間トータルでは13.2兆円も減税になる中のわずか2.4兆円の増税に過ぎないのである。つまり、所得税や住民税を増税しなくても法人税を減税しないだけで財源は確保できるのであるが、「震災復興に協力しよう」という勤労国民の善意に便乗して法人税を差し引き10.8兆円も減税する仕組みであり、まさにペテンと言う他ない。
 だから私は、12月7日の決算委員会(NHK中継入り)でこの点を追及したが、各方面から驚きと野田内閣への怒りの声が寄せられた。


2.  このような手法は消費税導入時にも行われた。
 消費税は大きな反対運動の中、1989年からの導入が強行された。以来2010年までの22年間に国民が納めた消費税総額は224兆円に上るが、同期間に行われた企業減税総額はなんと208兆円にも上った。つまり消費税は「福祉目的」だと喧伝されたが、そのほとんどは企業減税の穴埋めに回ったのである。そしてこの間、年金・医療・介護、福祉は総じて切り下げ続きであった。このため、消費税が導入される前年の1988年の税収構造は、法人税が35.3%、消費課税が18.9%であったが、2010年にはこれが逆転して法人税が18.4%(半減)、消費課税が43.9%(2.3倍増)になっている。「弱い者いじめ・大企業優遇の消費税」と言う所以である。


3.  そして今また、野田内閣は社会保障の拡充と言う国民の願望に便乗して消費税率を10%に倍増しようとしている。
 社会保障は、憲法第25条に保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現するためであり、その財源は納税義務を負うすべての個人や企業・団体がその能力に応じて負担すべきものであるから、その財源を消費税に特定すること自体が大問題である。消費増税は「逆立ちしても鼻血も出ないほど完全に無駄を無くした時」と、昨年1月に時の菅財務大臣は言明したが、野田内閣はこれさえも行っていない。だから、社民党が指摘してきた、例えば(1)国から補助金や事業発注を受けた公益法人・民間企業への支出総額7兆円余(08年度)の徹底した見直し・削減、(2)高額天下り役員の削減、(3)不要不急の公共事業の削減、(4)租税特別措置など不公平税制の徹底是正(「法人間配当無税」約2兆円含む)、(5)法人税・所得税の累進税制や資産課税の強化、(6)特別会計の積立金・剰余金などの活用、(7)防衛費や米軍への「思いやり予算」の削減―などは極めて不十分である。
 こうした改革を放置し、てっとり早く財源を確保しようとする消費税増税や憲法違反の公務員賃金の削減などは到底認めることはできない。今こそ、その声を強く大きくすることが必要である。

   

以 上