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(以下は長野市において1月25日に行った新春講演の要旨です) |
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はじめに |
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私は、昨年12月25日、地元紙から要請された新年の色紙に『過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる』と認めました。これは、敗戦40周年にワイツゼッカー大統領がドイツ連邦議会で行った有名な演説『荒野の40年』の中の一節で、このあとに「非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」と続いています。昨今の安倍政権の言動を踏まえた教訓として記したつもりでした。
その翌26日、安倍首相は靖国神社参拝を強行しました。案の定、国内はもとより、近隣諸国や欧米からも強い批判が吹き出し、日本に対する信頼を損ないました。過去に目を閉ざす安倍首相の愚行に改めて憤りと危機感を覚えました。 |
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A
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一国のリーダーが戦没者に哀悼の誠を捧げることは当然のことですが、その対象が先の大戦を賛美する靖国神社となると、話はまったく別です。そもそも首相の特定宗教法人の参拝は、憲法第20条「信教の自由」や第89条「政教分離の原則」に反します。まして靖国神社は、赤紙一枚で戦争に駆り出されて戦場に散った兵士と、その誤った戦争を指導したA級戦犯を合祀しており、首相らの参拝は過去の侵略戦争や植民地支配を正当化することになります。だから天皇も諸外国の要人も靖国参拝はしないのです。
もし安倍首相が本気で「英霊の冥福を祈る」思であれば、私たちが提言してきた沖縄の『平和の礎』のような「すべての戦没者を慰霊する無宗教の国立施設」建設に反対したり、「植民地支配と侵略の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省とお詫び」を表明した『村山談話』(1995年)の見直しを言い出すはずがありません。安倍氏は全く逆で、「先の戦争はアジア解放の正しい戦いだった」という誤った歴史観に基づいて行動しているのです。 |
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B |
戦後日本の政治は、曲がりなりにも「政治は憲法に則って行う」という立憲主義が尊重されてきたのですが、安倍政権はそれを無視し、国会で多数を握れば万能と思い上がり、偏狭なナショナリズムに基づいて「戦後レジームからの脱却」すなわち憲法改悪を自らの使命としているところに、その特異性と危険性があります。この暴走を食い止めることが今日の最大課題です。以下、安倍政治の現状と私たちの考えを述べます。 |
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1.安倍政権の社会・経済政策批判 |
(1) |
アベノミクスは小泉「構造改革」の焼き直しでさらに格差を拡大 |
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安倍内閣の経済政策アベノミクス(大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略)は、大企業が儲かればその成果が国民にも滴り落ちてくるというトリクルダウン論に基づくのですが、これに基づく小泉「構造改革」は社会のあらゆる分野に格差を拡大し破綻しました。しかし安倍内閣は依然これに拠って、デフレ脱却・景気回復を目標に掲げています。
「大胆な金融緩和」というカンフル注射によって30%もの円安が起こり、一部の輸出企業は儲かりますが、過剰生産と内需停滞が解消されない下に投下された資金は生産によりも投機に回り、一方で輸入製品の高騰・物価高で国民生活、内需産業を直撃しています。
また、「機動的な財政出動」は消費税増税を当てにした公共事業のバラマキです。
そして「成長戦略」は、「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」と称する国家戦略特区法や産業競争力強化法に見るように、大企業のための一層の規制改革や減税策を打つ一方、安上がりな労働力づくりに向けて、どんな仕事でもずっと派遣労働者を使い続ける派遣労働法改悪や労働者を解雇し易くする限定正社員制度などを目論んでいます。
ですから、アベノミクスは、さらなる国民生活や雇用の破壊と格差拡大、一層の財政危機、それが増税や社会保障の改悪に連動するアベノリスクとなる公算が大なのです。
そもそも15年に及ぶデフレ病は自民党政治の責任で、@1997年から平均で59万円も下がった賃金、A2042万人(全勤労者の38.2%)に上る非正規雇用の増大、B消費低迷による企業間の低価格競争激化などが原因ですから、その処方箋は積極的賃上げ、非正規の正規・安定雇用化、時給1000円以上の最低賃金実現と中小企業支援策などによって国民の所得増を図り、個人消費と内需拡大を実現することです。※@AB
安倍首相は儲かった企業は賃上げをと言い始めましたが、それが本気なら政府自らが最低賃金引き上げや生活保護費・年金切り下げの中止くらいは打ち出すべきです。
特に、職を求める若者の2人に1人が非正規の仕事しかなく、結婚もできず子どもを産み育てることもできない雇用の劣化は政治災害であり、その改善こそが急務です。同時に賃上げと非正規の正規化については労働組合の真価も問われています。
※@ 国税庁の民間給与実態調査では2012年の平均給与は408万円(1997年は467万円)で、正規は467.6万円、非正規は168万円となっている。
※A 資本金10億円以上の大企業は224兆円も現・金を貯め込んでおり、それは十分可能だ。
※B 安倍首相は、表向きは企業に賃上げを要請しながら、公務員賃金7.8%削減や年金2.5%と生活保護費6.5%カットなどを強行し、消費税を3%引き上げるというのだから、アベノミクスはデフレ脱却とはアベコベの経済政策である。 |
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(2) |
社会保障拡充のための消費税増税は大ウソ |
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一昨年、民・自・公3党は、社会保障と税の一体改革法を押し通しました。私たちは「健康で文化的な最低限度の生活が営める年金、ほとんどお金のかからない医療・介護・子育て制度をまず明確にし、それにかかる費用を算出し、その財源はあらゆる税目から求めるべきで、逆進性の強い消費税増税にのみ求めることに反対」しました。
しかし、安倍内閣が臨時国会で通した社会保障改革プログラム法では、既定の生活保護費や年金の切り下げに加え、70〜74歳の医療費自己負担を2割に、介護の一律1割自己負担から一定収入以上の世帯は2割負担に、介護の「要支援1、2」の介護保険適用除外など軒並み改悪です。私たちの「社会保障拡充のための消費税増税はウソだ」との指摘どおりだったのです。
そればかりか安倍内閣は、震災復興増税のうち、3年間の特別法人税を1年前倒しで廃止して約8000億円を免除し、庶民には25年間所得税2.1%の上乗せ、10年間個人住民税1000円上乗せはそのままという露骨な大企業優遇・庶民冷遇を断行します。本気に怒りの声を上げなければ、さらに消費税増税・大企業減税を押し付けてくるでしょう。
なお、「財政赤字だから消費増税は仕方がない」の主張もマヤカシです。今日の財政赤字は、@法人税の最高税率43.3%が25.5%に、富裕層の所得税の最高税率75%が40%に大幅減税されたこと、A630兆円もの異常な公共事業の拡大、B労働者の所得低下と中小・零細企業の経営不振による税収減などが要因ですから、大企業や富裕層優遇の不公平税制の是正こそが最優先されるべきなのです。※C
※C 1989年に導入の消費税収はこの23年間で約240兆円に上るが、同期間の法人税減税(法人税、法人住民税、法人事業税)は約220兆円余りであった。つまり消費税収の大部分は企業減税に回り、そのため社会保障は給付と負担の両面で改悪されてきた。 |
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(3) |
無責任極まりない原発再稼働と原発輸出政策 |
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福島原発事故は収束どころか、除染や汚染水問題など依然深刻です。15万人余りの避難者の生活破壊と将来不安は計り知れません。ところが安倍内閣は、事故原因の解明も収束もないまま原発再稼働と原発輸出を「成長戦略」に組み入れました。
この2年10か月、原発稼動ゼロでも経済活動や国民生活に支障はありません。今こそ脱原発・自然エネルギーへの転換(風力、太陽光、地熱、天然ガス、バイオマス、水素燃料電池などの発電、大型蓄電池開発)を決断すべきです。溜まり続けた17,000d余りの使用済み核燃料が無害化するまで約10万年かかりますが、地殻変動の激しい日本でこれを安全に貯蔵する場所はありませんし、最終処分場も決められません。核廃棄物の処理に今後かかる国民負担(電気料金と税両面)は莫大なものになりますが、それでも安全の保障はないのです。だから小泉元首相でさえ政府の「原発安全神話」の無責任さを認め、「捨て場所もないような原発を経済成長に必要だからと造るより、同じ金を自然エネルギーに使って循環型社会をつくる方が建設的だ」と、私たちの主張に同調するのです。
5月と11月、安倍首相は私の追及に「原発は低減していく」と答弁しながら、他方で政府の「エネルギー基本計画」では原発を「基盤電源」と位置づけています。「いま儲かればあとは野となれ山となれ」式の無責任な企業論理に迎合しているのです。
「脱原発基本法」制定に向け、さらに大きな世論形成に奮闘しなければなりません。 |
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(4) |
公約違反を重ねるTPP参加交渉 |
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TPP(環太平洋経済連携協定)とは、2015年をめどに加盟国間で取引される全品目の関税全廃を目指す枠組みですから、これに参加すれば国内の農畜産業をはじめ医療・国民皆保険、医薬品認可、食の安全基準、公共調達、郵政など21分野の市場開放を行うことになり、国民生活に甚大な悪影響を与えます。
だから社民党は、日本が参加した場合の影響の情報開示と国会議論を強く求めてきましたが、安倍首相は「『聖域なき関税撤廃』は前提でないと米国と確認した」と言明し、国会論議を避け続けてきました。ところが昨年11月、交渉参加各国から「すべての品目を関税撤廃の対象として交渉に臨むよう」求められ、安倍首相のウソが明らかになりました。そして今、「聖域なき関税撤廃反対」の選挙公約も翻して重要5分野(米、麦、肉、乳製品、甘味類などの586品目)の関税撤廃の可否を検討しているのです。
昨年4月、衆・参の農林水産委員会は「農林水産分野の重要5品目などの聖域の確保を優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退を辞さないものとする」と決議しました。よってこの点で一致できる政党・政治家、関係団体と共にウソつき安倍内閣を追及し、TPP交渉からの脱退、国会での協定批准阻止の闘いを進めます。
私たちは、世界の成長センター・アジア諸国との実状に合った相互互恵の経済連携こそ推進すべきだと考えています。 |
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2.安倍政権の外交・防衛政策批判 |
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集団的自衛権容認と一体の日本版NSC設置法と特定秘密保護法 |
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安倍内閣が臨時国会で強行した国家安全保障会議設置法は日本と米国の軍事協力を飛躍的に強化するための外交・安全保障の司令塔の創設であり、また特定秘密保護法は国民の知る権利や取材・報道の自由に大幅な制限を加えるもので、今後の集団的自衛権の行使容認と一体のものです。特に秘密保護法は情報統制国家への大きな反対の声にもかかわらず、安倍内閣は衆・参両院で強行採決しました。※E
この民主主義破壊と強権姿勢に世論が沸騰しましたが、安倍内閣はこの2法の成立を受け、初の「国家安全保障戦略」と新「防衛大綱」を閣議決定し、「武器輸出三原則」を緩め、沖縄の米軍普天間基地の辺野古への移設・巨大化などを次々打ち出しました。
今日、安倍内閣は尖閣諸島問題や中国の軍拡を口実に中国包囲網づくりを進めていますが、米国、韓国、豪州などはそれに与しません。そもそも安全保障の要諦は敵を作らず、敵になりそうな国を中立化・友好国化することです。敢えて敵を作り出す安倍外交は「タカ派の平和ボケ」とも言うべき危険な動きです。
社民党は、北東アジア地域で、もし揉め事が発生しても決して武力行使はしないという「北東アジア総合安全保障機構構想」を2001年に打ち出し、中国、韓国、モンゴルなどと合意してきました。そうした努力こそが政府に求められるのです。
※E 「日本に秘密保護法がない」という主張はウソで、すでに国家公務員全体に関する国家公務員法、外務省に関する外務公務員法、防衛省に関する自衛隊法、刑事特別法など秘密を保護法するための法律はある。
特定秘密保護法の概要は、日本周辺の安全保障環境の悪化に対応するためと称して、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、国の安全保障の支障をきたす恐れがある情報を閣僚らが「特定秘密」に指定し、これを扱う公務員や警察官、民間業者などがこれを漏らせば、最高懲役10年の罰則を科すというものである。
これは、@「何が秘密なのかも秘密」と言われるように定義が極めて曖昧で、閣僚の判断次第で現に42万件に上る秘密の範囲が際限なく拡大する、A厳罰化によって公務員が萎縮し国民に必要な情報まで秘匿されるなど「知る権利」がさらに侵害されるおそれが強い、Bメディアの取材活動や行政を調査・監視しようとする市民の活動も罪に問われかねない、C国会に特定秘密を提供するかどうかは行政機関の判断次第で、国会の国政調査権が阻害される、Dまた国会議員も何が秘密か解らないまま特定秘密に触れれば処罰対象となる、E特定秘密と知らないで情報入手した人が罪に問われ、裁判となった場合、特定秘密の中身が被告・弁護人に明示されないまま有罪となる可能性がある―など、憲法の理念や民主主義の基盤を根底から崩し、言論統制に導く稀代の悪法と言わねばならない。
本来、国家が持つ情報は国民のものであるから、プライバシーの侵害やその情報が公共の福祉を害する以外は、情報公開が原則でなければならない。 |
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(2) |
集団的自衛権の行使は憲法上許されない |
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歴代政府は、長年の国会論議の中で、集団的自衛権とは「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義した上で、「我が国が、国際法上、集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であるが、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」との見解を表明し(1981年5月29日の政府答弁書)、この憲法解釈が30年余にわたって確立してきたのです。
ところが安倍首相は、この政府見解「国際紛争解決のための武力行使は合憲であり、集団的自衛権行使は可能だ」に変えようと、内閣法制局長官の首をすげ替えや「安保法制懇」の開催など手を変え品を変えて画策しているのです。※F
※F 安倍内閣は、9月以降、「国家安全保障戦略」を検討する懇談会、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を相次いで開催している。
論点としては、集団的自衛権行使解禁の4類型として、@公海での米艦艇の防護、A米国を狙った弾道ミサイルの迎撃、BPKOなどで他国部隊を守るための「駆けつけ警護」、CPKOや戦闘地域での他国部隊への後方支援」が検討されているという。
これらは、次のように米軍と共に「戦争のできる国」にせんがためのこじつけである。
@の「公海での米艦艇」との共同行動は、一つは「日本領海内の場合」であり、これは自衛権の範囲であるから集団的自衛権行使に当たらない。二つ目は「武力行使を目的として自衛艦が海外に派遣され米艦艇と共同行動する場合」であるが、これは明らかに憲法違反であるので、あり得ないことである。
Aの「米国を狙った弾道ミサイルの迎撃」は、仮に敵対している北朝鮮の攻撃を想定したとしても、日本の上空を通過しないものに「迎撃」などあり得ない。そもそも世界最強の米国に全面戦争を仕掛ける愚かな国はない。
BCの「駆けつけ警護」や「戦闘地域での他国部隊への後方支援」だが、日本のPKO派遣は「派遣5原則」があり、戦闘地域への派遣はないし、もし戦闘があれば撤退することになっている。戦闘の後方支援は武力行使であり憲法違反である。
現在の議論は、この4条件に限定することなく集団的自衛権行使を認める方向にある。 |
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(3) |
憲法9条を停止し、3年後の明文改憲を狙う |
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そもそも「憲法とは、主権者・国民が政治権力を規制してそこに銘記された平和や人権条項の実現を図るためのもの」です。これが立憲主義です。ところが憲法で規制されるべき安倍内閣は、憲法に違反する法律や政府の行為を無効と規定した憲法第98条、国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務を課している第99条を無視し、かつて「全権委任法」を押し通してワイマール憲法を無力化した「ナチスの手口」を真似て、憲法第9条の解釈を変えて無力化し、その上で3年後の憲法全面改悪を狙う「手口」です。
だから安倍首相の掲げる「積極的平和主義」とは積極的軍拡・戦争主義に他ならず、これはまた、平和憲法に基づき「専守防衛に徹し、非軍事的手段による平和構築と国際貢献を行う国」として世界から尊敬と信頼を得てきた戦後日本の歩みを覆す暴挙なのです。
「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」と指摘する所以です。 |
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3.反撃の条件と私たちの課題
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(1) |
一致できる課題での野党共闘を積極的に追求 |
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確かに与党は衆・参両院で過半数を制しました(衆院で67・7%、参院で55・8%)が、各種の世論調査では、景気回復で暮らしと雇用の改善、社会保障の拡充、消費増税反対、脱原発・再稼働反対、集団的自衛権容認反対などが国民多数の声です。安倍内閣の政策と国民の要求は大きく「ねじれ」ています。選挙での自民党の得票率は衆院選比例区で27.6%、参院選比例区で34.7%ですから、安倍内閣の反動性と驕りの表れです。
政党や労働組合はこれら国民的諸要求の実現を図ることが使命ですから、社民党は大衆運動の強化を呼びかけつつ、この矛盾を厳しく追及し、一致できる課題での野党共闘を進めます。
例えば、先の臨時国会でも、民主党は特定秘密保護法案の賛否を明示できませんでしたが、参院段階でわが党が「賛否は別に秘密保護法案の慎重審議」での共闘を呼びかけ、実現しました。今後、特定秘密保護法廃止、集団的自衛権行使・9条改憲反対、脱原発、反TPPなどで、院外大衆運動の盛り上げと野党共闘の前進に全力を挙げます。 |
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(2) |
野党共闘を支える院外大衆運動の盛り上げを |
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戦後間もなくから1990年頃まで、自民党が衆・参両院で多数を占めていました。それでも社会保障・福祉、賃上げを中心に国民的諸要求は一定前進し、世界に誇れる格差が少ないという意味での「1億総中流社会」「終身雇用制度」などが実現しました。それは、当時、最大の労働団体であった総評(日本労働組合総評議会約400万人)が、「国民春闘」に象徴されるように、賃上げや社会保障など経済的・政治的課題を一体で掲げ、社会党と連携・共同して闘い続け、その結果として野党第一党の社会党の存在感も高め、諸要求の前進も勝ち取れたのです。
しかし現実はどうでしょう。地方や中央産別の幹部から連合運動や民主党に多くの不満や批判が上がっています。例えば、「デフレ脱却には賃上げが必要と言いながら、統一要求もなくストも構えない」、「国民の声を無視して民主党も連合も消費増税を容認し、組合員はしらけている」、「連合は脱原発をトーンダウンさせ、TPPも容認し、組合員や国民から遊離している」等々です。労働者・生活者の立場に立ちきれとの批判でしょう。
与党が衆・参両院で多数を占めた今日、改めてこの歴史の教訓を学び、労働組合は経済的・政治的を問わず国民的諸要求を掲げて大衆的運動を強化し、課題で一致する野党の共闘を求めてそれを支え、要求の前進を目指すことが重要です。こうした当たり前の労働運動の再構築を各産別・単組から実践していく努力が求められます。
特に、政府さえ3.2%消費者物価上昇を見通す下で、2%程度の賃上げでは生活低下は必至です。要求が取れるかどうかを先に判断するのでなく、組合員の生活や職場の実態からの要求を掘り起こし、4〜5%の積極的な賃上げと正規安定雇用の拡大、消費税増税反対などを経営者側や政府・当局に要求し、職場を基礎とする統一闘争で実現を迫る(結果が不十分であれば運動全体の弱さとして総括し次に備える)ことが大事です。
社民党は大衆的な春闘討論と積極的な運動を期待し、積極的に支援していきます。 |
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(3) |
護憲・リベラル勢力の結集で自公政権に対抗軸を |
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国民的諸課題の前進を目指す院内・外の大衆運動が前進する過程で、「大企業や富裕層優遇・国民犠牲、憲法改悪・戦争のできる国づくり」という安倍内閣の本質が国民に実感されていきます。安倍内閣の支持率は50%を割り始めました。今後さらに原発推進への転換、公約違反のTPP参加、所得増なき消費税増税、集団的自衛権行使容認など国民に背を向けた政治への不満や怒りが広がり、さらなる支持率の低下は必至です。これに合わせて護憲・脱原発・国民生活向上・反TPPなどで一致する政治勢力結集の国民的機運も強まらざるを得ませんし、私たちはそれを目的意識的に追求します。
次期参院選まで2年半の間に、それが緊密な野党連合となるか、あるいは新たな護憲・リベラル政治勢力の結集に発展するかは、重要政策の一致や信頼の度合い、労働運動や国民的機運いかんです。5年前、「自公政権はもうコリゴリ」という国民的機運の中で民主・社民・国民新の3党は政策合意を結んで総選挙を闘い、10分類33政策課題で政権政策合意を結び、高い支持率で政権をスタートさせました。これが一つのモデルでしょう。その後、民主党が政策合意を次々覆したために連立が崩壊し、民主党も政権を失いました。政策合意を守らせる社民党の力も足りなかったのです。だから社民党自身の再建・再生と前進に向けた必死の努力抜きには護憲・リベラル勢力の結集は実現しないことを肝に銘じて頑張らなければなりません。安倍政権の新自由主義・改憲路線の対抗軸は「平和・自由・平等・共生」の理念実現を目指す社会民主主義・社民党なのですが、この間の大衆運動の後退、連合の民主党支援基軸路線、そして党の足腰の弱体化で厳しい局面に立たされています。是非、社民党を強く大きくすることにご協力をお願いします。
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おわりに
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まさに今、主権者・国民一人ひとりが安倍政権の危険な暴走を許すのか否かを問われています。憲法第25条に保障された「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の実現のために、そして第9条に基づいて「専守防衛に徹し、非軍事的手段によって平和を構築し国際貢献を行う世界に誇れる国」を守るために、安倍暴走政治NO!の声を広げていただき、その先頭に立って闘う社民党にご支援いただきたいと思います。
憲法第12条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とあるように、それは国民の責務でもあります。
以上、国政報告といたします。 |
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