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【以下は、1月23日に新潟分権自治フォーラムで行った講演の要旨です。】 |
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はじめに |
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(1) 安倍政権は、昨年末の解散・総選挙という奇襲攻撃によって、2年間の失政や国民の不満を覆い隠し、与党は再び衆院の3分の2超の326議席を獲得し勝利を収めた。しかし、選挙結果は、投票率が52%に落ち込み、政党の支持を示す比例区の自民党の得票率は33%で、民意を歪める小選挙区制によって全議席の61%を占有したに過ぎず、国民が安倍政権を信任したとはとても言えない。 |
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(2) しかし安倍政権は、国民の信を得たとして、@アベノミクスの推進、A法人税減税と2年後の消費税率10%断行、B原発の再稼働、C農業と地方を壊すTPP参加、D沖縄の民意に反する辺野古新基地建設、E労働法制の改悪、F集団的自衛権行使に向けた法整備に邁進し、その上にF憲法の全面改悪を進める構えだ。
だが、各種世論調査では、安倍政権のこれらの政策には国民の5〜7割が反対しており、国民と政権とのねじれは拡大し、不満が増大せざるを得ない。 |
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(3) 今年は戦後70年の節目の年だ。安倍政権は格差拡大に少しの痛痒も抱かず、そして「再び戦争ができる国」に突き進もうとしている。これを許すのか否かが問われる年である。これを阻止する運動を大きく発展させる年にするよう呼びかける。 |
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1.安倍政権の社会・経済政策批判と対案 |
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(1) アベノミクスはさらに格差を拡大する―可処分所得の拡大こそ景気回復の道 |
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@ 16年余にわたるデフレ・不況病の原因は、政府・財界が一貫してとってきた賃金の抑制(1998年以降平均で60万円も低下)や非正規雇用の拡大(2000万人=38%)などによって個人消費と内需が低迷してきたことにある。その政策転換なしにデフレからの脱却はない。
だがアベノミクスは、依然、大企業が儲かれば中小企業や庶民にもそれが滴り落ちてくるというトリクルダウン論に基づくものであり、その結果は、50%もの円安で輸出企業を中心に企業全体としては大儲けして高配当と300兆円もの内部留保を溜め込んだが、円安と消費増税で消費者物価が18か月連続で上昇し、実質賃金は17か月下がり続け、年金生活者・低所得層の生活を直撃し、国内総生産・GDPは落ち込み、その失敗は明らかだ。 |
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A だから社民党は、勤労者の賃上げ、非正規労働者の正規化と均等待遇、時給1000円以上の最低賃金実現とそのための中小企業支援策、将来不安を減らす社会保障の拡充などで実質的に使える可処分所得を増やすことによって個人消費と内需拡大を求め、特に景気を悪化させた消費税8%は3%減税して5%に戻せと主張してきた。
アベノミクスは、結局、大企業と富裕層を優遇し、国民の暮らしや雇用を悪化させて格差を拡大し、増税や社会保障改悪をもたらす他ない。労働組合も真価が問われている。 |
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(2) 消費税増税は法人税減税の穴埋め―法人税・所得税を97年ベースに戻せ |
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B 昨年来、70〜74歳の医療費自己負担が2割に、介護の1割自己負担が一定収入以上の世帯は2割に、介護の要支援1、2が介護保険適用除外に、そして新年度予算案でも介護報酬や生活保護を減額するなど、「社会保障ための消費税増税」は真っ赤なウソだった。
1989年の導入以来、消費税収総額は282兆円だが、この間の法人税の減収は255兆円に上り、消費税は結局、法人税減収の穴埋めだった。この間、法人税率を4回14.5%も下げて、さらに今年から5%以上下げると言う。消費税10%への引き上げはその肩代わりだ。そもそも社会保障はあらゆる税収から賄うべきで、消費税を目的税にすべきではない。だから社民党は法人税減税反対、法人税と所得税の税率を97年ベースに戻せ(14兆円余の税収増)、ただし中小企業の法人税は15%から11%に下げよ、と主張してきた。 |
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(3) 原発再稼働と輸出に転換―再稼働反対、脱原発の目標年次定めよ |
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C 安倍内閣は、福島原発事故の原因解明も収束もないまま、選挙公約を翻し、鹿児島の川内原発を皮切りに再稼働を進めようとしている。電力が不足もしないのに電力会社の儲けのためだ。百歩譲っても、最低、「30q圏内自治体との防災協定・実効性ある避難計画・住民同意」を求める運動を盛り上げ、阻止を目指す。
一方、溜まり続けた17,000dの使用済み核燃料を地震列島・日本で無害化するまで10万年以上、安全に貯蔵できる保証も方法もない下で、これを増やし続けることは、無責任極まりない子々孫々への危険のつけ回しに他ならない。今こそ国策で始めた原発は国策で2020年代初頭に脱原発の目標年次を定め、再生可能エネルギーへの転換を図らねばならない。 |
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(4) 地方を疲弊させた反省なき「地方創生」―市場経済万能主義の転換こそ |
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D 今日の地方の疲弊や人口減は、自民党政権の市場経済至上主義、平成の市町村大合併や三位一体改革などで一極集中を生み出した結果であり、自然現象ではない。その反省もなく、農林水産業と地方を衰退させるTPP参加や公務員叩きなどはまったくの矛盾だ。地方分権を一層推進し、地方の自主財源を保障することが不可欠だ。 |
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2.「壊憲」にまっしぐらの安倍政権 |
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(1) 憲法9条は政府に戦争することを禁じた規定である |
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@ かつてわが国が第二次世界大戦を引き起こし、多大な犠牲と損害をもたらした深刻な反省の上に、日本国民は、憲法前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意し」、そして憲法9条で「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」を規定して、政府に戦争を起こすことを禁止した。
だから歴代政権は、長年の国会論議も踏まえ、わが国の自衛権の行使は、(1)わが国に対する急迫不正の侵害があり、(2)他にこれを排除する手段がない場合、(3)防衛は必要最小限の実力行使にとどまる―との3要件を満たす場合に限られるとの見解を確定してきた。
そして、集団的自衛権の行使は、「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されない」と明確にしてきたのである。
だから自衛隊についても、「わが国が武力攻撃を受けた場合に備えた『専守防衛』の組織であり、他国の軍隊のように海外で武力行使をすることはない」と繰り返し言明してきた。 |
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(2) 集団的自衛権行使は「戦争をする国」への転換−憲法違反は明白 |
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A ところが安倍政権は、こうした歴代政権の憲法解釈を覆し、昨年7月1日、憲法9条が認める『必要最小限度』の自衛権の中に集団的自衛権も含まれるとの拡大解釈を閣議決定した。つまり日本が直接攻撃されていなくても、他国のために戦争ができるようにするというもので、政府に戦争を起こすことを禁じた憲法9条違反は明白である。
安倍政権はこの閣議決定に基づき、今年5月以降、10数本の関係法の改訂を予定しでいるが、徹底審議で様々な矛盾を突き、国民運動で阻止しなければならない。 |
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(3) 「安全保障環境の悪化」は安倍政権の誇大宣伝 |
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B 集団的自衛権容認の理由として、邦人輸送中の米艦防護、米国に向かう弾道ミサイルの迎撃などの8事例を上げた。
だが、例えば「邦人輸送中の米艦防護」だが、邦人救護は自国の責任であって米艦は輸送しない。集団的自衛権とは無関係だ。また北朝鮮から「米国に向かう弾道ミサイルの迎撃」だが、日本上空でなく北極圏を飛ぶミサイルの迎撃は不可能である。さらに「攻撃を受ける米艦の防護」や「日本付近で行動する米艦の防護」だが、米艦船を攻撃する無謀な国が仮にあるとして、その国に対して日本が米軍と共に戦闘することになれば日本の本土も艦船も攻撃対象となり、米艦防護どころではない。このように8事例は、あり得ない想定・絵空事で国民をたぶらかすデマ宣伝である。 |
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C そもそも安全保障の要諦は、敵を作らず敵対する国を友好国化する外交努力にある。安倍政権は、軍事力を背景とする積極的平和主義・集団的自衛権ではなく、誤った歴史認識を改め、憲法に則って中国、韓国、北朝鮮など近隣国との関係改善を図るべきなのだ。 |
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(4) 集団的自衛権行使の本質―戦争で人を殺し殺され、攻撃を呼び込む |
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D 01年にアフガン攻撃、03年にイラク戦争に自衛隊を派遣したが、憲法9条を踏まえ「武力行使はしない、戦闘地域で活動はしない」と制限した。集団的自衛権の行使はこの制約をなくすことだ。イラク戦争のような場合に「国民の生命・財産を守るため」のこじつけで参戦することになる。その判断の情報は、特定秘密保護法で秘匿される。
つまり、集団的自衛権の行使は、わが国が不戦国家から交戦当事国に転換し、海外で自衛隊員が戦闘で人を殺し殺され、日本本土、特に原発や米軍の集中する沖縄などが攻撃対象となり、また海外で活動するNGOや商社マン、ジャーナリストなどがテロの対象になる可能性を高める。今回の「イスラム国」のテロもこのことと無縁ではないのではないか。法案審議で徹底して追及していきたい。 |
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(5) 立憲主義を踏みにじる安倍政権−政治権力は憲法で縛られているのだ! |
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E 憲法とは、主権者たる国民が、政治権力の専制支配を防止し、個人の権利・自由を保障させるために政治権力を縛るものあり、これが近代国家のルール・立憲主義だ。
政府に戦争を起こすことを禁じている憲法9条の下で、その解釈をねじ曲げて戦争ができるようにすることは正にこの立憲主義を踏みにじる暴挙だ。百歩譲って、集団的自衛権の行使が必要というのであれば、国民に十分な説明も上、憲法改正を問うべきだ。だが、多くの国民がその改憲に反対するだろうから、解釈改憲で誤魔化そうというのである。 |
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3.反撃の条件と私たちの課題 |
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(1) 一致できる課題で野党共闘を追求し、民意を政治に反映する |
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大企業と富裕層優遇、国民犠牲、戦争する国に向かう安倍政権の諸政策に反対し、「格差是正・護憲・脱原発」で一致する野党共闘を進め、安倍政権の本質を追及していく。 |
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(2) 要求実現には野党共闘を支える院外大衆運動の強化が不可欠 |
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労働組合の春闘や労働法制改悪反対の運動を激励し、「戦争をさせない1000人委員会」運動などを共に盛り上げ、国民世論を高めていく。学習・教宣活動を強化してほしい。 |
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(3) 社民・リベラル勢力の結集で政治転換を目指す |
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当面する統一自治体選挙の勝利をはじめ、集団的自衛権行使反対、脱原発、反TPPなどの大衆運動や宣伝活動などを社民党は主体的に強化していく。そして個別課題での野党共闘を進めつつ、来年の参院選を目途に「格差是正・護憲・脱原発」などで一致する政治勢力の結集に努力する。改憲発議を阻止できるよう参院で3分の1強の護憲派の結集が必要だ。その意味で社民・リベラル勢力の結集を目的意識的に追求していく。 |
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